圧し掛かってくるフラガを押しのけようと、怒りに顔を紅潮させディアッカは全身でもがいた。
自分がこんなところで女の代わりにさせられていい筈がない。湧き上がってくる怒りに全身の血が沸騰しそうだった。
だが、ディアッカが怒りに顔を歪めて抵抗する姿を見下ろすフラガの顔には、楽しげな表情が浮かんでいる。
もっとも、逃れようと必死に暴れているディアッカが、それに気付くはずもなかったけれど。
(どうせなら楽しませてもらわないとなぁ)
フラガはディアッカの身体をシーツに沈めていた身体を少しだけ浮かせ、右腕を押さえ込んでいた手の力を緩めた。
そのわざと作られた隙をついて、ディアッカはフラガの身体を突き飛ばすと、拘禁室の鉄格子に駆け寄った。
「誰かいねーのかよ!助けろよ!!誰かっ!俺をここから出せっ!」
鉄格子をガタガタと揺らしながらディアッカは叫んだ。
自分という捕虜がいる以上、近くに警備兵がいる筈だ。でなければ、監視カメラで自分を見ている筈。早く、誰か来てほしい、ただその一心でディアッカは鉄格子を揺すっていた。
「呼んでも無駄だよ。誰も来ないから」
フラガはディアッカの背後に立つと、ディアッカの耳朶に唇を寄せて囁いた。
フラガの唇の動きが耳朶に伝わるその感触に、ディアッカは背筋を震わせ、全身を硬直させている。
フラガはその強張った身体に背後から腕を回すと、包み込むように抱き寄せた。
「静かな雰囲気でゆっくり捕虜を尋問したい、って言ってさ、邪魔な警備兵は帰したし、監視カメラも電源切ってきたんだよね」
言葉の合間に、フラガの唇がディアッカの髪に、こめかみに、耳朶に触れていく。その唇の感触にディアッカは身体が震えだすのを抑えられない。
「前戯としてはまずまずだったけど、俺も我慢できなくなってきたし。そろそろ本番へ移ろうか」
ディアッカの首筋に顔を埋めると、フラガはディアッカの耳朶をゆっくりと弄りながら最終通告とも言うべき言葉を告げた。
信じたくない状況に、ディアッカは全身の血が逆流していく。
「ふざけんなっ・・・・・・俺は女じゃねぇっ!」
ディアッカはフラガの腕を振り解くと、振り向きざまフラガの顔を殴りつけた。
「・・・・・・いってぇ・・・さすがにエリート軍人さんだねぇ。簡単にはヤらせないって訳か」
そう言いながらも大して痛くはなさそうに、殴られた頬を左手でさすりながらディアッカに右手を伸ばしてくる。
「抵抗してるのを無理矢理ヤるのは結構好きなんだけど、それでも限度ってのはあってさ・・・」
優しげな笑顔を浮かべているのに、ぞっとするような冷たい視線をディアッカに向けている。
「いい加減、大人しくしてもらいたいんだよね」
言い終えると、ディアッカの鳩尾にフラガは拳を叩き込んだ。
容赦の無い暴力に、ディアッカは崩れ落ちるように膝を付き、床へ倒れこんだ。殴られた場所を庇うように身体を丸めて咳き込むディアッカの顎を、フラガはつま先で上向けると、そのまま蹴り上げた。
「あぁ、唇切っちゃったか。血が出てる・・・こういう顔も中々そそるねぇ」
一方的な暴力に涙が込み上げてくるのをディアッカは必死に堪えた。ザフト軍人である、という自負だけが、今のディアッカを支えている。
士官学校でも、訓練と称した暴力的行為は少なからずあった。しかし、エルスマンの名と他より抜きん出た能力で、ディアッカは常に勝者の側にいた。
今、初めて、ディアッカは圧倒的な力で屈服させられる屈辱を味わっていた。
「・・・っだらねーこと、言ってんじゃ、ねぇ・・・クソ野郎・・・・・・・」
「あらら、まぁだそんな減らず口たたける余裕があるんだ。さすがだねぇ。でも、もう遊びの時間はおしまい」
フラガはディアッカの腕を掴むと、そのままベッドへと引き摺っていった。
「床で、ってのも捨てがたいんだけど、やっぱり最初はベッドの上がいいでしょ」
ディアッカが逃れようと抗う度に殴りつけ、徹底的に力で押さえつけた。
口の端から血を流し、目尻に涙を浮かべながらも、きつい視線で睨みつけてくるディアッカに、フラガは酷く煽られていた。服を剥ぎ取り、全裸にしたディアッカをベッドに突き倒し、フラガはその身体の上に跨った。
そして、殊更見せ付けるように、ディアッカの目から視線を外さず、ゆっくりとフラガは軍服の上着を脱いでいった。
「大分お預けくらっちゃったからなー。優しくしてあげられる自信ないんだけど・・・これから、すごく気持ちいいことと、すごく痛いこと、してあげる」
ディアッカの両腕をシーツに押さえつけ、胸を開かせると、フラガはその胸に唇を落としていった。