双子ですから P9
「おい、良平?!」
もう一度叫んで、聡平は堤防を駆け降りた。
良平ともう一人がいる明かりの方に近付き、良平の顔を確認する。
光っている明かりはろうそくの火だった。
「お前!人の携帯勝手に……」
ババババババンッパンパーンッッ!!
突然の爆音。
良平と聡平の間から、一斉に火の手が上がった。
よく見ると、花火。
地面に一列に仕掛けられていた。
「ぶははははははは!!見た?今の顔見た?!」
「聡平くん驚きすぎー!」
驚いてそのまま後ろに尻餅をついた聡平を指差して、良平と、一緒にろうそくのそばにいたトーコが弾けたように笑い出した。
それだけじゃない。
脇の草むらから腹を抱えて笑う瑞樹と祐也も見えた。
「な、な…。」
聡平は目を丸く見開いたまま、全員を交互に見つめる。
目に涙をためながら、瑞樹と祐也が聡平に近付いていく。
二人が笑いながら交互に肩を叩くと、聡平は恥ずかしそうに口を結んだ。
「おーい、杉野!写真撮れたか〜?」
良平が振り向かずに背後に向かって言う。
彼の後ろから杉野拓巳が現れて、じゃーん☆と言いながら携帯電話を高く掲げた。
聡平を見ながら口元を押さえて笑い、画面を良平に見せる。
しまった…。まさかこの人も加担していたなんて。
「うははははははは!!すげー!激写だっ。」
「どれどれどれどれ?!」
聡平以外の全員が携帯のところまで走り、交互に見てはチラチラと聡平を見た。
「あー、珍しいね、この顔は。」
「聡平くんじゃないね!」
「恥ずかしいやこの顔は。彼女に見せたらどうなるかな♪」
「…っ!てめぇら!人の顔見て笑うんじゃねぇよ!!」
聡平も堪らず駆け出して、五人の真ん中に割って入る。
杉野から携帯を奪って画面を見、顔をしかめて言った。
「…待てよ。これいつもの良平じゃん。」
一瞬の間。
…。
ぎゃははははははははは!!
「確かに!!どーりで珍しいのに見慣れた表情だと思った。」
「…お゛い゛。」
「なんだ、同じ顔だとそこが面白味ねぇな。」
「面白味なくてすいませんでしたねぇ。」
「…いやオイ、待てよ。」
「聡平、いつも隣に良平がいてよかったな。」
「うん、そうみたい。」
固まっている良平を無視して会話を進める四人。
杉野は殺気を感じてかそっぽを向いたまま苦笑いしている。
どうやら写真を撮った後にすぐ現れなかったのは、ちょっと思い当たる節があったからのようだ。
ついに良平が爆発した。
「だーかーらーっ!お前らこの写真見て珍しいだの恥ずかしいだの言わなかったか?!」
「言ったっけ?」
「覚えてませーん♪」
「……!!」
怒りにひくつく良平を無視して、トーコが手持ちの花火を取り出した。
「花火やろー☆本日の主役の聡平くんには一番に選ばせてあげる!」
「どうも。」
聡平が適当に一本引き抜く。
それから次々に全員が花火を引き抜いた。
明かりはろうそくの火だけ。
一番に聡平が火をつけて、その後はジャンケンをして順番を決めた。
杉野が二本花火を引き抜いて、拗ねたままの良平に差し出す。
「機嫌直せよ。」
「……そういうお前の顔も笑ってるぞ。」
「あれ?」
杉野が顎を擦って顔を元に戻そうとしたが、やはり口元はにやけている。
「いいじゃん。同じ顔なんだからさ。」
「同じ顔ってところじゃな…」
「いーからいーから。さ、やんないと花火なくなっちゃうよ。さっき大量に使っちゃったからね。」
杉野の笑顔が、周りの花火の光でちらちらと赤くなって見える。
良平は仕方なく花火を受け取って、ろうそくに近づいた。
「冬に花火ってあんまないよねー。」
「そうだな。息がこんなに白いのに。よく湿気てなかったな。」
「そだね。ラッキーだったね。」
六人でやると、大きいサイズの花火セットでも三十分もしないうちに使い切ってしまう。
火花で戦闘を始めた良平と瑞樹が一回に二本も三本も使ってしまったので、さらになくなるペースは早くなった。
最後に線香花火を取り出して、トーコが言った。
「えーとここで、聡平くんにあたし達からささやかながらのプレゼントがあります。」
「わーい!嬉しいなー!」
瑞樹と祐也がさくらのフリをして拍手と歓声をあげた。
「まず、あたしからはこれです!」
ろうそくに照らされてトーコが取り出したのは、黒いニット帽。
それを聡平に無理やり被せる。
「聡平くんは帽子が似合うと思うので、イギリスでもこれで寒さをしのいでくださーい。」
おおー!パチパチ。
聡平が恥ずかしそうに頭をかいた。
「ありがとう。」