嫉妬心 P12
孝平はまずその先端をペロリと舐め取った。
「あっ!」
「恭平、本当に今日はいつもより何倍も魅力的だ。ココがとても嬉しそうだよ。」
「くぅ…っ。」
羞恥心を煽られて、恭平が小さく呻く。
自分の足元にしゃがみ込んだ孝平の背中を強く掴んだ。
暗闇の中で恭平の荒い息遣いと、彼のものを舐める粘着質の卑猥な音が響く。
回りが暗い分、いつもよりも聴覚から得るものがとても大きい。
恭平は恥ずかしくて耳を塞ぎたくなった。
「はぁっ、はっ、あ、あぁあ…っ。」
孝平の舌の動きがあまりに的確なものだから、恭平はそれから逃げるように何度も腰を捩ったが、孝平はそれをうまく処理してさらにイイところを刺激した。
恭平の目から今度は生理的な涙が流れ落ちる。
「父さん、父さん…っ!」
「イっていいよ、恭平。」
珍しく孝平は焦らさずに射精を許してやった。
孝平の背中を掴む恭平の指に一段と力がこもり、腰がビクンと大きく痙攣した。
「う、んぁ…はっ、ぁっ…!!」
あぁぁッ!!
恭平が悲鳴を飲み込んで、腰を震わせて絶頂に登りつめた。
孝平は口内に広がる恭平の体液をきれいに飲み干して、ゴクリと喉を鳴らす。
その音が、恭平の耳にやけにリアルに聞こえて、恭平はその場に脱力した。
「あ、こら。しっかりしなさい。」
孝平が倒れそうになった恭平の身体を腕で支えて、どうにか尻餅をつかさずに済む。
恭平は乱れた呼吸を整えながら、孝平にしがみついた。
「…父さん。」
「なんだい。」
「…我侭なのはわかってる。父さんを困らせるかもしれないことも…よくわかってる。でも俺の気持ちを言うと。」
「ああ。」
「…こういうこと、俺以外の人としてほしくないよ…。」
消え入りそうな声だった。
孝平はぐったりとした恭平の身体を支えながら、沈黙した。
暗くて表情が見えないのもあるが、恭平は孝平の顔を見ることができなかった。
「お願い。やるなら今までどおり俺に気付かれないようにやって。お願いだよ、父さん…。」
「…。」
「俺、それなら我慢するから。もうこんな嫉妬して泣いたりしないから。…俺には見せないで、あんな場面…。」
恭平はまた泣いているようだ。
せっかく涙を止めることができたのに、また泣かせてしまった。
孝平は、重い溜息をついて恭平のズボンを上げて元に戻した。
「あ、ごめんなさい…自分でできるよ。」
恭平はベルトに手をかけて孝平と代わろうとしたが、孝平はそのまま黙って作業を続けた。
チャックを上げて、ベルトを締めて。
「…父さん?」
「恭平、すまなかったな。そろそろ私も潮時かもしれない。」
「え…?」
「お前の我侭ではなくて、俺の我侭だったのだろう。お前はよく耐えてきた。」
こんなにも一途に想われていたのに、その恭平には悲しい想いばかりさせてきた。
気付いていたのに、気付かないフリをしていただけだ。
「愛してるよ、恭平。お前だけだ。」
「…父さん。」
二人は再び唇を重ねて、お互いの息が続くまで絶え間なくキスを続けた。
次の日、孝平たち5人を送り出した恭平は寝不足を取り戻すために昼寝をし、午後になってから徒歩で温泉へと出かけた。
そこは銭湯のようなところで、恭平は久しぶりに体の余計な力を抜くことができた。
孝平と竹本が並んで話し合っていても、昨日よりは気にならなかった。
孝平の言ってくれた言葉はとても大きかった。
でも、きっとすぐには無理だろう。竹本さんにも竹本さんの気持ちがあるから。
それでもいい、と恭平には思える程の心の余裕が生まれていた。
嫉妬心を取り払ってくれた孝平の言葉に嘘はないと思うから。
恭平たちがペンションを離れ家に帰る途中、また車酔いを起こした恭平のために高速道路のサービスエリアで休んでいたところへ、明美から電話がかかってきた。
気分の悪いのを隠して電話に出ると、明美の声は対照的に弾んでいた。
『兄さん!今日、帰ってくるのよね?』
「うん、そうだよ。あと…そうだな、2時間くらいかな。」
『オッケー。夕飯は任せといてね。』
「ああ。」
『それとね、昨日清二に電話してみたのよ。そしたら会って話そうってことになって、清二に会ってきたの。』
「どうだった?」
『それがね、どうやら清二のお姉ちゃんが近頃結婚するらしくて。それでドタバタしてたんだって!明美、結婚式に呼ばれることになちゃった!!』
「えーっ。本当に?よかったじゃないか。」
『うん!仲直りできたのも、結婚式に呼ばれたのも、みーんな兄さんのお陰だと思うわ。ありがとう。』
「えっ?それはなんでも言いすぎだよ…明美が頑張ったんだろ。」
恭平は苦笑したが明美は言ってきかなかった。
『兄さん大好きよ!早く帰ってきて!』
「ありがと。」
ベンチに座って話している恭平の横で、孝平が腕時計を見た。
「行くよ、恭平。そろそろ気分もいいだろう。」
「あ、はい。じゃあね、明美。また後で。」
心が軽いと体も足取りも軽くなる。
恭平は楽しそうに笑って、孝平の後を追った。