Snow Red 3 / 一護
恋次を運び入れた後、じゃあよろしく〜と無責任な言葉を残して、浦原さん達は窓から去った。
後に残されたのは、俺のベッドで眠り続ける恋次と、混乱しきった俺。
「あー・・・、どうすっかなあ」
寝顔を見ると、いつもの恋次と変わらない。
いつもみたいにベッド横の椅子に座ってみる。
恋次のほうを向いて、背もたれを抱えて、
ベッドに座ったり寝転んだりしてた恋次と話すときみたいに。
浦原さんによると、恋次は、霊力を奪い取るタイプの虚と義骸から出る暇なく闘って、
霊圧が限界を超えて減っちまったけど、義骸にしがみついてたおかげで何とか魂魄は持った。
でもその入れ物の義骸も損傷が酷くて(イヤな言い方だ)、つまり、かなりヤバい状況だったってことだ。
義骸の傷はテッサイが治してくれた。
それはいいことだ。
そして霊力を、霊子で満ちた義骸の中で回復する。
それもいいことだ。
義骸が浦原さんお手製ではなく、ソウル・ソサエティで作られたってのもいい。
回復は遅いかもしれないが、浦原さんの手にかかると、どんな妙な仕掛けをされてないとも限らない。
スピードより確実性。いい加減、その辺は学んだ。
「う・・・」
「・・・・よう。目が覚めたか」
ようやく意識を取り戻した恋次の俺を見る目は不安定で、冷たい。
一角とかが話した感じによると、ソウルソサエティでの記憶もあちこち抜け落ちていて、
確実に残ってるのは、イヌヅリってところに住んでたぐらいまでの記憶らしい。
だから俺のことはもちろん、死神になったことさえ、覚えていない。
それが霊力を急激に失ったせいか、それとも虚の未知の力のせいかは分らないらしい。
だから霊力の戻りに伴って記憶や死神の能力が回復しなければ、ソウルソサエティに戻さなきゃいけない。
そうなったらもうこっちに出て来れないかもしれない。
少なくとも当分の間は。
「腹、減ってねえか? 何か食うか飲むかするか?」
「・・・・」
あーあ。警戒心というか敵意丸出し。
そんなに睨み付けなくてもいいだろ?
しかもそのまま布団に潜って寝てりゃあまだ可愛いものを、
ごそごそと布団から半身を起して、窓の方へさりげなく移動してる。
体中から緊張感が漂って、いつでも逃げられるような構え。
・・・俺がテメーに何するっていうんだよ? 全く!
正直、こんな状況だろうと、恋次と居られるのは嬉しい。
けれど恋次は、俺のことが分からない。
浦原商店にあのまま置いておけばよかったのかもしれない。
けど、どうしても自分の側に置いておきたかった。
俺の霊力がダダ漏れで、それがいい影響を与えるかもしれないっていうだけの理由で恋次はここにいる。
とりあえず、霊力が戻って安定した形でソウルソサエティに戻せるまで、の期限付きで。
だから 部屋に結界まで張ってもらえた。
けど、心に棘が刺さったみたいだ。
「クソ・・・。霊力全開にしてやろうか」
そんな俺の苛立ちと心配を他所に、恋次は上半身を起したままぼーっと外を見ている。
少しは気を許したかと思ったけど、窓に映る恋次は俺の方をちらちらと見てる。
俺の出方を伺ってんだろな。
あれだけ浦原さんや一角に諭されて、納得したように見えたのに。
クリスマス、楽しみにしてたんだけどなあ。
なんかいろんなことがありすぎてイッパイイッパイになっちまって、
そんな小さなことを今更気にする自分がマヌケすぎて、思わずため息がでた。
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