彼の太陽 2
2004.11.06
=やきもち=

佐野に抱かれた夜から一ヶ月が過ぎようとしていた。
あれから毎日のように佐野が家まで押しかけてきて、高瀬も何となく拒みきれず週に何度かは身体を重ねるようになっている。
回数を重ねる度に敏感に反応する身体は、戸惑いつつも徐々に佐野を受け入れるように変化していた。
行為の後、佐野は眠りにつくまで子守唄を歌うように話しかけながら高瀬を抱き締める。
激しく抱かれた後の身体はきつかったが、温かい肌に包まれていると子供の頃に戻ったような懐かしさに安らぎ眠りについた。

その日はお互い何もしないつもりで、間もなく迎える週末に備えゆっくりと眠るはずだった。
ベットに潜り、眠る前のキスを一つすると高瀬はいつものように佐野の胸に顔を埋める。

「高瀬さん・・・今日、中村さんと何話してたの?」
「ん?何だったけな・・・どうせ下らない世間話だろ。」
同期で入社した中村は少々ふざけた所のある奴で、人の良い高瀬はいつもオモチャにされて遊ばれてはいるが、それを除けば気の合う良き同僚の一人だった。
「でも・・楽しそうだった。」
何気無く答えた返事が気に入らないのか佐野はやけにしつこく絡んで、高瀬の正論などまったく聞こえないかのように不貞腐れた顔をしている。

「同僚なんだから話しくらいするだろ。」
「でも・・高瀬さんのココ触ってた。」
駄々ッ子に絡まれるのが面倒になった高瀬が背中を向けると、不貞腐れたままの佐野に後ろから抱き締められ、パジャマ代わりに履いているジャージの上から股間を握られてグリグリと回すように刺激される。
「んっ・・・コラッ・・馬鹿だな、ふざけてただけだってっ!」
「友紀は俺の恋人なのに・・・。」
・・・恋人?
確かに佐野の気持を知っていながら毎日のように同じベットで一緒に眠り、週の半分は身体を重ねているのだから恋人なのかもしれない。
佐野と一緒にいると心が微かに騒ぎ、その胸に抱かれて眠ると心地良い安らぎがあった。
今まで男らしくと自分に厳しく生きてきた高瀬にとって、甘えられる存在の佐野に抱く気持は恋なのかもしれない。
しかし、佐野に犯された事を許した訳では無かったし、男同士での恋愛などした事の無い高瀬にとって、その甘い響きにはどうしても違和感があった。

「ねぇ、何話してたの?」
佐野はしつこく問い詰めながら、余った手をTシャツの中へ滑らせて胸の先端を抓みながらくすぐる。
「佐野・・っぁ・・馬鹿っ・・・離せってっ・・・」
「友紀のばか、ちゃんと名前で呼んでくれよぉー。」
「やめっ・・ろって・・哲也・・・。」
「ちゃんと答えないと止めない、だって心配なんだもん。」
子供じみた口調とは裏腹に、巧に動く佐野の手はジャージの上からでも充分な快感をもたらし、高瀬の頭の芯を痺れさせていく。
「何話したかなんて覚えて無いって・・・ぅぁっ・・・。」

「もっ・・やめっ・ろって・・・んんっ・・だから・・・天気の話しとかだよっ・・・。」
「嘘つきっ、天気の話しで笑わないもん。」
「・・んっ・・・っぁぁ・・・わかんないっ・・んやぁっっ・・・。」
苦し紛れに適当な事を言って誤魔化そうとするが、佐野にあっさりと見破られて、高瀬はどうする事も出来ずに、ただこみ上げてくる快感に喘ぐしかなかった。

「・・・ホントに・・覚えてないっ・・・ぁっ許してっ・・・。」
「やだ、許さない・・・だって友紀は俺の友紀だもん。」
「ふぁっ・・・やぁっ・・・も、ヤバイからぁっ・・・。」
「じゃあ、ちゃんと話してよっ。」
限界が近くなり、高瀬が手足をバタバタさせながら抵抗するが、佐野は強い力で抑えつけるとプンプンと膨れながらもオモチャを扱うように動く指は更にに刺激を強めていく。
「やぁっ・・話す・・話すからっ・・手どけろってっ・・・。」
「友紀・・・可愛い・・・。」
ビクビクと反応させていく高瀬の耳元を軽く噛みながら、徐々に佐野の呼吸も荒くなり指の動きと共に首筋に舌を這わせていく。
「ふ・・ぁぁんっ・・・だめっ、だめっ・・・哲也ぁっ・・・。」
押し寄せる波を耐えながら高瀬が必死に訴えるが、興奮している佐野はもはや高瀬の声など届かないように股間を握る手が加速している。

「・・・・っ・・ぅっ・・・ぁっぁぁぁ・・・。」
頭の芯がフワリと浮いたような感覚の後、限界を超えて爆発させてしまうと、ビクリと身体を大きく震わせて下着の中に放出してしまった。
高瀬が快感の余波に喘いでいると、最後まで絞り出そうとして股間を扱く佐野の手にも、じっとりと湿った感触が伝わってくる。
「友紀かわいい・・・もう出ちゃったの・・・?」
余韻に震える高瀬鎮めるように抱き締めながら耳元で囁かれると、佐野を蹴り飛ばしたい衝動にかられるが上手く力が入らなかった。

「馬鹿っ。」
汚れてしまった下着を脱がせてティッシュで高瀬の濡れて縮んだ股間を拭いている佐野を睨みつける。
「だって友紀がカワイイから・・・。」
佐野はシュンとしながらも熱っぽい視線を高瀬の股間に向けて、被ってしまった皮を剥きながら先端まで丁寧に拭いていく。

「ぅぁっ・・ソコ見ながら可愛いって言わないでくれる?」

可愛いなどと恥かしい言葉を連発されプライドの傷ついた高瀬は、股間を拭いている佐野の手を振り払うとプイッと後ろを向いて自分で後始末を始めた。
「ごめんね・・・。」
甘えた声を出した佐野が背中に頭をすり寄せてくるが、その声を無視したまま替えの下着を用意する。
「俺ガキだから友紀が他の奴と楽しそうにしてるだけで嫉妬しちゃって・・・。」

「俺のこと好きなんだろ?だったらちゃんと信じろよ。」
必死にしがみついて言い訳をする佐野が少し気の毒になり、高瀬は耳まで真っ赤になにながらも精一杯の愛の言葉を吐いた。
「じゃあ・・・友紀も俺のこと好き?」
下着を取り替えている高瀬の背中を抱き締めながら、佐野の少し鼻にかかった小さな声が背中に響いた。
「嫌いだったらこんな事しないだろ・・・。」
まだ恥かしくて好きとは言えない高瀬はクルリと振り向くと、涙目でションボリしている佐野に唇を合わせて気持を伝える。
「ずるい・・・。」
長いキスが終わり頬が触れ合うと、甘いため息を吐きをひとつ漏らすと、まだブチブチと文句を言いながら拗ねてしまった佐野に、高瀬はもう一度唇を合わせてどうしようもないヤキモチ君を黙らせた。


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このサイトを設立して一番初めにUPしたテキストにも関わらず、更新に一ヶ月もかかってしまいました・・・。
当初は一話完結シリーズにカテゴライズしていたんですが、ちょっとSMっぽいハードな内容にしようと思って五話完結予定の中編に移動しました。
そう思って第三話くらいまで仕上げたんですが、どうもしっくり来なくてまたまた路線を変更し、シリーズものとして甘々系に修正したものがこちらになります。
それに伴い第一話サブタイトルの「恥辱」というのも、あんまりなような気がして「first time」に変更しています。
うーん。ごめんなさい。
実力不足を痛感してますが、機会があったら幻の中編をこっそりUPできたら・・・などと身の程知らずな野望もあったりして。