双子ですから P10



「じゃ、次は俺ねー。」
祐也がポケットから小さな箱を出す。
「これは小さな写真たて。日本の写真を入れて持ってったらいいかと思って。」
そう言って聡平に手渡す。
受け取った聡平はろうそくに近付いてテープを外し、包装紙を取って中を開けた。
薄い縁取りの四角い写真たて。
「おー!すごい!なんか悪いな〜。ありがとう!」
聡平の笑顔に、全員がしんみりと拍手をした。

そこぞとばかりに瑞樹が喋りだす。
「ちょっとちょっと、何だこの落ち着いた雰囲気は?じゃ、次俺ねー。」
聡平が嫌な予感を察して一歩退いた。

「瑞樹、なんか袋がでかいよ。」
瑞樹の持った紙袋は、確かにトーコや祐也の物と比べると明らかに大きくて重そうだった。
にやりと笑って、瑞樹が聡平を見る。
「いや〜〜〜日本を忘れちゃうと困ると思ってさ。」
「あのね、一ヶ月なんだけど。」
「おう。だから半月分。」

…?

聡平が眉間に皺を寄せて、露骨に不信感を表した。
代わって周りの五人が身を乗り出す。

「梅干しぃ〜〜〜〜〜♪半月分ん〜〜〜〜〜〜☆」

瑞樹が意気揚々と聡平に紙袋を差し出した。
聡平が受け取るのを躊躇すると、横から良平と杉野がニヤニヤと脇をつついた。
受け取らねばならないようだ。
トーコと祐也は予想外のプレゼント(?)に腹を抱えて笑いこけている。

「瑞樹それ嫌がらせだよ〜〜〜!!」
「やべー!」

聡平が受け取った物を覗き込んで、梅干しの匂いにうっと呻いた。
マジで冗談ではなく梅干しらしい。

「困ったな〜。発想が一緒っていうのがなぁ。でもま、いっか。」
杉野が持っていた紙袋。
これもデパ地下で何かを大量に買ったような気配がする。

「先輩…ギャグはいりませんよ。」
「いやいや、本気だって。気持ちは。」
「…なんですか。」
「味噌汁の元。朝食用三十日分。」
「ギャグですね!!!」

「まぁまぁそう言わずに。」

杉野はニコニコと笑って、味噌汁朝食用三十日分を聡平の腕の中に押し付けた。
聡平がよけきれずにそれを受け取ってしまう。
「ちょ…あんたら、こんなの持って行けないって!」
「持っていって笑われてください。」
瑞樹と杉野が腰を90度に折って頭を下げた。
その様子に祐也がまた噴き出す。

「良平は?」
トーコが良平を見て言う。
「あるよ。」
その会話を聞いて聡平が振り向いた。
瑞樹と杉野、それに祐也も笑いを止めてそちらを見る。

「…ギャグはもういいからね。」
聡平が警戒して言う。
何も言わずに良平はポケットを探って、細長い袋を取り出した。
ズボンのポケットに入っていたためか、袋に皺が無数に入っている。

「これ、やる。」
言って無遠慮に差し出す。
聡平は持っていた梅干しやら味噌汁やらを地面に置いて、それを受け取った。
他の4人が見守る中その袋を開けると、中から携帯電話のストラップが出てきた。
小さなペンギンがSと書かれた珠を持っている。

聡平の、S。

「何がいいかわかんなくて。佐久間でも聡平でもお前はSだろ。だからそれにした。ペンギンは、なんとなくだ。」

聡平が紐の部分を持って、目の高さまでそれを持ち上げた。
他のみんなもそれを見上げる。
下の方からろうそくの光が当たって、半透明の珠が透けて見えた。
「かわいー。」
トーコが笑って良平を見た。
良平が照れて目を逸らす。

そのペンギンを見つめていた聡平が、ふっと噴き出した。
「?」
良平から聡平へ、全員の視線が写る。
聡平は自分の鞄から、同じ大きさの袋を取り出して、良平に差し出した。
「俺もお前に、やるよ、それ。」
「え?」
良平が受け取った袋と聡平の顔を交互に見た。
苦笑したまま聡平が言う。

「きっと同じ店だよ。」

袋を開けると、同じペンギンが出てきた。
このペンギンの持っている文字は、R。

良平の、R。

「…。」
「……。」
全員沈黙。

「………えーっ?!」

たまらずトーコが驚嘆の声を上げた。
良平の持っているペンギンも、聡平の持っているペンギンも、持っている珠こそ違えど、同じペンギン。
「お前にあげようと思って買ってきたんだ。」
「すごーいすごーい!話し合いでもしたの?」
「するわけないじゃん。」
「えー!すごいすごいー!さすが双子!」
トーコが興奮を隠し切れずにはしゃいだ。
他のメンツはぽかんとしている。

良平はRのペンギンがろうそくにあたって反射するのをじっと眺めていたが、ふと思いついたように顔を上げた。
「聡平。」
「ん?」
トーコと喋っていた聡平が良平の方を振り向いた。
一歩近付いて、良平は聡平のペンギンをひったくった。
「あっ。何すん…」
「交換だ。Sは俺が持つから、お前はRを持っていけ。そのほうがいい。」

聡平の返事も待たず、良平は自分の携帯電話にSのペンギンを取り付けた。
「ほら。」
新しくぶらさがったペンギンは、初めから付いていたドラえもんの横で光り輝く。
良平の横にいた杉野が、聡平の携帯電話を差し出した。
聡平はそれを受け取って、Rの珠を持ったペンギンをぶら下げた。

「これでいいよなっ。」
良平の言葉に、聡平は照れながらも大きく頷いた。


++次
++
+表紙+