Snow Red 6 / 恋次


ぐぐぅきゅう。

逃げてやると意気込んでたのに、腹が鳴る。
すげー腹が減って、なんだかフラフラしてる気がする。
くそ。

でも目の前のミカン頭の下っ端は、バカにするわけでもなく、俺に食い物をくれた。
見たことのない、魚みたいな、けど甘い香りのする、やたらうまそうなもの。
でももしかしたら何か薬が仕込んであるのかもしれない。
これを食ったら、更にどこか違うところに売り飛ばされていくのかも。

食うのをためらっていたら、毒とか入ってねえと下っ端が呆れたように怒鳴った。
そりゃそうだ。
これ以上、どうせ悪くなるわけもない。

思い切って口に入れると、とんでもない甘さ。ほっぺたの端っこがきゅうと痛くなる。
こんな甘いのは知らない。
こんなにうまいものも知らない。
すげえ!

・・・でもなんで俺だけこんなの食ってるんだろう。
ルキア、腹を空かせてるんじゃねえか?
アイツにも取っといてやんなきゃ。
けど、手も口も止まらない。夢中になって食っちまって、もう無くなってしまう。
俺、こんなに情けないやつだったっけ。
いつだって半分こしてきたのに、何で今はできないんだろう。

・・・・・こんなん、ズリぃ。

俺は下っ端を睨みつけた。
初めて下っ端とちゃんと目が合った。

「・・・うまかったか? もっとあるから食えよ。全部テメーのだ。ほら」
と下っ端は俺に紙袋を投げてよこした。
開けてみると、たくさんのうまいもの。
これだけあれば、ルキアと二人で分けて食べても、当分持つ。
早く、ルキアんとこ、行ってやんねえと。
何とかここから逃げださないと。

「何か飲み物取ってきてやるよ」

そういって下っ端は部屋から出て行った。
トントンと音がする。階段があるんだろ。窓から見てもここは高いところにあるみたいだし。
でもこれぐらいの高さならきっと大丈夫。

俺は、もらった紙袋を懐の中に入れようとした。
けど着物じゃないから合わせが無くて入れにくい。
開こうとしたら、ぶちっといって服についてた丸いものが弾け飛んだ。
まあいいやと覗き込むと、刺青。
・・・ってコレ、何なんだよ?!
俺の体、何でかオトナになってるのは知ってたけど、この胸と腹いっぱいの刺青は何だ?!
ちくしょう、これもさっきのヤツらの仕業か?
この刺青が入ってるから逃げられないってわけか。
なわけねーだろ! 絶対逃げてやる!!

ムリヤリ紙袋を懐にねじ込んで、窓の枠に手をかけた。
その途端、ビリッと手に痺れが走った。

「・・・なんだ、コレ」

もう一度試しても同じ。痛みと痺れはともかく、窓も開かない。
じゃあ鉢合わせ覚悟でと、さっき下っ端が出て行った出口に向かった。
でも、そこでも見えない何かにぶつかった。
戸口に手がかかると、痛みと痺れが走って、それ以上先に進めない。

「・・・一体、どういうことだよっ!!」



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