後朝 −腕(かいな) / 恋次−
眠りが深いせいか、或いは緊張が続いているせいか。
情交の後の朝は早く目が覚める。
特に今日みたいな日は殊更。
今は夏。
容赦のない朝日が窓から射し込んで、一護の顔を照らしつけている。
すずめや鴉なんかも大騒ぎで屋根の上、朝の日課を果たしている。
もちろんそんなもんで、こいつが起きるはずは無いけど。
さすがに激しすぎた。
久々の逢瀬、軽い応酬、拗ねた表情と浅い優越感。
焦りが先に立ち、いろんなものが綯交ぜになって止まらなかった。
煽って甚振って、泣かせる寸前で意識が落ちた。
だから結局、翻弄されたのは俺自身なんだけど。
そんな時間も過ぎ去ってしまえばただの記憶。
残されたのは掠れた声とどうしようもない疲労感。
そして少しの後悔。
けほ、と軽く咳が出る。
隣の一護が、腕を伸ばしてきた。
探るように肩の辺りから首へ頬へと掌が滑り、
再び肩口へと戻った腕は、そこで落ち着いた。
きゅっと軽く抱きつかれ、
剥き出しの、汗で湿った肌がひんやりと熱を奪う。
目が覚めたかと声をかけようとしたら、
すうすうと穏やかな寝息を立てて未だ熟睡中。
だから俺はため息をついて、
子供の我儘に屈したフリをして、その腕に身を落とす。
それは、起さないようにと寝床から出ようとした寸前のこと。
忘れた頃に繰り返される寸劇。
こうして俺は二度寝の誘惑から逃れられなくなった。
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