とりあえずチビを連れて家を出た。

「えーっと、子供用のパンツなんてどこで売ってんだ?」

子供用品なんて買ったことがないから見当もつかねー。
大型のスーパーにでもいってみるか。
パンツ、もらしたときとか考えて、2枚ぐらい買ったほうがいいのかな。
死覇装じゃ目立ってしょうがないし、普通の洋服とかも買うか。
チクショウ、大出費じゃねーか!
それなりの報酬出すって浦原さん言ってたけど、本当だろうな?
まさか向こうの通貨で払うなんていったらぶちのめすぞ、あんのヤロウ!

「・・・・あれ? どこいった?」

ふと気がつくとチビ恋次の姿が見えない。
迷子か?
慌てて今来た道を引き返すと、息を切らしたチビ恋次が道端に座り込んでた。
やべえ。3歳児って足短いんだよな。
ついガンガン歩いちまった。

「おいっ、大丈夫か?!」

駆け寄ってみると、見上げてくるのは涙目。
くそ、可愛いじゃねーか!!

「・・・・・こんのクソッタレ!」
「イッテーーーーッ!!」

前言撤回。
こんのクソチビ、人の脛蹴ってまた逃げ出しやがった。
泣いてでも見せりゃあもう少し可愛げのあるものを!!
でもさすがに疲れたのか、すぐ先でまた歩き出した。
絶対振り向かない気だな、この意地っ張り!
義骸だか義魂だか知らねーが、テメーは恋次そのものだよ!!

「ほら、肩車してやるから来い」

後ろから掬い上げて、無理やり肩の上に乗せる。
あ、くそ、暴れんな!

「ほぉら、落ーちーまーすーよーーー」

グラグラと揺らしたら、慌ててしがみついてきた。
俺の頭を小さい手がぎゅっと抱きしめる。
その温かさになんかジンときた。
夏梨や遊子なんかにもあんまりしてやったことないよな、肩車。
親父になるとこんな感じなのかな。
ちょっと気持ちいいかもな。
まあでも恋次が相手じゃそんなこともありえないだろうから、
今だけちょっと夢見れていいのかもな。
だったら浦原さんに感謝しねーといけねーのかな。
つーかいつかこんな風にチビ恋次の世話、二人で出来たらなあ。

そんなこと考えながら歩いてたら、あっという間に目当ての店についた。
思ったとおり、子供服も置いてある。

「さて、3歳児用のパンツはどこだ? やっぱり綿でグン○なのか?
 お、これだ、白のデカパン。イチゴのプリント付きじゃねーか!
 よし、これにしようぜってオイ、チビ! どこ行った?!」

気がつくとまたチビ恋次、逃亡。
・・・・・コイツ、一体どうしてくれよう。

「恋次、チビ! どこ行った、返事しろって!!・・・・ここにいたのかよ」

何のことはない、幼児用の下着売り場にいた。
ワゴンの向こう側だったんで見えなかったんだ。
つーかオイ、その手に握り締めてる赤と黒の派手な布は何だ。

「オレ、これがいい!!」
「なんでそんな派手なの選ぶんだよ?! 白にイチゴでいいだろ?!」
「ヤダそんなダセーの。これったらこれ!!」

そういってチビが握り締めてるのは炎の柄のパンツ。
・・・・・だめだ、こいつ。
目ェきらきらしてっし。
派手好きが遺伝子、つーか魂に刻み込まれてる。
どんなに俺ががんばっても絶対刺青も入れるな、この調子じゃ。
つーか現世だとどうグレるかわかんねーぞ?
脳裏に夜露死苦な恋次の姿が横切る。
違和感ねーよ、シャレになんねーだろ!

「黒崎くん!」
「あれ、一護じゃん! 何してんのこんなところで」

「たつき! 井上!」

・・・・・なんでこんな時にこんなヤツラとこんな所で会わなきゃいけねーんだ?!

「うっわぁ、かわいい! だあれ、この子?」
「またずいぶん派手な子供だね、あんたとタイ張るんじゃない?」
「・・・・うるせーよ」

一気に注目の的となったのにビビった三歳児はパンツを握り締めて仁王立ち。
チビ恋次同様、凍り付いてる俺のことは丸無視で、
たつきと井上はしゃがみこんでチビ恋次に話しかける。

「こんにちは。なんていうお名前? あたしは織姫」
「あたしはたつき。一護のいとこかなんか?」
「・・・・・・」

・・・・・上目遣いで睨みつけてるし。
もうちっと愛想、振りまけよ。

「ほんっとかわいいね。それにキレイな髪」

触っていい?と言って井上が手を伸ばした途端、チビはビクっとして走って逃げてきた。
俺の影に隠れて、ジーンズを握り締める。
ってほんとにビビってんのか?
俺のときは最初からあんなにふてぶてしかったのに。
・・・・・くそ、可愛いじゃねーか!

「・・・・・・・・ぱぱ」

「えええええーーーーっ」
「パパぁ?! 一護の子供なの?!」

あああ、アタマ痛い。
確かに言ったよ、パパって呼べって。
でもよりによってこんな時に言わなくてもっ!!

「違うに決まってんだろっ。どこをどうしたら俺の子供なんだよっ」

「・・・・・そうだよねぇ」
「ありえないか、さすがの一護でも」
「たりめーだろ。預かったんだよ、3日間だけ」
「へええ、アンタが子守ねぇ」
「なんだその目は。俺だってそれぐらい軽いぜ」
「いや、預けた人もずいぶん勇気あるなって。で、何握ってんの。この子のパンツ?」

くそ、笑ってんじゃねー!

「黒崎くん! あの子、いないよ!」

井上の声に振り向くと、俺のジーンズにしがみついていたはずのチビ恋次は姿を消していて、炎のパンツが床にぽつんと落ちていた。

「おい、チビ、どこだ?!」
「手分けして探そう!」
「おお、頼むぜ」

でもチビは何処にもいない。

「あっちにもいなかったよ。織姫のほうは?」

ううん、と井上が首を振る。

「・・・・店から出て行ったのか?」
「もしかしてさっき黒崎くんが、パパじゃないって言ったからじゃない?」

ちくしょー。そうかもしれねー。
突然この世に出てきて、右も左もわからないところであんなガキがビビらねーはずがねえ。
浦原さんだって言ってたじゃねーか。
記憶がない3歳児と同じ扱いしてくださいって。
散々パパだって言いきかせておきながらこのザマ。
俺のせいだ、ちくしょう。
待ってろ、絶対探し出してやるからな!


 

三つ子の魂は永遠に! 4 >>

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