魔女と騎士
我々の世界の魔女と
FF8の世界の魔女では格が違う。
※引用
※引用
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FF8の魔女は悪魔の手先ではなく、
創造主の力を受け継いだ人間だと伝えられている。ただ、
FF8の世界では人類と
創造主の仲が険悪なので、その後継者と目される女性も“魔女”と呼ばれて怖れられているわけだ。
創造主、すなわち神さまの
力を受け継いでいるだけに、魔女の
力は圧倒的だ。
- 壁をすり抜ける
- 相手の心を読む
- 石像に命を与える
- 民衆を洗脳する
- 時間を圧縮する
- …etc
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FF8の世界では物理法則よりも魔女の
力(=
創造主の
力)のほうが偉い。
時間圧縮は人間が一時的にせよ神の
力を手に入れたことで可能になった特例中の特例だったりする。
一見“なんでもあり”に見える
魔法の
力。しかし、それが逆に魔女の弱点にもなっている。
※
※
人々は魔女を恐れている。嫌っている。
リノア「怖れられる前に、嫌われる前にいなくなりたい…」
魔女は強大な魔女の
力と引き換えに、平穏な日常や親しい人全てを失うリスクを背負う羽目になる。
強大な
力を持つ魔女にとって最大の敵は“孤独”。こればかりは魔女の
力では解決できない。
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魔女は洗脳能
力を持つという。だから手駒の確保には困らない。しかし洗脳した人間を幾ら集めても孤独は癒せない。それどころか、かえって虚しくなるばかりだ。魔女の
力は一見すると“なんでもあり”に見えるけど、
こういったものは魔女の
力では手に入れることはできない。
イデアは言う。
イデア「騎士がいない魔女は多くの場合、力を悪しき道のために使ってしまうのです」
これは一体どういうことだろう?
イデア「あのね、リノア。魔女でいることの不安を取り除いてくれる方法を教えましょう。それは…魔女の騎士を見つけることです。いつでも貴方のそばにいて、あなたを守ってくれる騎士」
イデア「騎士はあなたに安らぎを与えます。あなたの心を守ります。だからリノア。あなたの心の騎士を見つけなさい」
魔女は強大な
魔法の
力を持っている。自分の身を守るだけならば他人の
力を借りる必要はない。だが、魔女の
精神的な強さは普通の人間と変わらない。
- 親しい人が魔女の力を怖れて離れていってしまうのではないかという不安
- その不安を誰にも相談できない孤独
- 不安と孤独からくる強いストレス
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こういった気持ちが魔女の心を蝕んでいく。そんなとき、魔女になってしまった女性の傍に寄り添い、荒みがちな心を支えてやるのが魔女の騎士(=心の騎士)なのだという。
となると、
サイファーがやっていたことは……。悲しすぎる。
一見すると普通のおじさんにしか見えない
FF8の
シド。でも実は、
リノア「イデアの騎士は…?」
イデア「もちろん、いますよ。今も一緒にいてくれて私を守ろうとしてくれています」
そう。
シドの正体は
魔女イデアの騎士。魔女になった
イデアを孤独から守ってくれる心の騎士。
シドは戦士としては役に立たないし、商売の才能もない。そのうえ優柔不断。優しさ以外に何の取り得もない人物なのだけど、その優しさこそ
イデアにとっては掛け替えのないものだったわけだ。
アルティミシアはどうして
時間圧縮なんて暴挙を行おうと思ったのだろう? その理由、実はゲーム序盤、
Disc1で
イデアの口を通して語られている。
「…薄汚れた愚か者ども。古来より我々魔女は、幻想の中に生きてきた。愚かな幻想だ。恐ろしげな衣装を身にまとい、残酷な儀式で善良な人間を呪い殺す魔女、無慈悲な魔法で緑の野を焼き払い、暖かい故郷を凍てつかせる恐ろしい魔女。…くだらない」
「ならば、愚かな者、おまえたち! こうするしかない。みずからの幻想に逃げ込め! 私はその幻想の世界で、お前たちのために舞い続けよう! 私は恐怖をもたらす魔女として、未来永劫舞い続けよう!」
抽象的な発言なんで分かりにくいと思うけど、要するに、
- 自分は邪悪な魔女じゃなかった
- にも関わらず人々は自分に偏見を抱き迫害を止めなかった
- そこまで偏見を抱くならもういい…お前らのお望みどおり邪悪な魔女になってやる、とぶち切れた
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どうして
アルティミシアはこんな極端な考えを抱いてしまったのだろう? その理由は
イデアが示唆している。
イデア「アルティミシアは恐ろしい魔女です。心は怒りに満ちあふれています」
イデア「騎士がいない魔女は多くの場合、力を悪しき道のために使ってしまうのです。アデルには騎士はいなかったと聞いています。おそらく、未来の魔女アルティミシアにも騎士はいないのでしょう」
アルティミシアには自分の不満や苛立ちを相談できる相手(=騎士)がいなかったらしい。人々が魔女に抱く偏見。その偏見に対する不安、不満、怒り、苛立ち、その他もろもろの負の感情が発散されることなく積もりに積もって、ついに爆発してしまったということか。
ゲーム序盤で
サイファーは言う。
サイファー「オレは戦闘が大好きだ。怖いことなんて何もない。戦闘が終わっても生きてるってことは、確実に夢の実現が近づいているってことだ」
サイファー「いつか聞かせてやるさ! オレのロ〜〜〜マンティックな夢をな!」
サイファーは将来への憧れや目標という意味で『夢』という言葉を使った。
それに対して、
イデアの中のアルティミシア「幻想の中の恐ろしい魔女がガルバディアの味方になると知り、お前たちは安堵の吐息か? 幻想に幻想を重ねて夢を見ているのは誰だ?」
イデアの中のアルティミシア「自らの幻想に逃げ込め! 私はその幻想の世界で、お前たちのために舞い続けよう! お前たちと私。ともに創り出す究極のファンタジー。その中では生も死も甘美な夢」
アルティミシアは現実逃避の幻想や妄想という意味で『夢』という言葉を使う。
2人の言う『夢』という言葉に大きな隔たりがあることを踏まえたうえで、2人のやりとりを見るとなんとも言えない気分になる。
アルティミシア「忠実なる魔女の騎士サイファーよ。魔女は生きている…魔女は希望する。海底に眠ると伝えられし、ルナティック・パンドラを探し出せ。さすれば魔女は再びお前に夢を見せるだろう」
サイファー「おおせの通りに。アルティミシア様」
アルティミシアはどういうつもりで
サイファーに『夢を見せる』と言ったのか。
サイファーは
アルティミシアのその言葉をどういう意味に受け取ったのか。
- 最後まで魔女の信頼を得ることができなかった騎士
- 最後まで騎士を信頼しようとしなかった魔女
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どちらも悲しいね。