求める心 P9



どれくらい経っただろう。
恭平は時間の感覚がなくなったような気がした。

孝平の意のままに妖艶に腰をくねらせ、微弱な刺激にも反応する。
熱い吐息が部屋に溢れた。

このまま夢が醒めなければいい。

心からそう思った。


ピンポーン。

朝の八時。
いつものように竹本が孝平を迎えにきた。

しかし、返事がない。
もう一度チャイムを鳴らすが、いつも顔を出してくれる恭平も、肝心の孝平もまだ起きていないようだった。
孝平はともかく、恭平も起きていないなんて珍しい。
竹本は仕方なく携帯電話を取り出して、孝平の携帯へと電話をかけた。

何度か着信音が鳴っていたが、出ない。
諦めて切ってしまおうとした時、受話器があがった。

「あ、もしもし。社長、お目覚めですか。」
早口で問い掛ける。
受話器からは疲れたような孝平の声が聞こえてきた。

『もしもし、竹本か。』
「…大丈夫ですか、だいぶお疲れのようですが。」
『ああ…徹夜した。』
「…は…?」
『いやなんでもない。シャワーを浴びる時間をくれ。三十分程したらまた来てくれたら嬉しいな。』
「…はい。かしこまりました。」
竹本は電話を切って、車に戻った。


一方、電話を切った孝平はというと。

自分の体の上に恭平を抱き抱え、閉じた携帯電話を枕元に置いた。
孝平の上に乗った恭平は息を切らし、全身汗だくでぐったりとしていた。
またがるようにして足を広げ、中心部は孝平と繋がったままである。ついさっき、竹本の押したチャイムと同時に最後の射精を終えたばかりであった。

「恭平。」
「う…ん…」

呼ばれるが呻くだけ。
一晩中で何年分も乱れ興奮した身体は、さっぱり言うことをきかない。
声も掠れ始めていた。

「仕事へ行く。抜いて。」
「んん…っ。」
孝平が少し動いただけで、恭平は敏感に身体を捩る。
繋がったままの場所が、擦れて新たな刺激を生みそうだ。

「恭平、抜いてごらん。」
「や、いや。むり。」
恭平は駄々をこねるように首を横に振って、おでこを孝平の胸に押し付けた。
一向に動く気配がない。
孝平が溜め息をついた。
「私ももう少しこのままでいたいんだが…致し方ないな。抜くぞ。」

孝平は反転して恭平をベッドの下側に組み敷いた。
動く度に内壁がこすられて恭平が鼻にかかった熱い息を吐いた。

「ぁ、はぁ、ぁぁ…ッ。」

孝平がゆっくりと恭平の中から出て行く。
恭平は大きな喪失感にみまわれた。

「シャワーを浴びてくるよ。」
孝平は恭平の唇にそっと口付けて、部屋を出た。
眠りの境目辺りで朦朧としている恭平が呻く。

一晩中犯され続けた。こんなこと初めて…。
何度イっても足りなくて、何度突かれてももう一度欲しいと思った。
こんな気持ちになったことが不思議。

恭平は眠気の襲ってくる頭を振って、身を起こした。
全身がズキズキと軋む。

でも、朝食を作ってあげなくちゃ。
そう思えば思うほど、目の前が霞んだ。
まだ夢の中にいるみたいな感触。

恭平は力なくベッドに身を沈めて、目を閉じた。
遠くの方から孝平の浴びるシャワーの音が聞こえてくる。

父さんの朝食…
作らなきゃ……

意識が薄れていくことに、恭平は逆らえなかった。
やがて恭平は、ふわふわとした気分で、ゆっくりと深い眠りに入っていった。


シャワーから出て来た孝平は、案の定眠りについている恭平を見て苦笑した。
いくらなんでもちょっとやりすぎたかな。

孝平は自分のバスタオルを手放し、新しいタオルで手早くその身体を拭いてやった。
激しい情事の跡が、身体の至る所に紅い花をつけている。
孝平はそれを見て一人満足した。

恭平を部屋へ運んでベッドへ寝かせ、染みとしわのの残るシーツを洗濯機の中へ入れた。
後は目覚めた時に恭平がなんとかしてくれるであろう。

全身を襲う疲労感と睡眠欲は、今までで一番ひどかった。
半端ない。

しかしそれに匹敵するくらい、孝平の心には安堵感があった。
すごく満たされた感じがする。

久しぶりにいい仕事ができそうだ。
孝平は荷物を整えて部屋の電気を消し、いつもの日常へと戻っていった。


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