▼10万hits記念関連企画
└2位:杉×良で「無断外泊」


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「良平。…良平ってば。起きろよ。」
良平は揺り起こされて目を開けた。
誠の肩に頭を預けて眠りこけていたようだ。
こちら側のホームには人っ子一人おらず、反対側のホームにも数えるほどの人影しか見えなかった。
「ん…あれ…?」
「俺んち来る?こんなところで寝てたら風邪引くよ。」
「うーん…そうしよう。眠くてたまんない。」
「酒に弱いなら弱いって言えよな。」
「弱いんじゃない。強くないだけだっ!」
「ハイハイ。」
良平は眠たそうに目をこすり、誠について歩いた。

彼の家は駅から大学を越えた向こう側にあるアパートの一室だった。
良平は部屋に入るなり、バタリッと布団の上に倒れこんだ。
「ん〜〜。この布団、気持ちいい〜。」
「こら!良平、そこは俺が…」
「誠の匂いがする。」
良平は枕に顔を沈めて、やがて静かに寝息を立て始めた。
その体に掛け布団をかけてやり、誠はしばらくその寝顔を見つめていた。


良平は雨の音で目を覚ました。
しゃっきりとしない頭を振って、窓際へと這っていく。
カーテンの隙間から外を見て、大きな欠伸を一つ。
外は目に見える程度の雨粒が途切れることなく地面へと降り注いでいた。

良平は時間を知りたいと思ったが、不幸なことにこの部屋に時計と呼べる代物はなかった。
よく見ると隣の地べたで眠る誠の体の向こう側に、良平の鞄があった。
それに手を伸ばす。

すると誠が目を開けた。
「ぉわぁ!!」
「えっ?」
良平は驚いた誠に見事に吹っ飛ばされ、床にすっころんだ。
ドシンッと派手な音がして部屋が揺れる。

「あわわ。良平っごめん!」
「いってぇ〜〜〜っ。」
腰を押さえて痛がる良平に、誠が手を差し伸べた。
「わりぃ、めっちゃ近くて驚いた…。」
「誰も襲いやしねーよっ。それより鞄取って。」

良平は誠から鞄を受け取って、携帯電話で時間を確かめた。
朝の7時。一度家に帰れるかな。

「誠、俺帰るわ。」
「えっ?飯は?」
「うち帰って食う。」
「電車は?」
「原付でいいよ。雨降ってるけどどうにかなるだろ。」
「ふーん。」
誠は窓の外を見た。
なるほど、確かに雨が降っている。

良平は立ち上がって一度大きく伸び上がり、それから鞄を肩にかけた。
「悪かったな、急に泊めてもらっちゃって。」
「いいよそんなことは。また来いよ。」
「そーはいくか。二度も三度もやったら怒られちまう。」
「は?誰に?」
きょとんとした誠の顔を横目で見て、良平はニヤリと笑った。
答えを言わずに玄関の方へと歩いていく。
「おい、良平、待てよ!」
「何?」
「俺、お前が好きだ。」

「……はぁ?」

良平は振り向いた。
突然素っ頓狂なことを言い出したベース担当のバンド仲間のことをまじまじと見つめる。
彼は冗談を言っている風ではなかったが。
良平はふふっと噴き出して笑った。

「ばーかっ!寝言も大概にしろよ。じゃーなっ。」
「りょう…っ」

誠に何かを言われる前に、良平は玄関を飛び出した。
告白なんて、聞きたくない。
お前とはこれからもずっと、友達でいたいんだよ。


++3へ続く


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