「おつかれさまでした!」
 臨海地区にある大きなイベント会場。そこで毎年恒例となっている大イベントも今日が最終日。終了のアナウンスが流れると、スタッフ達皆の顔に笑顔が弾け、そこかしこで成功を祝う笑いとねぎらいの声が飛び交っている。
 そんな中、一人の少女が中心となった輪は一際の明るさと笑顔に満ちていた。
「お疲れ様、ひとみちゃん」
「はいっ。おつかれさまでしたっ」
 裏方の男性のねぎらいの言葉にも、疲れた顔一つ見せず明るい笑顔で返す少女。その笑顔につられるように、挨拶を交わした男達にも笑顔が広がっていく。
 少女の名は吉乃ひとみ。某社の主にスポーツ部門でのイベントで起用される、キャンペーンガールだ。快活な印象を与える、毛先が少し跳ねたショートヘア。涼しげな目元と彼女自身の醸す爽やかな雰囲気は、周囲の人間達に自ずと活力を与える。
 だがその一方で、キャンペーンガールだけにスリムでありながらも出る所は出た抜群のスタイルは、男達に邪な欲望を抱かせるには十分なものがある。この日もまた、そんな彼女のスタイルを強調するようなオレンジを基調に黒のラインの入ったノースリーブのボディコンワンピースを着こなし、色味を合わせたオレンジのロンググローブと黒のオーバーニーソックスが彼女の長い手足を包んでいる。快活さと妖艶さを併せ持った彼女の肢体は、イベントの参加客だけでなく周囲のスタッフ達の視線も釘付けにし、虜にしていた。
「じゃあ私、控え室に戻ってますね」
「はい、お疲れー」
 イベントの成功に気を良くし、鼻歌を唄いながらブースを後にするひとみの後姿、特にキュッと引き締まった腰回りを、後始末に追われながらも会場のスタッフ達は熱を帯びた視線で盗み見ていた。

「フンフン〜♪」
 ひとみは鼻歌を唄いながら、上機嫌で会場の通路を歩いていく。すれ違う男達は欲情の、女達は羨望と嫉妬の入り混じった視線を向けてくるのだが、当のひとみは全く気にした様子もなく今にもスキップし始めそうなほど軽快に歩いている。
 イベントが無事に終了した、というのも彼女の上機嫌の一因ではあるのだが、それ以上の要因がこの後に待っているのだ。
「久しぶりに、麗子さんに会えるんだ」
 ひとみの憧れの人。キャンペーンガールの先輩であり、某社のレーシング部門のイベントで主に活躍している、永瀬麗子と、この後の某社のイベントの打ち上げで久々に会う事が出来るのだ。
 まだ駆け出しの頃、慣れない仕事にガチガチに緊張していたひとみに、微笑みかけ優しく接してくれたのが一緒のイベントに出演していた麗子だった。そのさりげない優しさ、そして彼女の纏う眩い輝きに、ひとみはすっかり魅せられてしまった。しかし、多忙を極める麗子に、ひとみ自身も仕事に慣れて忙しくなっていったため、なかなかゆっくり話す機会もなく、挨拶を交わす程度の間柄から抜け出せずにいた。
 しかし、本日の大規模なイベントには麗子も出演していた。ひとみなど、わざわざ休憩の合間に麗子のいるブースまで尋ねていき、しかし忙しそうな彼女に話しかける事も出来ず遠目から眺めて帰ってきたくらいであるから、筋金入りのファンである。
「麗子さん、キレイだったな……」
 スレンダーな体のラインをくっきり浮かび上がらせる、真っ白なボディコンワンピース。両手は白のロンググローブ、両脚は膝下の白いブーツと、全身を白で包まれていながらも、なお透き通るように白い肌。まるで雪の妖精のようだと、ひとみは目元を潤ませながらうっとりと彼女の姿を眺めていたのだった。
「私もがんばって、麗子さんみたいにステキな女性にならなくちゃ」
 よし、と気合を入れて、顔を上げる。すると、
「……あれ? ここ、どこ?」
 無機質な白い壁に囲まれた、人通りのない通路にいつのまにかポツンと立っていた。
ポーッとしながら歩いていたせいか、控え室の前とうの昔に通り過ぎ、イベント会場となっている西館とは逆側の東館まで来てしまったらしい。
「やだもう、私ったら」
 小さく舌を出し、元着た道へ戻ろうと踵を返すひとみ。と、その時。
「…………んっ…………」
 ひとみの耳に、甘い響きを帯びた女性の声が微かに届いた。
「なんだろう……」
 直前まで麗子の事を考えていたせいだろうか、麗子の声に似たその微かな甘い調べに、誘われるようにフラフラと声の聞こえる方へ足を向ける。
「……はぁっ…………んんっ…………」
 近づくほど、その声ははっきりと耳に届く。どこか艶かしい、甘ったるい喘ぎ。
「やだ、どうしよう……」
 レース場などでは、レース終了後にレーサーとキャンペーンガールがそういう事になるという話は先輩から聞いたことはあったが、こういうイベントではキャンペーンガールが相手にするような対象がいない為、そういった事は起きないという話で、無論ひとみ自身も見たことなどなかった。
 普段のひとみであれば、何も聞かなかったフリをしてこの場を後にするところであるが、麗子に似たその声にいけない好奇心を駆り立てられ、その場を離れることができない。
「んっ、はぁ…………あ、ふぅん…………」
 いつの間にかひとみは、悩ましい声が漏れ聞こえる扉の前に、息をひそめて立っていた。無用心にも扉はわずか2cmほど開いており、そこから切なげな吐息が漏れ聞こえている。
「こ、こんな事いけないけど……でも、何か事件が起こってたとしたら大変だし……ひょっとしたら助けを求めているかもしれないし……」
 口の中で小さく呟きながら適当に理由をつけ、これから自分の行う行為を正当化する。やがて、胸の前で小さく拳を握ると、意を決し扉の隙間をそっと覗き込んだ。
「………………っ!?」
 思わず声を上げそうになった口を、慌てて両手で押さえる。しかし、その目は驚愕に大きく見開かれていた。
「どうだ、麗子。コイツに囲まれた気分は」
「はあっ……すごく、ドキドキしています。ムンムンと熱気が伝わってきて……立ち込める臭いが、私の顔を包んで……んふあぁ……」
 この位置では陰になって男の顔は見えないものの、その男の口にした名前と、その視線の先にいる女性の顔、ひとみのよく知る二つの要素がピタリと重なり合い、ひとみの体を硬直させた。
「そ、そんな……麗子さん……」
 パイプ椅子に座ったショートカットの美女。身に纏っている白のボディコンワンピースを見るまでもなく、それは確かに、永瀬麗子その人である。しかし、その表情は、ひとみが今まで見たことのないもの。熱に浮かされたように、頬を染め、目元を潤ませて、恥じらいながらも顔の前に突き出された幾本もの棒に視線を行ったり来たりさせている。
「んあっ」
 男達が包囲の輪を狭め、一人の男の肉棒が麗子の頬に触れると、麗子は体をピクンと跳ねさせ声を漏らした。
(なっ!)
 再び驚きを飲み込むひとみの目の前で、次々と肉棒が滑らかな柔肌に押し付け、擦り付けられる。
「……ど……どうしよう……」
 その現実離れした光景を凝視しながら、なんとか頭を巡らすひとみ。
 今、ひとみが取るべき行動は二つ。この場に乗り込んで麗子を助け出すか、誰かに助けを呼びに行くか。しかし、いずれの行動も、難点がある。
 いくらスポーツが得意なひとみとはいえ、10人はいるであろう男達の手をかいくぐって麗子を連れて逃げるのは難しい。かと言って、助けを呼びに他者にこの事態を伝えるのは抵抗がある。麗子やひとみにとって、スキャンダルは厳禁だ。まして、何人もの男達にレイプされそうになったなんて、そんな噂が広まっては致命傷だ。
 頭脳をフル回転させてなんとか打開策を導き出そうとするも、良い考えが浮かばず堂々巡りを繰り返すだけ。何よりひとみの集中力を削いでいるのは、眼前に広がる淫靡な光景と、耳朶をくすぐる甘ったるい響きだった。
「あ、はあっ……あついの……かおが、やけちゃいそう……」
 暴虐にさらされている当の麗子はと言えば、小鼻をヒクヒクさせながら雄臭をたっぷりと吸い込み、その美顔に押し付けられた熱に両目を閉じてうっとりと感じ入っているかのようだ。
(ど、どうしちゃったの、麗子さん……)
 麗子の両手は膝の上に置かれており、両脚もきちんと閉じて座っている。見たところ、戒められている風でもない。麗子自身に抵抗の素振りが見られないとなれば、考えられることは……。
(そ、そんなバカなことあるわけないじゃない)
 浮かんできた淫靡な想像を頭を振って振り払うひとみだったが、次の瞬間他ならぬ麗子の口からその想像を肯定する言葉が紡がれてしまった。
「くくっ、麗子は本当にコイツが大好きだな」
「はい……麗子はコレが……いやらしい臭いをプンプンさせている……熱くて硬い、オチンポが大好きなんです……」
(ああっ!?)
 ひとみは思わず耳を疑った。いつも颯爽とした、憧れの麗子の口から、そんな卑猥な言葉が吐かれるなど夢にも思わなかった。
 知らずスカートの裾を握りしめているひとみの眼前で、なおも淫靡な告白は続く。
「お前がこの仕事をしているのも、コイツが好きでたまらないからなんだろう」
「そうです……ボディラインがクッキリ浮かび上がるいやらしいコスチュームに身を纏って、沢山の男の人たちの視線に晒されるのが大好きなんです……ステージの上で感じる、ファインダー越しの熱い視線がたまらない……」
 麗子はうっとりと目を細めて、熱い息を吐く。
「私を視線で犯しながら、ズボンの中をパンパンにしている男の人たち……彼らの頭の中で、私はどんないやらしい事をさせられているのかしら……そして帰宅後、現像した私の写真に彼らはたっぷりと熱い欲望をぶち撒けるんだわ……何千何万という男達が、私の全身をザーメン塗れにするの……」
(いやだ……もう、もうやめてっ)
 ひとみの耳を侵食する麗子の淫ら極まりない告白に、頭を振って逃れようとするひとみ。こんな仕事をしているのだ、見られる事の恍惚感はひとみもないわけではない。むしろ、他の女性達よりもかなり強い方だろう。しかし、他ならぬ麗子の口からそんな言葉を聞きたくはなかった。
「フン、すました顔をしていてもその正体は視姦好きの変態マゾか。いいぜ。お望み通り、男共の視線にレイプされて火照りきったお前の体を慰めてやるよ、俺たちのコイツから出る特濃の雄汁でな」
 男の一人が麗子の首を掴み、椅子から引き摺り下ろして地べたに座らせる。そして、輪が3つ連なった銀色の金属の棒を取り出す。真ん中の輪に麗子の首を、左右の輪に手袋を填めたままの麗子の両手首を入れ、カチャリと鍵を掛けて固定する。ペタンと座り込んだ麗子の両足首も、二つの輪のついた銀の棒に戒められた。
「あ……ああん……」
 両手両脚を戒められ、下半身を剥き出しにした幾人もの男達に蔑んだ目で見下ろされながら。顔と同じ高さに拘束された左右の手を交互に見て、麗子は悩ましい吐息を漏らす。
「くくっ、聞いていた通りだな。これがアンタの一番のお気に入りの拘束具なんだろう。これを嵌められると、アンタはこれからどうなるんだ?」
 男の一人がニヤニヤと笑いながら問いかける。その蔑んだ笑みすらも快楽のスパイスに変え、麗子は陶然として答える。
「わ、私は……永瀬麗子は、人気のキャンペーンガールなどではなくなります……男性の欲望を満たす為だけに存在する、ザーメン絞り器になります……両手でそれぞれオチンポをシゴいて、お口いっぱいにオチンポをしゃぶり頬張って……顔中をザーメンでドロドロに染め抜かれてしまうんです……」
(ああ……麗子さんが……麗子さんが、あんな男達のザーメン塗れにされちゃう……)
 戒められながらも、うっとりと淫らな告白を繰り返す麗子。その淫気にあてられ、ひとみの中の麗子を救わなければという使命感や男達への嫌悪感も蝕まれていき、いつしかこれから起きるであろう淫らな舞台を心待ちにする観客の一人となる。右手の指先はしきりに唇を撫で、左手はスカートの下に潜り込みすっかり濡れそぼっている黒の下着の上から秘唇の淵をそっとなぞる。
「ふん、マンコやケツに出されるより顔にブッかけられる方が好きだって言うんだからな。そのツンとすました面、グチャグチャにしてやる。生意気な高い鼻を、ザーメンでべっとり埋もれさせてやるからな」
 男の一人が、肉棒を麗子の鼻の頭に突きつける。左右からもそれぞれ、麗子の手のひらに肉棒を押し付ける。両手のひらと鼻の頭が、ドクドクと溢れる先走り汁でねっとりと濡れ光る。
「はあぁん……皆様、ザーメン絞り器・麗子の口マンコと手コキを、どうか存分にお楽しみください……もしご満足いただけましたら、私のスケベマンコ顔に、ご褒美として皆様の熱く粘っこいザーメンをブチ撒けてください……沢山の男の人のザーメンにぶっかけレイプされてアクメするのが、麗子の一番の望みなんです……」
 うっとりと前口上を述べ、両手で肉棒を握りこみ舌を亀頭に伸ばしていく麗子。声を漏らさぬように自ら口を塞ぎながらその姿を凝視して、ひとみは肉芽を指でキュッと摘まみ体をブルブル震わせる。憧れの天使の堕落した姿を浅ましくも視姦しながら、ひとみは今日最初の絶頂を迎えたのだった。

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