◇孝平さんと恭平くんの甘裏な作品


【余裕】 1



恭平はイライラしていた。

朝、いつまでたっても起きない良平を諦めてしまったし、そのことで聡平に八つ当たりをした。
昼、掃除中にうっかりお気に入りの茶碗を割ってしまい、指に怪我をした。
絆創膏を貼るのが面倒でそのままにしていたら、夜になって膿みだした。
見かねた明美が手当てを施したが、それで恭平の苛立ちが静まるわけでもなく。
恭平はそんな余裕のない自分に戸惑い、幾分がっかりして入浴後早々に部屋にこもってしまった。

「恭平は?」
『部屋だよ。』
食器洗いをしている聡平と、その横でニンテンドーDS画面に釘付けの良平が同時に答えた。
問いかけた孝平はそのままの足取りでカバンを放り、ネクタイを緩めた。
「何かあったのか?」
それは例外を除き、彼の体調のことを指している。
双子は顔を見合わせてから、聡平が答えた。
「何も。ちょっと機嫌悪そうだったけど。」
「へえ。」
「父さん、ご飯は。」
「いるよ。でもその前に風呂だな。適当に並べておいてくれると助かる。」
「わかった。俺は先に寝るよ。」
「じゃ俺も。」
「どうぞ。おやすみ。」
孝平は二人にニッコリと笑いかけて、脱衣所のドアを閉めた。

聡平は呆然とその背中を見送る。何かを言う前に良平が、代わりに言った。
「何だ今の笑い?気色悪っ。」
「…機嫌イイみたいね。」
囁くように目配せし、二人はそそくさと寝る準備を進めた。


さて、恭平はというと耳にヘッドホンを当てて目をつむり、無心になろうと努力しているところだった。
流れている曲はクラシック。ボリュームはいつもより少しだけ大きめだ。
怪我をした右手人差し指には絆創膏が二枚貼られている。
やっと意識が集中してきて、荒れた気分が落ち着いてきた時、部屋に孝平が入ってきた。
振り向いた恭平は身を堅くする。
頭から音楽が霧散した。
「と…父さん。おかえり。」
語尾が上擦った。
孝平は何も言わずにニッコリと笑った。
良平が思わず「気色悪っ」と表現した、あの笑顔だ。
しかし恭平はその笑顔に隠された別の意味を感じ取り、アタフタと赤面した。
「お風呂入ったの?」
「うん。いいお湯だった。」
「ご飯は?」
「これから。」
「じゃあ準備を…」
「必要ない。聡平がしてくれたよ。」
孝平はスリッパを脱ぎ捨て、ベッドの上に座った。
そして向かって手招きをする。

恭平はわずかに後退り、床に座ったまま動かなかった。
顔だけではなく、体全体がポッポッと熱を帯びてきていた。
「その前に恭平が、私を必要としてるだろうと思ってね。」
「…。」
孝平は口元を緩ませたまま、ポンポンと膝を叩いた。
ここへ来いと言っている。
「…だって…、週末にならなきゃって言ってたじゃないか。」
「予定を早めたらいけない?」
「……明日の仕事は…」
「あるよ。だけど午後出勤の準備をしてきた。」
それを聞いて恭平は遠慮気味にヘッドホンを外した。優雅なクラシック音楽が遠ざかっていき、静けさが舞い降りる。
孝平の指が上下に揺れて、誘っている。

恭平は立ち上がり、コンポの電源を切ってベッドの脇へ寄った。
孝平の髪からはシャンプーの匂いがしている。パジャマから覗いた力強い肩や腕。年の割に引き締まっている、といつも思う。
孝平は手を伸ばして恭平の体を自分の前に座らせ、後ろから何の準備もない恭平の股間に触った。
恭平は小さく息を潜めたが嫌がる素振りは見せない。孝平の胸に背を預けるようにして、両手でベッドシーツを掴む。
ラインに沿って指を這わせる。形を確かめるかのような動きに、恭平が僅かに腰を浮かせた。
「一人で遊んだりはしてなかったみたいだね。いい子だ。」
「…っ」
歯を食いしばり目を閉じる。
そうしていなければあられもない声を出して泣いてしまいそうだ。
制御が効かないほどムクムクと、現金にもほどがあるよと嘆きたくなるくらい、下半身が痺れていた。
ここ何日か、溜まり続けていたから。
「…元気そうだな。」
「い、っ!」
孝平のいたずらな言葉に、耳が焦らされ喉が引きつった。
恭平のものは孝平の手とパジャマに包まれて、じっとりと湿りながら確実に膨張していく。
それに呼応するように息が上がり、声を抑えるのに必死だった。両手で口を覆ってみる。目の前がチカチカとスパークした。
「う、ぁっ」
「偉いぞ。こんなに敏感になるまで我慢できるなんて、期待以上だ。」
「そんな、ことっ…ぁあ…ぃ言って、また…っ」
「今日は意地悪しないよ。」
「うそだ…!」
そんなことを言って三日前も、射精寸前で悪戯をやめてしまったじゃないか。
一週間前もそうだった。
イキたくても、一人で自慰をしてはならないとの約束を守り、熱を沈めるのにどれほど時間がかかったと……

「ぁあぁッ!!」

限界以上の刺激が来て、恭平は叫んだ。爪が立てられ、少し強く押されたのだ。
小さな刺激でも、今の恭平には大きな波となって押し寄せる。
恭平は目に涙を貯めて顔を伏せ、枕の上に倒れ込んだ。
それを追うように孝平が体を沿わせる。自然に腰が、揺れてしまう。

「あっ…あ…ッ」

不規則に声が漏れ出す。
孝平はその様子を楽しむように指を絡ませる。強く、弱く、押し出すように。
「イヤッ…あっ…」
「嘘じゃないことを証明しようか。ほら、」
「あ…んっ…、あっぁあぁーッ!!」
枕に顔を押し付け、必死に悲鳴を押し殺す。
恭平の身体は意志から離脱し、激しく痙攣した。
血流が下半身の中心に向かって集中する。
孝平の指がパジャマと下着を剥ぎ取り、直接握った。そのまま上下にしごかれる。
ぬめりを持った恭平の体液が満遍なく、滑らかに動きながら塗られていく。
はちきれんばかりに膨張した恭平のものはあっけなくその欲望を吐き出した。
惜しげもなく若いエキスが溢れ出す。
「んっ…くふっ…あっ…」
ビクビクと痙攣しながらイき続ける。孝平もそれを煽るように、恭平の性器を弄り続ける。
絶頂が過ぎ去る前に、恭平は再び頂きが近いことを悟った。
「い…やだ…!やめて…もまな…っあぁっ…」
「やめてじゃないだろう。こんなに喜んで。」
「ぁうっン…ッ」

指の動きに合わせて恭平が鳴き、腰を突き出した。まるで誘っているような仕草で、孝平を引き寄せる。
孝平はその妖艶な動きに目を奪われ、とっさに息を止めた。
恭平の下半身は汗と愛液で濡れそぼり、股の下へと雫を滴らせている。
孝平はその一粒を二つの指で掬い取り、恭平の身体のうち二番目に敏感な部分へ這わせた。
不意打ちに胸を弄られ、恭平が声をなくす。
それと同時に頭が真っ白になり、まるでピンクの突起への刺激がスイッチになったかの如きタイミングで二度目の射精を余儀なくされた。
「あ…あ…、〜〜〜ッ」
最後の方は悲鳴にすらならなかった。
昇天した頭では何も考えられない。
孝平が意地悪く笑っている。
ひとしきり満たされるまで何度かにわたって放出した後、恭平はシーツの上に倒れ込んだ。

心臓がドクドクしている。
息を切らせていると、孝平の腕が顎を取った。
生ぬるい何かで濡れている。
恭平は目を閉じて孝平の口付けを受け入れた。
探るような、求めるキス。巧みに誘導されて舌を絡める。熱が伝わり、唾液が零れた。
仰向けに寝かされ、パジャマを全て剥がされる。
全裸で両足を左右に広げると、我を忘れて喘いでいた恭平にも羞恥が蘇ってきた。
必死に足を閉じようともがくが、左足を押さえられると自分では逃げられなくなる。こんな時でも右足の自由はうまくコントロールできないのだ。


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