初雪の降る日 P9
「は…。はぁ…。」
良平が声を抑えて速い呼吸を繰り返す。
杉野は良平の精をすべて飲み干し、最後の最後まで吸ってから顔を上げた。
いつもの調子でペロリと唇を舐めて、良平を見る。
顔を抑えてぐったりとしている良平に近付いて、その手を取った。
良平は目をそらしたが、睫毛に涙が滲んで杉野にはわかってしまった。
「大丈夫?そんなによかった?」
杉野は握った手を優しく包んで、涙を拭くように瞼にキスを落とした。
良平が嫌がりもせずに目を瞑ったので、目の形に添って舐めてやった。
「杉野…。」
「ん。」
涙の滲んだ目を開けて、良平が杉野を見た。
優しい顔。
外では人の足音が減り始め、しかし未だに雪が降り続いているのが窓の隙間から見える。
こんな日に、家にいる兄弟はどうしているのだろうか。
明美の奴はあんまり記憶がないみたいだから、きっと普段通りの生活をしているだろう。
雪の降ったことを喜んでいるかもしれない。
聡平はきっと机の上の写真を見ている。
母さんとガキだった俺たちと写っている最後の写真。
そして兄貴は。
きっと、いつもみたいに無理して笑ってる。
出張だとか言っていつもいない父親にわざわざ電話をかけて、こっちは問題ないよとか言ってるに違いない。
「杉野。」
良平はもう一度だけ彼の名前を呼び、胸倉を掴んで引き寄せて、唇を重ねた。
こちらから舌を入れてやると喜んで応えてくる。
そのまま先導を杉野に任せて、良平は杉野のズボンに手をかけた。
今度はキスに気を取られないように、固く目を瞑って手早くベルトを外す。
杉野が良平のやりやすいように近付いてきて、何度も方向を変えて良平にキスの雨を降らせた。
ベルトを外してズボンをおろし、トランクスに手をかけたところで杉野がキスをやめた。
「あ、はぁ…っ。」
良平の口から甘い吐息が漏れる。
「良平、立って。」
「ん…。」
気だるい身体をなんとか起こして立ち上がると、杉野は良平の背を壁につけた。
ひんやりとして冷たい。
「い、一回だけだぞ。」
「わかってる。」
良平を安心させるように杉野が笑った。
その笑顔に全てを委ね、良平は彼のしっかりとした背に手を回した。
杉野も良平の細くてそれでいて筋肉質な身体を抱き寄せた。
「あ…!はぁ…ッ!!」
良平の中に杉野のものが侵入してくる。
指で慣らされたとはいえ、大きさや質量感がまるで違う。
痛みのあまり仰け反らせた良平の喉に唇をあてがいながら、杉野は更に腰を押し進めた。
良平は声を出すまいと唇をかみ締めた。
杉野は半分まで挿入したところで一度止まり、引き抜いて、再び一気に大きく突いた。
「あッ!」
衝撃で良平の背の壁が音を立てた。
「んく……っ!!」
「立って入れるとちょっと違うかも。もうちょっと広めがいいなぁ。」
杉野は独り言を述べると、良平の片足を手に取った。
ずぼんから足を抜き、上に持ち上げて壁に押し付けた。
「いて!」
「いやいや痛いのはこれから。」
良平にとっては深刻なことを、全然深刻に聞こえない言い方で言って、杉野は再び侵入を開始した。
良平の腰が浮き、堪らず声が漏れる。
「ふあぁ…っ。」
慌てて杉野の胸に顔を押し付けて耐える良平。
杉野はそれでも遠慮なしに奥へと進んだ。
二人の肌には、冬だと言うのに汗が滲んでいる。
全て入りきると杉野は左右に腰を振り始める。
良平がビクンビクンと身体を震わせて反応した。
「ああ!ぁぁぁあ!!」
「イイのはわかるけど、今日はしーずかにってば。」
「んぃ…!あ…あ…。くふっ!」
杉野は良平の口を自分の口で塞ぎ、いつもなら時間をかけて攻め倒すところを性急にことを進めることにした。
その分揺さぶりも速くなった。
良平の激しい嬌声は全て杉野の中に消える。
地面についていた足までもが浮き上がるほどに奥を何度も突かれて、良平の頭はショート寸前だった。
少しも外さずに前立腺を突いてくる。
すでに射精してしまった良平のものは再び元気を取り戻し、杉野の刺激に対して歓喜に震えた。
「ン…!うぅん…っんんんんんん……!!」
良平の穴が快感に耐えかね思い切り締まる。
杉野は一層激しく腰を震わせて、絶頂へ登りつめた。
もちろん、良平も一緒だった。
「良平。」
帰り道。
お酒のたっぷり入った寝不足の状態で、あんなトコであんなコトをやったためにぐったりとしていた良平に、杉野が語りかけた。
「なんだよ…。腰いてぇよ、お前の所為だよ。」
「ごめんって…。俺も酔ってたんだな。」
「あんなに飲んで酔わないわけねーだろが…。」
良平は呆れたように杉野を見た。
彼はふっと笑って良平の頭の上に光る雪を掃ってやった。
「…なんだよ。」
「良平さ、泣きたい時はさ、泣いてもいいんだよ。」
「え?」
良平が不思議そうに眉を寄せた。
「泣く?俺が?…馬鹿じゃねぇの。」
ぱっと視線をそらして、良平が駅への道を急ごうとしたのをつかまえて、杉野は良平を強く抱きしめた。
「おい!放…」
「弱虫だなとか思わないから。俺だけは。」
「…はいはい。」
俯いた良平の表情は、どこか嬉しそうに見えた。