「え、ちょっと、やだ……こんなに出したんだから、もういいでしょう?」
「うう、うるさいっ! あんたがフェロモン丸出しのエロい顔するから悪いんだろっ!」
「そ、そんなの言いがかり、きゃあぁっっっ!!」
 ブチブチブチッ!
 馬乗りになった少年が蘭花の胸元に手をかけると、一気に左右に引き裂いた。無残にボタンの弾けとんだ制服の裂け目から、豊かな乳房がブルンッと弾け出る。
「な、何するのよ、ちょ、いやあっ」
 抜けるような白い乳房を乱暴に掴んだ少年の指が、まるで歓迎されているかのように無抵抗にギュムギュムと肉に沈んでゆく。
「や、やわらけぇ……」
 思わず漏れ出た少年の声。今まで呆然と見守っていた、両手足を押さえつけている少年達が、弾かれたように己の体の下にある肢体を見下ろした。
 そう、何も順番を待っている必要などない。自分の体の下には今、艶やかな美女の肢体が無防備に横たわっているのだ。
「やっ、なにっ?」
 不意に右手に沸いた熱い感触に、思わず蘭花は首をそちらに捻る。白い手袋を填めたしなやかな指に、小さいながらも精一杯自己主張している皮の被った肉棒が握りこまされていた。先端から透明な粘液がジクッと溢れ出て、ナイロン地にジワジワと染み込んでくる。
「や、やめなさいっ。そんな汚いもの握りたくな、ひいっ」
 右手に集中していた意識が、不意に体の各部から湧きあがった熱い感触にかき乱される。
 左手は、手袋と手首の隙間を広げてに無理矢理肉棒が割り込んできて、先走りの感触が手のひらに直にヌチュリと広がった。
 右のムッチリした太股にもブラウンのパンスト越しに肉棒がグリグリと押し付けられ、左足にいたっては、赤いパンプスは脱がされて足裏全体にズリズリと肉棒が這いずっている。
「そんな、私の手を、足を、こんな風に犯すなんて……」
 少年達は時々呻きを漏らしながら、一心不乱に己に与えられた美女のパーツを使い快楽を貪る。
「き、君達、そんなに夢中になって……私の手や足が、そんなに気持ちいいの……?」
 どこかうっとりとした響きを含みながら蘭花が尋ねると、何も考えることができないのか少年達も素直に答える。
「す、すげえ気持ちいいよ……なんだよこれ、自分で握るのとなんでこんなに感触が違うんだよ……」
「ああ、手袋のサラサラと手のひらのプニプニが……」
「太股たまんねえ……ムニムニ押し返してくる……」
「もっと、こう、足の指で亀頭を掴むように、そう、グリグリと……おおっ!……」
「ああ、手や足ですら、男の子達をこんなに狂わせてしまうなんて……」
 なんて罪な美しさ。その倒錯的な高揚感が、蘭花の胸をいっぱいに満たす。
「くそっ、なんでこんなに柔らけぇんだよ……こんなの、その辺のマンコじゃ比べ物にならね、くおっ……」
 馬乗りになっていた少年がいつの間にか乳房に肉棒を挟み、腰をガクガクと揺すりたてている。柔らかな肉は様々に形を変えながら、少年の快楽を引き出すように熱く肉棒を包み込んでいる。
「んがっ、ま、また、ダメだ、でるっ!」
「お、俺もっ」
「もうダメだっ」
「い、イヤッ、ダメよっ、美しい私を君達の汚い汁で汚しちゃダメェッ!」
 二度目の射精宣言に慌てて身を捩った蘭花だが、全身を押さえ込まれていては逃れる術もなく。
『おああああっっ!!』
「きゃっ、い、いやあああぁぁぁんっっ!?」
 ドバビュ、ズバッ、ブチャッ、ドビュビュ、ビチャビチャッッ!!
「あ……ぁぁぁ……私の制服が、体が……臭い汁まみれに……」
 若さゆえに早く、そして大量に押し寄せた射精に無防備に晒されながら、蘭花は呆然と呟いた。自慢の美しい肢体の至る所に、男達の欲望の証がへばりつく。汚される事によって生まれる被虐美、というのは鏡でも見ない限り本人が気づけるものではないだろう。
 己の欲望を迸らせた少年達は一様に、穢れてもなお微塵も美しさの翳る事のない美女を呆然と見つめていた。
 しばしの沈黙。
「……あ。か、カメラ」
 一人の少年の呟きが、他の少年達の意識を呼び覚ます。
「そ、そうだっ、おい、写真撮らねえとっ」
「あれっ? お前、どこ置いたんだよっ!」
「知らねえよっ、お前こそどこやったんだよっ!」
「おい、カバン、カバンに入ってただろっ」
 言い合いを始める少年達。蘭花に馬乗りになっていた少年もそちらに気をとられ、持っていたナイフが蘭花の肌から離される。その瞬間。
「ハイヤッ!」
「どわあぁっ!」
 横たわっていた蘭花がいきなり跳ね起き、上に乗っていた少年達をまとめて吹き飛ばした。
「いってぇ……な、なんだぁ?」
 ゴロゴロと無様に床に横たわる少年達を見下ろす蘭花。怒りのあまりこめかみに血管が浮き立ち、拳は固く握り締められている。
「アンタ達……よくもこの私を、こんなイケてない格好にしてくれたわねえ……」
 あまりの怒りの気に少年達は尻餅をついたまま後ずさる。
「お、おい、やべえよ……どうすんだよ……」
「だ、大丈夫だって! 女一人だし、全員で飛び掛かってもう一回押さえつければ……」
「そ、そうだぜ……お、オイ! こっちはまだナイフ持ってんだ、大人しくした方があんたの為だぞっ」
 予想外の逆襲に動揺しながらも、精一杯虚勢を張る少年達。蘭花はその様子を見ながら、ゆっくりと口端を歪ませた。
「……まったく悪いと思ってないわね……どうやらオシオキが必要みたい……いいわ……」
 目を閉じ、スッと息を吸い込む。そして、
「ハアアアァァァァァッッッ!!!」
 その美しい外見からは想像もつかないような雄叫びを上げ、天を仰ぐ。すると、
「なっ!」
「ひ、光ったっ!?」
 ランファの全身が、闘気のような金色のオーラに包まれ、次の瞬間。
 ボワンッ。
「へ……」
「変身、した? ……」
 目の前のバスガイドは、ノースリーブの赤いチャイナドレスに着替えていた。そして、その背中には。
「は、羽根……」
「羽根、はえてる……」
 サファイアの輝きを放つアゲハ蝶の羽根が、大きく広がっていた。まくれあがったカーテンから差し込む陽光に照らされて生まれた神秘的な輝きは、作り物には到底生み出せるものではないだろう。
「さあて……どうしてあげちゃおうかしら? ……」
 蘭花が一歩、足を踏み出す。背中の羽根が柔らかくはためき、煌く鱗粉が空中に舞い躍った。
「ば……」
「化け物だあぁっっ!!」
 少年達は悲鳴を上げ、バタバタと立ち上がってバスの昇降口に殺到した。
「どけよっ!」
「あうっ」
 昇降口で見張りのために立っていた華奢な少年を突き飛ばすと、ドアのロックをはずそうとするが手が震えてなかなか開かない。
「ば、化け物ですってぇ!!」
 化け物よばわりされて怒髪天をついた蘭花の怒声に縮み上がりながら、それでもなんとかドアを開けると、
「ヒイイッ!」
「た、助けてくれえっ!!」
 転げ落ちるように外へ飛び出すと、皆振り返りもせずにそのままバラバラに走り出してしまった。
「このイケてる私を化け物よばわりするだなんて、どんな目をしてるのよ、まったくっ!」
 ドアの外に首を出して悪態をつく。このまま追いかけて一人一人に罪を贖わせる事は簡単だが、やめた。怒りよりも疲れの方が体にドッとのしかかる。本来の姿に戻った際に浄化されたとはいえ、全身を精液に塗れさせられた感触はまだ生々しく肌に残っていた。
「はぁ……シャワー浴びたいわ」
 この近くに温泉があったはずだけど、などと思案しながら後ろを振り返ると。
「…………あら?」
「あ……」
 そこには、呆然と蘭花を見つめる一人の少年の姿があった。運転席の横にもたれかかって、不安気にこちらを見つめている。
「あ、あの、ボク……」
 逃げ出そうにも、抜かした腰が動かないようだ。それに、少年には不思議と逃げなければという気持ちも起きなかった。ただ、美しく輝く羽根の煌きと、均整の取れた抜群のプロポーションに、視線が彼女に縫い付けられてしまったかのようにはずすことができないでいる。
「……君も、アイツらの仲間なの?」
 少年の前で蘭花がその長い脚を折って屈み、瞳を覗き込む。亜麻色に輝く髪の毛が、ファサリと少年の頬を撫でる。妖しく輝く黒曜石のような瞳を前に、どんなウソも見透かされてしまいそうな気分になり、
「ご、ごめ……ごめん、なさい……」
 いつの間にか、そのクリクリした大きな瞳から、ポロポロと大粒の涙が溢れ出ていた。
「フフ……どうして君が泣くのよ」
「でも、ボク……ヒック……何も、できなくて……ウック……」
「そうね……君は手を出さなかったようだけど、アイツらのこと、黙って見てただけだったものね」
「あ、ああ……ご、ごめ……ごめんなさい……ごめんな、さいぃ……」
「ダメよ。許してあげない。……君には、アイツらの分まで、バツを受けてもらうわ。いいわね?」
 蘭花のしなやかな指先が、少年の華奢な首筋をツツッと撫でる。少年は、ただ首をカクカクと縦に振ることしかできなかった。

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