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└6:単純なんだね…
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6:単純なんだね… / 佐久間恭平
梅雨に入って雨が降り続き、天気も空気も一日中どんよりしていた数年前の五月。
いつだったか忘れたけど、月曜日だった。
聡平が、良平の腕を肩に担いで引きずりながら帰宅した。
二人とも雨にぐっしょり濡れていて、どちらのものかわからないくらい、服や鞄に真っ赤な血が滲んで流れていた。
雨の滴が紅かった。
眩暈がして、言葉が出て来なくて、呆然とした。
聡平がしんどそうに顔を上げて、
「おも…。つーか兄貴、突っ立ってないでこいつ持つの手伝って。」
といつもの調子で言った。
…良平の血だった。
明るい部屋に引きずり込むと、良平は痛みに顔を歪めて目を開けた。
といっても顔中青タンだらけで片方の目は開かない。
口の中が切れているのか、痛そうに指で血を拭ってた。
また、喧嘩したの?あれほどやめろって言ってるのに…
言いたいことが出て来なくて、やっとのことで「ばか」って搾り出した。
そしたら良平が、ろれつの回らない舌で反論してきた。
「だって、売られた喧嘩は買わねぇと、本物の馬鹿だろ」
って。
俺が溜息つきかけたら、もう一言。
「大事なもん守って何が悪いんだよ…」
大人になりたくて足掻いて足掻いて、でもまだなりきれなかった、中学生の良平。
まっすぐで、余計なこと考えられなくて、思いのままに動いていた、あの頃の良平。
大事な何かを守るために必死だった。