帰ってきた! UFOとぼくの危機
前作/登場人物


〈これまでのおはなし〉
 調理師専門学校へ通うごく平凡な学生・広田コウジ19歳は突如現れた謎の宇宙人からの凌辱を受けアヌスの快楽に目覚めてしまう。汚れきった身体を優しく抱いてくれたヌベメ星人対策本部作戦総司令官である白鳥十字郎のあまりに輝く素敵さに愛人にしてくださいと身を委ねるコウジ。しかし白鳥の地球を救うという理念は強く、コウジの願いは叶えられないのであった……。

「ふざけるな!」
「私がふざけていたことなど一度でもあろうか」
 なにもかもだ! なにもかも!
 今、目前に身の丈三メートルはあろうかという巨大な触手生物も! そしてセーラー服を着せられているこの俺も!
 突然得体の知れない宇宙人らしい謎の男が連れた謎のゼリーに謎の淫行を受けたあの日の写真を盾に白鳥に呼び出された挙句がこの有様だ。写真の中の俺は全裸大開脚で、こんなものが世間に露見した日には俺の性癖が疑われること間違いなしという酷いものだった。
 荒淫の果てに訳も分からず無理矢理作られた右手のチョキと笑顔の白鳥の写真などいわゆるところのアへ顔ダブルピース状態で、俺の心になにもピースなどないにも関わらずピースなバイブスを感じさせる変態性をありありとあらわしていた。
「今回だけだからなっ!」
 膝上丈のスカートから触手の発する波動だろうか、風がビュンビュン吹き込んできて心許ない。左手でスカートが捲れ上がらないよう抑えつつ、右手に持つことを強いられたファンシーなステッキを握っている。このステッキにどんな力があるのか白鳥に問うと、「光る」と答えられた。おもちゃ屋で買ってきたのだそうだ。セーラー服におもちゃの変身ステッキ、こんなところ知り合いに見られたら身の破滅だ。
「お話はそこまでにしてもらおうか」
 声の主は先日謎のゼリーを連れていたなんか残念な感じのするイケメンだ。白鳥が言うにはヌベメ星人側の幹部、カワカミというらしい。妙に親しみやすい名前だ。見た目も日本人、名前も日本人、ならもうほんとは日本人なんじゃねーの、と思うが白鳥と会話が通じるはずもなく、カワカミもゆんゆんしているのでよく分からない。
「残念だよ広田くん。君がそんな男のもとについてしまうとは」
「何故俺の名を……!」
「ふふふ……広田コウジ、十九歳。魚を三枚に下ろせる……すべて遺伝子情報に書いてあることだ」
「なんだと……!」
 遺伝子情報ってつまり精子なわけだけど、精子だけでそこまで特定されるのか。恐ろしいことだ。いやいや、ていうか遺伝子に名前なんか書いてあるわけがねぇ。電波に染まるな! 危ういところだった。
 となると、カワカミが俺の情報を知っている理由が分からなくなるが……まさかストーク行為をされていたのだろうか。有り得る。俺の周りの電波濃度が異常に高まっている今なら奇行のみられるイケメンに凡俗の俺がストークされることも不思議なく受け入れられる。いや、受け入れてたまるか!
「本当に残念だ。君なら私のもとで力を発揮できると思ったのだが……行け! 触手よ!」
 カワカミが指示を出すと触手がぬめりを帯びながら飛びかかってきた。待て。俺はセーラー服を着て変身ステッキなど持っているが着替えは白鳥の車の中でさせられたしなにか不思議な力を持っているという訳ではないのだ。つまり餌食。完全に被害に遭うこと間違いなしだ。思わず両手を顔の前にかざす。なんの意味もないだろうけどな!
「待ちたまえ!」
 白鳥が声を上げる。飛びかかってきた触手は何故か止まった。待つんだ。意外や意外。というか待ったらダメだろう。いやいや、待ってくれたおかげで被害に遭わずに済んだのだ。今のうちに逃げよう。と、思った矢先白鳥は指を鳴らす。白衣を着た集団が俺を取り囲み、さっきまではなかったはずの人一人入れそうなサイズの更衣室に押し込められた。
「止めろっ! なんであんたら白鳥に従ってんだ!」
 こんなわけの分からん男の指示に従いセーラー服を着せられた俺をあつらえた更衣室へ誘導するなど社会人の仕事としてどうなんだ。福利厚生はあるのか。
「私が天才だからだよ!」
 狭い更衣室内に白鳥も押し入ってくる。天才だからという理由で変態は許されるのか。力一杯否を唱えたい。
「あの触手は催淫液を分泌して処女をもその気にさせる……君は処女じゃないからすぐに屈服してしまうだろう」
「人を変態みたいに言うな!」
「そこで秘密兵器を授ける」
「な……、あっ!」
 白鳥の手がスカートをたくし上げ剥き出しの太ももを這い回る。
「止めろばか!」
「そんなことを言っていいのかな?」
「あっ…、やめ、……なにしてんだよ、あっ、くっ、うぅっ……!」
「これで安心だ……、さあ! 行きたまえ!」
 背中を押され無理矢理更衣室を追い出される。縺れた足に引っかかって無様に地面に手をついた。ところをすぐさま触手に巻きつかれた。ダメだもう。
 両手足を絡め取られ、素肌に着せられたセーラー服の上を尖端が男性生殖器状の形状をした触手が這い回る。服の上から乳首めがけて突き上げ擦り付ける触手はカウパーを分泌するがごとく催淫液とやらを吐き出し俺の胸元を湿らせていく。尖端は硬度までちんぽと同じで俺は女装しながらちんぽに突き回されるという疑似体験をさせられている。恥辱であるはずなのに触手の分泌する催淫液とやらのせいなのか液体が張り付く肌はジンと熱い疼きを覚え始めていた。
「あ、あっ、……んんっ、くぅ」
「感じている場合か広田くん!」
 白鳥から檄が飛ぶ。そんなこと言ったって無理に決まってんだろ。身体中に巻きついた触手はぬめりを帯びて振り払おうにも柔軟に俺を締め付けてくる。もがけばもがくほど触手と身体は一体感を増し、体温と同じになった軟体に喚起される性感に身体はどんどん大きくなっていくような気さえする。
 触手の先に太ももを撫で上げられるとゾクゾクと近い場所に血が集まっていく。無理矢理M字に開かされた脚の間に触手が絡みつく。
「あっ! やめっ……!」
 熱を持つそこに細い触手が絡み、浮き出た血管を平らにしようと擦過する。小さな女性用のパンツは触手を阻むのになんの役にも立たなかった。淫液の滲む先端を舐めるように別の触手が擦りつく。小さな電流が流れたように身体は無自覚に跳ねた。それに気付いてか触手はきつい力で竿を上下に擦りながらも尖端は優しく弄り続けた。快感に跳ねる身体を押さえつけ、セーラー服の内側に潜りこんだ触手は直接乳首を慰め始める。閉じられない口から零れた唾液を掬うように触手は顎を拭い、唇に押し入ってくる。
「んんっ! んっ、んっ……!」
 頬の内側を擦り口蓋を撫でる。触手は舌では有り得ない動きをして口内の性感を煽り立てていく。溢れる唾液を零しながら、触手が分泌する催淫液を飲まされる。ダメだろ、こんなもん飲んだら。分かっているのに喉は勝手に嚥下する。
「んあぁっ……!」
 扱き上げられた陰茎の先が精を放とうと口を震わせる。そこを目掛けて細い触手が入り込んでくる。口内の触手を吐き出し本能からの悲鳴が漏れた。痛みは触手がまとうぬめりに塗り替えられて、尿道をズリズリと擦られると身体は行き過ぎた快楽のために痙攣した。外と内から陰茎を擦られ射精欲は限界を超えているが、尿道を塞がれているため放出は叶わない。
「広田くん! ステッキだ!」
 朦朧とした意識に白鳥の声が響く。あのステッキでこの状況を打開できるのか。俺は射精できるのか。触手に取り上げられたステッキのこれ見よがしなスイッチに指を伸ばす。指先に掠りながらも届かないステッキのグリップ部分にあるスイッチに縋るように腕を伸ばす。
『ピラリラリラリーン♪ シャラシャラシャラン……♪』
 スイッチを押し作動したステッキは高い音を発しピカピカと光った。それだけだった。
「単三電池一個で動くんだ!」
 白鳥は言う。だからなんだよ。
「魔女っ娘にはステッキがつきものだよね!」
 だからなんだよ! 魔女っ娘っていうかただの女子高生コスプレだろセーラー服は!
 思い切り白鳥を睨みつけたが奴はどこ吹く風、まったく気にしてないようにパフォーマンスじみた仕草で肩をすくめただけだ。おまえは俺の味方じゃないのか。敵なのか。ある意味敵だろ。俺に対する仕打ちが酷すぎる。
 触手は白鳥に意識を向けた俺を咎めるように性感帯への責めを酷くする。尿道を責めていた触手が深くまで入り込み、吸引しながら抜け出ていく。
「んあっ、あああっ!」
 溜め込んだ精を無理矢理吸い出され強制的な絶頂を迎えさせられる。一瞬目の前が真っ白になった。身体は経験したことがないほど痙攣している。開いた喉に更に催淫液が吐き出された。ビクビクと震えながら吐き出されるそれは口内で射精されるのと同じ苦しさをもたらした。飲みきれなかった液体が口から零れ首筋を伝い落ちた。
 身体は快楽に疲労し脱力している。身体を支える触手に身を預けてしまう。触手の責めは止まることがない。俺の精を吸いきった触手はまたゆるく中を擦りあげ、また俺の欲望を溜めようと卑猥に動く。ピクンピクンと筋肉は不随意に引き攣っている。
「フハハッ! 悪いな、白鳥。広田くんの身体は我らの触手の苗床にさせてもらうぞ」
 カワカミが腕を振り上げるのを目の端で確認した。俺はもうどうでもよくなった。触手に頬を撫でられるのすら心地よく、陰嚢を揉みアナルへ伝っていく触手の動きに性感を煽られ陰茎に血を集める。肉襞をなぞり、ぬめりを伴って先が中へ入ってくる。ああ、そこには……。
「ふんっ! 甘いなカワカミ! この天才白鳥十字郎に死角はない!」
「なんだと、……っ! 触手よ、何故中へ入らない……!」
 つぷつぷと先っぽだけ出入りする触手は奥まで入っては来ない。何故か。
「簡単なことよ! あらかじめ広田くんのアヌスにアンチヌベメ星植物性生物電波を発するディルドを嵌めてあるからね! そんなチャチな触手ではディルドを取り出すどころか近寄ることもできないだろうさ!」
「なんだと……!」
 なんだと! そういうことだったのか。いや、どういうことだ。よく分からんがこのふざけたコケシのおかげで触手の種付けが回避されている、ということか。近寄ることもできないとか言いつつ先っぽは入っているんだけども。
「ひっ! あぐっ……!」
 触手の先が下りてきたコケシのケツを押し上げる。やや小ぶりなコケシはしかし、触手に押し上げられることでその質量を実際以上に感じさせた。触手が引くとコケシもつられるように内壁を落ちていく。引いていく動きに慣らされた直腸はゾクゾクと身体の芯へ響く快楽を拾い、無意識に排泄を堪えるように筋肉が収縮した。そこへコケシが突き上げられる。触手の肉感的な茎に前立腺を磨り潰され、コケシの先は胃にまで届こうかというほど奥まで侵入する。悲鳴は喉の奥でわだかまった。声にならず息もできず触手の小刻みな突き上げに震えが走る。尿道に潜りこんだ触手が突き上げられた精を啜る。意識が白んでいく。意識なんて持ってたってどうせ意味なんかないんだ。俺にできることなんかひとつもない。
「イってる場合か、広田くん!」
 白鳥の声が霞んでいく。知らねーよ。イってる場合だよ。つーか今イかないでいつイくんだよ。バカじゃねーの。
「仕方ない……、こうなったらアレを……」
 どれを?
「ひぎっ……! あ! あ! あっ……!」
 突然内臓に経験したことのない刺激を感じ、瞬間肉体はビクンと不自然に跳ねた。触手が一斉に身体から離れていく。地面に投げ出されても直腸内に感電のような刺激を感じ、手足を動かすどころか身動ぐこともできないのに筋肉はピクンピクンと動いていた。
「貴様! なにをした!」
「ふふっ、アンチ触手電波の出力を強めただけさ」
 カワカミの問いに白鳥は事もなげに答える。電波の出力? 低周波流されたみたいなんですけど。
「ならばこんなもの、俺が手ずから抜いてやる!」
「遊んでほしいのかね、カワカミよ」
 俺に歩み寄るカワカミが白衣の変態に腕を押さえられ顎を捉えられている。白鳥は腕に抱いたカワカミのケツを揉みしだきキスをしようと顔を寄せる。あーもう勝手にしよれ。薄れていく意識の端でカワカミが白鳥を振り切り全速力で宇宙船へ逃げていくのを見た。逃げてんじゃねーよ。俺も逃げてーよ。

 目覚めると白鳥からバックで犯されていた。俺の手の甲には点滴に繋がる注射針が刺さり、頭には脳波を測定する装置が取り付けられている。にも関わらずの後背位だ。奴は変態でありさらには鬼であるのだろう。
「こんなにトロトロにして! そんなに触手がよかったかね? それともコケシかね?」
「うぐっ、うぐっ、うっ、あ、あ、あ」
 アナルに剛直を突き立て掻きまわすように腰を揺らす。清潔なシーツに頬を擦り付け、突き上げと捏ね回しの振動に耐えた。
「ほら、もっと締めて」
「あぐっ! ああっ……!」
 ケツを思いっきり引っぱたかれて力の入ったケツ穴をこじ開けるように捻じ込まれる。感じすぎて最早本来の役割を忘れたアナルは圧倒的な熱の塊を吸いつくように受け入れた。泡立つほどの抽送は肉のぶつかり合う音と水の弾ける音に煽られるように益々激しくなっていく。
「死ぬっ! 死ぬっ……!」
「はっ…、出すよ」
「やめっ……、出すなっ」
「くっ……!」
「あっ!」
 死んだ。いや生きてる。どくどくと注がれている。注ぎながらもぐっぐっ、とケツに腰を押し付けてくる。触手の種付けを回避しても変態の種をもらっては意味がないではないか。と、言ったところで無駄だ。白鳥から逃げるには宇宙へ行くしかないのかもしれない。
 いや、宇宙へ行ったところで無駄だろう。点滴を刺したまま体位を替えられ、宇宙真理に基づく諦めに至ったのであった。いかん、電波に染まってる!
「ほら、自分で足持って」
「い、や、だー!」
 挫けそうなとき、苦しいとき、諦めてはダメなんだ。頑張れ俺。頑張れヌベメ星人。諦めなければいつか夢は叶うはず!



(12.4.17)
置場