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NOVEL

Un tournesol 〜外伝 過去のクリスマス〜

注意) 性的虐待/強要/小学生蒼衣/輪姦/人形扱い/R-18

 毎年この季節になると思いだす。
 あの、辛くて苦しい日々を……。
 視線を外へ向けると、最近ではすっかり珍しくなった白い雪が遠くまで連ねる屋根屋根を薄く覆い、否が応でも気分を盛り上げる。
 街中にはジングルベルの音や、クリスマスソングが溢れ、木々や建物には煌びやかなイルミネーションが施されている。
 人々は浮かれ騒ぎ、恋人達は愛を囁き、小さな子供がいる家族はケーキやプレゼントを用意して幸せな団欒を囲む。
 そんな過ごし方をする多くの人々が行き交う街中で、だが、蒼衣の心はその盛り上がりとはかけ離れた場所にあった。
 ノートに走らせている手を止め、ふぅっと小さく溜息を吐く。
 そして、BGM代わりにつけていたテレビから聞こえてきたクリスマスソングに、今度は憂鬱さを多分に含んだ溜息を吐いた。
 手を伸ばし、テーブルの端に置いてあるリモコンを取る。そして、電源、と書いてある赤いボタンを押して憂鬱な気持ちになる原因のテレビを消した。
 音のなくなった部屋の中でひとり、蒼衣はもう一度小さく溜息を吐いた。



 施設で過ごしていた四歳から十五歳までの約十一年は蒼衣にとって今思い出してみても悲惨極まりない生活だった。
 勿論、一般的に人々が浮かれ、楽しみ騒ぐこのクリスマスもそれは例外ではなく。
 もう記憶が曖昧になっている幼少時代にはサンタからのプレゼントを楽しみにし、まだ生きていた家族とケーキを囲んでいた日々も確かにあった。
 だが、その両親が事故で呆気なく他界した後は、今まで見た事も聞いた事もなかった叔父と言う男に寂れた田舎町にある、その男が所長を務めているという施設に半ば無理矢理に連れてこられた。それは決して蒼衣に幸せなどもたらすことはなく、それ以降はそんな幼児期の記憶にあったような幸せな時間を過ごした記憶など蒼衣にはなかった。
 突如現れた叔父と言う男は、何故か蒼衣の事を目の敵にしているようで、蒼衣が小学校に上がるまでの数年間は事あるごとに『しつけ』という名の酷い体罰を与え、体中に青痣や擦り傷、切り傷がある事もしょっちゅうだった。
 しかも蒼衣が小学校に上がると今度は暴力以外の虐待が始まる。
 まず最初に叔父が蒼衣にした事は、フェラチオの強要だった。
 まだ性行為の意味も理由も知らなかった蒼衣は、だが他人の、しかも大人の完成されたグロテスクな性器を舐める行為を激しく嫌がった。しかし、叔父に酷く殴られ無理矢理口の中に汚れた性器を突っ込まれると、抵抗する気力もなくそれを拙い仕草で舐めるしかない。
 柔らかかった叔父のモノがゆっくりと蒼衣の小さな口の中で固く大きくなっていく。
 その事に言いようのない恐怖を覚えたのを今でもはっきりと蒼衣は覚えていた。
 だが、そうして毎日時間がある時は叔父の性器を咥え、舐め、吸わされ続ける事が日常になってしまうと、それは恐怖でも苦痛でもなくなっていく。
 特に上手に叔父のモノを舐めれた日は、叔父に殴られる事がなく、褒められる事さえある。
 暴力を奮われる痛みや恐怖を思えば、こうして固くなった性器を舐め、口に咥える事は蒼衣にとって別段嫌悪する事でもなくなっていったとしても誰が蒼衣を責められるだろうか。
 叔父に叱られたくない、怒鳴られたくない、殴られたくない。
 その一心で蒼衣は叔父のモノを口に咥え、まだ小さな口と舌で一心不乱に奉仕し続けた。
 そうして叔父のモノを初めて口にしてから半年後。
 最初の頃よりも大分フェラチオが上達し、叔父の吐き出す精液も戻さず飲み込む事が出来るようになった頃、叔父は蒼衣の前にずらりとバイブなどの大人の玩具を見せ、それを一つずつ蒼衣の体で、後ろの穴で試し始めた。
 最初は卵型の小さなローターを服を脱がせた蒼衣の肛門にローションをたっぷりと塗り込めて埋め込む。電源がオンになっているそれは小刻みに動きながら蒼衣のアナルを刺激し、その初めて感じる不快感と異物勘に蒼衣は泣き叫び、叔父に許しを乞うた。
 だが当然叔父は幼い蒼衣を許す事などなかった。
 嫌がり、その感触の気持ち悪さに泣く蒼衣を怒鳴りつけ、殴りつけながら、叔父は蒼衣の肛門を拡張し、ゆっくりと時間をかけて大人の男を受け入れる場所に変えて行った。
 そしてある程度の太さのモノが蒼衣の肛門に挿入できるようになると、今度はそこに叔父の勃起した肉棒が挿入されるようになった。
 まだ体が成長途中である蒼衣のその部分は、柔らかく、叔父の太いソレをゆっくりとだが確実に飲み込んでいく。
 その様を叔父はつぶさに観察し、蒼衣の耳にいやらしく囁いた。
 ――ほら、解るか蒼衣? 叔父さんのおちんちんがお尻の中に入っていったぞ。全部入ると蒼衣の薄い尻、突き破りそうだよ。あぁ、でも、蒼衣のお尻は温かくて柔らかくて、叔父さん凄く気持ち良い。だから蒼衣も叔父さんのおちんちんで気持ち良くなるんだぞ。――
 粘つく声で言われた言葉に蒼衣は恐怖を感じ、ベッドのシーツに顔を埋めぽろぽろと涙を零した。
 声を上げて泣けばまた叔父の手や足が飛んでくる。
 だから、蒼衣はただ唇を噛み締めて涙を零す事しかできなかった。
 叔父が何故、こんな事を蒼衣にするのかは子供だった蒼衣には解らない。
 そもそもこの行為が一体どんな意味を持っているのかさえも、この当時の蒼衣は知らなかったのだ。
 そんな蒼衣に叔父は毎日毎晩この行為を強い、その幼い体を貪り、その中に欲望の証を何度も何度も吐き出す。
 朝起きて朝食の前に叔父の部屋で叔父の朝勃ちの性器を口で慰め、そして精液の味が残っている口で朝食を摂る。そして、小学校に通い、戻ってきて宿題を済ませた後はまた叔父の部屋に行き、その口と体を使って叔父の荒ぶる欲望を沈める。
 そんな小学生の男子とは思えない生活を蒼衣は叔父に強いられ、否応なく送る事となった。
 しかも施設での集団生活の中、そんな他の入所者達から見れば施設の所長である叔父に贔屓にされているようにも見える蒼衣のその生活は、当然顰蹙を買う羽目になった。
 この施設では二人一部屋が基本だった為、とりわけ蒼衣と同室の少年の顰蹙を蒼衣は酷く買っていた。
 その少年はこの施設では古参の一人で、色々と家庭内で暴力を繰り返しこの施設に送られてきた子供だった。
 子供ながらに残酷で暴力的なその少年は、蒼衣が朝、夕と叔父の部屋に行き、そこで夜中までずっと叔父と過ごす事を快く思っておらず、就寝時間になって帰ってきた蒼衣の憔悴しきった細い体をその少年は鬱憤を晴らすかのように殴ったり蹴ったりを繰り返す日々を送り始める事となった。
 そんな叔父の性欲処理と、同室の少年の暴力に叔父以外に身寄りのいない蒼衣はどこにも逃げる場所もなく、そしてそんな考えを起こすほど蒼衣の心に余裕などなかった。
 日々繰り返される性的虐待と、そして同室の少年の暴力。
 その二つに蒼衣は文字通り身も心も衰弱し、痩せ細っていった。
 そんな蒼衣の様子に小学校の先生達は気が付いていて、児童相談所にも数回相談が行った事がある。
 だが、恐怖で支配されていた蒼衣は叔父達の手から逃げるその唯一の術さえも、ただただ叔父の怒りを買うものとして必死になって先生に対しても、児童相談所の職員に対しても叔父は悪くない、叔父は優しくしてくれる、体の怪我は殴られたモノじゃなくて転んだものだと言い訳を言い続けた。
 強制自宅捜査権や強制保護など出来なかった当時の児童相談所では、結局この蒼衣の言い分を受け入れそれ以上の救いの手を蒼衣に差し伸べる事が出来ないまま、学校の先生達も蒼衣を問題を起こす厄介者として徐々にフェードアウトしていった。
 そして、残ったのは蒼衣に性的虐待を続ける叔父と、暴力を奮う施設の少年達に取り囲まれているその逃げ場のない場所だけだった。
 そんな日々を送り、蒼衣が小学三年生になった年のクリスマスイブ。
 それは叔父の一言で決定した。

「今日はクリスマスイブだ。だから、中学生になった君達にへ特別に私からプレゼントがあります。」

 その言葉に普段は荒んだ心を持つ少年達だったが、まるで普通の少年達のようにわっと歓喜の声を上げる。
 食堂に集められた中学生以上の少年達は互いの顔を見合せながら、ざわざわと一体どんなプレゼントをもらえるのかその話に花を咲かせていた。
 そんな少年達を所長でもある叔父は満足そうに見渡すと、パンっパンっと二回程手を叩いて、その場のざわめきを沈める。

「――蒼衣、前に出てきなさい。」

 中学生以上の少年が集まっているその後ろの方で、まだ小学生だった蒼衣は居心地の悪さを感じて小さくなっていた。だが、その叔父の言葉に驚いたように顔を上げると、戸惑ったように辺りを見渡す。
 叔父が蒼衣を呼んだ事で、少年達の視線が蒼衣に向けられる。
 鋭い反感を込めた視線に睨まれ、蒼衣は竦み上がりながらも叔父の言葉に従ってがくがくと震える足をゆっくりと前に出して叔父が立っている食堂の奥にある台の上に上がった。
 その蒼衣の姿に叔父は瞳を細めて笑うと、改めて視線を座っている少年達に戻す。そして、蒼衣の肩をがっしりと掴んで引き寄せると、叔父は高らかに宣言をした。

「君たちへのプレゼントは、この蒼衣です。」
「っ!?」

 にこやかな笑顔でそう少年達に告げると、その言葉の意味が把握できない会場は先ほどよりも大きくざわざわとした声に埋もれる。
 少年達は訝しい表情で互いの顔を見合わせ、叔父と蒼衣の顔を何度も見つめ口々に、意味解んねー、そいつがプレゼントってありえねー、だとか口汚く不満を漏らしていた。
 そしてプレゼントと称された蒼衣自身も何が何やら解らず目をおろおろと彷徨わせながら、頭上にある叔父の顔を様子を窺うようにちらちらと見る。
 すると叔父はゆるりと嫌な顔で笑うと、蒼衣を冷たい目で見下ろし、その肩に回していた手を蒼衣の服へと掛けた。

「つまり君達にはこの蒼衣の体をプレゼントします。好きに使ってやってくださって構いません。……まぁただあまり酷く体や顔に痣を残すと、またあの煩い児童相談所の人達がやってきますので暴力はほどほどに。その代わり、私がこの数年間時間をかけてたっぷりと蒼衣の体にエッチな技術を仕込んでおきましたので、持て余している性欲がありましたらどうぞこの子をダッチワイフや肉便所代わりに使ってください。」
「……っ、叔父、さ……っ。」

 プチプチと蒼衣の来ているシャツのボタンを外し、蒼衣の服を脱がせながら叔父はそんな恐ろしい事を平然とした顔でその場に居る少年達に向けて言う。
 それを聞いた蒼衣は顔面蒼白になり、思わずすがるようにして叔父の名を口にした。
 だが叔父はチラリと蒼衣に冷たい目を向けると、蒼衣の言葉を遮るように口を開く。

「いいですよね、蒼衣。お前は私の言う事は何でも聞くイイ子だ。だから、私だけでなく、今度はこの施設に入所している子供達や、後、職員の方々の性欲処理のお手伝いをしてあげなさい。……するんだよ。返事は?」

 最後の方は有無を言わさない強い口調で蒼衣に返事を強いる。
 その叔父の言葉と、口調に蒼衣はガタガタと体を震わせるとぎこちない仕草で小さく頷いた。

「動作ではなく、言葉で言いなさいと何度も言っている筈だ。蒼衣、ほら、この場に居る皆さんに自分を好きに使ってくださいってお願いしなさい。」
「……っ、は、い……叔父さん……。せ、先輩の……皆さん……、ど、どうぞ……僕を好きに使ってくだ、さい……。」
「セックスの相手も悦んでします。」
「せ、セックス……? の相手、も、悦んで……します。」
「お尻の穴も調教済みなので、勃起したおちんちんを一杯突っ込んでください。」
「ぅ……、お、お尻……の、あ、穴、……も、調教……っ、ぅ、うぅ……っ済み、なので……ぅ、ひく……っ、ぼっき、した……っ、おちんち……、っ、一杯、突っ込んで……く、くださ……っ、う、ぅう……っ。」

 蒼衣の動作に更に冷たく鋭い目つきになった叔父は蒼衣の服を全てその体から剥ぎ取ると、この展開についていけず何が何だか解らず呆然としている少年達に向けて蒼衣に自分の言葉を復唱するように言外に命ずる。
 その叔父の言葉に、蒼衣はガタガタと震えながら、そしてその瞳に涙を一杯に溜めながら叔父の言葉の後をついて復唱していく。
 だが、その言葉の意味を段々と理解していくうちに蒼衣の目に溜まった涙はぽろぽろと零れ、その白い頬に涙の跡を行く筋も残した。
 そして最後の方には声を押し殺して裸のままボロボロとその場で泣き崩れてしまう。
 だがそんな蒼衣に叔父は容赦がなかった。
 顔を覆い泣いている蒼衣の体を掴むと反転させ、呆然としたままの少年達に蒼衣の尻を見せる。
 そしてその蒼衣の薄く細い尻を皆の前で広げて見せた。

「ここに皆さんの有り余る性欲で好きなだけたっぷり種付けしてやってください。この子は男のチンポを口でも尻でもしゃぶったり咥えたりするのが大好きな淫乱ですから気兼ねする事はありません。……あぁ、男の子のお尻に突っ込むのに抵抗がある方は、とりあえずこの子の口や手で楽しんでください。病みつきになりますよ。」

 叔父はそう蒼衣の尻の穴をその場に居る少年達に見せつけながらそう説明をする。
 その言葉の数々に蒼衣は唇を噛み締め、声を押し殺してぼたぼたと涙を零す事しかできない。ここでその言葉を否定したり、叔父のする事に異を唱えればそれはすぐさま酷い暴力や数日間の食事抜きに繋がる。
 育ち盛りでもあり、そして幼児期から叔父に殴られたり蹴られたりが日常だった蒼衣としては、叔父に手を上げられる事や食事を抜きにされる事は、入居者の少年達に恥ずかしい部分を見せられ侮辱的なコメントを添えられて説明される事よりも嫌な事だった。
 大人になって思えば、ここでちゃんと嫌だと意志表示をしておけばよかったとは思う。
 だが当時の蒼衣はまだ小学三年生で、目の前にある飢えや暴力よりも、これから先に待ち構える終わりのない性的虐待の連鎖など想像もつかない事だったのだ。
 だから蒼衣は叔父の言葉に拒絶の声も反応も返す事が出来ずに、淡々と叔父がこの場に居る少年達に蒼衣の扱い方を説明している叔父の言葉を聞き続ける。
 叔父は、蒼衣の扱い方をまるで本当のダッチワイフのように説明していた。
 蒼衣の体に愛撫を与える事は禁止。
 キスも禁止。
 一人で占有する事も禁止。
 蒼衣とセックスする場合は必ず複数で、手と口と尻を同時に使う事。
 挿入しにくい場合は蒼衣本人にその部分を解させる事。
 ローションの使用は可。
 道具の使用は、手足を縛る柔らかい紐程度ならば可。
 ただし、後はつけてはいけない。
 優しい言葉もかける必要はない。
 あくまでも蒼衣は、性欲処理としても『人形』として扱う事。
 などなど。
 簡単に言うと蒼衣を『人間』として扱うな、と言った趣旨の事だった。

「――と言う訳で、この子の使い方は理解しましたか? 質問がある人は手を挙げてください。何かありますか?」

 叔父は蒼衣の使い方の説明を終えると満足したようにその場にいる少年達の顔を見渡す。
 少年達はあまりに常軌を逸している叔父の言葉に唖然とした顔をし、ぽかんと口を開けて叔父の顔を見ていた。
 その場は妙な静けさが落ち、誰一人発言するものもいない。
 それは恐らくこの施設の所長でもある叔父のそのにこやかな顔の下にある言い知れぬ狂気をその耳で目で肌で感じ取ったからかもしれなかった。
 誰も発言するものもいないその光景に、叔父は更に満足そうに微笑み頷く。

「納得したみたいですね。せいぜい皆さん、蒼衣を可愛がってやってくださいね。……ほら、蒼衣。お前からも皆さんにお願いしなさい。」
「っう……っ、うぅ……っ。」

 ぼろぼろと涙を零している蒼衣の顔を覗き込むと、叔父は威圧的な瞳で蒼衣にそう命ずる。
 だが、一体これ以上何をお願いすればいいのか、どう言えば叔父の反感を買わないのかが解らず蒼衣はぽろぽろと涙を零しつづけ、叔父に訴えかけるようにその目を見返す。
 すると叔父は呆れたように小さく溜息を吐いた。

「……どう言えばいいのか解らないのか? まったくお前はあの男に似て本当に愚鈍だな。仕方がない、言葉でお願いできないなら自分の使用方法を実践で見せてあげなさい。」
「……ぇ……?」
「そうですねぇ……、あぁ、そうだ、吉野くん。前に来なさい。」

 嫌悪をその瞳にありありと浮かべると叔父は酷く醒めた目で蒼衣に一瞥をくれた後、だがすぐにいい事を思いついたとでも言うようにいつものにこやかな笑顔に戻る。
 そしてその場の中でもとりわけ体格の大きい少年の名を呼んだ。
 その叔父の呼び掛けに食堂に集まっている少年の瞳が一斉に後ろに座っているその吉野と呼ばれた少年へと向けられる。
 吉野と呼ばれた少年は、すでに義務教育は終了し高校に通っている。今、この施設の中では最年長の少年だった。
 叔父の言葉に訝しげに眉を寄せた後、吉野はそれでも渋々席から立ち上がると、面倒臭そうな雰囲気を捲き散らかしながらずりずりと足を引きずるようにして蒼衣と叔父が居る台まで歩いてくる。
 その吉野の態度に叔父は一瞬その瞳を不快そうに細めたが、すぐに気持ちを持ち直したのかにこりと少年に向けて微笑み、そのまま視線を隣にいる蒼衣へと向けた。

「蒼衣。彼を気持ち良くしてあげなさい。」

 そしてそう蒼衣にやんわりと命令する。
 その言葉に蒼衣の体がびくんっと反応をし、驚いたような戸惑ったような顔して叔父の顔を見上げた。相変わらず蒼衣の瞳には涙が溜まり、それがぽろぽろと零れ落ちてはその頬を伝って落ちている。
 蒼衣の視線に叔父は小さく舌打ちをして、瞳を細めて蒼衣を見た。
 叔父の不機嫌なその態度に蒼衣はまた小さくビクッと体を竦めると、視線を慌てて吉野の方へと向ける。
 そして嫌そうな顔をしてそれでもその場に突っ立っている吉野の傍に近づくとその足元に蒼衣はしゃがんだ。

「……。」
「んだよ。」

 チラリと視線を上げ吉野の顔を見ると、機嫌の悪そうな声が振ってくる。
 その声に体をまた小さく震わせながら蒼衣は震える手で吉野の来ている作業ズボンのジッパーに手をかけた。蒼衣の手がそれをゆっくりと引き下ろしその中に蒼衣の細く小さい指が忍び込んでくると平静を装っていた吉野の顔に驚きと、緊張の色が走る。
 視線を走らせ、施設長である叔父の顔を窺うように吉野が見ると、叔父はにこやかに笑い頷いた。

「大丈夫。とりあえず蒼衣に身を任せなさい。そして蒼衣のすることがどうしても嫌だというのなら、改めて私に言いなさい。」
「っ、でも、こいつ……、ぅあ……っ。」

 叔父が諭すように言った言葉に吉野は何か反論をしようと口を開く。だが、その言葉は最後まで言われることなく口の中に消えて行った。
 蒼衣が吉野の男根を下着の中からひっぱりだし、それを口にしたためだ。
 吉野自身、問題児だっただけあって女性経験はそれなりにある。年上も、年下も味わい済みだ。
 だから別段フェラチオ自体、珍しい事でもなかったし、男好きの女性とも多々付き合ってきただけに今更驚くようなことはなにもなかった筈だ。寧ろ、同性にフェラチオをされれば嫌悪感しか湧かないだろう、と、そう吉野は思っていた。
 だが、実際に蒼衣の口の中に自分の性器が吸い込まれ、生暖かい咥内に包まれたっぷりの唾液を纏わりつかせた蒼衣の舌が幹を舐め、先端を吸い上げ、顔を前後に動かして刺激を与え始めると、その幼い顔立ちや肢体からは想像も出来ないような淫らな快感が吉野の腰を支配した。
 その事に驚き、あっという間に蒼衣の口の中で勃起してしまった愚息から湧き上がる今まで感じたことのないような快感に、吉野の喉は驚きの声と、快感の唸り声を絞り出すしかなかった。
 蒼衣を押し退けることさえも思い浮かばず、堪らない快感にいつしか吉野は蒼衣の頭を掴み、他の入所者が周りでこの行為を固唾を飲んで見ていることさえもその頭の中からは失念し、自ら腰を蒼衣の口へと打ち付ける。

「っ、はぁ……っ、はっ、ぅ、く……っ、で、出る……っ!」
「んぁ、ちゅっ、くちゅ……っ、ふぁ……っ!? んん……っ、ん……っ。」

 数回腰を打ち付けた所で、我慢など出来そうもない射精への欲求が吉野の体全体を襲う。その欲求に従う形で、蒼衣の頭を強く股間へ押し付けるとその喉の奥へとたっぷりと欲望を放った。
 吉野の性器から若いだけあって叔父のそれよりも勢いよく噴出してきた精液に、一瞬蒼衣の顔が驚いたものへとなる。だが、すぐに瞳を閉じると、いつも叔父に命令されていたように全ての精液を搾り取るようにペニスに吸い付き、溝からあふれ出る精液を口の中へと溜めていく。
 そして、一滴もその先端から出てこなくなったのを舌先で確認した後、ゆっくりと自身の口から吉野の分身を引き抜いた。

「ほら、吉野くん。蒼衣を見なさい。」
「……は? え……? あ……。」

 男の口の中に精を放った事よりも、欲望を吐き出しすっきりとした事に気を取られていた吉野に、叔父がゆるりと声をかけ、蒼衣へと改めて意識を向けさせる。
 叔父の声に一瞬怪訝な表情を見せたものの、吉野は今自分のモノをしゃぶっていたのが同施設の幼い少年であったことを思い出し、慌てて下半身を見下ろす。
 すると、蒼衣が目じりを赤く染めた表情で吉野を見上げ、その口を大きく開けていた。
 蒼衣の口の中にたっぷりと溜まっている白濁した液の存在に、吉野の表情が強張る。今、自分が吐き出したモノが蒼衣の口の中に未だ溜めたままでいて、それが尚更、自分がこの少年のフェラチオに屈したような気分を吉野に抱かせた。
 だが、そんな吉野の感情を知ってか知らずか、蒼衣は吉野の顔をどこか恍惚とした表情で見上げたまま、その口の中に溜まっていた吉野の精液をゆっくりと、吉野に見せつけるように、嚥下していく。
 こく……。こく……っ、こくん。
 細い喉が何度か上下し、その口の中にあったそれを飲み干す音が小さく吉野や、周りの少年たちの耳に届く。
 最初はかなりざわついた状態だったその場は、その小さな音が皆の耳に聞こえるほどいつの間にか痛いほど静まり返っていた。
 その静寂を破ったのは、叔父の冷徹な声だった。

「……蒼衣。どういうんだ?」
「……はぁ……ぁ、っ、ぅ。……せ、せい、液、とっても、美味しかった、です……。も、もし、まだ満足されて、なかったら……、ど、どうぞ……、僕のエッチな、お尻の、あ、穴や、手、や、口を、満足されるまで、つ、使って、ください……。ぼ、僕は、淫乱な、エッチの為の、に、『人形』、で、す……。いっぱい、おちんちん、や、精液、を、僕の体にかけたり、飲ませたり、してください。ぼ、くは……、おちん、ちん、も、精液も、大好きな、淫乱な『人形』です……っ、お、願、い、します……ぅ、く……っ。」

 冷たい、無慈悲な声で名前を呼ばれ、いつも叔父の部屋で言わされている言葉を言外に強要される。
 その声の冷たさにも、施設の皆が見ている状況にも、蒼衣は今まで何度も感じてきた絶望をまた感じながら、涙声になりながらそう皆に自分を性奴隷としての『人形』として使うことを懇願する言葉を口にした。そして膝立ちだった腰をその場におろし、深々と皆に向けて頭を下げ、まるで土下座をするようにその手を顔の前についた。
 明らかに言わされている、蒼衣本心からの言葉ではない、とわかるその言葉に、だが、その場にいた少年達は、一斉にごくりとその喉を鳴らした。
 まず最初に蒼衣の体に手を伸ばしたのは、先ほど蒼衣にフェラチオをされた吉野だった。
 声を押し殺して額を床につけたまま泣いている蒼衣の頭に手をやり、その髪を掴む。そして、先ほど放出し多少柔らかくなったその性器を蒼衣の口にまた押し当てた。

「舐めろよ。好きなんだろ。」

 明らかに加虐的な興奮に包まれた声で、そう、蒼衣に命令する。
 その声に一瞬驚いた顔はして見せたものの、蒼衣はぽろぽろと涙を零しながらも、ゆっくりと口を開くと吉野の性器をまたその口の中へと招き入れた。
 途端に、吉野は激しく腰を動かす。

「ははっ! 蒼衣、てめぇ本当にチンポ好きなんだな! すげぇ、嬉しそうに、纏わりつくように舐めやがって!! ほらっ、てめぇらも見てねぇで蒼衣を犯してやれよ! お前らだって溜まってんだろ?! あぁっ、畜生っ! 男の癖に、餓鬼の癖に……っ、んで、んな気持ちいい口してんだよっ! ……っ、はぁ、舐めろよっ、吸えっ、あ、あぁ……っ、畜生っ、イぃ……っ、はぁ、ぁ、く、蒼衣っ、畜生っ、蒼衣……っ!!」
「んぐ……っ、んん、っ、……ちゅる……っ、くちゅ……ぅ、はっ、……?! ん、んんん……っ!!??」

 やけくそのように蒼衣の口に腰を打ち付けながら、周りで生唾を飲んでばかりいる少年達を焚き付けるような言葉を吉野は叫ぶ。
 そうしながら、吉野は蒼衣の頭をぐしゃぐしゃに掻き回し、腰から湧き上がってくる今まで経験したことのないような堪らない快感に呻き、畜生、畜生、とうわ言のように口にする。
 そんな吉野の様子と、言葉に、まず動いたのは目の前でその痴態を見せつけられていた香川という中学三年の少年だった。
 目の前に突き出されている蒼衣の薄い尻に震える手をゆっくりと伸ばしていく。
 そしてその指先が触れると、蒼衣の体温と、薄らと掻いている汗の湿り気に理性はどこかへ消えてなくなった。
 ごくり、と生唾を何度も飲み込み、焦るように片手でかちゃかちゃとベルトを外す。ジッパーを下ろし、前をくつろげるとすでに吉野と蒼衣のフェラチオシーンでいきり立っているペニスを引きずり出した。
 そのまま、蒼衣の薄い尻肉へと押し付ける。
 と、横から叔父がローションのボトルを差し出した。

「たっぷり振りかけて使うと、最高に気持ちいいぞ。」

 悪魔の笑みを浮かべ、そんな囁きを叔父は香川の耳へと囁く。
 その言葉にまたしても大きく喉仏を動かして生唾を飲み込むと、香川は奪うように叔父の手からローションのボトルを取ると、蒼衣の尻の割れ目へたっぷりとそれを注いだ。
 その冷たさに蒼衣の喉からくぐもった驚きの声が発せられる。
 だが、その声さえも香川や吉野の興奮を誘うだけだった。

「はぁ……っ、はぁ……っ、あ、蒼衣、挿れるぞ……っ、お、お前のっ、け、ケツ穴、に、挿れるからなっ……!!」

 興奮と初めての行為に緊張して掠れた声で香川がそう自分を奮い立たせるようにそう叫ぶと、ローションがたっぷりと塗してある蒼衣の割れ目へと怒張した肉棒を強く押し当てた。
 ぬるりとした冷たい感触に一度身震いした後、腰を揺すりローションをペニスに馴染ませる。そして、先端が蒼衣の窄まりを見つけると、そこに標準を合わせてぐっと腰を前へと突き出した。
 小さな窄まりに負荷をかける。だが、大量のローションが却って蒼衣の中への侵入を拒むように、ぬるん、と滑り、ペニスが窄まりから外れた。
 それを焦って何度も窄まりに押し当て、腰を前に突き出し、滑り、また戻す、というのを何度か香川は繰り返す。
 女性経験がほぼない香川に、男への挿入、しかも、解れてもいない蒼衣の小さなアナルに性器を挿入するのはなかなか難しかった。
 それを冷めた目で叔父は暫く見ていたが、見るに見かねてもう一度香川へと近づく。

「香川くん。少し待ちなさい。」

 そう声をかけると、今度は蒼衣へと視線を向ける。そして、蒼衣の名を静かに呼んだ。
 途端に、びくりと蒼衣の体が震えると、吉野の性器をしゃぶっている口はそのままで視線だけ叔父へと向ける。

「蒼衣、香川くんが挿入が難しいそうだ。自分で解して、香川くんの上に乗ってあげなさい。あぁ、勿論、吉野くんへの口への奉仕は続けたままだよ。」
「っ、は、はい……っ、ん、ちゅ、ふ……ん、ちょ、ちょっとだけ、失礼、しま、す……。はぁ、……ん、んん……っ、ふぁ、ちゅ、ちゅる……っ、ん……っ。」
 
 叔父の言葉に蒼衣は一瞬だけ吉野の性器から口を離すと頷き、また唇を寄せ、舌を突き出してその幹や先端、袋部分を舐めたり、手でこすったり、揉んだりしながら、もう片方の手を自身の窄まりへと持っていく。
 そして、皆が見ている前で蒼衣は叔父に命じられた通りに、自分のアナルの中へと指をゆっくりと挿し入れ、ローションで濡れそぼっているそこをくちゅくちゅと卑猥な音を立てながら掻き回す。
 そうしながら叔父に導かれ横になった香川の腰の上へと蒼衣はゆっくりと腰を落とした。
 香川の勃起している性器に手が触れると、窄まりから指を引き抜く。
 そして、今度は香川の肉棒を掴むと、それを直角に近い角度に起こし、その上へと蒼衣は自ら窄まりを押し当てるとゆっくりとそれを体内へと挿入していった。
 ローションがたっぷりと塗り込められているせいか、先ほど軽く蒼衣自身がアナルを解したせいか、先ほどまで滑って全く挿入できなかったのが嘘のように、あっさりと蒼衣の体内へと香川の性器が収まっていく。
 ぬるぬるとしたローションの感触と、初めて感じる人間の粘膜、体内の温かさと、柔らかく包み込むような感触に香川は何とも言えない快感を得た。
 マスターベーションでは味わえない生身に与えられる快感に、蒼衣の体内へペニスが全て埋め込まれる前に、香川のそれは爆発してしまう。

「うっ、うぅううううう……っ、はぁっ! うあっ、あーーっ!!!」

 ぞくぞくと背筋を駆け上がる射精への欲求に無意識に腰を突き上げ、獣のように快感の咆哮をあげ、香川は蒼衣の直腸へと精を放った。
 勢いよく飛び出すその精液に、蒼衣の体もぶるりと震える。
 叔父に散々その部分を開発されていたせいか、ぞくぞくとしたなんとも言えないむずむずするような快感が尾てい骨沿いに蒼衣の体を這い上がった。

「ふぁ……っ、ん、んん……ちゅぅ、ちゅ……っ、ちゅく、ん、ふぁ……っぁ、か、がわ、く……ん……っ、ん、はぁ、ぁう……あ、ついっ。」

 直腸部分に放出された香川の精液に、思わずそう吉野の性器を口にしたまま恍惚と呟く。
 その声を聞いた吉野の顔にどす黒い加虐の笑みが広がった。
 蒼衣の頭に置いていたその手に力を籠め、その口の中に深く自身の性器を差し込む。
 そうしながら顔を施設の仲間たちが居るほうへと向けると、歪な笑みをその口元に浮かべたまま口を開いた。

「おいっ! 香川はもう爆発しちまったぞ!! 次の奴はいねぇのか?! こいつ、ケツにチンコ挿れられてめっちゃ気持ちいいみてぇだぜ? 折角のクリスマスプレゼントなんだ!! 施設長が言うようにガンガンお前らのチンポで犯してやれよ!!! ほらっ、何を躊躇ってんだよ! 俺達が愛撫してやる必要もねぇってよ!! 全部自分でやるんだから、俺達はこいつの穴に突っ込むだけでいいんだってよ!! しかも妊娠もしねぇ、こりゃ、いいダッチワイフじゃねぇか!」

 吉野の声に、またその場に小さなざわめきが満ちる。
 隣り合っている少年同士で互いに顔を見合わせ、未だ蒼衣に手を出すかどうかを躊躇っているようだった。
 そんな少年達の姿を見ながら、叔父は小さく溜息を吐く。
 それはどこか失望の混ざった溜息だった。

「――君達は札付きのワルとしてこの施設に入ってきたというのに、なんとも情けないねぇ。自分から犯してください、と懇願している淫乱な蒼衣を犯すことさえ出来ないなんて。まったく情けないことだよ……。」

 心底呆れたように蒼衣の叔父はそう独り言のように呟き、大げさな仕草で額に手をやるとふるふると頭を振る。
 そんな叔父の態度と言葉に、一気に少年達の間に剣呑な空気が漂う。

「本当に情けない奴らだよなー。こいつが自分で犯してくださいって、懇願してんだ。なのに犯してやらねーでどうすんだよ。悪ぶってても所詮その程度って事だよな。ま、いいさ。お前らが犯さねぇなら、俺と香川でたっぷり可愛がってやるからよ。お前ら、チンポギンギンにしながらそこで指咥えて見てろよ。……ほら、香川の奴、もう蒼衣のケツに出すの三回目だぜ?」

 まるで叔父の言葉を継ぐように吉野はへらへらと笑いながら、そう叔父と同じように呆れたように言う。
 そして蒼衣の口に腰を振りながら、視線を下へと向けると、蒼衣の下でこの騒動の間中もまるで猿のようにその尻に腰を打ち付けている香川の姿を見た。
 はぁはぁと荒い息を吐きながら、一回吐き出しただけでは終わらなかった欲情をその尻にぶつけている。そうしながらまるでうわ言のように、すげぇ、とか、めちゃ気持ちいい……、など涎を垂らした締まりのない口から呟いていた。
 そんな香川の様子を苦笑しながら周りの少年達に説明してやると、少年達の視線もおのずと吉野や叔父から香川へと向かう。
 蒼衣の薄い尻に香川の歪な形をした性器が、ローションによって嫌らしい水音を響かせながら何度も何度も出し入れされていた。ぐちゅぐちゅと掻き回されるたびに、香川が蒼衣の中へと放った精液が泡立ち、更に卑猥な音を立てた。
 その香川の荒々しい、蒼衣の体のことなど考えていない本能だけの挿入とピストンに、それでも蒼衣は吉野の肉棒をその口で慰めながらも、感じているようにその頬を赤く染め、自らも腰を動かして香川に快感を与えている。
 香川と蒼衣のそんな姿に、少年達の喉がそれぞれ大きく上下し、生唾を飲み込んだ音が部屋の中に何度も何度も響く。

「あ、あぁ……っ、蒼衣っ、出るっ……っでるでるでる……っ!!! 全部飲めよ!! 精液好きなんだろ?! ッ……くぅ……っ!」

 少年達が物欲しそうな唾液を嚥下する音を聞きながら吉野は蒼衣の口から与えられる快感に二度目の射精をする。
 その頭をしっかりと掴んでその喉の奥へと先端を突き刺すと、一気に欲望を解放した。
 吉野の射精は、二度目だというのにまだまだ勢いがあり、蒼衣の喉を一気に貫く。その勢いにまた咽そうになるが、蒼衣は少しだけ自分で頭の位置を変えると、そのまま吉野の命令通りに勢いよく出るそれを飲み込んでいく。
 蒼衣の白く細い喉が反り返り、遠目にもその喉が上下に動いて吉野の精液を飲み込んでいることが良く解る。
 ぎゅっと強くつむっている蒼衣の目じりには、快感のせいか、それとも苦しさのせいか、たっぷりとした涙が浮かび、喉が動く度に零れ落ちて蒼衣の頬を濡らした。
 その表情がまた、少年達の心に加虐の火を点ける。

「ぅおおおお……っ!!!」

 突然、吉野達を取り巻いていた少年の中の一人が、我慢できないような咆哮をあげた。
 と、同時に、前に居る少年達を掻き分けるように前へと出ると、蒼衣の腰の下で未だ腰を振り続けている香川の前へと立つ。
 そして、その首根っこを掴むと香川が抵抗するのも構わず蒼衣の腰の下から引きずり出した。
 ずるり、と香川の性器が蒼衣のアナルから抜け、ごぽり、とそのぽっかりと空いた穴から香川が放出した精液が零れてくる。とろとろと零れ、少し腰を浮かした蒼衣の太ももを白く汚していった。

「梅田、てめぇっ!!!」
「うるせぇ! お前はもう散々楽しんだだろ!! 俺と変われっ!!」

 自分の首根っこを掴んで蒼衣から引き離されたことに香川が怒声を上げる。
 だが、その香川に向けて梅田、と呼ばれた少年は血走った目を香川へと向けると、ぎらぎらとした欲情を隠しもせず、そう香川の体を突き飛ばす。
 ひょろりとした香川の体は、がっちりとした梅田に突き飛ばされて、下半身を丸出しにしているという不格好な姿で部屋の床に尻餅をつくこととなった。
 そんな香川にちらりと横目で見た後、梅田は更になにか文句を言っている香川に頓着することなく、今まで香川が居た場所に膝をつくと、焦った仕草でジーンズのジッパーを下ろした。途端に、その隙間から膨張し、硬くなった梅田の性器が飛び出してくる。

「男に突っ込まれて気持ち良さそうにしやがって……!! 畜生っ!!」

 がちがちに勃起しているペニスを荒々しい仕草で掴み、そう目の前にいる細い肢体の少年にそう苛立つように声をかけた後、その尻を掴むと今の今まで香川に挿入されていたアナルへと梅田は自身の肉棒を突き刺した。
 びくり、と蒼衣の体が揺れ、いまだ吉野の性器を口にしていたその口が外れ、今まで聞いたことのないような甘い声がその薄く小さな唇から零れる。

「はぁ……ぅ、んん……っ。」

 小さな吐息のようなその声には、確かにアナルを犯される事への快感が含まれているように見て取れた。
 その姿に、声に、アナルを犯している張本人の梅田は嫌悪感を丸出しにした表情をその中学生とは思えない大人っぽい顔に浮かべる。

「っ、こ、の……っ、変態が!! ケツ、気持ちいいのかぁ?! あぁん?! んなに、男にケツ犯されるのが気持ちいいのかよっ!! 男の癖にこの淫売が!! くそったれ!!」

 蒼衣を中傷するような言葉を蒼衣の背中に浴びせながら、梅田は腰を激しく前後に振る。
 腰を高く持ち上げ、その薄い尻を強くその腰で打ち付けて香川よりも深くその内臓に肉欲を突き刺した。

「ひぁ……っ、ぁっ……っぅうう……っ、ひぐ……っ!」

 梅田の荒々しいピストン運動に蒼衣の背中が弓なりに反る。そして、その喉からは苦痛とも、快感ともしれぬ吐息が零れていった。
 目尻からは相変わらず止めどもなく涙が零れ、その白い頬を濡らしていく。
 そんな蒼衣の苦痛とも恍惚ともしれない顔を見下ろしながら吉野は、二度目の射精で荒く肩で息をしながらちらりとまだこちらを様子を見るように伺っている少年達を見る。
 そして、にやりと笑うと、一人の少年を指差した。

「新藤、お前最近オンナと別れたっつってたよなぁ? いい機会だから蒼衣の口で抜いて貰っちゃどうだ? 一人でセンズリすんのも空しいだろうがよ。そこら辺のオンナよかうめぇぜ?」

 くっくっくっと小ばかにしたように喉の奥で低く笑いながらそう一人の少年を指名して吉野はそんな事を言い始める。
 指差され、名前も出された新藤という少年は、その端正な顔を少しばかり嫌そうに歪めた。
 だが多少の興味あったのか、一歩前に出ると、後ろを梅田に犯されながら苦痛と快感がないまぜになったやけに色っぽい顔を見下ろす。
 自分より年下の、まだ小学生の少年がこんな表情をしてアナルに男を咥えこんでいるという事実がまず新藤には信じられなかった。だが、目の前にある光景は間違いなく現実で。見ているだけで、相手が男だと解ってはいても、目の前で繰り広げられるAVばりのセックスシーンに、多感でまだまだ性的に旺盛な時期の新藤にとっては堪らないものがあった。
 ごくり、と生唾を飲み込む。
 そして視線を吉野へと向けると、吉野はにやにやと意地の悪い顔で笑っていた。
 その事に少しだけムッとする。

「チッ、てめぇが男にチンコ舐められて喜ぶような下種野郎とは思わなかったぜ。」

 そう苦々しさを込めた口調で吐き捨てるように言う。その新藤の言葉にピクリと吉野の太い眉が引きつったように動いたが、すぐに余裕を取り戻したようにニヤリと笑うと新藤の真ん前に移動する。そして、自分より幾分か高い新藤を下からねめつけるように見上げながら、その手を新藤の股間へと降ろすとその部分を鷲掴みにした。

「っ!? ?!」

 突然大切な部分を吉野に掴まれ新藤は目を白黒させて、吉野の顔を見下ろす。
 新藤のそんな表情に愉快そうにくつくつと喉を鳴らして笑うと、吉野は手の中に感じる男としての確かな硬さに改めてニヤリと新藤に笑いかける。

「そういうおめぇは蒼衣のえろい姿見てチンポおっ勃ててるじゃねぇか? あぁん? 俺に憎まれ口叩く前にこのチンポ萎えさせてから喧嘩売れよな。」
「……っく!」

 吉野に男としての一番の弱点である場所をがっつりと掴まれ、そんなことまで言われ新藤の整った顔に羞恥と怒りの朱が上る。
 悔しそうに歯ぎしりし、零れる程目を剥いて目の前にある吉野の目を睨みつけた。
 だが吉野の方はそんな新藤の剣呑な色が込められている睨みつけに動ずることはなく、にやにやと下卑た笑いを浮かべるとその耳へと顔を近づける。

「いいからよ。蒼衣にフェラして貰えよ。マジ気持ちイイぜ? おめぇを振ったアマのへたっくそなフェラとは比べ物になんねぇぞ。あの女マジフェラへたっくそだったし、マンコもゆるゆるだったからなぁ。お前、しらねぇと思うけどあいつ同じ学校の男ほとんどにヤらせてたんだぜぇ? あんな頭空っぽのオンナにお前が執着する意味わかんねぇよ。良かったの顔だけじゃねぇか。」
「なっ……っ!」
「ま、お前らがヤんねぇんなら、俺達三人で蒼衣を愉しませてもらうけどな。ほらっ、梅田ももう蒼衣の虜みてぇだぜぇ〜?」


 耳元に囁かれた言葉に新藤が色めき立つ。
 そんな新藤を見て笑うと、吉野は新藤から体を離し、今度は蒼衣達の姿を相変わらず遠巻きに眺めている同じ施設の少年達に向けてそう呼びかけた。
 そして親指で自分の後ろで獣のように交わっている梅田と蒼衣を指差す。
 そこには体位を変えて、正常位で蒼衣を犯している梅田の姿と、梅田に後ろのポジションを盗られたせいか蒼衣の顔の方に移動してその口にまた堅く勃起しているペニスを突っ込んで腰を振っている香川の姿があった。
 童貞だった香川にしてみれば、蒼衣のアナルと口に今まで味わったことのないような快楽を覚え、堪らない征服欲に酔いしれることができる蒼衣の存在は男だということを忘れるくらいこの短時間で蒼衣の体に溺れていた。
 そして、蒼衣のアナルを犯している梅田もまた、そこから与えられる女とは違う、だが、とてもよく似た快感に夢中になって腰を振っていた。
 梅田がアナルを深く突き刺すたびに蒼衣の体がびくりとしなる。
 口には香川の勃起した性器が突っ込まれていて、声らしい声は出ないが、それでもその体の反応や、時折漏れる吐息にこの行為を蒼衣が嫌がっていないことが見て取れた。
 そう。蒼衣はこの行為を嫌がってはいなかった。
 勿論、気持ち的には、どうして、という理不尽な思いはある。
 だがそれでも、嫌がって抵抗して叔父に暴力を振るわれたり食事を抜きにされてしまうよりは、大人しく従って、この時間を早く終わらす方向に持って行った方が賢明だろうとそう幼いながらに思っていた。
 それに、叔父とするよりも少年達とする方が何故か体にかかる負担や痛みといったものは少なかった。
 まだ完全に大人になっていない体の少年達が相手だからか、アナルや口に受け入れるそれは叔父ほど太く長くなく、硬さは少年達の方が硬かったがそれでも叔父よりはずっと早く射精もしてくれる。叔父とのセックスはとにかく長く、しつこかった。しかも、凶器のように太く長いペニスは幼い蒼衣の体には負担が大きすぎたのだ。
 それに叔父はこれにプラスして様々なおもちゃなども使われる。主に、アナルに。
 あの無機物が出入りする感覚よりも、こうして生身の性器を挿入されている方が気持ち的にも幾分か楽だった。

「はっ、あ……っ、ぅう……ん……っちゅっ、れろ、ん、んんっ……!」

 口に突っ込まれている香川のあまり大きくない肉棒を舌で舐めあげ、吸い込む。そうすれば香川の太ももがぶるりと震えて、蒼衣の口の中に苦くて青い精液をまたあっけなく放出した。
 頭上から快感を放出する際に漏れる何とも言えない小さな呻き声が聞こえ、その事にちょっとほっとする。
 口の中に溢れる程出された粘つく精液を飲み込まず、暫くそのままにしておく。そうしていると、香川がようやく満足したのか蒼衣の口からずるりと自身のまだ硬さは残ってはいても射精し、柔らかくなりかけているペニスを引きずり出した。
 それを待っていたように蒼衣は香川に良く見えるように口を大きく開けると、口の中に溜まっている香川の精液を舌で掻き回しながら、子供とは思えないような隠微な表情と舌使いでゆっくりと飲み込んでいった。これらの表情や飲み込み方もすべて叔父が蒼衣に何度も何度も繰り返しさせて覚えさせたものだ。
 だから蒼衣の本心からの表情では決してないのだが、それがまるで当たり前のように蒼衣の体には、表情には染みついていて、見る者の征服欲を満足させることができた。

「……ぁあ、か、川くんの、美味しかった……、です……。ありがとうございま、した……。」

 いつも叔父が蒼衣の口の中に射精し、それを飲み込んだ後強要させられる言葉を、蒼衣はそう口にする。
 その言葉も叔父に言わされているとは解らない周りの少年達にとっては蒼衣の本心からの言葉にしか聞こえなかった。

「……ほら、蒼衣もあぁやって俺達のチンポ舐めて、精液飲んで嬉しそうにしてるぜぇ? こんな淫乱、ヤってやらなきゃ可哀想だろう? なぁ、新藤?」

 蒼衣の痴態と言葉に釘付けになり、性的興奮で顔を真っ赤にしている新藤の耳にそう吉野が囁く。
 さっきまで吉野の言葉で苛立ちを高めていた新藤ではあったが、目の前にあるその淫猥な光景にどうしても意識を持っていかれこの一連の流れの中ですっかり蒼衣の表情や肢体に目を奪われていた。
 耳に囁かれた吉野の言葉に、新藤はゴクリと生唾を飲む。
 そして、ふらっ、と何かに導かれるように蒼衣の方へと一歩を踏み出した。
 その姿を見て吉野は小さくほくそ笑む。
 吉野としては別段、新藤に蒼衣を抱かせたいわけじゃなかった。ただ、自分が蒼衣の、まだ自分より幼い少年の口で二度もイかされた悔しさを他の奴にも味あわせたかっただけだ。少年に欲情した仲間をもっと増やしたかっただけだった。
 新藤はふらふらと蒼衣に近づき、またその口に萎えたペニスを突っ込もうとしている香川の体を突き飛ばすと、梅田同様焦った手つきでチノパンの中から勃起したモノを取り出した。
 そして蒼衣の唇に恐る恐る押し当てる。

「んっ、ちゅ……っ。」

 すると蒼衣は嫌がることなく当たり前のように差し出された新藤の肉棒を手に掴むとその先端に吸い付き、その全体を口の中へと招き入れた。
 途端に新藤の体にぞくりとした何とも言えない、よく知っている快感が走る。
 なんだこれ……。そう思う。よく知ってはいる快感ではあるが、知らない快感も同時に走ったからだ。
 今まで付き合ってきた彼女にさせていたフェラチオがどれだけ稚拙なものかを思い知らされた瞬間だった。
 まるで舌が、それ自体が生き物のように新藤の竿に絡まり這い回る。同時に強く吸い付き、先端をその喉でしごかれた。
 堪らず小さな呻き声が新藤から漏れた。
 そして、吉野の言っていた言葉を理解する。
 蒼衣の口は、ヤバかった。
 その小さな口で、小さな舌で懸命にフェラチオをする姿もどこか倒錯した快感を生み出すが、与えられる快感がまたその小さな体や幼い顔つきに似合わず酷く完成された技巧な為、そのアンバランスさやギャップが堪らない快感を新藤に与えた。
 それは梅田もまた同じだった。
 男となんてしたことなどなかったが、蒼衣のまだ成熟していない子供だとはっきり解るその尻を犯していれば堪える事の出来ない征服感や、優越感に浸れる。挙句に与えられる快感は大人の女以上だ。口で他の男を慰めながらも、その尻はまた別物のように淫らに蠢いて梅田に快感を与え続けていた。
 見下ろせば蒼衣のまだ子供らしい小さなペニスが自分の突き上げの度にその股間でぶるぶると震える。勃起などしていないその性器に、だが、どうしようもない興奮を覚えた。

「蒼衣っ!! くっ、この淫乱がぁ!! いやらしいケツしやがって……っ!! くそっ、出すぞっ! くそったれっ、ケツに出すぞーーっ!!!」

 そう荒れ狂う欲情に任せて梅田はその体を大きく揺さぶりながら蒼衣のアナルに深々と自分の性器を突き刺す。そして、その一番奥、先端がぶつかった場所で一気に欲望を放出させた。蒼衣の腸壁の柔らかさや温かさに堪らない満足感を得る。どくどくと妊娠を気にしなくてもいい中出しに心地よささえも感じながら蒼衣の腸壁の搾り取るような蠢きに小さく唸った。
 いつもなら一度射精してしまえばそれで欲情は引く。
 だが、蒼衣の腸壁の淫ら動きにまたもう一度そこを犯したくなった。
 はーっ、はーっと肩で息をしながら、視線をあげると蒼衣にフェラをさせて恍惚の表情を浮かべている新藤と目があう。いつの間にか香川と交代していたことに驚くのもつかの間、梅田の肩に誰の手が置かれた。

「終わったんなら変われよ。他のもまだまだ待ってんだぜ?」

 そう梅田の肩を後ろに引きながら、そう吉野がその耳に囁く。
 吉野の言葉に改めて冷静さを取戻し、周りを見渡せば今まで傍観を決め込んでいた少年達の多くが自分たちの周りを欲情に血走った目で見ながら取り囲んでいることに気が付いた。
 慌てて梅田は蒼衣の足の間から抜け出る。
 輪姦する時は、速やかに交代をする。
 それがこの施設に入れられている少年達の間での暗黙の了解だった。
 ずるりと蒼衣のアナルから自身の性器を引き出せば、閉まりきらない穴から糸を引くように梅田と香川の精液がまじりあったものが流れ出てくる。その光景は女の股間から流れ出てくる時よりも、より一層倒錯的な興奮を周りの少年達に与えた。

「つ、次、俺っ!! 俺なっ!!! 俺も童貞だからヤらせてくれよ!!」

 梅田がのけた後を巡って色めきたった少年達の間でそう一人の少年が手をあげて立候補する。
 その少年に一斉に視線が集まる。
 まだ声変りをしていないその少年は中学一年生になったばかりで、よく家出を繰り返してこの施設に送られてきた子供だった。
 初めてのセックスに対して好奇心や様々な興奮が混ざった紅潮した顔に、周りの少年達は一瞬小さく苦笑をする。この場にいる少年の多くは、この少年の年の頃には何らかの形で性経験があったのだ。
 だからか、少しだけ生暖かい空気が流れた後、おのずと次の番は決まった。
 自分が選ばれたと解った瞬間、少年は抑えきれない喜びをその童顔な顔に表した。そして、いそいそと蒼衣の足の間へと行く。
 いっただきまーす、そんなこの場には似つかわしくない明るい声で表情でそういうと、少年は蒼衣のまだ梅田の形に緩んでいるアナルへと小さなペニスを押し当てて挿入した。
 そのまま見よう見まねで腰を振り、その柔らかさや気持ちよさに恍惚の表情を浮かべ、あっという間に果てる。ぶるぶるっと背中を震わせ、ずり下ろしたズボンから覗く尻に緊張が走ると、我慢することも出来なかった。
 まだこのまま挿入していたいという気持ちを持ったまま、少年はだが暗黙の了解に従って射精したばかりの性器を引き抜くと次の少年へと変わる。
 そうして、次々に蒼衣の口や手、そしてアナルを少年達は犯し続けた。
 この行為は翌朝までその集会所として使われていた一室で行われ、流石に眠気と散々放出した疲れとでそれぞれが自室に引き上げた後、残されたのは全身少年達の青い精に覆われた蒼衣の無残な姿だけだった。
 髪も、手も、顔も、足も、腹も、胸も。
 その全てに誰かしらの精液がかかり、なんとも嫌な匂いを漂わせていた。早くにかけられた精液はすっかり乾き、蒼衣の肌にしがみ付くようにパリパリにひび割れている。
 当たり前の事だが、今までは叔父だけでこれほどの人数を相手にしたことのなかった蒼衣は、疲れ果て、口も手も、アナルもひりひりと痛むこの状態にただただ放心し続けるしかなかった。
 最初に大人しく従っていればいいと思っていた自分がいかに見通しが甘かったのかも知り、蒼衣の目尻からまた一粒の涙が零れ落ちる。
 少年達は去る前に一様に、蒼衣に言い残していったことがある。
 それは、最初に叔父が言っていたように、これからも蒼衣を性欲処理の『人形』として使ってやる、ということ。
 そのそれぞれに言われた言葉に蒼衣は今更ながらに絶望を感じていた。
 この言葉の意味にようやく気が付いたからだ。
 ぐったりと無機質で冷たい床の上に裸体を曝け出したまま寝転がっている蒼衣の瞳にはもうなにがなにか解らない程ぼやけた光景しか見えない。
 どうしてこうなってしまったんだろう。そう何度も自問自答する。だが、答えはいつだって出てこない。
 ただ脳内に響くのは、叔父の無機質で、無慈悲な声。
 ――全部、蒼衣が悪いんだよ。蒼衣が居たからお父さんもお母さんも死んだ。だから、これは蒼衣の体を使って出来る唯一の贖罪なんだよ――
 贖罪、という言葉の意味は幼い蒼衣には解らなかった。
 だが、自分がどうやらなにか悪い事をしてこんなことになったのだと、叔父が言いたいのだということはその視線や仕草、声の調子から良く解った。
 何かに対して僕は悪い事をしてしまった――。そう蒼衣が思い込むほどそれは何度も何度も蒼衣の耳に囁かれた言葉。
 実際の所、叔父が言うような事は蒼衣に非などなく、悪いことなど何もしていなかったとしても、今頼れるのは叔父だけだという状況が、現実が、蒼衣にそれを信じ込ませた。
 霞んで、ぼやけて何も見えない視界に蒼衣はまるで今の自分のようだと、ふと思う。
 自分が何をしているのか、これから先どうなるのか、それは今この視界のように蒼衣には何一つ見えない。解らない。
 ただ、解っていることは、今日から施設に居る少年や男の職員さんのセックスの相手をしなければならないということ。
 そうしなければ自分の生きる道は残されていないのだということ。
 一度目を瞬きすると、一瞬だけ視界はクリアになる。
 その瞬間に見えた、窓越しの太陽を蒼衣はずっと忘れることが出来なかった。




 パタン。とノートを閉じる。
 気が付けばもう朝だった。
 ちょっと根を詰めすぎたかな、そう独りで呟くと蒼衣は立ち上がる。
 そして、目の前にある窓を大きく開けた。途端に、冬独特の突き刺さるように冷たい空気が部屋の中にどっと流れ込んでくる。
 ストーブで温まっていた部屋は、だが、その冷たい空気に晒されすぐにひんやりと冷えていった。
 白い息を吐きながら蒼衣は外を眺める。
 白く雪が積もった屋根屋根の向こうからゆっくりと大きな太陽が昇ってくるのが良く見えた。
 このぼろいアパートに住むことを決めたのも、この早朝に見える太陽のせいだ。
 大きく黄色く輝く太陽に蒼衣は目を細める。
 あの過酷な生活の中でも、太陽だけは変わらずこうやって蒼衣の体を照らしていてくれた。
 まるで、その心が壊れるのを護ってくれているかのように。
 そう勝手に思っているだけだというのは百も承知している。
 だが、太陽が毎朝こうやって上ってきてくれたから、今まで自分は壊れることなくこうして“今”を生きることが出来ている。その事だけでも蒼衣には十分だった。
 明るい光にどれけ癒されたことか。
 汚れた体が太陽にさらされるたびに綺麗になっていくような錯覚も覚えていた。
 小さなころに父と母と見た、大きな初日の出。
 あの思い出が蒼衣をずっと支えている。
 う〜ん、と小さく伸びをすると、蒼衣はキラキラと太陽の光を浴びて輝く雪を見つめて微笑む。

「メリークリスマス。」

 小さく、誰に言うわけでもなく蒼衣はそう呟く。
 ひと眠りしたら今日はバイトの日だ。朱里が用意したサンタクロースのコスプレをして蒼衣のバイト先は今日は夜だけの特別営業をする。
 こんな日が来るとは思わなかった。
 こうして朱里と馨と、お客さんと笑いながらクリスマスを祝う日がくるなんて。
 笑顔を、心から出すことができるクリスマスがくるなんて。
 色々なことはあったけれど、蒼衣は確かに今、幸せだった。

「クリスマスが終わったらもう今年は終わっちゃうのか〜。来年はいよいよ大学生だし、もうちょっと普通になれるよう努力しなくちゃね。同級生に、可笑しく思われない程度には。」

 頬が冷たくなっていくのを感じ、蒼衣は窓を閉めながらそうまた呟く。
 来年は待ちに待った大学生活が訪れる。
 今からその事で蒼衣の小さな胸は幸せで張り裂けそうだった。
 この為に一生懸命勉強した。
 中学卒業までの学力しかなかった蒼衣だったが、人並みの生活を送る為に今まで夜間学校でなんとか学力を取り戻した。その努力の為に人との付き合いは極力抑えてきた。
 とは言っても元々あまり人づきあいが得意な方ではないし、過去が過去の為、極力人との関わりを避けていたのもある。
 だから、大学に行っても友人などは特に作るつもりも今の蒼衣にはない。
 それでも普通に憧れる蒼衣としては、大学に通える、というだけでも今まで考えられなかったくらい幸せで贅沢な事なのだ。

「なんだかいい事ありそうな気がする。」

 テーブルの上に広げていた参考書などを片付けながら蒼衣は小さく口元を綻ばせながら微笑んだ。
 それはクリスマスの当日に雪化粧されてとても大きくて綺麗な朝日を見れたせいだろうか。
 小さく鼻歌を歌いながら蒼衣はテーブルを片付け終わると、また窓に近寄りカーテンを閉めようと手をかける。そして、もう大分高く上った朝日にもう一度、小さく、メリークリスマス、と囁いて、カーテンを閉めた。



 メリークリスマス!