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NOVEL

罪 悪 感  〜第十四話〜

注意) 誘拐犯×主人公 淫語 暴力 首絞め

思いつきは行動になった。

行動は結果に繋がった。

じゃあ、後は……?

 男に連れ去られてから、三日が過ぎた。
 俺は相変わらず船の中に囚われたままだ。だけど、最初の頃に比べて格段に自由は増えていた。
 関係を持った男と一緒なら、船の中ある程度好きな場所に行く事が出来る。俺が連れ込まれた船は、どうやら個人所有のものらしかった。
 俺と、明らかに男の仲間と思しき人間しかこの船には乗ってなくて。しかも、その仲間と思われる男達は俺と関係を持った男を見ると、部下が上司にするように頭を下げる。そして時折男を尋ねてきては、現在の位置その他を報告をする。
 その事を見ても、男はどうやらかなり上の立場にある人間らしかった。
 俺は上手い事やったって訳だ。
 だが、男の言うクライアントが今だ誰なのかは、教えて貰っていない。流石にそれなりの地位にあるだけにビジネスの事となると男はベッドの中でも、酷く寡黙だった。だからこそ信頼が厚いのだろうけど。それでも、俺は俺を攫った奴の情報を少しでも知る必要があった。
 その相手にあった時の対応が変わるから。
 今は船の上だから、逃げようと思ってもどうにもならない。だとすれば、逃げるチャンスは陸地に着いて、男の言うところのクライアントに会った後。
 その時に相手の情報をある程度持っていれば、隙を見つける事も何も知らない状態の時よりも格段に楽になる。
 だから俺はなんとしても男から、クライアントの情報を聞き出したかった。

****

 その日も俺はベッドの中で、男にされるがままに艶のある声で鳴きまくっていた。

「はっ……あっ、あぅ……主税……っ、そこ、イイっ……、もっと、突いてっ。」
「渉、お前はここを突かれるのが本当に好きだな。」

 男――楠木主税は、この三日間時間が許す限り俺を抱き続けている。
 そして俺も、主税の求めるままに体を与えていた。
 俺は主税の部屋のベッドの上で、四つん這いになって後ろに主税の男を咥えこんでいる。主税の枕を腕の中に抱き込んで、高く尻を突き出し主税の目に俺の全てが映るようにしながら主税の動きに合わせて俺は腰を揺すっていた。

「んんっ……好き……、後ろ突かれるの、好きっ……っ。」
「へぇ、アンタ俺を最初に誘った時は、余り好きじゃないって言ってなかったか?」

 粘液質ないやらしい水音を主税との結合部から湧き立たせながら俺が、甘えた声でそう言うと俺の後ろに腰を強く打ちつけながら主税が、意地の悪い口調でそんな事を持ち出してきた。
 それに俺は抱きしめている枕に顔を押し付けて、嫌々をする。

「ぅ……あっ、やだ、主税の意地悪……、アンタだからだよ。アンタだから、突かれるの好きなの……、解ってるくせに……っ。」
「くく、どうだかな。」
「あっ……、やっ、駄目っ、主、税……、ソコ、感じすぎる……っ! イっちゃい、そう……っ。」

 一際大きく後ろを突き上げられ、俺は内臓を圧迫する主税のモノの感触に身震いをした。
 主税は俺の項にキスを落しながら、俺の腰に腕を回すと完全に勃起している俺の牡の根元をその太い指でギュッと握り締める。その射精を阻害する主税の指の締め付けに、俺はまた顔を左右に振ると主税の枕に噛み付いた。
 そんな俺を主税は見下ろしながら、更に俺の後ろをその太い男根で最奥まで突き上げる。

「く、ふっ……っ、んんっ! やぁ……、ち、から……、お願い、イかせて……ぁうう……っ。駄目っ、許して……!」
「許す? 何を? 俺に体を抱かせて、心じゃ違う男に抱かれてる事をか?」
「!? な、何の事……?」

 根元を更に強く締め付けられ、狂るおしい程の射精感に俺は主税の手に自分の手を被せると、カリカリとその甲をかぐった。しかしそんな事で主税が俺を解放するはずもなく。
 その後に言われた主税の言葉に、俺はぎくりと体を固めた。
 俺の体が硬直した事に主税は鼻先で笑い、空いてるほうの手で俺の頭を枕に強く押し付ける。

「アンタ、時々寝言で男の名前、口走ってるぜ? そいつが本命なんだろ、渉。お前が車の中で泣いた原因にもなってて、そして、こうして俺をこの淫乱な体を使って篭絡してまで、お前が戻りたいと思ってる、相手、だよな? ん? 渉。」
「! ひっ、ぁっ……、やっ、痛……っ。主税、止め……っ!」

 ぐいぐいと俺の頭を枕に押し当てながら、そこに爪先を食い込ませて俺の痛みを与えた。枕は柔らかかったけど、主税の大きな掌は俺の頭をすっぽりとその手の中に納め、まるで握りつぶさんとするかのように指先に力を込めていく。
 そして、俺は頭だけでなく主税に指摘されたことに、胸が酷く痛んだ。
 航矢の名を口走っている……。
 それは尤もしてはいけない事だった筈なのに。
 その事を指摘されてしまうと男の暴力とも言えるこの行為に俺は、ただ唇を噛んで耐えるしかなくなる。
 今更どんなに言葉を尽くしてみたところで、その誤解は解けないだろうし、主税は俺の言葉を真実だとは思わないだろう。
 だから俺は航矢と、そして今俺を抱いている主税に対して強い罪悪感を感じながら、主税の与える暴力を甘んじて受けるしかなかった。
 主税は俺の頭を押し付け、俺の男の根元を強く握り締める。
 頭も男根も握りつぶさんとするかのようなその強い圧迫感と痛みに、俺はただただ枕に顔を埋めて主税を責める事は止めて痛みに呻いた。

「渉。」

 と、俺を痛めつけていた主税は、不意に俺の名を優しく呼ぶ。

「もうその男の事は諦めろ。俺はクライアントを裏切る気はないし、お前をその男の元に帰す気もまったくない。」
「ち、から……。」
「まぁ、尤も。――クライアントにもお前を渡すのは、こうなっちまうと多少嫌なんだがな。なにせあのクライアントに渡しちまったら、アンタ壊される気がする。そう思うとやっぱ勿体ねぇな……、こんな具合がイイ男なんてそうそういねぇのに。」

 俺を背中から抱きしめ、先程の激しさとは打って変って緩やかに腰を打ちつけながら主税はやけに優しい声で、俺の耳に囁いた。
 くつくつと笑い声さえも滲ませて。

「しかしこの商売、信用をなくしちゃぁお仕舞いだ。だからお前は明日、約束どおりクライアントに引き渡す。」
「ぅ……ん、あし、た……?」
「そうだ、明日俺はクライアントと落ち合う。そこでお前はクライアントに引き渡され、俺とも、そして何よりアンタの愛しの航矢って奴とも永劫にバイバイだ。」
「…………。」

 主税は相変わらずどこか楽しそうな色を滲ませた声で、俺の耳に低く小さな声で囁き続けた。
 俺はその男の言葉に、枕に押し付けられた顔を悔しさで歪める。そんな俺に、主税は頭を押し付けていた手の力を漸く緩めると、指先で俺の髪を弄び始めた。
 撫でるように頭を触り、その次に後ろ髪を一房取るとそれを指に巻きつけたり、撫で擦ったりする。
 そのどこか名残を惜しむような指の動きに、俺は少しだけ主税の本心を感じた。

「なぁ、渉。お前は本当に男の扱いが上手い、男だよ。短い間だったけど、久々に本気になりそうだった。まったく、ヤバイったらありゃしねぇ。」
「主税……。」
「後、もう二、三日もあれば俺はお前を手放せなくなったかもしれねぇ。――仕事も忘れて、お前に騙されてると知ってても、だ。」
「ん、んっ……。」

 くつくつと自嘲的な笑い声を漏らし、主税は俺にそんな事を告白すると俺の頭を無理矢理後ろに向かせて唇にその肉厚の唇を押し当ててきた。
 唇を吸い上げられ、輪郭をざらざらとした舌で舐められた後するりとその舌が口の中に侵入してきた。
 思わず反射的に俺はその舌に自分の舌を絡めて、主税の口付けを享受する。
 と、俺の根元を握っていた主税の指が外れ、今度は先端から竿の半ばまでをその大きな掌で包み込んできた。先端に親指を当てたまま主税は、絶妙な力加減で俺のモノを扱きだす。

「ふぅ……んむ……ッ。」

 主税の施す濃厚な口付けに俺は半分息が上がりながらも、腰から上ってくる痺れるような快感にキツク眉根を寄せた。
 そして緩やかに打ち付けていた腰も、すぐに強く激しくなっていく。
 ぐぶぐぶと互いの体液が泡立ち掻き回される音が、俺と主税の体の間で木霊し俺の耳に届いた。主税のデカイ男根で限界まで拡げられている肛門が、大きく掻き回される事で更に拡げられそうになり入口部分に鈍い痛みが走る。

「あっ、む、ふあぁ……っ、ち、から……やだ、裂けちゃう、よ……そんなにされたらっ。痛……い。」
「アンタのケツなら大丈夫だろ。初めて俺のモノを飲み込んだ時も、痛みを感じるよりも快感を得てたような淫乱だ。」

 入口まで引き抜かれ、最奥まで円を描くように掻き回されながら一気に突き刺されると、入口部分がぎちりと軋んだ。そのビリビリくる痛みに俺は、主税の唇から逃げると喘ぐようにもう少し優しくしてと懇願したが、主税は多少サディスティックな色が見えている声でそう言い放ち、更に大きく俺の後ろを掻き回した。

「ひぁ……っ、あ、あぁぁぁっ、主税っ……、いやぁっ痛い、……嫌、だぁ!」
「何が、嫌だ。ん? アンタのココは喜んでるぜ? 目一杯拡がって俺に吸い付いてきやがる。……はっ、堪んねぇな……。」
「ん、んっ……、くぁ……、裂ける……、裂けちゃう、よぉ……。主税っ、やだぁ……引き裂かない、で……っ、主税ぁ……。ひっ、……くぁあっ!!」
「くく、どうせならこのままお前を俺のモノで引き裂いちまいたいんだがな、渉。」

 俺の後ろの入口の筋肉の限界を探るかのように主税はその巨根を、上下左右に大きく動かす。その度に入口はピリッとした痛みを俺に伝え、そして肉が悲鳴を上げていた。
 と、主税の体がまた一際大きく動き、残酷さを滲ませた声色で囁くのと同時に、とうとう俺の肛門の一部が主税の男根の圧力に負けて切れる。小さなブチッという何かか切れる音がして、俺の太股に生温かい今まで零れてきた粘液とは違う液体が、流れ出してきた。

「お、マジに裂けちまった。ほら、渉。血がボタボタ零れてきたぜ? あぁ……、なんだか処女犯してるみたいだ……興奮する。」

 くくく、とやたらにサディスティックな笑い声を上げて主税は裂けて血に塗れている俺の肛門を、また酷く乱暴に出し入れし始めた。
 血が流れだした事で更に俺のアソコからは濡れた水音が湧き上がり、そして主税の牡を今までよりもスムーズに出し入れ出来るようになる。

「くぅぅん……、主税っ、主税ぁ……。」
「すげぇズルズル滑るぜ。女としてるみてぇだ。アンタはどうだ? 本当は気持ちイイんだろ? 渉のチ×コ、はちきれそうになってる。」
「あっ、あぁぅ……、く、ふぁっ。ん……、イ、ィ……っ。」
「ん? もっとはっきり言いな?」

 主税が言うように、今までよりも大きくぐちょぐちょと確かに女みたいにいやらしい水音が後ろから湧き立っていた。
 そして、肉が切れた痛みと、だけど、それ以上に主税の太いモノが出入りする快感が俺の中を掻き回し、俺の男はもうさっきから限界まで膨れ上がって主税の手の中で大量の先走りを垂らしている。
 それを主税に指摘され、俺は熱の上がった顔に更に熱を上げると、それでも主税の言葉に小さく頷いた。
 だが、主税にはっきり言う事を強要されると、やけくそになって叫ぶ。

「う……ぁ、イイよっ! 主税の、デカチ×ポ、滅茶苦茶、気持ちイイんだ!! あっ、あふ……っ! もっと、もっと乱暴にして……っ、俺、乱暴にされると、感じるんだよ……っ! 主税に乱暴にされると、堪んなくなっちゃうんだよ……っ!! 引き裂いて……! あいつの所に帰れないなら、今ここで主税のデカチ×ポで、引き裂いてよぉ……っ!! 主税のモノになるからぁ……ぁ!!」

 俺は主税の痛みを与えるモノに揺さ振られながら、自分からも滅茶苦茶に腰を揺らして感じている事を主税に全身で伝えた。
 と、主税は俺の腰を抱き上げると、俺の上半身を持ち上げる。そして、一旦俺の中から勃起している男根を引き抜いた。

「ふぁ……やだっ、やぁ、主税、抜かないで……! 挿れて……! アンタの太いので掻き回して、よぉっ!!」

 思わず俺は抜かれた主税を求めて、首を主税に捻じ曲げるとそう懇願した。そんな俺に主税は苦笑を滲ませると、俺の体を仰向けにベッドの上に押し倒す。

「誰が抜いたままにするかよ。まだイってもねぇのに。……しかし、アンタのケツの穴、すげぇな。ぽっかり開いて、中まで見えちまう。それに体液に混ざって血まで流れてて、すげぇやらしい光景だ。」
「ん……、そんな事、言わないで……、恥ずかしい……。ぅ、あ……あぁ……、主税が、入ってくる……くぅうっ。」

 そう笑いながら言うと、主税は俺の足を限界まで広げ主税が抜いてまだ開かれた穴ままになっている肛門にまたその太いのをゆっくりと進入させていく。
 一番太い部分を俺の中に埋め込むと、後は一気に奥まで突き刺した。
 ぽっかりと空虚感を感じていた後ろに、また内壁一杯になるほどの重量が押し込まれ俺は折り曲げられた体の苦しさに相まって、くぐもった悲鳴を上げる。

「……引き裂いてやるよ。望みどおりな。」

 俺に中に押し入りながら、主税は低い小さな声でそう俺の耳に囁いた。
 その宣言どおり主税のモノは今まで以上に太く凶暴で。
 引き裂かれる恐怖と、痛みに俺はまたくぐもった悲鳴を口の中で木霊させる。
 だが、男が全て埋まってしまうと後はもう、強い快楽しか感じなくて。
 主税にしがみついて俺は、それこそ女のようにあられもない声を上げ続けた。
 それは主税が満足するまで続いて。
 俺は心の中で航矢に何度も何度も謝りながら、主税の男に何度も欲望を吐き出した。
 そして主税は俺を突き上げ、果てる時に小さく俺に囁いた。

「航矢って男の事は、諦めろ。渉。それがお前の為だ。」

 その声には、どこか苦い物が含まれていて。
 俺は主税の熱い欲望を体内で受け止めながら、朦朧とする頭で、その言葉を何度も何度も反芻していた。


 ――男の言葉は、真実を見通しているような気がしていたから。





 そのまま更に俺は後ろを主税に引き裂かれながら、酷く安堵していた。

 もう、きっと俺の浅はかな企みを隠すは必要がなくなった瞬間だったからかもしれない。
 自分の意思で自分を汚した事も、他の男に体を開いた事も、もう遠い過去になりつつあった。
 だけど、でも。

 やっぱり、心はいつまでもいつまでも航矢に対して謝り続けていて。

 それは航矢ではなく、今この瞬間、他の男に殺されるのを望んだ、自分への戒めとしての謝罪――。





to be continued――…