5万ヒット記念小説>桜舞う季節 P15
服を脱ぎ終わった杉野はペロリと自分の人差し指を舐めて、同じく全裸の良平の上へ戻ってきた。
「実はね、あと20分くらいしたら、保健の先生戻ってきちゃうと思う。」
「…げっ。」
忘れていた。
ここが学校の保健室であるということを。
今まで何故先生がいないのかとかあまり考えていなかった。
「保健の先生って俺の伯父さんでさ、一応心配はないと思うんだけど。見られたら嫌だろ?」
「ぜってーやだっ!」
「だろ。俺もやだもん、肉親に見られんの…。ってことで、あまり時間の余裕はないんだ。」
そう言って、杉野は良平にキスを落とした。
一度触れて良平の反応を伺って、嫌がられていないことを確認してから深く口付ける。
良平にとってはこういう気遣いが、なんだかとても嬉しかった。
「たぶん、いや絶対痛いと思うけど、痛すぎて我慢できない時だけ言って。わかった?」
「う、うん。わかった。」
ところでどこが痛くなるの?
良平がこの疑問を口にすることはなかった。
すぐにまた杉野の唇に奪われてしまったし、何よりその後にすぐ、さっき舐めてた人差し指が、股間の後ろの辺りを弄り始めたから。
探るように指を動かして、一番くすぐったいと感じるところでその指が止まる。
良平は何が起こるのか少しだけ理解した。
「んっ、待っ…っ!」
心の準備も十分にできていないのに、杉野の指の先端が、良平の中にぷくっと飲み込まれた。
足がひくつく。
そんなとこ、自分でも触ったことがない。
「う…あ…っ!」
「まだ大丈夫だって、良平。不安だったら、足を広げて。」
「えっ。あ…。」
杉野に言われるがままに大きく足を開く。
その足の左足の方を手にかけて持ち上げた杉野は、その勢いで指を奥まで差し入れた。
「…っ!!」
良平の身体が強張る。
全身を苛む異物感がなんともいえない。
「良平、キス。」
杉野の声が耳元で聞こえた。
不安感が一気に吹っ飛んで、良平は夢中で杉野の首筋にすがりついた。
安心させるような優しい一言がなければ、泣き出してしまいそうだった。
杉野はすごい。
良平は無我夢中の中で、それだけは確かだろうと思った。
できることならキスだけでもいいかも。
良平の心を溶かすようなキスを与えながら、杉野は指で良平の中を広げた。
きっと痛い。
杉野にも少ないが経験があるから、なんとなくわかる。
できるだけそれを軽減させてあげたかった。
今はまだ自分の我侭に付き合ってくれている程度の気持ちしかないだろう良平に、ひどいことはしたくなかった。
「んっ、はぁ、あ…っ!」
左手で指を動かしながら、右手で良平の胸をほぐした。
初めて感じた性感帯を同時に刺激されて、良平がくすぐったそうに身を捩る。
唇を合わせた隙間から、時折色っぽい嬌声が聞こえた。
ある程度広がったところで指を増やすと、慣れてきたのか良平はすんなりとそれを受け入れた。
与えられるキスに夢中になっているようだ。
躊躇いがちの舌を拾い上げ、誘導しながら絡ませる。
「良平。イイ?」
「…っ!う、んっ。」
熱っぽい吐息を漏らして良平が一生懸命頷く。
たぶん、これは本当だろう。
「じゃあ、そろそろ。」
そう言って杉野が良平の中から指を抜いた。
「…ふ…っ。」
喪失感に良平が小さく呻いた。
杉野は良平の両足を持って大きく左右に開いた。
良平は目を閉じたまま呼吸を整えようと必死になっている。
「痛いの最初だけだから。絶対、今までで一番良くなる、はず。」
杉野は真剣な表情を崩して、良平を安心させるように明るく微笑んだ。
相手に気遣ってのことだろうと、本人である良平ですら感じた。
「…なんなかったら、絶交だからな。」
「いいよ。」
自信満々に微笑む杉野に、良平は一生勝てないような気がする。
少なくとも、こういうことやってる時には。
「…杉野…。」
「え?」
「俺もお前、好きかもしれない。」
その時の杉野の顔は良平にとって忘れられないものとなった。
驚きすぎて何も言えないまましばらく硬直して、やがて、ふっと今までで最高に嬉しそうな笑みを零していた。
数日後。
「で。」
「やっちゃったわけ?!」
興味津々といった風体で質問攻めにしてきていた聡平と瑞樹が、良平のことを木の幹に押し付けて逃がさないようにして、聞いてきた。
頬を赤らめて目を逸らし、肩をすくめた良平は黙ったままだ。
「な!答えろって!最後までやったの?どーなの。」
「付き合うことにしたの?どーなの。」
「…うるせぇなぁ!どっちでもいいじゃん!!」
よくねぇ〜!と叫んで瑞樹と聡平がその場で地団太を踏んだ。
じれったくてイライラするっ。
「ああ…これで良平くんも大人の仲間入りなわけだ。」
感極まったように拳を握って、瑞樹が言う。
「ちぇ…俺ですら、まだやったことないのに。」
悔しそうにぼやいた聡平は、つーんと唇を尖らせている。
その言葉に瑞樹が食いついた。
「えっ、やったことないの?!マジ?」
「あるわけねーじゃんっ。俺、お前らと違って普通の中学生だったんだっつーの。」
聡平が憮然とした表情で言い返した。
ニヤニヤとした表情でそれを見ていた良平を見て、聡平が固まる。
次にそれを見て瑞樹が楽しそうに万歳をした。
「あ!あ!何その勝ち誇ったような顔!!さてはこいつ、最後までやりやがったよ!!」
「むかつくし〜〜〜〜!!」
「ば、ばか、勝手に決めんなよ〜!!」
散った花びらで桜色の絨毯のようになった川辺の木の下で、三人の賑やかな笑い声が響いていた。