注意事項:強制フェラ
冬休みの間中、野々村達は僕の家に入り浸りだった。
母さんも野々村達の存在は見て見ぬフリだ。
それどころか、僕が友達を連れてきた、なんて変な勘違いをして彼らを歓迎する。しかもわざわざ、『私、仕事が忙しくて余り家に居ないから、いくら居て貰っても構わないわよ〜』、なんて事まで野々村達に言ってしまうし。
あぁ、もう母さんもどうしようもない馬鹿だ。
そういえば笹川が頻繁にこの家を訪れていた時だって、母さんは僕と笹川の関係なんて全く気づきもしなかった。
あれだけ頻繁にシーツを洗い、ソファや床を精液で汚したままにしてた時もあったし、時にはキッチンのゴミ箱の中に使用済みのコンドームを何個も捨てていたっていうのに。
そのどれにも全く気がつかない、なんて筈がない。
それがあるからこそ僕は、母さんは本当に僕に興味がないんだ、と改めて実感してしまう。
相変わらずは母さんは忙しくあちこちを飛び回っている。
ひょっとしたら新しい恋人が出来ているのかもしれない。
まだ母さんは若いし、化粧のせいか多分他人には美人に見えるだろうし、会社社長なんてやってるから出会いも多いだろうし。
元々良くモテてた人だったから、恋人が出来てたって全然可笑しくない。
それに僕が高校に入ってからと言うもの、母さんは前にも増してこの家に帰ってこなくなった。外泊も多いし、寧ろ一ヶ月の半分以上はどこかに泊まっている。
この家に帰ってくるのは、着替えが必要になった時くらい。
それも、外で新しい服や下着を調達するのか、それ程頻度は多くない。
だから母さんに恋人でも出来たのだろう、って僕は想像してしまった訳で。
ただそんな感じだからそれ程野々村達とは顔を合わせない。
そこまで思ってひとつ気がついた。野々村達と顔を合わせる回数が少ないし、母さんが家にいるときは野々村達も僕に対して暴力を奮う事はない。だから、野々村達の事を僕の友達、なんて勝手に勘違いしているのだと思う。
でも……、明らかに僕とは毛色の違う大柄な男達が多人数、しょっちゅう自分の家にタムロしててなんとも思わないって言うのは本当に理解不能だ。
普通の親なら、こんなガラの悪い男達が冬休みの間中、夜遅くまで他人の家で我が物顔でゲームをしたり、冷蔵庫の中のものを漁ったりしていたら、怒るもんなんじゃないんだろうか。
そんな事を思いながらも、久々に帰ってきた母さんは野々村達がゲームをやる後姿を妙に楽しそうに眺めている。
だけどふと視線を壁にかけてある時計へと向けると、母さんは突然慌て始めた。
「あっ、やだ! ごめーん、一臣。私そろそろ行かなくちゃ。これから一週間、名古屋に買い付けなのよー。あぁ、もう、年の瀬だってのに本当ゆっくり出来ないわねぇ。やんなっちゃうわぁ。」
慌ててソファから立ち上がり、そう言いながらバタバタと自分の寝室へと駆け込む。
やんなっちゃう、とか言いながらも、母さんの顔は嬉しそうに輝いていたし、僕に対して本当に悪いとは思ってはいないみたいだった。
程なくして母さんは寝室からガラゴロと大きなキャリーケースを引き摺りながら出てくる。
そして僕に改めて、家の事宜しくね、何かあったら連絡しなさい、寒いから体には気をつけるのよ、年明けには帰ってこれると思うから。それじゃ良いお年を! なんて野々村達の前で母親ぶった顔をして言い残すと、慌しく家を後にした。
あぁ、もう、本当に彼女は僕の事なんて視界に入ってないんだな、そう母の後姿を見送りながら僕は思う。
だけどこんな生活はもう一年以上続いているし、中学の頃だって、もっと小さな頃だって彼女は僕の顔をちゃんと見て話そうとした事なんてない。愛されてない、とまでは思わないけど、でも、僕に対して自分の子供としての興味を失っている、そんな感じ。
「さぁて、お袋さんも出かけた事だしよぉ、……チビぃ?」
廊下に突っ立って母が出て行った玄関ドアをぼんやり見ていると、後ろから野々村の野太い声が僕を呼ぶ。
その声に僕は振り返り、小さく溜息を吐きながら野々村の元へと戻った。
「……。」
無言で野々村の前に立つと、野々村はにやりと下卑た笑いをその唇に貼り付ける。
さっきまで僕の母さんに見せていた笑いと違う、そのいやらしい笑みに僕は微かにだけど顔を顰めた。
だって野々村が何を求めているのか、嫌になるくらい解る。
過去に笹川も良くこの笑みを唇に貼り付けて僕の前に立っていたから。
――あぁ、そう言えばあの日から笹川の姿を見ない。今日もそう言えば、来ていない。
笹川の存在を今更ながらに思い出し、チラリとリビングの中を見渡す。
リビングにはまるで自分の家のように各々好きな場所でくつろいでる野々村の手下達が居たが、その中に笹川の姿は見えなかった。
あの日、三日前のあの日までは笹川も野々村達と一緒に、確かにこの家に来ていた。そして所在なさげに隅の方に座ってたっけ。
だけどあの日から笹川の姿を見ていない。
それが何を意味しているのか。
少し考えてみて、苦笑した。
きっと後悔しているのだろう。僕の前に顔を出せないくらい馬鹿な事をしたって。
まぁ、でも仕方ない。あれは笹川の自業自得だ。
野々村達が居るのに、我慢できなくなった奴が悪い。
体育用具室での一件の後、一応笹川は野々村達にそれ相応のリンチにあったらしくて、暫くは顔を酷く腫れ上がらせた状態で学校に通っていた。だけど、その一回のリンチで野々村にゲームの事を知らせなかった事は不問に付されたらしく、その後はいつも通りに笹川は野々村達のグループに戻って、――但しグループの中で最下層の扱いを受けながら――、奴は野々村に着いて僕の家に来ていた。
それ自体は別に構わない。
だって野々村達が連れてくるんだから、僕が何か文句を言う筋合いもないし。
だけど、笹川はそれが結構苦痛だったらしい。
だって僕の家に居て、僕と一緒に居ても、全く手が出せないんだもん。
しかも学校では、グループの中の誰かが必ず僕の傍に居て、逢引も出来ない。挙句に、学校が終わると毎日のように、野々村達と一緒に僕の家に下校。
冬休みに入れば当たり前のように野々村達は僕の家に入り浸り、クリスマス当日も僕の家で、僕の家の金で勝手に盛大に盛り上がっていたし、僕の家だというのに始終僕の傍には誰かが居た。
そりゃあのサルにしてみたら、苦痛だろうなぁ、ってなんとなく思うし、同情もする。
でも、だからって、野々村達が酒を飲んでほとんどが撃沈しているその間に、僕の部屋で僕に手を出そうだなんて、短慮にも程がある。
それだけ我慢が出来なかったのか、そう思うと同じ男として少し可哀想でもあるけど、でももうちょっと場所と周りの状況を考えて欲しかった。
……とは言っても、僕が一人になる事はあの体育用具室の一件からほとんどなかったから場所と状況を考えろよ、なんていってもそれは笹川にとって酷な事かもしれない。
で、結局そのせいで野々村達に僕達の関係がバレてしまった。
お陰で、僕はすっかりこいつらのストレス発散の為のいじめの対象ってだけではなく、こいつらのシモの世話、つまり性欲処理の相手までしなくならなくなった。
「なぁ、チビぃ、今日は誰とヤリてぇんだ?」
「……っ。」
笹川の馬鹿。
そう今の状況に対してここには居ない笹川に向けて心の中で悪態を吐く。
だけど目の前に居る野々村はそんな僕の気持ちなんてお構いなしに、手を伸ばして僕の尻をそのデカイ手でぐっと掴んだ。
しかも嫌な事を聞いてくる。
誰とヤリたいかって?
そんなの、決まってるじゃないか。
この中の誰ともヤリたくなんてないよ。気持ちの悪い。
そう声に出して言えればどれだけ楽か。
だけどそんな事を言った日には、性欲処理だけじゃなくて、暴力も振るわれる。
実際、あの日、このままの事を僕は野々村に言った。そしたら、シャツに隠れて見えない所を重点的に殴られて、床の上に這い蹲る羽目になった。
その後の事は、もう、悲惨の一言だ。
笹川は僕以上に酷い暴力を振るわれた挙句、野々村の手下の一人に押さえつけられた状態で、僕がこいつらにされる事を一部始終見せられたし、僕は僕で、必死に抵抗したけど、結局複数の男に体を押さえ込まれ、かわるがわる奴らの汚い性器を口に突っ込まれ、それを僕はえづきながらも野々村の命令に従って舐めて、吸って、奴らの精液を搾り取る、なんて作業を延々とさせられた。
最終的に僕の口どころか顔も体も奴らの精液に塗れ、三日も経った今でも顎が酷く痛い。……いや、顎が痛いのはその後も何度も何度もこいつらの性器を口にしてるからだけど……。
そしてシャツの下には、未だにあの時殴られた青あざがまだそこかしらに残っている。
ただ、幸いな事にその時も今も野々村達は僕の尻には興味を示さなかった。
笹川とその時してたのがフェラだけだったから、きっと、それでそれ以上の行為をするということに野々村は思い当たらなかったのかもしれない。
それに冷静に考えれば、普通僕らくらいの年齢で、男同士でのセックスだと後ろの穴を使う、なんて知っている人間なんて早々居ないし、居たとしてもホモでもなければ男相手に尻でのセックスに興味を示す筈などない。
その事に少し安堵しながらも、でも、今、こうして野々村の肉厚の手が僕の尻を掴んでまるで捏ねるように揉む事がなんだか怖かった。
「ほら、早く選べよ。どいつにする? コータか? 西か? 沢崎か? ん? どいつでもいいんだぜ? お前が好きなタイプの男を選べよ。男、好きなんだろ? なぁ、チビ? 笹川のチンポをあんな美味そうに舐めてたもんなぁ。」
野々村は僕の尻を撫で擦りながら、にやにやと笑い僕をいやらしい目で見上げる。
そんな野々村になんて返せばいいか僕は解らなくて、相変わらず無言のまま唇を噛み締めて視線を野々村から逸らす事しか出来ない。
だって誰を選んだって、どうせ最後には全員を相手にしなきゃならないんだから。
だけど僕の無言は当然だけど野々村にとって楽しい事ではない。
「チビぃ? 俺が優しく言ってる間に相手決めろよぉ〜? じゃねぇと……殴るぞ?」
「……っ、ぅ……。」
僕の顔を下からねめつけながら、野々村は僕の尻の肉をその手で強く掴む。その痛みと、野々村の低いドスの利いた声で言われた、殴るぞ、という言葉に僕は小さく体を震わせる。
別に怖い訳じゃない。
でも何度も何度もこいつらにサンドバックにされていると、どうしても無意識のうちに体がその殴られる痛みを思い出して、反応をするんだ。
その僕の震えに野々村はまたいやらしく笑った。
そしてまた僕に誰を選ぶのかと聞いてくる。
だから、仕方なく僕は無言のまま、その場に膝を折ると、目の前に居る野々村のジーンズのジッパーに手をかけた。
「……へぇ、俺のがいいのかよ? 言っとくが俺のはデカイぜぇ? まぁ、ホモのお前にゃ笹川のチンケなシロモノよかよっぽどご馳走かもしれねぇけどなぁ。」
「……。」
僕の指がジッパーを降ろし、その下にある下着の中からまだふにゃふにゃな野々村の性器を取り出し、それに口をつけると、頭上から野々村の嫌な声と笑い声が降ってくる。
だけどそれも無視して僕は、野々村のその体同様通常時でも馬鹿でかいソレを口を大きく開けて飲み込む。
口の中に嫌な味が広がり、不潔な匂いが鼻をつく。
その不快な味と匂いに野々村には解らないように顔を顰めながらも、僕は出来るだけ丁寧に野々村の性器に舌を這わす。
ピリッとした強い塩気が舌先に感じられ、オエッと思う。
それでもそれはなるべく表情には出さず、笹川にしていたように野々村の性器にもねっとりと舌を絡めた。
暫くそうして先端を吸ったり、舐めたり、口の中で扱いたりしていると柔らかかったそれは少しずつ硬くなる。そうなると、元々馬鹿デカイ野々村の性器は僕の口には納まりきらなくなってしまった。
「ふ……っ、ん、ちゅ……っ、んんっ……っ。」
口の中に全部が納まらないから仕方なく僕は野々村の性器を口から吐き出すと、顔を横にしてその竿や根元、雁の裏に丹念に舌を這わせる。
すると野々村の口から堪えきれないように荒い息が漏れ始めた。
ペロペロキャンディーを舐める要領で、僕の顔の大きさぐらいあるソレを下から上へと唾液をたっぷりと絡めて舐め上げると、野々村が小さく呻く。ついでに竿を支えていた右手を少し下へと下ろして、まだ下着の中に納まっている袋を優しく揉みしだいてやれば野々村はもう僕の意のままに喉の奥で快感の呻き声を漏らしていた。
……本当なら、僕の復讐劇にこんなシーンはなかった筈だった。
こいつらにこんな事を強要されるようなシナリオなんて用意してなかった。
そこは僕が迂闊だったと思う。
だけど、まさかこいつらまで笹川と同じように、僕に対して性的な欲求を満たすような行為を強いるなんて思いもしなかったから。
だって野々村は女には不自由してない筈だし、コータは前も言ったが女にもてる。
まぁ、そりゃその二人以外は笹川とどっこいどっこいな不細工だったけども、笹川ほど飢えているようには見えないし、野々村の命令がなければ僕に対してそんな行為をするタイプには見えない。
だからこんなシナリオは想定していなかった訳だけど、こうなってしまった今はまたこの事を踏まえて新しくシナリオを練り直している。
尤も、このせいで最初に想定していたシナリオが全部ボツになってしまったから、色々と方法も考え直さないといけないのがネックだったけど。
だが考えてみれば、今までのシナリオよりもコッチの方がインパクトがデカイ。
こいつらのこんな様子を上手く利用して、逆手にとってしまえばこっちのモノかもしれない。それに、こいつらが笹川同様、僕とのこの行為に味を占めて、これからこの冬休みの間中、何度も繰り返すとしたら……。
そうなれば後は、学校が始まってからあれを実行するのみ。
そう気持ちを切り替えて僕は、野々村の性器に丹念に愛撫を加えていく。
野々村のソレは僕の手の中で笹川なんて目じゃないくらい隆々と勃ち上がり、太い血管を浮かべていた。
日本人の成年男子の平均を大きく上回るそれに僕は苦労しながら、口に含んだり、竿を舐めたり、袋を揉んだりする。
そうしながら、ふと、もしこれを尻穴に挿れられたら、どうなるんだろう。そんな事をなんとはなしに思う。
笹川のモノは太さはそれ程でもなかったけど、長さがそこそこあった。そのせいか僕の腸壁の奥の奥までその先端で擦り上げられるのが僕には堪らなかった訳だけど。
コレだと笹川のモノよりももっと奥にまで届くような気がする。
それはどんな感じなんだろうか。
気持ち良いのか、痛いのか。
だけど、でも野々村のコレは流石にデカすぎる。
こんなの挿れられたら、きっと気持ちよくなる前に穴が裂けてしまうような気がした。
冗談じゃない。
そんなのはゴメンだ。
野々村のモノを尻に受け入れる想像を無理矢理頭から追い出すと、笹川の事を思う。
別にどうと言うわけじゃないけど、なんとなく笹川と野々村の性器を頭の中で色々と比較する。
味とか匂いとか、大きさとか、太さとか、手触りとか……。
先端を口に含み、そこから溢れ出る塩っ辛い野々村の先走りを吸い取りながら笹川の性器を思い出していたら、なんだか妙な気分になってくる。しかも、なんとなく尻穴がむずむずするような、そんな感じがして酷く落ち着かなくなった。
だから集中する為に僕は雑念を頭からそぎ落とし、野々村のモノの先端を口でちゅぱちゅぱと舐め、手指で根元の方を擦る。
すると野々村が、フーッフーッとまるで笹川みたいに鼻息を荒くした。
しかも竿の下にある袋も優しく揉めば、その度にその巨体を揺らして僕の頭をぐしゃぐしゃにその手で撫で、僕の頭を押さえてきた。
その野々村の反応になんとも言えないささやかな優越感を感じながら、気がつけば、僕は顔を紅潮させ自分の顔に野々村の性器を擦り付けるようにしてその性器を舐めまくっていて。口いっぱいに広がる野々村の味が、嫌悪感を催す筈のそれが、僕を妙に興奮させていた。
「はっ、……ぁ……ちゅ……ん、ん……っふぁ……っ。」
「く……っ、チビぃ……、っ、ほら、もっと、咥えろよ……っ。くちぃ開けろ。」
「んっ、ぅん……っ、う……んん……っ、む。ぶ、ぐ……っんんっ。」
ぐっと頭を押さえつけられほとんど無理矢理に僕の口の中にその太くデカイ性器を全部挿入させようとする。
その乱暴さに僕は顔を顰めながら、それでも頑張って口を大きく開けて野々村の性器をその要望どおりに口の中へと納めた。だけど、長さも太さも尋常じゃないそれは当然その根元までは僕の口の中には入りきらない。半分までは頑張って飲み込んだんだけど、でもどうしてもそれ以上はいかなくて。
仕方なく僕は喉の奥を無遠慮にゴツゴツと突いてくるその息苦しさと、訪れる吐き気にえづき、咽ながら、顔を大きく上下させて舌を大きく張り出している雁の部分に重点的に押し当てて野々村に快感を与えるよう頑張る。
すると全部口に入りきらなかったのは不満だったみたいだが、その僕の動きに野々村はそれなりに満足したのか、自分から更に腰を揺すりながら僕の口にその性器を擦り付けた。
「ぅ……っ、チビぃ……、ん、そうだ……っ、はっ……いいぜ、いいぜ……っ。」
我慢できなくなったのか、野々村がそううわ言のように僕の技術を褒めてくれる。
それに気を良くして僕はもっと野々村が気持ちよくなるように顔を上下させ、舌で舐め、先端を吸い、手で竿を擦る。
そんな僕の口からは飲み込みきれない唾液と野々村の先走りが混ざった液がどんどんと零れ落ち、野々村の性器にそれが絡み付いていく。その唾液を僕は片手で口に入りきっていない部分の竿に擦り付けながら、僕はあの瞬間が訪れるのを心待ちにしていた。
激しく顔を上下に動かし、時には左右に振り、野々村の感じる所を集中して舌先で攻める。そうしながら射精を促すように僕の右手は野々村の太い竿を擦り上げ、左手はその下にある袋を強く弱く揉みしだく。
どれくらいそうして野々村に刺激を与え続けただろうか。
いい加減舌先は痺れ、口も開けっ放しで顎の間接がぎしぎしと痛み始めた頃、漸く野々村のモノはその前兆を示してくれた。
よかった、後もう少し……。
そう思い僕はフェラに熱を込め、無我夢中で野々村の性器を吸って舐めた。
「っ……、く、チビッ、……っ、ぅう……っ。」
野々村が低く呻く。
そしてぐっと僕の頭を上から強く押さえつけた。
それは合図。
僕はすぐに訪れるであろうその衝撃に備えて心の準備をしながら、野々村の性器を追い詰める。
すると程なく野々村の先端から、ピッ、と先発が弾け、そして、その後一気に僕の口の中にあの独特な生臭くて不味い白い液体を噴き出す。
「ぶ……っ、む……っ、ん、んんんん……っ!」
余りに激しい勢いで喉の奥に向けて発射され、その一部が気管に入りそうになる。
その事に僕は慌て、口から野々村の性器を吐き出そうとしたがそれは頭を押さえつけている野々村の手に阻まれて出来なかった。
結局、野々村の吐き出した白い液は半分以上がそのまま僕の口から零れ落ち、野々村自身の性器と僕の手、そして、野々村のジーンズと下着までを汚してしまう。
しまった、とは思ったけど、こんな馬鹿デカイものを口に含んだままでこれを飲むのはどう考えても無理だ。
それでもこれ以上汚さないように、と思い、僕はじゅるじゅると音を立てて口から零れた精液も何とかして飲もうとする。
だけど性器から口を離せないこの状況では、野々村の性器の先端に残っていた精液を吸い込むだけで、零れた分は到底吸い込むことなんて出来なかった。
どうしよう。また殴られるんだろうか。
そう思いながらチラリと上目使いに野々村を見上げる。
すると野々村は射精の余韻に浸っているのか、恍惚というか、虚脱したような変な表情でハーハーッと肩で息をしていた。どうやら僕が野々村の精液を全部飲み込めず、零してしまったのには気がついていないみたいで少しだけホッとする。
だけど今気がついていなくてもすぐに気がつくだろう。
その時、どうしたらいいのか……。
野々村の性器を相変わらず口にしたまま、なんともなしにチロチロとその先端を舐め続けながらそんな事に思いを馳せていると上向いていた野々村の視線が僕へと落ちた。
そのまま野々村は僕の目にしっかりと視線を合わせると、その太い唇に笑みを浮かべた。
「はーッ……、チビぃ、お前すげーなぁ。これじゃ笹川がイカれるの解るぜ。」
くつくつと喉を震わせて笑いながらそのままぐしゃぐしゃと僕の頭をそのでっかい手のひらで掻き回す。
何故突然そこで笹川の名が出たのか解らなくて、一瞬きょとんとしたが、野々村は僕の頭を見下ろしにやりと笑っただけだった。
そして僕の顎に手をかけると顔を持ち上げ、その自分の性器を咥えたままの僕の口からそれを抜き取った。
漸く口が開放された事にホッと息を吐いたが、野々村はそんな僕の体をやけに馴れ馴れしく抱き寄せてくる。
ベタベタと体を触られ不快に思ったが、何故か知らないが妙に野々村は上機嫌で勝手にべらべらと話し始めた。
「いやー、俺をフェラでイかせたのはお前が始めてだぜ、チビ。俺のはデケェから大抵の女は途中で根を上げちまう。しかも大抵は舐められても気持ち良くなんざねぇんだよな。でもお前は良く解ってるみてぇじゃん。男のツボって奴をよぉ。ホモなんて気持ちわりーだけだと思ってたが、なるほどな、男だけに男が喜ぶツボを心得てるってー訳だ。」
なんだ、自慢か。と思った言葉は、その内僕へのフェラの技術への褒め言葉のような侮辱の言葉のようなものへと変わった。だけど、そこまで言い言葉を止めると、野々村は僕の顔を覗き込むように見る。
「……ところでなぁ? チビ。笹川のヤロー、お前と会う度にコレさせてたのか? ゲームがどうとか言ってたけどよぉ、アイツの本当の目的はコッチだったんだろ? どうなんだよ、アイツとはどれ位の頻度でコレしてやってたんだ? ん? それからコレの技術、あいつに仕込まれたのか?」
突如野々村の声のトーンが変わり、そして、ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべながら僕に笹川との関係を深く聞いてくる。
何を今更、と僕はそれを聞いて思う。
だってそんな事、あの時にだって聞けた筈じゃないか。
だけどあの時はそんな質問なんてせずに、ただ他の奴らに命令して野々村は後ろで踏ん反り返ったまま他の奴らに僕の口を犯させるのを見ていただけだった。
そして笹川が何か狂ったように叫ぶのをただ嘲笑っていただけで。
そこまで思い出して、僕は始めて野々村のモノをフェラした事に思い当たった。
あの時も、今日までの三日間も、野々村はいつも他の奴らに僕を与えて、自分は高みの見物だったっけ。僕の口や手で手下共が間抜けな面をして精液を僕の顔や体に発射するのをゲラゲラ笑いながら見ているだけだった。
と、言うことは、今日僕が自分から野々村のモノをフェラしない限り、ずっとこいつは僕が他の奴の性器を舐めたり手で扱いたりする姿を見て笑い続けるつもりだったのだろうか。
そんな風に思いながら、僕は今更な野々村の質問に、悲しい事を思い出した、と言った風にわざと言い淀み目を伏せる。
「っ……、そ、それは……、その……っ。さ、笹川くんは……、僕……。」
震える声で言い淀むと、野々村は僕の言葉に食いついてきた。
「おっ、どうなんだ? 笹川がなんだって?」
「……っ、ぼ、僕……、だって、逆らえなかったから……っ。気持ち良くさせないと、殴られたし、だから……っ、ぅ……っ。」
瞳に涙を溜めて、声を震わせながらあくまでも笹川に強要されてフェラをしていた、と野々村に伝える。
すると野々村はわざとらしく驚いたような顔を僕に見せる。そして演技がかった声で僕に同情したような事を言い始めた。
「ほおぉ〜、笹川のヤローあんな面して意外に鬼畜だったんだなぁ。そりゃぁ、お前も大変な目に遭ったなぁ。……で、お前はお前でどうなんだよ? ヤローのチンポ咥えるだけで、気持ち良いのか? さっきもいやらしい顔で俺の舐めてたけどよぉ。本当は物足りねーんじゃねぇの?」
「……え……。」
まさかそんな変化球が来るとは思わなかった。
僕は嘘泣きで涙を溜めた瞳を野々村に向けて、その目を見返す。
すると野々村はにやりと嫌な笑いを浮かべた後、視線を周りに向け、僕達の行為を見て見ぬ振りをしていた手下達になにやら目配せをした。
その野々村の目配せで中の一人が鞄を手繰り寄せると、その中から何か取り出して野々村に向けて投げる。
四角いDVDかゲームのようなパッケージのそれを野々村はなんなく手に取ると、まるで見せびらかすように僕に見せた。
それを見て僕は嫌な気持ちになる。
だって野々村が持ってたそのパッケージは最初僕が思った通りに、DVDのパッケージで。しかも、男同士のAVだった。
男同士が汚らしく絡んでいる幾つもの写真が切り貼りされたようなそんな乱雑なパッケージを見せ付ける野々村に僕はこいつが何を言いたいのかなんとなく理解する。
つまり野々村は、男同士ってのはこー言うことするんだろう?、お前もこーいう事したいんじゃねぇの?、と僕に暗に聞いているのだ。
そしてその予想は当たった。
「……男同士ってなぁ、ケツの穴使ってスんだな。俺コレ見て初めて知ったぜ。で、まさかとは思うけどよ、お前、笹川にケツも貸してた? このAVみてぇにケツ穴でしまくってた?」
「……っ。」
「ま、別にしらばっくれるのは構わねぇよ。ただなぁ、お前がさぁ、俺達のチンポ舐めてる間中、なんかモゾモゾモゾモゾ、ケツを振ってたからよ。ひょっとしたら、って思ってな。」
明らかに僕はそんな事してないし、こんなのはただの言いがかりだ。
そう言いたかった。
だけど野々村の手はいつの間にか僕の尻に落ちていて、そこで僕の尻肉を捏ね繰り回す。その感触が、なんていうか、僕の腰に重い快感を与え咄嗟に野々村の言葉を否定することが出来ない。
笹川とセックス出来なくなって、二週間と少し。
あれだけ頻繁にしていたセックスがぴたりと止まって、笹川と触れ合うことも出来なくなって二週間と少し。
別に僕はセックスなんて元々大して興味を持つ対象でもなかったし、笹川とシなくなっても今までは特にどうとも思わなかった。寧ろ、あのしつこい愛撫や挿入から開放されてせいせいしていたくらいだ。
だけど、何故こんな時に笹川とのあの時間が脳裏にフラッシュバックのように蘇るのだろう。
目の前で野々村にちらつかされる男同士のAVのパッケージが余計に僕に笹川の体温や、感触を思い出させる。それがなんだか嫌で、僕は野々村から目を逸らし、AVからも目を逸らそうとした。
だが。
野々村の手に顎を掴まれ無理矢理顔をそちらに戻される。
「お前さ、笹川と別れてケツが寂しいなら、コータ達に掘って貰えよ。なぁ? 口だけじゃもう我慢できねーんじゃねぇの?」
ゲラゲラゲラ。
野々村が下品に笑うと、漣のように周りからも下品な笑い声が僕に押し寄せてくる。
一体野々村がどういうつもりでこんな話を僕にするのか。
僕をどうしたいのか解らず、僕はただただ唇を噛んで俯くしかできない。
だけど、もしこのままこいつらに後ろを犯されたとしても、それはチャンスに繋がるかもしれない。今のままだと多人数対一人のままで僕はなかなか野々村に復讐をするチャンスを持つことが出来ないから。
でも、もし、これで野々村とも関係を持って、上手く二人っきりになれるチャンスが訪れるのなら、このルートでも一発逆転できるかもしれない。
そう思いなおし、僕は噛んでいた唇の力を緩めた。
強く噛みすぎたそこは少し血が滲んでいて、鉄の嫌な味が口の中に広がる。
「……それって、僕を、犯したいって事? セックスしたいって事?」
逸らしていた目を野々村に向け、あえて直球で聞いてやる。
すると野々村は少し驚いたような顔をした後、大げさに肩を竦めてみせた。
「はっ、俺はホモじゃねぇからなぁ。お前とそんな気はねぇよ。……ただ、なぁ。俺は違うけどよぉ、コータや西達がコレ見て男同士のセックスってのに興味を持ってさぁ。お前がケツもOKなら、あいつらに貸してやってくれよ。なぁ? 友達のよしみでさぁ。」
何が友達のよしみだ。友達でもなんでもない、ただのたかり屋のハイエナの癖に。
そう心の中で毒づき、チラリと視線をコータと西へと向ける。
野々村の言葉に二人は困ったような顔で互いの顔を見合わせている所を見ると、これは野々村がまた独断で勝手に二人を僕に宛がうつもりなのだろう。
まったくどこまで横暴で独善的なんだろう、こいつは。
コータも西って奴も僕となんてセックスなんかゴメンだってはっきりその顔に書いてあるのに。
それでも、こいつの命令には手下共は逆らうことが出来ない。そんな勇気があれば野々村の手下なんて立場には甘んじてないだろうから。
僕は野々村の言葉に一つ溜息を吐き、その馴れ馴れしい腕の中から抜け出す。
そして野々村の、どこに行くんだ、って声を無視して、とりあえず僕から一番近いコータの元へと近寄る。
コータは僕の態度にその整えられた眉を訝しそうに潜め、僕が近づくのをそれでも野々村の目がある為避ける訳にも行かなくて、ただ少し嫌そうな顔をしてその場に佇んでいた。
そんなコータに僕は、今までは見せた事のない笑みを見せる。
「なっ、なんだよ……。」
「……本当に、コータくんは男同士のエッチに興味あるの?」
見せた事のない僕の態度に少しコータはたじろぎながら、それでも、僕に対して虚勢を張る。
そんなコータがちょっと可笑しくて、僕は笑みを深めながらそっとその胸板に手を寄せ、一応野々村の言葉の真偽をコータ自身に確認してみた。
するとコータは戸惑ったように瞳を左右に動かし、チラリと野々村の方を確認するように見る。
嫌なら嫌って言えばいいのに。
そうは思うけど、虎の威を借りる狐ちゃんとしては自分の意思よりも何よりも大将の意向のほうが大切らしい。
コータの態度に僕は、小さく笑うと、口を開く。
「シたいんなら、別に僕は構わないよ。」
くすくすくす。
今までとは違った笑いを僕は漏らしながら、上目使いにコータを見て、それから周りに居る野々村の手下共へも視線を巡らせる。
まさか僕がこんな風に積極的に出るとは思いもしなかったのだろう。
コータを始め、この場に居る人間は揃いも揃って驚いたような間抜け面を晒していた。
そいつらの態度にまた僕はくすくすと笑うと、コータから少し離れる。
そして、ゆっくりと着ているシャツのボタンへと指をかけた。
「もう解ってるなら隠す必要もないし、いいよ、教えてあげる。……僕は笹川とセックスしてた。誘ったのは僕、乗ったのは笹川。ゲームをしてたなんて嘘。笹川とは会う度にセックスしてた。……君達がさぁ、あんな事を、小便した後の『掃除』なんて事を僕にさせるから、笹川の奴、僕の口が忘れられなくなったらしいよ? ――後さ、僕のお尻って結構具合がイイみたい。体を与えたら、笹川は簡単に僕に、僕の体に夢中になって何回も何回も僕の尻で果てたからさ。だから、君達が本当に男と、僕と、セックスしたいなら、相手になってあげるよ? 尤も、この僕に、男に……この体に勃起できるなら、ね。」
ボタンを一つ一つ見せ付けるように外し、ゆっくりと肩からシャツを脱ぐ。暖房の利いている部屋に居るからシャツの下はそのまま素肌だ。
そして、ジーンズにも手をかけるとベルトを外し、ボタンを外して、ジッパーを下げる。
男相手に恥ずかしがっても意味がないし、もう何度もこいつらには裸を見られてる。だから、躊躇する事無く僕はジーンズもストンと下に落として、足から引き抜く。
そうしながら僕は笑みを顔に貼り付けたまま、この部屋に居る男達を一人ひとり見つめ、下着も奴らの目の前で脱ぎさる。
貧弱な体がリビングの白熱灯の下に晒されて、流石に少しだけ気恥ずかしい。
だけど恥ずかしがる素振りなんて見せたら、こいつらは喜ぶだけだし、格好の餌になる。
だから僕は気丈に振舞い、寧ろ、ホモの淫乱男好きのフリをして、コータ達に流し目を送ってやった。
コータ達の視線は僕の体に痛いくらい注がれている。
がりがりで色が白いだけの骨ばった体に、しかも自分たちが殴ったり蹴ったりしてつけた青あざがいたるところにある体に、欲情なんて普通の男なら出来ないはず。
それでも野々村が命令したように無理矢理コータ達はその性器を勃起させて僕を犯す事が出来るんだろうか。
そこが興味深いところでもあった。
「どうする? 誰からスる? 僕は誰からでもいいよ? 来なよ。」
さっき野々村が僕に言った言葉そのままを僕側からの言葉に代えて、僕は目の前に居る男達を微笑みながら挑発した。