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CrossRoad 1


「あぁ・・・今日もいるな」

もともとは地球連邦のものだったイージス、デュエル、バスター。今はザフトのパイロットに操られ、空を舞っている。
地球軍のGパイロット候補生を指導しながらヘリオポリスに送り届けたけれど、あのヒヨッ子達が、このザフトのパイロット達ほど上手くあの機体を操ることが出来るか、というと。
「ムリ、だよなぁ」
Gはコーディネーターのためだけに作られた、とさえ思えてしまうほど、ザフトのパイロットに操られるG3機は華麗な動きを見せていた。
バジルール少尉あたりに聞かれたら柳眉を逆立てて怒るだろうが、Gはコーディネーターに操られ、その真価を発揮できることを喜んでいるんじゃないか、と思うことすらある。
その中でも特にフラガの目を引くのは、Gの中でもどこか堅固な印象のバスター。
ビームライフルの光線を煌かせ空を駆ける姿は力強さに満ちているのに、その強さとは別にフラガの目を引いてやまない何かがそこにはあった。
それは多分あのコクピットに居るパイロットに自分が抱いているイメージのせいなのだろう。
戦闘中に混線した通信回線から聞こえてくる言動はとても好戦的で、でもその声にフラガはひどく心引かれていた。
きっとまだ10代の少年。
遺伝子を人為的に操作されて生まれるコーディネーターは、概して容姿も整った者が多いという。あのバスターのパイロットは、どんな顔、どんな姿をしているのか。
戦う相手としてのバスター、戦闘中の回線越しに聞こえる声、たったそれだけしか知らないのに、バスターのパイロットに執着していた。
「捕まえて、みるか?!」
自分でも意識せずに呟いた一言は、まともな考えではない、とはわかっていたけれど、でもそれはとても良い思いつきにも思えた。
「捕まえてやるさ、あのパイロットを」
どこか浮き立つ気持ちを抑えて、フラガはMAの機首をバスターへと向けた。


相手はコーディネーター。
今までの戦闘でも、落とすどころか落とされないよう自分とAAを守るので精一杯だった相手を、自分だけで落とす自信は無い。
ストライクがイージスにかかりっきりになっている以上、AAからの援護がなければ逆に撃墜されてしまうだろう。
しかし、あからさまにAAの射程距離に追い込んでは、自分の張る罠に気が付かれてしまう。
どうしようか・・・バスターのパイロットを無傷で捕まえるのは、想像以上に難しそうだ。
逡巡し、責めあぐねていると、AAが被弾し、大きく傾いていくのが見えた。煙を上げながら高度を落としていくAAにバスターが向かっている。
「やれるか?!」
フラガはバスターの乗るグルゥに攻撃を加えた。
AAをバスターの攻撃から守るため、というよりもAAがバスターへ照準を合わせる時間を稼ぐため。
グルゥを失ったバスターは空中に飛び上がり、フラガのスカイグラスパーとすれ違いながら攻撃を加えてくる。
「ぞくぞくするねぇ」
バスターが二丁の砲を繋いで対装甲散弾砲を放ち、スカイグラスパーがアグニを放つ。
次の瞬間、バスターの右腕はアグニに右腕を吹き飛ばされ、スカイグラスパーは左翼に被弾し炎を上げた。
「ちぃっ!」
致命傷ではないけれど、これ以上バスターを追撃できない。あとはAAが上手くバスターをロックオンしてくれていれば、まだ・・・・・・祈るような気持ちでバスターを見つめる。
ここで彼を捕まえられれば自分の勝ち、撤退されてしまえばバスターの勝ち。
賭けの商品はバスターのパイロット、彼自身。

「・・・・・・捕まえたぁ!!」

こみ上げてくる歓びに喉を震わせながら、フラガはバスターのコックピットハッチから両手を挙げて出てくる赤いパイロットスーツを食い入るように見つめていた。