注意事項:特になし
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異母兄弟である男が目の前で渋い顔をして立っていた。
そしてゆっくりと口を開く。
「お前、異常だよ。狂ってやがる。」
ぼくの話した事に、嫌悪感をありありと浮かべながらそう吐き出すように言う。
そんな彼にぼくはゆったりと微笑むと小首を傾げて、つまらない返答だね、と返す。
それにそいつは瞳に剣呑な色を浮かべ、鼻の上に皺を寄せる。
「テメーがなんであいつに執着するのか、俺には解らねぇ。」
頭の中にありありとぼくの愛している人を思い浮かべているのだろう。
信じられない、と言った感情をそのぼくに良く似た切れ長の瞳に浮かべると、苛立ったようにガンッとぼくの部屋にある棚の足を蹴った。
それに少しだけぼくは不快感を示しながら、それでもその事には触れずにぼくはあの可愛い天使の事を同い年の弟に説明する。
どれだけ彼が可愛くて、可憐で、ぼくの庇護を必要としているのか。
だから、ちょっとだけあのお山の大将を操ってぼくの天使を孤立させて欲しい。
それがぼくの願い。
金銭的に困窮している弟がぼくの申し出は断れないのだと解っている上で、ぼくはそう彼に囁く。
妹、助けたいんだろ?
だったらぼくの言う事は聞こうよ。
今まで君の妹がここまで生きながらえたのは、ぼくの助言があったからなんだからさ。
本来なら金のない君が、君達家族があの子を延命させる事なんて出来なかったんだから。
父さんだって、愛人に産ませた子供の治療なんて自分の病院でしたくないんだからさ。
そう言うと、彼は押し黙った。
そして暫く考えた後、ゆっくりとその口を開く。
「……解ったよ。あいつも最近暇だって言ってたから、そいつの存在を吹き込んでみる。……だが、必ずしもお前の企みが成功するなんて思うなよ。あいつは暴力しか頭にない奴だが、恐ろしく猜疑心強いぜ?」
ぼくを脅すように言う言葉にぼくは鼻先で笑い飛ばしてやる。
あんな奴の猜疑心なんて、たかが知れている。
ぼくの知能になんて遠く及ばないそれにぼくがビビる訳なんてないじゃないか。
それにもしあのお山の大将がお前の言葉で動かなくても、それならそれで別の方法は考えてあるから。
くすくすと笑いながらそう伝えると、弟は酷く不機嫌な、嫌悪感をありありと浮かべた表情をその顔に浮かべた。
そして、ドンッともう一度コレクション用の棚の足を蹴り飛ばすと、彼はぼくの部屋を後にしようとする。
その背中に、一応の釘を刺す。
ねぇ、だけどもし、ないとは思うけどさ、あいつらや君があの子の可愛さに変な気を起こして、あの子に汚らわしい行為をしたら。
そこで言葉を切り、振り返った弟の顔をにっこりとペルソナの笑みで見返す。
凍りついた弟の顔を見ながら、そしてぼくは続きをゆっくりと、低い言葉で彼に伝えた。
お前等、全員*すから。ただの肉塊になるまで僕の愛するコレクションで*してやるからな。肝に銘じとけよ、康太。
弧を描いた口から零れ落ちる言葉に、弟の顔が青ざめ、そしてぼくの薄暗い部屋の中をその目が彷徨う。
その視線はぼくの部屋の壁に所狭しと飾られていた、世界各国のありとあらゆる形のナイフを怯えたように見ていた。
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