アルティミシアはどうして
時間圧縮なんて暴挙を行おうと思ったのだろう? その理由は実はゲーム序盤、
Disc1で
イデアの口を通して語られている。
「…薄汚れた愚か者ども。古来より我々魔女は、幻想の中に生きてきた。愚かな幻想だ。恐ろしげな衣装を身にまとい、残酷な儀式で善良な人間を呪い殺す魔女、無慈悲な魔法で緑の野を焼き払い、暖かい故郷を凍てつかせる恐ろしい魔女。…くだらない」
「ならば、愚かな者、おまえたち! こうするしかない。みずからの幻想に逃げ込め! 私はその幻想の世界で、お前たちのために舞い続けよう! 私は恐怖をもたらす魔女として、未来永劫舞い続けよう!」
抽象的な発言なんで分かりにくいと思うけど、要するに、
- 自分は邪悪な魔女じゃなかった
- にも関わらず人々は自分に偏見を抱き迫害を止めなかった
- そこまで偏見を抱くならもういいよ…お前らのお望みどおり邪悪な魔女になってやる
|
どうして
アルティミシアはこんな極端な考えを抱いてしまったのだろう? その理由は
イデアが示唆している。
イデア「アルティミシアは恐ろしい魔女です。心は怒りに満ちあふれています」
イデア「騎士がいない魔女は多くの場合、力を悪しき道のために使ってしまうのです。アデルには騎士はいなかったと聞いています。おそらく、未来の魔女アルティミシアにも騎士はいないのでしょう」
アルティミシアには自分の不満や苛立ちを相談できる相手(=
騎士)がいなかったらしい。不安、不満、怒り、苛立ち、その他もろもろの負の感情が発散されることなく積もりに積もって、ついに爆発してしまったということか。
先ほど紹介した
アルティミシアの発言にもう1度注目してみよう。
- 「みずからの幻想に逃げ込め! 私はその幻想の世界で、お前たちのために舞い続けよう!」
- 「恐怖をもたらす魔女として、未来永劫舞い続けよう!」
|
アルティミシアの望みは、人々に未来永劫の恐怖を与える幻想世界を作り出すこと。しかし、彼女にはその望みを実現させるほどの
力はなかったらしい。
※ライブラ文章
時間圧縮は
魔女の
力をたくさん集めるための手段だったわけだ。
ゲーム序盤で
サイファーは言う。
サイファー「オレは戦闘が大好きだ。怖いことなんて何もない。戦闘が終わっても生きてるってことは、確実に夢の実現が近づいているってことだ」
サイファー「いつか聞かせてやるさ! オレのロ〜〜〜マンティックな夢をな!」
サイファーは将来への憧れや目標という意味で『夢』という言葉を使った。
それに対して、
イデアの中のアルティミシア「幻想の中の恐ろしい魔女がガルバディアの味方になると知り、お前たちは安堵の吐息か? 幻想に幻想を重ねて夢を見ているのは誰だ?」
イデアの中のアルティミシア「自らの幻想に逃げ込め! 私はその幻想の世界で、お前たちのために舞い続けよう! お前たちと私。ともに創り出す究極のファンタジー。その中では生も死も甘美な夢」
アルティミシアは現実逃避の幻想や妄想という意味で『夢』という言葉を使う。
2人の言う『夢』という言葉に大きな隔たりがあることを踏まえたうえで、2人のやりとりを見るとなんとも言えない気分になる。
アルティミシア「忠実なる魔女の騎士サイファーよ。魔女は生きている…魔女は希望する。海底に眠ると伝えられし、ルナティック・パンドラを探し出せ。さすれば魔女は再びお前に夢を見せるだろう」
サイファー「おおせの通りに。アルティミシア様」
アルティミシアはどういうニュアンスで『夢を見せる』と言ったのか。
サイファーは
アルティミシアのその言葉をどういう意味に受け取ったのか。
最後まで
魔女の信頼を得ることができなかった
騎士。最後まで
騎士を信頼しようとしなかった
魔女。どちらも悲しいね。