ぷはーっと満足げにゲップして、腹を擦る三歳児。
テメー、腹ァまん丸じゃねーか。どんだけ食ったんだ。
まあ、目つきの悪さが半減してるからいいけど。

顔と死覇装に付いた飯粒をとってやっていたら、ぶるぶるっと震えた。
寒いのか?と声をかけようとしたら、

「おしっこ」

・・・・・ハイハイハイ、オシッコですね。食ったら出すんですね。

「こっちだほら、来い」

チビ恋次は文句も言わず、ぽてぽてとついてくる。
自分が差し迫ってるときは静かなのな。
ほら、ここだ、とトイレのドアを開けてみせると、なんだか不安げな顔で見上げてくる。
目がでかい。まだ三白眼になってないのな。

「どーした。おしっこなんじゃねーか?」

戸惑い気味にトイレに入っていって、もじもじしはじめた。
あ、そうか!
自分でまだ脱げないのか!!
しかも便器にとどかないのか!!
・・・・・チビめ。
なんかいつもいつも身長も年齢も見下ろされてるから、小気味いい。

「ほら、脱がしてやるからこっち向け。
 ・・・・って丁寧におい、フンドシまでしてんのか」

ヘンなところで凝り症だよな、浦原さんも。

「とどくか? ほら、ちーっ」

ってなんか俺、保父さんか?!

「うわっ、飛ばすな、中に入れろ、便器のなかにしろっってオイっ!!」

・・・やられた。
でもなんだか申し訳なさそうな顔してるし、三歳児だし、ここで怒っちゃ大人気ない。
そうだった、おれはパパだった。ちゃんと余裕持って、しっかりと!

「じゃーパパはここお掃除しとくから、
 オマエはあっちいってろ・・・ってああそうか、フンドシか」

うわぁ、どうなってんだ、これ?
わかんねーよ、フンドシなんかよ!!
自分のや脱がすのならともかく、締め方とか恋次のでさえチャレンジしたことないのに!
しっかし難しいよな。
こんなチビなんだし、スッポンポンでも別にかまわねーんじゃねーか?

「うわっ、こら、まてっ!!」

モタモタしてたら、脱兎の如く下半身丸出しのチビ恋次逃亡。
全速力で追いかけても、チビの小回りには敵わねー。
ちょろちょろと逃げ回りやがったあげく、ダイニングテーブルの下に潜り込んだ。

「オイ、こら早く出て来い! フンドシつけねーとチンチン、風邪引くぞっ!」

・・・コイツ、絶対楽しんでる。ニヤニヤしやがって!!
メシ食ったからテンションあがってんじゃねーか?
一護サマをなめるんじゃねーぞ?
こちとら身軽さが身上の16歳だ!
テーブルの下ぐらいちょろいぜ!
あ、くそ、逃げんな!!

「待てっつってんだろ、このクソガキがっ・・・て、恋次っ!!」
「よぉ、何してんだテメーはよ」

逃げるチビ恋次を追いかけてテーブルの下から出てくると、
目の前に立ちふさがったのは真っ黒の死覇装と真っ赤な髪。
捕獲したチビ恋次を肩の上に抱え上げて俺のこと見下ろしてきてる。

うわー。
ダブルで赤い目と赤い髪。
そろって目つき悪ィよ!!
睨むなよ!
俺、なんにも悪いことしてねーだろ!!

恋次は冷たい一瞥を俺にくれた後、
おらテメーも手間ぁかけんじゃねえ、とチビ恋次の尻を一叩きして、
俺の握り締めてたフンドシを奪い取り手際よく締めた。

・・・なんで他人のフンドシ締められるんだ?
てめーまさか過去にそういうプレイを・・・?
そんな俺の複雑きわまる胸中なんか知りもしない恋次は、
いつもと変わらず飄々とした様子。

「で、うまくいってんのか」
「う・・・。まあまあだ」

チビ恋次はテレビの画面をペタペタと物珍しげに触っている。
でもこっちの気配をうかがってるのがありありで、
その辺が3歳児の浅知恵って感じでおもしれー。

「まあ義骸とはいえ幼児だ。手加減してやってくれ」
「ってテメーも一緒に面倒見てくれんじゃねーのかよ?!」
「生憎向こうに戻らなきゃなんなくってな。後、頼む」

まじかよ?!
俺一人であんなクソガキの面倒みれってかよ?!

「分かってるとは思うが、あれは俺の義骸だ。傷ひとつつけんじゃねーぞ?」

って何で脅されなきゃなんねーんだよ?!
あまりの理不尽さに立ち尽くす俺に、恋次はじゃーよろしくと言い捨ててアッサリ消えた。
テメーは自分の義骸が心配じゃねーのかよ?!
親として(違うかもしれないが)どうなんだよ、それ?!
恋次が消えたほうを見てチビ恋次もなんか呆然としてる。

「・・・・・帰っちゃった?」

やっぱ血つながり(?)があるって分かったのかな。

「今の誰?」
「・・・テメーのお母さんみたいなもんだ」
「ふーん、お母さん・・・」

さっきまでのクソ生意気そうな雰囲気が消え去って寂しげな感じ。
怒ったのかな、とか呟いてるし、口先尖ってるし。
ちくしょー。なんかかわいそうじゃねーか。
父性本能がうずくぜ!
大丈夫だ、チビ恋次、俺がついてるぜ!!
ここはパパとしてガッツリ面倒見てやるからな!!

「さてっと。まずはパンツでも買いに行くか!!」

雰囲気を変えるためにも敢えて明るい声をだした。
チビ恋次は、ぱんつって何、と呟きながらも嬉しそうに俺の後についてきた。

 

三つ子の魂は永遠に! 3 >>

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