LIFE 9
2005.04.16
=勝手にしやがれ=(2/2)

「どういう事なんですか……?」
二人の部屋の中、テーブルを挟んで拓斗とジュリーが並んでソファーに座っている。

「だから……ちゃんと説明したじゃないか……」
何度も同じ話をさせられて疲れたように表情を曇らせる拓斗の横で、ジュリーはハンカチを握りしめて涙を流している。
あの夜、連絡先を交換した二人は健一の知らない所で頻繁にメールをしていたと拓斗は言った。
だが、その先に続いた拓斗の言葉を健一は理解出来ずにいる。

「ごめんなさい……私が悪いの………」
泣き崩れるジュリーの背中を撫でながら、お前は悪く無いよと拓斗が宥める。
まるで安いメロドラマのワンシーンのような光景だ。
健一はこの状況を他人事のように感じながら熱い緑茶を一口啜った。





「で、何で家出したんですか……?」
嵐と喧嘩して家を飛び出したジュリーが、泣きながら拓斗に連絡をしてた事は分った。
行き場の無いジュリーを泊めてやろうと拓斗に言われれば健一に断る理由も無い。

「だぁからー……何回も説明しただろ?」
発端は夕食に嫌いな食べ物を出され嵐がブツブツと文句を言った事が始まりだったらしい。
だったら食べなくてもいいわよとジュリーが下げようとしたが、嵐はもういいよと言いながら不味そうに箸を付けた。
後は売り言葉に買い言葉で口論になりジュリーが家を飛び出して今に至っている。

ジュリーの気持は分るのだが、釈然としないのは同情している拓斗に向かってお前が言えた事かよと不満をぶつけたい気持を抑えているからなのだろう。


「いいのよ……私は所詮ジプシーだもの……帰る場所なんて必要無いの………」
ただの痴話ゲンカで何がジプシーだと思いながらも、ウチで良かったらどうぞと笑顔で迎えた。
しかし、二人で暮らしている家では寝る場所をどう確保するかが問題だ。

三人の身長差を考えれば拓斗がソファーで寝た方がよいのだが、ジュリーと二人でベッドに寝ている自分の姿は想像出来ない。
勿論ジュリーは遠慮していたが、その長身では窮屈だろうと健一は無理にベッドを勧めた。

過去を知りながらも二人が仲良くしているのは、嵐と拓斗が付き合っていた事実はジュリーにとっても完全に過去なのだろうか。
窮屈なソファーの中で眠れずに、健一は身体を折り曲げながら一人そんな事を考えていた。


店を経営しているだけあって、料理の腕は大したものだ。
二人で料理をしていると新しいレシピや技術も増え、拓斗も我侭を言わずに大人しくしている。
寝る場所が窮屈なのと拓斗と二人きりになれない事以外では三人の共同生活も悪く無い。

「また二人で風呂入ってるのかよ……」
拓斗がジュリーに抱く感情は、例えばミュージシャンに憧れる熱狂的なファンの感情だ。
数日間、一緒に暮らしてみて嫉妬する事も無いと気付いたが、風呂場から楽しそうな声が聞こえると拓斗を取られてしまったようで面白く無い。

「安心しなさいな。拓ちゃんは健一君に男を感じて、私には母性を感じてるのよ……」
健一が不機嫌でいる理由を察して風呂上りに耳元でジュリーが囁く。
勘は鋭いがどこか的を外している。
だが、化粧を落とした素顔は男の色気を感じさせ、何日も禁欲させられている健一を戸惑わせた。




「いい加減、迎えに来たらどうですか?」
三人での生活は快適なのだが、二人きりで無いと解消出来ない欲求が限界まで溜まっている。
このままではジュリーにでさえ欲情してしまう。
身の危険を感じた健一はこのまま長引いても解決しないだろうと嵐を呼び出す。

「けどさ……アイツ怒るとしつけぇんだよ……」
そう言いながら嵐はタバコの煙を吐き出し、落着かないのか視線が泳いでいる。
面倒臭そうに装っているが、実際にはジュリーが怖くて仲直り出来ないのだろう。
「健一、お前は俺の味方だよな……?」
俺はどっちの味方もしませんよと嫌がる嵐を連れて部屋に帰った。

引き合わせたまでは良かったが、元々の原因が感情的な行き違いだから話し合いは混乱を極めた。
素直に謝れずにいる嵐に拓斗が噛みついて、号泣するジュリーを健一が宥める。
まるで地獄絵図のような光景……。
しかし、最後には嵐が土下座をして謝り、二人はその場で熱烈な抱擁とキスをして帰っていった。



二人が帰えると部屋の中は急に寂しくなったような気がする。
健一より寂しがると思った拓斗は意外に冷静で、嵐に関わると碌な事が無いと一人で怒っていた。

「何だよ急にベタベタしちゃって……」
やっと落着いたと思ったら拓斗が膝の上に乗って抱き付いてくる。
ジュリーが作っていった和え物を摘まみながら雑誌を読んでいた健一はくすぐったさに身を引いた。

「逃げるなよ……二人っきりだぞ……」
甘えた声を出して首筋に舌を這わせると、シャツの中に手を入れて肌をまさぐる。
興奮しているのか肌を滑る手の平が熱くて心地よい。

「んっ……止めろよ……まだ昼間だぞ……」


形だけの抵抗はしてみたが、気が付けば拓斗に押し切られるようにベッドの上で裸になっている。
カーテンの隙間から差込む光が重なる肌を照らし、恥かしさで拓斗の顔もまともに見られない。
「…っ……拓斗……あんまり激しくするなよっ……」
久しぶりの愛撫だから唇で痕を付けられるだけで身体が敏感に反応して声が漏れてしまう。
拓斗の指を中に感じると身体中が熱くなって我を忘れた。

「あー……気持ちいい………」
欲望を抑えていたのは健一だけでは無かった。
拓斗は膨張して硬くなったモノを入口に押しつけると口を半開きにして感触を味わっている。
それだけで果ててしまいそうなのだろう。
拓斗は何か別の事を考えているように遠くを見詰めてゆっくりと腰を動かしていたが、奥まで押しつけて震えると健一の中で脈を打って果てた。

「おおっ……溜まってたからいっぱい出たな……」
自分勝手に終わった事を誤魔化しながら、拓斗は引き抜いたモノの代わりに指を入れて掻き回す。
「……ぁっ……っ……」
中に入れた指を広げると拓斗が吐き出したものが溢れ出す。
焦らされて限界が近いモノを咥えながら、拓斗は健一の羞恥心を煽るように指で音を立てて遊んだ。

「…っ…はっ……ぁっ……」
煽られては止められて、オモチャのように扱われても抵抗出来ずにシーツを掴む。

「出したいか……?」
寸前で止められて苦しそうにしている健一を覗きこみ、拓斗は指で中心を弄びながら耳元で囁く。

「…っ…ぁっ……ぁぁっ……っ………」
言葉が出ずに首を振って返事をすると、握った手の動きを加速させて絶頂に導かれた。
生温かい雫が肌に落ちて泣いているように身体を震わせる。

「健一、見てみろよ。お前スッゲェやらしい格好だぞ」
飛び散ったそれは健一を汚し、拓斗が吐き出した液体が後から溢れシーツを湿らせていた。
熱の篭った吐息が肌に触れ、指で中を掻き回している中心には硬さが戻っている。

「やっ……やめろよっ……」
呼吸を整える時間も後始末をする暇も与えず、拓斗は汚れたままの健一を抱き締めて繋がっている部分を激しく突き上げた。




「まったく……どんだけ出したんだよ………」
自分の指で拓斗が中に出した液体を洗い流していると、浴室のドアが開いて拓斗が顔を覗かせる。

「わっ……ちょっと見るなよ……出てけって……」

一番見られたくない姿を目撃された健一は、風呂場に置いたままになっていた水鉄砲で追い出そうとする。
だが、拓斗は俺が洗ってやるよと嬉しそうに言って健一を後ろから抱いた。
抵抗する力も出ずに諦めて身を任せたが、洗い終わって満足気にしている拓斗に腹が立って再び水鉄砲で攻撃を開始した。
「わっ……こらっ………ガキじゃねぇんだから………」
両手を上げて降参したポーズで油断をすると今度は拓斗が攻撃を始める。
湯船に浮かんだアヒルちゃんは、泡にまみれてふざけ合っている二人を呆れたように見守っていた。

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嵐と同じくジュリーも以前から考えていたキャラクターでした。
なぜか気合が入って長くなった文章を随分削ってこれになりました。
沢田連次→ジュリーで今回のサブタイトルです。

おまけ(別窓で開きます)
拓斗×健一の寮ですが、本編で説明していない部分も含めて間取図を書いてみました。
しょぼいオマケですが楽しんで頂ければ幸いです。