LIFE 7
2004.12.18
=つまづきながら=

「先輩、いい加減に起きて下さいよ、もう昼過ぎですよ!」
「うるせぇな……いいだろ休みなんだから……」
「駄目、今日は買い物行くって約束したじゃないですか」
「……。」
「ほら、拓斗……いい子だから。」
「……ほぇ…」

まだ半分眠っている拓斗を抱きかかえて唇を合わせる。
甘いミルクのような香り・・・。
筋肉質だからか体温が高く、赤ん坊のようにスベスベした肌の感触を手の平で味わっているとなんだかいけない大人のような気分になる。
舌先で唇をなぞりながら中に割って入ると、子供のような顔からは想像もつかないくらいに大きく張った股間に指を絡めた。
「へへっ先輩すげぇ勃ってる」
「あ?朝だからだろ」

寝起き特有の鼻にかかったガラガラの声に欲情してもう一度唇を重ねる。
幼い顔立ちも、強気な発言も、細く引き締まった身体も、不釣合いに大きなソレも、容姿とはアンバランスに見える男っぽい仕草も・・・拓斗の全てが健一の欲望を刺激する。
「んんっ……けんっ……ちょっと……」
舌を絡ませながら硬くなった先端を集中して刺激すると下着の先が熱を帯びて湿り、ビクビクと苦しそうに痙攣している。
「駄目じゃないですか、こんなになるまで溜めてたら。」
「やめろって……わかった起きるからっ……」
顔を真っ赤に染めた拓斗は跳ね上がって起きると健一の腕をすり抜けバタバタと寝室を後にした。
普段はベタベタと纏わりついてくるクセに、いざそういう雰囲気になるといつも拓斗は逃げ腰になってしまう。
恋人同士だというのに健一が強引に襲いかからない限り、拓斗から手を出してくる事は殆ど無い。
結局、健一が抱かれる羽目になるのだから、もうちょっと積極的になってくれてもいいじゃないかと、少しだけ不満に思う。


「なあ、どう思う? 」
「どうって言われてもなぁ、相手があの拓先輩じゃ一般論で考えても仕方ないんじゃないの? 」
翌日、同級生である樋口に拓斗との事を相談してみた。
二人の関係はとっくにバレていたし、高校生の頃からの付き合いで健一の過去の恋愛を知っている樋口とは今更隠し事をするような間柄でも無い。
それでも今まで相談などした事の無い健一にとっては悩みを打ち明けるだけでも勇気のいる事だった。
「しっかし、お前も変わったな」
「何が? 」
「昔は遊びまくって男も女も随分と泣かしてたのに」
中学、高校の頃は外見だけで惚れてくる奴等が多かった、セックスに興味もあったから片っ端から付き合っていた時期もあった。
常に誰かに告白されるから恋人にも遊び相手にも不自由しなく、恋愛で悩む事なんてこれまでに無かった。
「そっ、そんな事……」
「あるよな」
「……先輩に余計な事言うなよ」
「本気なんだ? 」
飄々としているように見えて結構鋭い樋口には単純な健一の考える事は全てお見通しだった。
健一はコクリと頷くとどうしていいのか分からずにションボリと俯いてしまう。
「バチが当たったんだな」
「そうかもしれない……」
今思うと相手の好意を良いように利用して随分酷い事をしたのかも知れない、樋口に痛い所を突かれて健一は益々肩を落とした。

「おい、冗談だって元気出せよっ……そうだっ、けんいちくーん。これあげる。」
ゴソゴソと鞄を掻き回しながら、未来の世界の猫型ロボットを真似した口調の樋口は液体入りの小さな瓶を取り出した。
「な、何コレ……? 」
「媚薬だよ」
「お前、何でそんな物持ってんだよっ」
「僕の鞄は何でも出てくる不思議な鞄なんだよ? 」
「うわ、何か怪しいなぁ……」
「効き目はバッチリ!副作用も無いし俺の実家で飼ってる猿に飲ませたらそりゃもう凄かったぜ」
「ウチの先輩は猿じゃありませんっ」
「それもそうだよな、あははっ、じゃあ帰るよ」
樋口はあっさりと小瓶を仕舞って立ち上がると爽やかな笑顔でスタスタと歩き始める。


「……ちょっと待って! 」
振り返った樋口の嬉しそうな表情を見て、健一は呼び止めてしまった自分の意思の弱さを呪った。


「先輩、美味しい? 」
樋口に遊ばれている事は判っていたが、結局あの怪しげな媚薬を貰ってしまった。
無害である事は樋口が保証してくれたし、効果なんて本当にあるのかと半信半疑だったが、夕食のカレーにこっそりと媚薬を混ぜてみた。
「うんっ、おかわり」
夕食を拓斗の大好物にしたのは後ろめたさなのかもしれない。
健一の葛藤など全く気付かずに拓斗は三杯もおかわりをして、満腹になると風呂にも入らずに眠ってしまった。

「やっぱり効果なんてある訳ないか……」
多少なりとも期待していた健一はガックリと肩を落として夕食の後片付けをしてから風呂に入った。
「あーぁ……」
せっかく恋人同士になれたのに、拓斗との距離を感じて溜息をついた。
健康な男だったら毎日でもやりたいと思うのが普通なのに。
好きな人と恋人同士になれて一緒に暮らしているだけでも十分幸せなのかもしれないが、壊れてしまうくらいに求められたいと思う自分は我侭なのだろうか。
「先輩のばか……」
拓斗を好きになる分だけ嫌いになっていく。

湯船に浸かり拓斗に激しく愛されている自分を想像して目を閉じた。
身体中の血液が一点に集まり熱を孕んで硬く上を向いたそれをそっと手で包んむ。
「んっ……拓斗……」
そのまま自分で慰めてしまおうかと思ったが、身体の疼きと共に虚しい気持が広がった。
「馬鹿みてぇ……」

やり切れない気持を抱えたまま、缶ビールを一本空けてからベットに潜りこんだ。
健一の横でスヤスヤと眠る拓斗が憎たらしくなり頬っぺたを軽くつねってから瞼を閉じて眠りについた。


「ぁっ……んっ……」
浅い眠りの中で荒い息遣いと身体中を這う触手のような指の動きを感じて声が漏れた。
こんな夢を見るくらい溜まってたのかと半分覚醒していない頭の中で考えていると、身体の奥の疼きがリアルな快感に変わっていく。
「ぁぁ……んっ……? 」
驚いて目を開くと下着を脱がされて露わになった下半身に拓斗の指が入り込んで中を掻き回しながら健一の胸に舌を這わせている。
「ぁっ……ちょっと……先輩…なに? 」
「健一……したい……いいだろ? 」
「んっ……そんなっ……いきなり駄目っ……拓斗っ……」
快感に震える身体で力無く抵抗するが、強引にねじ伏せられて敏感になった胸の先を甘く噛まれる。
いつもより少し乱暴な拓斗の愛撫に身体も心も満たされ、求めるように拓斗の頭を鷲掴みにして声を上げた。

「お前が……悪いんだ……いつも誘うような真似しやがって」
「はっ……ぁっ……してないっ……誘ってなんて……ひゃっ……」
指で中を広げられて小さな悲鳴を上げると、ギラギラした目で健一を見つめる拓斗が荒々しく唇を重ね舌を絡ませる。
呼吸が出来ない程に激しく舌を吸われて酸素が足りなくなった頭の芯が痺れ、後ろに感じる硬い熱が押し込まれて気を失いそうになった。

「ぁぁ……ぅぁっ……拓斗っ……」
「けん……ごめん……俺、もう我慢できない」
ゆっくりと浸入してくる拓斗の熱を半分まで感じると、中に広がる苦しさに耐えかねてギュッと拓斗の腕にしがみ付いて最後まで受け入れる。
いつもなら健一が苦しく無いようにたっぷりと愛撫をしながらの挿入していたが、今夜は健一の中を奥まで満たすと深く腰を沈めながら突き上げるように動かしていく。
「ぁぁぁっ……たくとっ……はっ……っ……」
犯されるように激しく腰をぶつけられ痛みすらも快感に変わっていった。
息もつけない程に拓斗に突き上げられて中が破れそうにも関わらず、健一の心は満たされる。
「けん……好きだよ……けんっ……健一っ……」
健一の名前を叫び拓斗の腰の動きが加速していくと、間もなく健一の中に生温かい液体が注がれた。

拓斗の動きが止まってからも健一の身体は震えが止まらず、快感に喘ぎながら酸素を求めて短く呼吸をした。
健一から呼吸を奪うように拓斗が唇を重ね、腰を押し付けて中に入ったままの硬さを失っていないモノで奥を刺激する。

「んっ……さっきより動き易くなったな……」

「ぅぁっ……拓斗……どうしたんだよ……いつもと違う……ぅぁっ……」
これ程までに効果があるものなのか。一度放出しているにも関わらず、硬く健一の中心をえぐる拓斗のモノが奥を刺激する。
「んっ……甘く見るなよ、俺はいつだって、お前を滅茶苦茶にしたいって思ってるんだぜ……でもお前がいっつも……」
言われてみれば、毎日のように健一が襲っているから、拓斗から手を出す隙も無かったのかもしれない。
媚薬の所為なのかとも思ったが、それでも拓斗が漏らした意外な一言が健一の心に火を灯した。
バシバシと激しく腰をぶつける音と共に健一の心に灯った火が徐々に激しく揺れる炎に変わり、心だけでなく身体中を甘く焦がしていく。
身体中に散らばった快感が中心に集まって込み上げてくる。

「んんっ……けん……俺……も、出る……」
「……ちょっと待ってっ……んっ……俺も……もう……」
快感の波に乗り遅れないように目を閉じて集中していると、動きを加速させて絶頂へ導く拓斗から熱い汗が噴出しポタポタと健一に降りかかる。
瞼の奥に一つの点が集まって限界が近づくと、拓斗の表情を確認するように薄く目を開いた。

「せっ、先輩鼻血っ!」
健一に降り注でいた液体は汗などでは無く、ポタポタ落ちる血液が拓斗の顔を真っ赤に染めている。
「へっ?……うわっ」
驚いた拓斗が動きを止めて鼻をこすると真っ赤な血がさらに噴き出す。
慌てて身体を起こすと一瞬繋がっていた部分が刺激され、拓斗はブルブル震わせながら健一の中に放出させてしまった。
「……ぅぁっ……ぁぁっ……健一ごめっ……」
驚いた拍子に先に果ててしまった拓斗は情けない表情で鼻を抑えている。
「先輩いいから鼻冷やして、ティッシュ詰めて」
テキパキと治療している内に先程まで育て上げた快感の波はすっかり通り過ぎてしまっていた。
どの道、拓斗がこの状態では口も使えそうに無い。

「俺……情けねぇ……ごめんな健……」
「違うっ、俺が……いいんだって俺、今日すげぇ嬉しかった。」
媚薬を使った事をうっかり喋りそうになり、慌てて唇を重ねて誤魔化した。
「うっ……んんっ……ぶはっ、けんいちっ……俺を殺す気かっ!」
鼻にティッシュを詰めた拓斗は唇を塞がれて呼吸が出来なくなって暴れ出す。
「ぷっ……はははっ……ごめんっ……」
お互いに失敗をしてしまったが、なんだか幸せな気分に包まれて二人は笑った。

眠ってしまった拓斗を置いて一人シャワーを浴び、指で拓斗が吐き出したものを洗い流していると、先程逃してしまった快感が再び蘇ってくる。
自分の指でゆっくりと中を掻きまわしながら、拓斗の言葉を思い出す。

『甘く見るなよ、俺はいつだって、お前を滅茶苦茶にしたいって思ってるんだぜ……』

「んっ……たくと……」
身体を小刻みに震わせると白濁した液体が飛び散り浴室のタイルを汚していく。
結局は自分で慰める結果になったが、今日の拓斗の激しさに健一は自分が求められている事を確認して満たされたいた。
悪い事もしてみるもだなと思いながら、健一は熱いシャワーで身体を洗い流し快感の余韻を味わった。



再びベットに潜り込むと鼻にティッシュを詰めたまま苦しそうに眠る拓斗の頬に軽くキスをした。
格好悪くて、情けなくて……。
少し前の健一なら考えられないくらいに拓斗に振りまわされながらも慌しく毎日が過ぎていく。
こうしてジタバタしながらも大切に育てていく気持が本当の恋愛なのかもしれない。
まだ未熟な二人は大切なものを見失ったり、時には傷つけあったりするけれど、それでもこうして繋いだ拓斗の手を離さないようにと祈るような気持で健一は眠りについた。


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なんか最終回みたいな終わりかたですが、まだまだ続きます。
前回エロたっぷりと宣言した割りに不完全燃焼で終わってしまってますね・・・。
最初はギャグっぽく終わらせるつもりが久しぶりに書いたもんで気合が入ってしまいました。
そう言えば健一は大学一年生なので未成年です。
四話でも飲酒をしていましたが、未成年の飲酒、喫煙は法律で禁止されています。
健一ったら不良だわ。
まぁ怖い。