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NOVEL

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エピソード3 01

注意事項:淫語

 あの日から笹川はしょっちゅう僕の家に来るようになった。
 勿論、目的は僕とのセックスだ。
 最初の時に比べて笹川のセックス技術は格段に向上したのが、僕にとっては唯一の救いだ。
 初めて笹川とセックスした時は、結局僕は一度だってイけなかった。笹川は僕の尻に三度も精液を放ったっていうのに。
 だけど今は……。

「っ、あ、あぁ……っ、さ、さ川、く……っ、は、も、ダメっ……、そこ、ダメぇ……っ。」
「幸田ぁ……っ、いいぜぇ、イけよぉ……っ、チンポびんびんじゃねぇか。イイんだろぉ? チンポとケツマ○コ。イけよぉっ、ほら、ほらぁ!」
「ふぁ……っ、あ、ぁん……っ、イ、く……っ、出る……っ、精液、出るよぉ……っ!」

 後ろから荒々しく笹川に突かれながら、性器を扱かれるともうそれだけで僕の頭の中は真っ白になる。
 しかも笹川は僕の耳を後ろから舐め回しながら卑猥な言葉を僕の耳に流し込み、耳からも僕を感じさせるようになっていた。
 彼は彼なりに男同士のセックスってものをあれから研究したらしく、回を重ねる毎に僕が誘導する必要はなくなり、最初のエッチから二ヶ月が過ぎた今ではすっかり僕の誘導がなくても勝手に僕の体を好き勝手弄くり、僕に快感を刻むことが出来るし、僕が感じる場所も把握したらしい。
 そのせいか僕自身、笹川とのセックスを楽しむようになっていた。
 何度も何度も尻穴で性交したせいか、僕の尻穴はもうすっかり笹川の性器に馴染み、笹川には『ケツマ○コ』なんていやらしい言い方をされるくらい後ろで感じるようになっている。
 しかもあれだけ笹川自身に嫌悪感を抱いていたのに、不思議なもので体を重ねれば重ねるほどあいつの顔や声や手や舌に嫌悪感を抱くことも少なくなっていて。寧ろ笹川に感じる嫌悪感さえも僕の体は変な快感に変換され、嫌いな奴に抱かれる、というそのものに感じているような気がしてきた。
 人間の順応性って凄い、と人体の不思議というか、心の不思議に酷く関心してしまう。
 そして、あれだけ気持ち悪いと思っていた笹川とのキスも平気になった。いや、寧ろ僕自身から笹川にキスを求める事が多くて、学校でも、時折人目を盗んで、野々村の目を盗んで僕自身から彼にキスする事があるくらいだ。
 その僕の行為に、笹川は決まって物凄くデレデレとした表情を浮かべる。
 僕からのキスは、つまり、笹川に家に来て欲しい、っていう合図でもあったから。
 お陰でセックスしすぎて部屋中が精液臭くなるくらいもう何度も笹川と抱き合ったし、そのせいでベッドのシーツは変えが間に合わないくらい笹川が来た日はこいつが帰るまでずっとシてる。
 大体、笹川の性欲がとんでもない。
 まさかここまで絶倫な奴だとは思いもしなかった。
 口で『掃除』してた時は一回だけだったのに……。それがセックスとなると、抜かずに三発どころの話じゃない。僕が根を上げてるまで笹川は連続して僕に突っ込みまくるし、五回くらいは余裕で僕の中に発射する。
 どんだけバケモノなんだ、こいつは。ていうか、サルだ、サル。
 でも、こいつのバケモノじみた性欲のお陰で僕の復讐は順調に、少しずつだけど進展している。
 ただ問題もあった。
 こいつとセックスするようになって、目に見えてこいつの僕に対する態度が変わったのだ。
 確かに最初にセックスした時に笹川には今まで通り野々村達と居る時は僕をいじめてくれて構わないって伝えてある。野々村の命令があれば殴ってもいいし、今まで通りあいつらと一緒になって罵倒してくれてもいい。寧ろ、いじめてくれた方が嬉しい。そうでないと笹川まで僕と一緒になってあいつらの標的にされてしまうから、なんて、そんな思ってもない事を心配している風に伝えたのに。
 それなのに、最近はあからさまに僕を殴ったりするのを避けるようになった。
 しかも前はあれだけ野々村の言う事には絶対服従の犬だったくせに、妙に細かい所で反抗する。
 これじゃ僕と笹川の関係が野々村達にバレるのも時間の問題だ。
 一体何の為に僕が最初のセックスの時に、野々村達にバレないように内緒にしようってこいつにしつこいくらい言ったのか、これじゃ解らない。
 ……そしてもう一つ、問題がある。
 今、こうして笹川と僕は僕の部屋で学校が終わった後にセックスをしている訳だけど。
 その僕達の耳には、もうずっと耳障りなくらい何度も何度もインターフォンの音が届いていた。

「っ……はっ、おい、幸田……、いい加減出た方がいいんじゃねぇ? うるせーし、しつこいしよー。」

 笹川が三度目の射精を僕の中にした後に、そう、僕に切り出す。
 その言葉に僕は射精の虚脱感に襲われながらも、面倒くさそうに体を起こした。

「……でも、どうせまた委員長だよ? 放っとけばいいよ。その内飽きると思うし。」
「どーだかなぁ。あいつ結構しつこいぜぇ? あの日からやたら俺に絡んでくるようになったしよぉ。」
「……え? 委員長が笹川くんに?」

 動くのもだるくて僕が適当に答えると、笹川はそのにきび面に苦笑を浮かべながら思いもしなかった情報を僕にもたらした。
 思わず驚いて笹川の顔をまじまじと見返す。
 すると、笹川はもっと色濃く苦笑を浮かべる。

「オメーが自分から俺に抱かれてんだって、何度説明しても納得しやがらねぇ。お前がそんな事する筈がない、とかなんとか熱血ぶって語ってたぜぇ? ……てーか。」
「?」

 ウザッたそうな顔をして委員長に対する不満を漏らした後、笹川は不意に真面目な顔になると、僕の顎を掴んだ。
 そしてその細い瞳で僕の目の中を覗き込むように見つめる。

「実際のところ、オメー、あいつと関係持ってんじゃねぇだろうな? 俺にしたみたいに、あんな風に誘ってやがるとかねーだろうなぁ?」
「はぁ……?! まさかぁ……っ! ないよ、ない、ないっ! 絶っっっ対にないって!!」
「……。」

 言われた言葉に僕は素っ頓狂な声を挙げた後、そんな事を疑った笹川が可笑しくてくすくす笑いながら全面的に否定した。
 だが、笹川は疑り深い瞳で僕の顔をじっくりと見る。いや、睨みつけていた。
 何故こいつが委員長と僕の関係を邪推して怒っているのかが解らない。
 そもそも委員長と関係を持つ時間が僕のどこにあるって言うんだろう。
 学校がある日は、確かに二、三日に一回くらいだけど、土曜日はほぼ毎週、笹川は僕の家に泊まり来てるのだ。そして一晩中セックスに耽ってる。平日でセックスをしない日は、あいつらのいじめが終わった後僕は即効で家に帰って勉強していたし(学校の成績が落ちるのは避けたかったから)、その他の時間は笹川とのセックスといじめで疲れ、傷ついた体を休ませる為の時間に割り当てている。
 そんな生活を送っていて、一体僕がいつ委員長をそそのかしてあいつとセックスしなきゃいけないんだ。
 大体僕の計画の中に、あいつの名前はそもそも入ってない。
 だから笹川の言葉を一笑に付したのだが、笹川はどうやら納得していないようだった。

「……馬鹿だなぁ。僕がエッチしてるのは、笹川くんただ一人だよ? 他の人となんてシないよ。」
「……。」

 ムスッと口をへの字に曲げている笹川に僕は自分から唇を押し当てた後、そのにきびが沢山浮いている頬にもキスをしてやる。
 だが、笹川の機嫌はなかなか直らない。
 怒ったような顔をして僕を睨みつけた後、何かを考えるように瞳を動かした後、口を開いた。

「だったら、オメー、田中のヤロウに……。」

 だけど途中まで何かを言いかけて、笹川はムスッと顔を歪めると黙り込んでしまう。
 もう一体なんなんだよ。
 それでも余り笹川の機嫌を損ねるのは僕にとっては得策ではなくて。
 僕は小さく溜息を吐くと、笹川の腕の中から抜け出る。

「幸田?」
「もう、解ったよ。僕には笹川くんだけだって、ちゃんと証明してあげる。……だから、少し、待ってて。」
「おい? 幸田ぁ?」

 僕が腕の中から抜け出た事が少し不満だったらしい声を笹川は漏らしたが、僕はそれには構わずベッドの下に落としているシャツと下着を手に取り、シャツは軽く羽織り、下着を穿く。
 そして僕の名を訝しげな声で呼んでいる笹川をベッドの中に残して、僕は自分の部屋から出た。
 向かう先は今だ煩く鳴り響いているインターフォンだ。

「……委員長?」
「っ、一臣っ?!」

 無機質な声でインターフォンの通話ボタンを押して、その向こうにいる委員長に声をかける。
 すると委員長は僕自身が出たのに驚いたのか、インターフォンカメラの前で酷く驚いたような顔をして僕の名前を叫んだ。

「一臣っ、大丈夫か?! 一臣?!」
「……今、玄関開けるから、静かにしてよ。」

 狼狽したような声で僕の名と、大丈夫かをインターフォン越しに喚く委員長に僕は不快感に顔を顰めながらそれでもとりあえずそう伝えると通話ボタンを切った。
 相変わらず委員長は通話の切れたインターフォンに向けて何かをしゃべっていたようだけど、それは無視してそのまま僕は玄関へと向かう。そして、チェーンと鍵を開錠すると、玄関のドアを薄く開けた。

「一臣っ!!」
「煩いから、早く入ってよ。近所迷惑になる。」

 デカイ声で僕の名を叫ぶ委員長に僕はあからさまに不快な顔を向け、委員長を家の中へと招き入れる。
 委員長は最初僕の招きに少し躊躇したようだったが、薄く開いたドア越しに見える僕の格好を見て息を飲んだ後、通路側の玄関ノブを握り一気にドアを開けた。
 秋から冬へと変わる独特の冷たい風が委員長の後ろから吹き、薄着の僕は少しだけ身震いする。
 だけど委員長は僕の体を家の中に押し入れるようにして、その体を中へと滑り込ませてきた。
 バタン、と玄関のドアが風に押され、煩い音を立てて閉まる。

「……一臣。その格好は……。」
「別に委員長には関係ない。」
「っ……。さ、笹川に、変な事されてんのか……っ?! されたのかっ?!」

 玄関先で委員長は僕の格好を上から下まで見た後、何故か泣きそうな、辛そうな顔をして僕の格好の理由を聞こうとする。
 だけど僕がそれに素っ気無く答えると、委員長の態度は豹変した。
 一気に僕との間合いを詰め、僕の肩をその両手で掴むと僕の体を揺さぶる。
 あぁ、もう、なんなんだよ。こいつ。
 本当、ウザイ。

「……別に委員長には関係ないじゃん。放っといてって、前にも言った筈だけど?」
「っ、かっ、関係なくあるかっ!! お前は、僕の幼馴染なんだぞ!! 同じクラスだし……っ、僕は……っ、お前の力になりたいって……いつも、そう思って……っ!!」

 ガクガクと揺さぶられるままに任せながらも、僕は委員長に冷ややかな視線を向けるともう一度さっきと同じ言葉を放ってやる。ついでに、随分と前に言った言葉も添えて。
 すると委員長はまた血相を変えた。
 僕の顔に唾が飛び散るのも構わず委員長は空々しい言葉を並べ立てる。
 その言葉の数々に僕は内心せせら笑った。
 だって可笑しいじゃないか。
 なにが、幼馴染だ。
 なにが、同じクラスだ。
 なにが、僕の力になりたい、だ。
 馬鹿馬鹿しくって話にもなりゃしない。
 本気で僕の力になりたいんだったら、野々村達のいじめが酷くなる前にどうにかできたはずじゃないのか?
 そもそもこいつが一体僕に何をしてくれたっていうんだ。
 僕を慰める事もせず、ただ、いじめの現場でいじめの終盤に現れて野々村達に怒鳴るだけじゃないか。
 そんなちゃちな力なんて必要ない。
 こいつの力なんて当てにはしてない。
 そんな思いを込めて僕は、僕の体を揺さぶっている委員長の手を掴むと、乱暴に叩き落とした。

「っ……ウザイんだよっ! 何、正義感ぶってんだよっ! 僕はお前を幼馴染だなんて思ってないっ! お前の力を借りようなんて思ったこともないっ!!」
「一臣……っ。」
「一臣、なんて馴れ馴れしく呼ぶなっ! ……いいさ、僕が笹川とナニしてたか教えてやるよ。そしたらもう幼馴染面なんて出来ないだろうから。」

 僕が大声を出した事にびっくりしたのか、それともその言葉の内容にショックを受けたのか、委員長は呆然と叩き落とされた手と僕を交互に見比べながら、僕の名を呟いた。
 そんな委員長に僕は、きっと醜い顔で笑いかけ、僕の部屋へと先頭を切って委員長を案内する。
 僕の部屋の惨状を見れば、幾らこいつだってもう僕には関わってこなくなるだろう。
 そう思ったから、僕は委員長が後ろを着いてきて居る事を確認すると、自分の部屋のドアを開けた。
 締め切った部屋だった為、部屋の中からムワッと男同士の精の匂いが漏れてくる。

「……っ。」

 僕の後ろで委員長が息を飲んだのが解った。
 そんな委員長を放置して僕は自分の部屋へと足を踏み入れる。
 部屋の中では笹川が僕のベッドに素っ裸のまま寝転がり、僕の漫画を勝手に読んでいた。

「お、話ついたんか? てーか、なんか怒鳴ってたみたいだけどよぉー、どした?」

 ドアが開いた事に気がつき笹川は読んでいた漫画から視線を外すと、僕の方に顔を向ける。
 そんな笹川に僕はゆっくりと微笑むと、チラリと後ろを見て委員長が入り口で呆然と立っているのを確認した。
 そして恐らく笹川の位置からだと、僕の後ろに委員長が居るのは見えてないのだろう。笹川は、あいつ帰ったのかー? なんて僕に言いながら手に持っていた漫画をベッドの下へと落とし、体を少しだけ起こした。
 そんな笹川に委員長が見つからないよう計算しながら僕は笹川に近づく。そして、羽織っているシャツをゆっくりと脱ぎ床の上に落とした。
 僕がシャツを脱いだ事で、後ろに居る委員長から酷く動揺した雰囲気が伝わってくる。
 その事に内心嘲りを浮かべながら僕はそのまま笹川が横になって僕を見ているベッドまで近づくと、そのままベッドに腰をかけ、僕しか見ていない馬鹿な笹川の顔に自分の顔を近づけた。
 そして委員長に見せ付けるように僕は笹川に覆いかぶさりながら、濃厚に自分の唇を笹川の唇へと押し付ける。
 すると馬鹿な笹川はすぐにその気になったらしく、僕の体に手を回すとその腕の力だけで僕の体をベッドの上へと押し倒した。ギシッとベッドのスプリングが嫌な音を立てる。
 そのまま笹川は、僕の口に吸い付いたままフーッフーッといつもの荒い鼻息を撒き散らかしながら僕の下着に手をかけてそれを抜き取った。そして、性急に僕の性器を掴むと、巧みに上下に扱き始める。

「……んっ、ちゅ……っ、ぁ……っ、あ、ふぁ……、ささ、川く……ん……っ、あぁ……っ。」
「ふ……っ、どしたんだぁ……? まだシたりねぇってかぁ? くく……、もうガチガチじゃねぇか?」

 舌を絡めながら切なそうな声で笹川の名前を呼ぶと、笹川はニヤニヤと下品な笑みをその口元に浮かべながら僕にいやらしい言葉を囁く。
 その実、シ足りないのは明らかに笹川の方なんだが、僕は横目で入り口に呆然と立ちすくむ委員長を見据えながら、笹川の首に甘えたように腕を絡めながら、その笹川の言葉に頷いてみせる。

「ぅん……っ、もっとシたい……っ、笹川くんの、もっと、欲しい……っ。」
「相変わらず、エロいなぁ〜、幸田はぁ。」

 僕の頷きと言葉に、笹川はぐへへ……と下品に笑うと、また僕の唇をそのヤニ臭い唇で塞いでねっとりと舌を絡め合わせてきた。
 それを受け入れながら、僕は横目で委員長の反応を観察する。
 馬鹿な笹川は委員長が部屋の入り口で僕達のこの馬鹿みたいな交尾を見てるなんて気づいても居ない。
 それを利用して、笹川に身を委ねながら委員長が立ち去るのを待った。
 ほら、これが僕の正体だよ。
 お前なんか必要としてないって事、解っただろう?
 だからさっさとどっか行けよ。
 僕の前から居なくなれ。
 ……だけど。
 委員長はなかなか立ち去らなくて。
 笹川が僕の体を散々貪り、僕の尻穴にその硬く勃起した性器を挿入する様まで、そこに突っ立って僕達の行為を見ていた。
 委員長が何を考えているのか、僕にはさっぱり解らない。
 普通こんな光景を見せ付けられたら、自分がどれだけ部外者かって事解るはずだろう?
 なのに、なんで、ずっと僕たちを見ているの?
 何が楽しいの?
 電気を点けていた廊下の明かりが委員長の背中側から当たっていたからはっきりした委員長の表情は僕には良く解らなかったが、最初の方は確かに呆然と信じられないものを見るような目で僕達を見ていたような気がしていた。だけど、途中から、なんとなくその視線が変わったように思う。
 はっきりとは解らないけど、視線が鋭くなって笹川に尻を犯されて女みたいに喘ぐ僕の姿を、目を皿のようにして見ていたような気がする。
 だから僕は、余計に委員長に見せ付けるように甲高い喘ぎ声を上げ、笹川のが気持ち良いんだって事を言葉と行動で示して見せた。
 そんな僕に笹川はやけにご満悦な表情で、委員長の存在にも気がつかず、間抜けな面で僕のケツを犯し続けている。

「こうだぁ、こうだぁ……っ、気持ちイイかぁ? 俺のチンポ、イイかぁ? どうだ? ん? どうなんだぁ?」
「ぅん……っ、ぅんっ、イイ、よ……ッ、ささ、川くん……だけ、だよぉ……っ、笹川、くんのが、イイんだ……っ、だから、もっとぉ……っ、あ、あぁ……っ!」

 僕が委員長に聞かせる為に、気持ち良い、を連呼したせいか、笹川が何度も何度も僕に自分のモノが気持ち良いかどうかを聞いてくる。
 それに内心うんざりしながらも、でも委員長にダメ押しをするつもりで、笹川のだから、笹川のだけが気持ち良いんだと、溶けた声で答えてやった。
 すると笹川は更にご機嫌な顔になると、激しく腰を振りたくり始める。
 腸壁の最奥をゴツゴツと音がするような勢いで性器の先端で抉られ、僕は気が遠くなりかけた。
 しかも正常位でしている為、僕の性器が笹川の腹に擦れて言い様のない快感を生み出し、笹川に抉られている腸壁にまでその快感を伝える。
 そのせいで意識がごっそりと笹川の性器と、自分の尻と性器に持っていかれてしまう。委員長が僕たちを見ている、なんて事も一瞬にして忘却の彼方だ。
 あっ、あっ、あぁ……っ、と声を漏らしながら僕は笹川の背中に手を回し、そこに爪を立てながら悶えた。短く切ってある爪が、だけど、笹川の背中の肉に深く突き刺さり、きっと笹川に鈍い痛みをもたらしている筈。
 だけど笹川はその痛みに少しだけ顔を歪めただけで、やっぱり何もいう事無くフーッフーッと鼻息を荒げると、僕の唇にむしゃぶりついてきた。
 そのまま笹川は腰を激しく動かし、僕の足を支えていた手の片方を僕と笹川の体の隙間に滑り込ませると僕の性器をその手に握り締める。そして、僕をイかせようとその手を動かして僕の性器を扱き始めた。
 笹川の手に与えられる直接的な快感に僕は体を仰け反らせながら、あっという間に上り詰めて笹川の手の中に精液を発射してしまう。
 それと同時に笹川も僕の中を強く擦り上げ、最奥で射精をした。
 ドクドクと腸壁に笹川の精液が当たり、広がっていく感覚に僕は思わず小さく溜息を吐く。
 そして、委員長の事を思い出した。
 慌てて視線をドアの方へと向けたが、もうそこには誰も立っていなくて、委員長がこの場から去った事に今頃気がつく。
 漸く出て行ってくれたか……そう思い、僕はホッと息を吐いた。

「……なぁ、幸田。」

 委員長が居なくなった事に安堵し、そして笹川とセックスを終えた事にも安堵してくったりとベッドに横になっていると、笹川が僕の腰に手を回しその腕の中に僕の体を納めながら、僕の名を呼ぶ。
 その声に僕はドアの方に向けていた視線を顔ごと僕の背中側に居る笹川へと向ける。
 何? そう声に出して笹川の呼びかけに答えると、笹川は少し気難しい顔をして僕を見つめていた。

「? 何、どうしたの?」
「……あのさぁ、俺、色々と考えてみたんだけどよぉ。」
「……うん?」

 ぼりぼりとにきびが一杯ある頬をその指で掻きながら笹川が馬鹿なりに何か頭を使って考えたらしい事を僕に伝えようとしている。
 その笹川の表情と雰囲気に僕は眉根を寄せ、体をもぞもぞと動かして笹川の方へと反転させた。
 目の前には笹川の相変わらず汚い顔。それが、電気を点けてない部屋の中で暗く染まっていても妙に紅潮しているのが見て取れる。
 どうしたんだろう、と思う。
 またシたくなったんだろうか。
 そう思い、もう一度、どうしたの? と声をかけた。
 すると笹川は困ったような顔をして視線を暗闇の中に彷徨わせ、にきびが潰れるのも構わずぼりぼりとその頬を指で掻く。
 あぁ〜もう、汚いなぁ。潰しちゃったら痕になるのに。
 そんなどうでもいい事を思いながら、笹川が口を開くのを暫く待った。

「……野々村にさ、もういっその事、俺達の関係バラしちまわねぇ?」
「はぁああっ?!」

 だが笹川が言い難そうに呟いた言葉に僕の声が裏返る。
 冗談じゃない。
 そんな事になったら全ての計画がおじゃんだ。
 全くこいつは何を考えてるんだろう。

「いや、だからさぁ。オメーがこのままあいつにさ、いじめられてんの、見てらんないっていうか……。や、そりゃ、俺もあいつと一緒になってオメーをいじめて来た側だからよぉ、そりゃ、都合が良い事言ってんなーって思うんだけどよ? なんつーの? やっぱよぉ、セックスしてる相手が、他の男に今日みてーに、しょんべんかけられたり、そのチンポ『掃除』させられたり、殴られたりしてんの見るの、なんつーか、嫌な気分になるっつーか……。……つかさ、今日なんて、オメー……、コータの舐めさせられてただろぉ? アイツ、キモッとか言ってた癖にお前に舐められて満更でもねーツラしてたじゃん? めっちゃ気持ち良さそうな声も出したしさぁ。てか、お前もさぁ、抵抗するでもなくアイツの美味そうに舐めてたしよぉ。だからさー……、俺としてはよぉ、なんつーか……。」

 歯切れは悪いくせに、妙にぐじぐじと僕が野々村達に弄られる事が堪らない、ってのを笹川は少ないボキャブラリーを駆使して僕に伝えようとしているらしい。
 どうやら見た目そのままにこいつは小物で小心者らしい。その事に、呆れてしまう。
 だが、更に続けてぐじぐじと文句を言っている内容を聞いている限り、どうやら笹川としては僕が今日他の男のモノを口にした事が酷くショックだったみたいだ。
 まぁ、それはそうかもしれないな。
 そう冷静に判断する。
 なにせ今日のいじめは、僕と笹川が関係を持つきっかけになった時と似たようなシチュエーションだった。
 だけど、僕に小便をかけた奴は笹川ではなく、他の奴。
 あの時のようにそいつ、コータ、と笹川や野々村から呼ばれてるそいつは、僕の口で勃起した挙句、我慢できなかったらしく間抜けな声を挙げた。
 だが、コータが射精する前に、今日はいつもより早く委員長の邪魔が入りコータは勃起した性器を必死になってズボンの中に納めると野々村達と一緒になってとっととトイレから退散してしまった。だから、本当の所、最後の顛末は違うし、コータって奴が笹川と同じように僕にまた『掃除』を求めるかどうかだって今の所解らない。
 だけど、笹川としては自分へのコンプレックスがあるからか、気が気ではないのかもしれなかった。
 だってコータは、正直言って結構なイケメンだから。
 そして結構な数の女の子と関係を持ってるって事も有名な話だ。二股、三股して泣かした女の子も多いらしいし。
 そんなイケメンのコータが僕に自分と同じように『掃除』を求め、僕と関係を持ってしまったら、なんてこの馬鹿は考えているのかもしれない。
 笹川が自分のにきび面にかなりコンプレックスを持っていて、これは僕の勝手な憶測だけど、笹川はそのせいで女の子とはセックスどころか告白やお付き合いもした事もないだろうから、心中複雑なのだろう。
 コータに性欲処理の相手を取られるかもしれない、そんな不安を抱えているのが良く解る。
 だからこそ僕はなんだか可笑しくなって、笹川の腕の中でくすくすと笑ってしまった。

「んっだぁあっ!? 何、笑ってんだっコラァ! 馬鹿にしてんのかっ、お前っ!! あぁあっ?!」
「ち、違うよ……っ。馬鹿にしてなんかないよ……! 落ち着いてよ。」

 僕のくすくす笑いが気に障ったのか笹川は目つきを鋭くさせると、唾を撒き散らかしながら僕に怒鳴る。
 そんな笹川に僕は笑いを引っ込めると、笹川の怒りを静めようと声をかけ、その首に腕を絡めた。

「大丈夫、僕は笹川くんのモノだよ? 僕を好きにしていいのは笹川くんだけ。……それに今日のアレだって、僕は仕方なく……。僕だって嫌だったんだよ、笹川くん以外の男の人の性器を口にするのは……。だけど、野々村に逆らったらどうなるか、笹川くんは良く知ってるよね? だから……、でもごめんね。野々村に強制されたからって言っても、他の人の、アレ、舐めちゃって……。」

 にっこりと笑いかけ笹川を落ち着かせるためにしおらしい言葉を並べ立てる。そして、どれだけ僕が笹川以外の奴のモノを口にするのが嫌だったか、気持ち悪かったかを伝え、だけど、それは仕方がない事だったんだって印象付ける為に僕はしゅんっと俯いて笹川に謝る。
 すると笹川は少し機嫌を良くしたらしい。
 あー、とか、うー、とか、小さく呟いた後、僕の体をぎゅっと抱きしめ返してきた。
 そして笹川の唇が僕の頬に触れる。
 その頬に当たる笹川の唇の感触に、単純な奴、と思いながら僕も笹川の体を抱きしめ返す。
 勿論、僕はコータの性器を舐めた事で笹川に罪悪感なんて欠片も感じてなんてない。
 もしこれでコータも僕の所に来たなら、それはそれで利用してやろうと思っている。だからこそ、笹川が見ているのを解ってて、あいつらの目の前でコータの性器をいやらしく舐めてやったんだ。
 だけどそんな事、絶対に笹川には伝えられない。伝えない。
 笹川はただ僕の手のひらの上で踊ってさえいればいいんだから。

「なぁ、幸田ぁ。」

 ひとしきり抱擁を交わした後、また最初に声をかけたように僕の名を呼ぶ。
 それに、笹川の汗臭い腕の中で、何、って聞き返す。

「やっぱよぉ、野々村にさぁ俺達のコト……。」

 話がループする。
 その事に僕は内心溜息を吐いた。
 あいつに僕達の関係をバラしたらそれをネタに今以上に酷いいじめを受けてしまうって事がなんでこいつは解らないんだろう。
 本当に救えない馬鹿だ。
 て言うか、自分は友達だから見逃して貰えるとでも思ってるのか?
 もしそうだとしたらこいつは僕が思う以上にとんでもなくめでたい頭の構造をしている。
 なんだか頭が痛くなるような持論を展開して、野々村に僕達の関係を認めさせよう、的な話をしているが、その余りにも楽天的な物の考え方に僕は眩暈すら覚えた。

「……ダメだよ、絶対、ダメ。無理。」
「えー、そうかぁ?」
「当たり前だろ? 野々村くんが僕達の関係を受け入れることなんて、絶対ない。あり得ない。無理。だから僕達の関係をバラすのはダメ。絶対に、ダメ。」

 笹川のノー天気な構想に僕は頭痛を堪えながら、そのビジョンを全否定してやる。
 すると笹川の口から不満の声が漏れた。
 それに僕は冷静に突っ込みをいれながら、どう説明したらこの馬鹿にも解るだろうか、と思考を巡らせる。
 きっと小難しいことを言ってもこの万年赤点男には通じない。
 ならば。

「いい? もし僕達の関係を野々村くんにバラした場合、僕はもう笹川くんとエッチ出来なくなっちゃうよ? それでもいいの?」
「えっ? なんでだよ? 別に今みてーにお前ん家で会ってすりゃいいじゃねぇか。」
「……だからぁ、野々村くんにバレたらこんな風に会う事も出来なくなっちゃうんだってば。僕が嫌がる事をするのが野々村くんのライフワークなんだよ? 楽しみなんだよ? だから、今、僕がこうして笹川くんと居る事が、エッチする事が、癒しになって救いになってるって知ったら、ねぇ、野々村くんならどうする? どうすると思う?」

 セックスが出来なくなる。その部分を強調して説明をする。
 だが、馬鹿な笹川にはその意味さえ掴めなかったみたいだ。
 僕はズキズキするこめかみを揉みながら、それでも笹川に丁寧に説明してやる。
 だけど僕の説明と、問いかけに対しても笹川は難しい顔をして首を捻っただけだった。
 ダメだ、こいつ……。
 どっと疲れが出てくる。馬鹿だ馬鹿だ、って思ってたけど、違う。馬鹿なんじゃない。こいつは脳みそがないんだ。頭の中にはセックスへの性的欲求しかないんだ。
 そう笹川の反応を見て僕は呆れ返ってしまう。
 でも、ここで説明を投げ出しても始まらない。
 なにせ僕の復讐はまだ始まったばかりで。これからもっと笹川には動いて貰わないと困るんだから。

「いい? もし僕達の関係がバレたら、野々村くんは確実に僕と笹川くんを引き離しにかかるよ。……ひょっとしたら、笹川くんを僕の目の前で今まで僕が受けてたような仕打ちをするかもしれない。そして、笹川くんもいじめのターゲットにされる。僕の家で会う、なんて事は、だから無理になっちゃう。だって、笹川くんも僕も、二度と一緒に行動できないよう、あいつらの内の誰かがきっと付き纏ってくるようになるから。」
「ちょ……っ、なんでだよっ?! 何で俺がっ!! 俺までがっ! そんなんありえねーよっ!!」

 僕が真面目な顔をしてさっきの問いかけの答えを口にすると、笹川の血相が変わった。
 酷く驚いたような顔になり、信じられない言葉を聞いた、とでも言うように僕に食って掛かる。
 でも今僕が口にした推論は限りなく真実に近いと思う。
 だって野々村は本当に僕をいじめるのが好きなんだから。僕が泣くのが、僕が悔しそうな顔をするのが、僕が何も出来ないのが、僕が嫌々ながら言いなりになっているのが、それが本当に楽しくて仕方ないって思ってる屑なんだから。
 そんな男が僕と笹川の関係を知って、それをぶち壊そうとしない方が可笑しい。
 まぁ、尤も。ぶち壊されたとしてもダメージがあるのは、きっと僕ではなく笹川だけだろうけど。
 それでも僕の復讐が完了するまでは、笹川には今のこのポジションに居て貰わないと困る。
 だから僕は一生懸命、丁寧に、解り易く笹川に野々村の怖さを伝えた。
 笹川はずっと野々村側だったから、きっと見えてない事も沢山ある。見逃して居る事だって沢山ある。
 彼がどれだけ僕をいじめる事に悦びを感じているか、優越感を感じているか、征服欲を満たしているか。どれだけ簡単に人を裏切ることが出来るか。自分以外の他人に対して容赦がないか。
 一緒にいじめているだけだったなら到底気がつかないような、そんなどす黒い野々村の裏の顔を教えてやる。
 言葉数が増え、僕が野々村の事を力説すると笹川は最初は、顔を引き攣らせながらも必死になって笑い飛ばそうとしていた。
 だけど僕の真剣さが伝わったのか、途中からは笹川の顔には笑みは消え、ただただなんとも言えない戸惑いと、不安とが入り混じった暗い顔になる。

「……だから、野々村くんに僕達の関係は言っちゃダメ。僕も笹川くんとこうして会えなくなるの、嫌だもん。悲しいもん。ね、だから、お願いだから、変な事考えないで今まで通り野々村くん達と一緒に居てよ。僕の事をどうにかしようなんて思わないでいいから。……僕は笹川くんとこうして居られなくなる事の方が野々村くんよりも怖い……。」
「……っ、わ、解ったよ……。あいつにゃ言わねーよ。」

 僕の真剣な顔と、悲しそうに離れたくないという意味合いの言葉に、笹川は漸くまだ戸惑いながらだったけど、僕の言葉に頷いた。
 それにホッと安堵の溜息を吐くと、僕は笹川の気持ちを持ち直す為に自分から体を摺り寄せる。
 そんな僕に笹川はもう一度僕をまるで安心させるかのように強く僕の体を抱きしめてきた。

「……幸田、だけど、おれぁ、……。」
「ん……?」
「……、やっぱ、いい。」

 笹川が何か小さな声で言いかける。
 だけどその言葉は最後まで紡がれる事なく、笹川の口の中に消えていった。
 僕もその時はもうしゃべるのに疲れてしまったし、笹川のご機嫌取りにも疲れてしまっていたので、特に追求はしなかった。
 そしてそのまま僕はセックスの疲れもあって、笹川の体温を少しだけ心地良いと思いながら、うとうととまどろむ。
 笹川とのセックスは本当の所幾ら慣れて気持ちが良いって言っても、僕自身はそれ程ヤりたい訳ではないんだけども、でも終わった後にこうして体温を感じて少しだけでも眠れるのは心地よかった。それが例え、笹川の腕の中だったとしても。