秋桜 1
2004.10.03
大和は服を脱ぎ捨て裸になると、幼馴染である楓のベットに潜り込み、甘えるように肌を擦り合わせた。
人の体温はこんなにも心地がいいのだろう。
その温もりを噛み締め、楓の胸に顔を埋めていると、言葉にならない幸福感で満たされる。
「大和」
少し高い変声期の子供のようにかすれた楓の声が胸元で響く。
見上げると楓の綺麗に整った顔が近づき、透き通る白い肌に映える、色大きく潤んだ目に見惚れていると、筋の通った高い鼻先が頬に触れる。
そのまま唇を合わせ舌が絡まると甘い息が漏れる。
熱を孕んだ楓の中心が大和の指に触れる。
「いい? 」
大和の後ろを指でそっと撫でながら耳元で楓が囁く。
「ん。」
ローションを含ませた指を後ろの扉に絡めながら掻き回していくと、奥が疼いて大和が声を漏らす。
それを合図に楓の硬くなったペニスが押し付けるように入り込んでくる。
「きつ……大和、力抜いて」
大和が上手く調節出来ずにいると、楓はゆっくりと腰を動かし、深い所まで沈んでいった。
楓の動きはすぐに速度を増し、激しく突く痛みが大和の奥に熱をもたらす。
「っん……楓……」
泣いているような甘い声で大和が唇を求めるが、楓は腰の動きに集中したまま、目を閉じている。
急ぐように抱く楓の激しさは、大和に苦痛と快感を同時に与えた。
止まない激しい動きに、大和の硬くなったペニスから雫が溢れる。
たまらず、大和は自分のペニスを扱き、あっと言う間に上り詰めていく。
大和が果てた後、楓はきつく目を閉じて身体を震わせると、大和の中には楓の熱い情熱が勢いよく放たれていった。

行為の後、眠ってしまった大和が目を覚ますと、ベットの上で壁にもたれながら楓がFMから流れている歌を口ずさんでいた。
泣いているように聞こえるその声で大和は楓を初めて抱きしめた時の事を想い出していた。

二人がまだ小学生だったある日、学校帰りに隣にある楓の家へ遊びに行った時だった。
いつものように裏庭に回わり、障子を開けると楓の母親が首を吊って死んでいた。
その横で楓が呆然と立ち尽くし、母親の遺体を人形のような表情で見上げていた。
「楓っ! 」
大和がいくら呼びかけても楓は全く反応しない、強い力で肩を揺らし名前を叫ぶと真っ暗だった瞳が僅かに揺れ、狂ったように奇声を上げた。
涙を流し震える楓を抱きしめながら、西日が差し込む部屋の外にに目を向けると楓の母親が大事に育てていた秋桜が揺れていた。
そのまま楓の父親が帰るまでの長い時間、二人はただ震えて抱き合っていた。

それから暫くの間、楓は声を出す事が出来なくなっていた。
葬式の間、涙も流さず、真っ直ぐに前を向いた暗い瞳はどこも見つめてはいなかった。

声を取り戻してからも楓は以前のように笑う事は無かったが、大和はずっと楓のそばに居続けた。
ただもう一度、楓のあの笑顔が見たくて。
その為には何でもしようとさえ思ったが、幼い大和に出来る事は、ただ楓のそばに居る事だけだった。
いつのまにか二人はお互いに傷を埋めるように抱き合って唇を重ねるようになっていった。

「その歌……」
楓の股間に顔を埋めながら曲のタイトルを探そうとするが、ぼんやりした頭に靄がかかって浮かばない。
「さあ、何だったかな……」
興味無さそうに楓が返すと大和の頭を撫でながら、またラジオに合わせて歌いだした。
窓の外に目をやると今年も秋桜が綺麗な花を咲かせ、少し冷たくなった風に花びらが揺れていた。


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