夏の終わりのある晩に


コンコン。

るちあ
「は〜い」

ガチャ。

ココ
「ヤッホー、るちあっ」

るちあ
「あ、ココ。どうしたの?」

ココ
「私達、明日出立だからね。最後の夜だし、
 るちあとおしゃべりしようかな〜って。いい?」

るちあ
「うん、もちろん。そこのベッドの上にでも座って」

ぽすっ。

るちあ
「ココ、夏休みはどうだった? 楽しかった?」

ココ
「そうね、久々にゆっくりできたし、楽しかったわよ」

るちあ
「そっか。南太平洋は、復興に忙しかったんだもんね。
 ……わたしたちも手伝った方が良かったのかな」

ココ
「なに言ってるのよ。そういう事は私達、お姉さんに任せておけばいいの。
 それにこっちはこっちで大変だったんでしょう。
 誰もあなた達がただ遊びほうけてるなんて思ってないわよ」

るちあ
「あ、あはは……。ありがとう、ココ」

ココ
「それにしても、人間の男って、ホント、見る目がないと思わない?
 こーんないい女をほったらかしておくなんて」

るちあ
「え〜。プールでいっぱい男の人達に囲まれてたじゃない。
 あの中にいい人はいなかったの?」

ココ
「ん〜、なんかね〜、パスかなぁ」

るちあ
「きびしいんだ」

ココ
「そりゃあそうよ。こ〜んなにいい女と付き合おうっていうなら、
 中途半端な男じゃダメダメ」

るちあ
「あはははっ。でも、どうしてココはそんなに男の人と付き合いたいの?」

ココ
「あら、けっこうズバッと言いにくいこと聞いちゃうんだ、るちあってば」

るちあ
「あはっ、ごめ〜ん。でも、ど〜して?」

ココ
「そうねぇ……。羨ましかったのかな、るちあや波音、サラの事を見ていて」

るちあ
「羨ましい?」

ココ
「ほら、私って、ずっとガイト城に囚われたままだったじゃない。
 地上にも、数えるほどしか上がってないし。だから、
 あなた達みたいに、本気で男の子の事、好きになった事なくて」

るちあ
「ココ……」

ココ
「でも、ダメね。海でナンパ目当てで寄ってくる男達じゃ、
 そんなに本気になれる相手はいなかったわ。
 ……ちょっとるちあ、なに暗くなってるの」

るちあ
「だって……。ココもノエルも、ずっと大変な思いをしてて……。
 かれんだって、ずっとノエルのこと探し回ってて。
 それなのに、わたし、いいのかなって」

ココ
「だからさっきも言ったじゃない。
 あなた達はただ、お姉さんに甘えていなさいって。
 めんどくさいこと考えなくてもいいの」

るちあ
「うん……」

ココ
「それに、私の青春はまだ終わってないんだから。
 海の平和が戻ったら、地上の全てのイケメンを私の前にひれ伏せさせてみせるわっ」

るちあ
「あ、あはは、は……」

ココ
「ところでっ。ねえ、るちあ。海斗君とはどうなのよ。どこまでいってるの?」

るちあ
「えっ……」

ココ
「ほら、ガイト城から脱出した後、良い雰囲気だったでしょ。
 ね、どこまでいってるの? キスは当然として、もっと先まで? キャーッ!
 ……って、あ、あれっ?」

るちあ
「………………」

ココ
「ちょっ、るちあ、なんで泣くのよ、ねぇ」

るちあ
「……かいと……かいとぉっ……」