秋桜 4
2004.10.05
三谷を抱いた後、眠りの中でドアが閉まる音が聞こえた気がした。
大和が帰ってきたのかと思い、耳を澄ましたが家の中は静まり返っている。
最近、部活の忙しい大和が帰って来るのは7時頃1のはずだ、時計の針に目を向けると5時の少し前を指している。
気のせいかと思い、楓はまたしばらくの眠りについた。

楓は部活の中でも周りの人間に距離を置かれていた。
人と親しく付き合う事が苦手だった楓には丁度良かったが、三谷だけは楓に纏わり付くように近づいて来た。
あまり相手にしていないにも関わらず、三谷は毎日のように甘えた笑顔で楓に話しかけてくる。

この日、楓が帰ろうとすると三谷が下駄箱の前で待っていた。

なんとなく一緒に並んで帰り道を歩いていると、大和が部活でいないのを見計らっていたかのように、家に遊びに行きたいと言い出した。
始めはキッパリ断った楓だが、三谷が相談があると目を潤ませ、半ば強引に家まで押しかけて来た。
しばらく楓の部屋を眺めながら、あれこれ質問を浴びせる。
うんざりした楓が「相談って何?」と切り出すと真剣な表情で三谷が口を開いた。
「杉田先輩は恋人ですか?」
「大和? 何で? 」
「いや……いつも一緒にいるし……」
急に歯切れが悪くなると三谷は俯いたまま黙ってしまった。
「お前、俺の事が好きなの? 」

まだ幼い頃、母親の死体を目の前にして壊れてしまった楓は、大和と抱き合い唇を重ねる事で生きてこれた。
それからしばらくして自分の性対象は男である事に気付き、その時に一番近くに居たのも大和だった。
楓は徐々に男らしく成長していく大和を眩しく感じる。
しかし、楓の身長を追い越していく速度に比例するように、大和が向ける愛情が強くなっていく事に戸惑いがあった。
自分が大和に向ける情熱が欲望なのに対し、大和が楓に向ける情熱は真っ直ぐな愛情だったからだ。
大和を抱く度に罪悪感が募り、大和の事が疎ましく感じるようになっていった。

違う男を抱いてみたかった。

三谷が自分に好意がある事を確信すると、楓は唇を近づけ舌を絡ませる。
それに応えるように、ゆっくりと三谷が舌を動かす。
そのまま一枚づつ服を脱がせ、お互いが全裸になると三谷を抱きかかえベットへ運ぶ。
抱きしめると折れそうな華奢な身体は軽く、その事だけでも充分に新鮮だった。
身体中の敏感な部分を指と舌で刺激して行くと、三谷の高い声が漏れ出す。

まだ未発達だが充分に硬くなった三谷の小さいペニスと自分のモノを片手で握り、見つめながらゆっくりと扱いていく。
「あんまり見ないで……恥かしいから……」
耐えきれず、三谷は唇を合わせ楓の視線を逸らす。
三谷のペニスを扱いたまま、楓の舌が唇から下へ向かい、白い肌に印を付けていくと、その度に三谷の身体がピクリと跳ねる。
楓の舌が腹を滑らせた時、三谷は「あっ……」と声を上げあっけなく果てた。
放ったものが楓の顔を汚すと、三谷は「ごめんなさい……」と涙混じりの声で謝る。
「舐めてキレイにしろよ。」
楓の声に応え、三谷は舌で自分の出したものを拭き取ると、その舌先で楓の全身を愛撫し、硬くなった楓のペニスを手に取ると、舌先で濡れた先端をくすぐる。
「大きいんですね……先輩のって………」
そのまま、口に含み舌を絡ませると、楓を声を漏らし、三谷の頭を掴みながら腰を押し付ける。
微かに震える三谷の喉の奥に先端があたり、その刺激を求めて楓の動きが速くなる。
「んっ……出すぞっ」
楓が放つと三谷が少し咽ながらも必死にそれを飲み込んだ。

一度放った後も、二人の熱は収まりきらず、お互いのペニスを咥え合いながらも、楓はオイルを含ませ三谷の後ろを指で広げていく。
充分にほぐれると、三谷は声を上げ楓のモノを求めた。
少しキツイ大和とは違い、相当馴れているのか、三谷のソコは柔らかく楓を飲みこんでいく。
激しくぶつかる楓に三谷は悦びの声を上げ、先端から透明な雫が溢れ出す。
楓が微かに眉を寄せ目を閉じるながら動きを加速させると、三谷も自分のペニスを扱き、二人は同時に果てた。

「俺、良かったですか? 」
行為が終わった後、ベットの上でまどろんでいると、三谷は楓と目を合わさず、窓の外を見つめたまま、そう聞いた。
「ん……」
正直、大和と比べて馴れていた三谷は良かったが、楓は返事とも付かない曖昧な言葉を返す。
「付き合ってくれなんて言いません……ただ、気が向いたら、また抱いて下さいね……」
楓の心中を察したかの様に強がりを言うと、三谷は軽いキスをして「しばらく眠って良いですか? 」と言ってうつ伏せになった。
三谷の寝息が聞こえ始めると目覚ましをセットしてから、楓もしばしの眠りについた。

6時を過ぎた頃、三谷を玄関まで見送り、そのまま空を見上げると三谷と抱き合っている最中に降り出した夕立は姿を消し、夕暮れの晴れた空に虹が架かっている。
乾いているはずの玄関が濡れていて、やはり三谷と抱き合っている最中に大和が帰っていた事を証明していた・・・。


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