SAFETY LOVE(ハンシナ編) さて、何と言ってシーナに説明をすればいいか。ビクトールとマイクロトフと別れてからハンフリーはもう何度も溜息をついていた。 何故はっきりと断ることができなかったのだろうか。 それというのもあのホウアンの妙な迫力のせいだ。同盟軍きって名医がまさかあんな変わり者だったとは夢にも思わなかった。あそこで断れば、何をされるか分かったものではない。 ハンフリーはいっそのこと何もなかったことにしてしまおうか、とも考えた。しかし、あのホウアンのことだ。今回のことをシーナに話してしまう恐れの方が高い。そんなことを知ったらあのシーナが何をしでかすか分かったものではない。 「まったく…何でこんなことに……」 ハンフリーは憂鬱な気分のままに自室の扉を開けた。 中は暗くシーナはいなかった。 思わずほっとして肩の力を抜いたとたん、がしっと後ろからシーナが抱きついてきた。 「お帰りっ!!なぁに溜息なんかついてんだよっ!!」 「………ああ…」 「どうしたの?」 シーナがきょとんとハンフリーを見る。 ハンフリーが難しい顔をしているのはいつものことだが、今日はいつになく暗い。シーナはハンフリーの手を引くと部屋の中に入った。 ハンフリーをいくら問い詰めたって、その気にならなければ話さないだろう。そろそろハンフリーの性格を知り尽くしてきたシーナはそう思い、聞きたいのをずっと我慢してきたが、深夜になって、とうとう痺れを切らした。 「なーなー、何があったんだよ?何か困ったことでもあんのかよ?」 「いや……」 「嘘つけ。いいから言ってみろよ、俺で力になれることなら、なるからさ」 にっこりとシーナが微笑む。 この笑顔が曲者だ、とハンフリーは思う。しかし、話さないわけにもいかない。ハンフリーは袋の中からホウアンに押し付けられた例のものをベッドの上に出した。 「あ、避妊具じゃん。どうしたの?」 「もらった」 「ふうん……あ、何だこれ、……占いなんか書いてあるっ!え〜っとなになに『今日は何か初めてのことをしてみましょう!』だってさっ!!すっげー、こんなの初めて見た」 「………」 「どうしたんだよ、これ。誰に貰ったんだよ?」 「ホウアンだ」 「ホウアン先生?何で?なー、これどうするつもりだったんだよ。俺、貰ってもいい?」 「貰ってどうする?」 「使うんだよ。女の子に対しての礼儀だしさ」 この歳で子持ちにはなりたくないだろ?とシーナが笑う。 シーナが女タラシなのは今に始まったことではない。シーナ自身も、女の子と遊んでいることをハンフリーに隠してはいない。そのこと自体にヤキモチを妬くようなハンフリーではないが、さすがに目の前で堂々と「避妊具を使う」と言われると少し気分が悪い。 そんなハンフリーの思いを読み取ったのか、シーナがくすっと笑う。 「ちょっとはヤキモチ妬いてくれるんだ」 「そんなんじゃない」 「ふうん、ま、いいけど。なぁ、たまには使ってみる?」 シーナが避妊具を指ではさんでひらひらと振ってみせる。 「………シーナ」 「なに?」 「実はホウアンに頼まれたことがある」 「なんだよ?」 ハンフリーは渋い顔のまま、事情を話し始めた。 「何それ〜!!!」 ハンフリーから話を聞いたとたん、シーナはベッドの上で転げまわって笑った。 あのホウアンがそんな話をしているところを想像するだけでも笑える。 おまけに、持続性を試してくれだなんて、あまりにもぴったりすぎてさらに笑える。 げらげらと笑い続けるシーナの頭をハンフリーが軽くはたいた。 「お前がおかしなことを口にするからだろう」 「おかしなことって?だって、あんたが長いのは事実じゃん」 「………お前がなかなかイかないからだろう」 「ちょっと待てよ!言っておくけど、俺は普通だからなっ!」 普通どころか、感度はバツグンにいいはずなのだ。ハンフリーが一回イくまでに、さんざんイかされてもうへとへとなのだから。 「じゃあお前が下手なんだろう」 「あっ、聞き捨てならないことをっ!!俺のどこが下手なんだよっ!!くそっ、自分が不感症なのを人のせいにするなよな…」 それこそ聞き捨てならないことだと、ハンフリーがむっとする。 シーナはふふんと勝ち誇ったような笑みを浮かべ、ハンフリーの肩に手を置くと、そのまま体重をかけてベッドの上に押し倒した。固い腹筋の上に跨り、シャツを脱ぎ捨てる。 「おい……」 「ホウアン先生に頼まれたんだろ?日頃お世話になってんだ、ちゃんと実験台になってやらなきゃな。アレ使うのあんまり好きじゃないけど、協力してやるよ」 そう言うとシーナはハンフリーのシャツのボタンを外し、ベルトを引きぬいた。 「…それに……俺が下手だなんて絶対言わせねぇからな」 ペロリと唇を舐め、シーナが妖しい笑みを浮かべる。 そして楽しそうに下衣を寛げると、中からハンフリーのものを引きずり出した。 「おい…」 いきなりの展開に、慌ててハンフリーが肘をついて上半身を起こした。シーナはそんなハンフリーの唇にちゅっとキスをするとにっこりと笑う。 「好きだろ?俺に口でしてもらうの」 「………」 反論できないあたりがハンフリーもただの男である。 シーナは頭を下げると口を開き、まだ何の兆しも見せていないハンフリーの雄を口腔内へと招きいれた。 「…っ……!」 ぬるりとした熱い舌先がハンフリーのものに絡みつき、先端から根元へとゆっくりと舐め上げていく。ぴちゃっと濡れた音が聞こえ、ハンフリーは息を飲んだ。シーナの舌技はかなりのもので、いつも簡単にハンフリーをその気にさせる。両手で幹を支え、ちろちろと先端をくすぐるように、そして裏側を吸い上げるようにして唇を這わせていく。 「ふ…ぅん…んっ……」 赤い舌が見え隠れする。 見ているだけで眩暈がしそうなほどに扇情的なその姿に、ハンフリーは思わず手を伸ばした。シーナの頭を掴むと、すっかり勃ち上がった欲望を喉の奥へと突き立てた。 「んっ…!」 溢れ出した先走りの苦さにシーナは眉を顰める。ぐちゅっと音をさせて何度か抜き差しを繰り返すと、それは痛いくらいに張り詰めていく。熱い口腔。苦しげに舌を這わすシーナの表情に、ハンフリーは思わずすべてを吐き出してしまいたい衝動に駆られた。 「…ぅう…ん…」 宥めるようにきつく吸い上げ、シーナは無理矢理に唇を離した。 濡れた口元を手の甲で拭い、すっかり勃ちあがったものを見下ろして満足そうに微笑む。 「……興奮する?」 「………」 にっこりと笑い、シーナはベッドの上にあった包みを手にした。 「さて、と。 『今日は何か初めてのことをしてみましょう』 だからなぁ……」 シーナがぴりっと包みを破り、中の避妊具を手にする。 「こういう使い方したことなかったよな?」 シーナは避妊具を舌先に乗せると、ハンフリーのものに片手を添え、再びゆっくりを頭を下げ始めた。先走りの液が滲んでいるそれを咥え、先端に避妊具を被せる。唇と歯を使い引き上げていく。びくびくと脈打つ雄芯がシーナの頬を打つ。 「んっ……」 むせ返る雄の匂いにシーナは恍惚とした表情のまま、時間をかけて根元まで被せきった。 「………やっぱさ、ゴムの味よりナマの方がいいよな……」 つぶやいたシーナの腕を引き寄せ、ハンフリーがきつくその唇を奪う。 お互い何かに急かされるようにして、まだ身につけている衣服を脱ぎ去った。 「早く……して……」 欲情しきったシーナのつぶやきに、ハンフリーは理性を無くした。 翌日。 自らの最高傑作(←だと思い込んでいる)の成果のほどを早く知りたかったホウアンは、朝っぱらからビクトール、ハンフリー、マイクロトフの三人を呼びつけた。もちろん、相方を連れてくるように、と添えることも忘れたりはしない。 いくらアレが男が使用するものだといっても、使われる立場の意見だってちゃんと取り入れなくては片手落ちというものである。 相手を連れて来いと言われた時、ビクトールもマイクロトフもハンフリーもげんなりとした。 確かにホウアンの言うことはもっともである。 しかし何故こんな簡単なことに気づかなかったのであろうか。 報告するために一緒にホウアンの元へ行かなければいけない、と言った時のフリック、カミュー、シーナの呆れきった顔と罵倒の声に、返す言葉もない3人である。 それでも、さすがに6人同時に話を聞くのは礼儀に反すると思ってか、ホウアンは少しづつ時間をずらして医務室へ来るようにと言ってきた。 ホウアンもその程度の常識は持ち合わせているようである。いや、その程度の常識しか持っていないと言った方が正しいのかもしれない。 三組の中で最後にホウアンの元へやってきたのはハンフリーとシーナだった。 いつもに増して渋い顔のハンフリーと、対照的に満面の笑顔のシーナ。ハンフリーの手を引いて医務室へと入ってくるとホウアンの前へと腰を下ろす。 「おはよー、ホウアンせんせ」 「おはようございます、シーナさん。昨夜はいかがでしたか?」 「ホウアンせんせ、いくら仕事だとは言ってもさ、そういうこと聞くのって恥ずかしくない??フリックにもカミューさんにも同じこと聞いたの?あの二人に殴られたりしなかった??」 シーナが興味津々というようにホウアンに尋ねる。 「いえいえ、お二人ともとても協力的でしたよ。で、いかがでしたか、シーナさん?」 にこにこと尋ねるホウアン。 そんなホウアンを見て、ある意味、絶対に敵には回したくない男だとハンフリーは思った。 「べっつに……まぁあんなもんじゃないの?ああいうのってさ、どれもたいして差がないと思うんだけどなぁ」 そうだろ?とハンフリーを見上げるシーナ。 ハンフリーはむっつりと黙り込んだままである。 「あっ、そうそう!!ひとつ言わなくちゃと思ってたんだ」 「何ですか?」 「アレさぁ、不味いよ」 「は?」 シーナの言葉にホウアンはぽかんとする。 不味い???? 「うん、不味い。今まで口にした中で、一番変な味がした。匂いもあんまり好きじゃないなぁ」 「あの、シーナさん……?使い方…間違ってるんじゃ……」 「ええ〜、何で?ホウアン先生こそ、普通の使い方しかしたことないんじゃないの?」 にんまりと、どこか意味深な笑みを浮かべて、シーナがハンフリーを見る。 「とにかくさ、俺の希望としてはもっと美味しいヤツにしてほしいな。ん〜と、甘い味がいいな。イチゴとか桃とかさ、チョコレートなんかもいいなぁ。口にしたときに不味いとさ、それだけでやる気なくなっちゃうよ。ああ、でもあんまり美味しいと、そっちにばっか気を取られてちゃんとできないかもしれないけどなぁ」 「…………」 この二人はいったいどういうセックスをしているのだろうか? さすがのホウアンは想像ができずに首を傾げる。 さすがシーナというべきか。さすがハンフリーというべきか。 何にしろ、これは思いもしなかった貴重な意見である。 「ありがとうございました。あ、ちなみに持久性の方はいかがでしたか?」 「ああ、それはばっちり、大丈夫。何しろ抜かずの三……いてっ!!」 耐え切れずにシーナの頭を叩いたハンフリーに、シーナはむっと唇を尖らす。 「も〜、ばかばか殴るなよっ、馬鹿になったらどうすんだよっ!」 「それ以上はならない、安心しろ」 立ち上がったハンフリーのあとをシーナが追いかける。 「ちょっと待てよっ!!あ、んじゃ、ホウアンせんせ、またね」 「お疲れさまでした」 ホウアンはにこやかに二人を見送った。 最後のつぶやきへ……… |