Snow Red 10 / 連続で一護側 多少性的記述アリ
「ふ・・・んっ、う・・・・・ぁっ・・・」
ありえないぐらいに恋次がキスぐらいで乱れてるのがわかって、俺の動揺だってもうありえないレベル。
だっていくら俺から仕掛けたって、いつでも途中で主導権を奪われて、挙句に俺の方が息切れするのが俺たちの普通。
なのにこの恋次は、ちゃんと恋次の唇と舌で、味も匂いも同じなのに、何もかもが拙い。
ちょっと舌先を絡めたぐらいで逃げようとするし、混ざる唾液をどうしていいのか分らないで口の端から容易に溢れさせる。
息継ぎの仕方だって知らないみたいで、少し口を離してやると、はっはっと犬みたいに荒い息遣い。
挙句の果てにしがみついてこられたら、俺、もう自分を止められる自信なんて、皆無。
「恋次・・・!」
それでも最後の理性のカケラを集めて、少し休ませてやろうと体を離したら、互いの唇の間に糸が掛かった。
指で掬い取ると、恋次は熱に浮かされた表情でその指先を見つめてる。
思いっきり煽られた俺は、衝動に任せてそのまま指を恋次の口に押し込んで、口の中を探る。
予想外だったんだろう、驚いて俺の指を噛んじまった恋次は、しまったって感じで一瞬俺を見て、
けど俺が怒ってないのがわかったからか、そのまま俺の指を嘗めだした。
その舌使いに、俺の腹の奥がずくっと重くなる。
やっぱりコイツ、恋次だ、と指を這い登ってくる官能に俺は確信する。
結局、こういうことはアタマ云々じゃなくて体でやること。
だから恋次は記憶をなくしたっていったって、やっぱり体が覚えてるんだろう。
だってほら。
俺を見上げてくるのはいつもの眼。
推し量るような半開きの、色に塗れた、それでいてどこか冷たいあの眼つき。
「・・・・俺の名前を呼べよ」
指を抜き去り、後頭部を掴んで顔を引き寄せる。
惰性だか余韻だか霊力目当てだか知らねえが、口付けしてこようとするのをギリギリで留めて、
唇を触れさせるだけで俺は問う。
「俺の名前、呼べって言ってんだろ?」
けれどやっぱり意地っ張りの恋次は、俺の言葉はガン無視で、そのくせ物欲しげに腕を俺の腰に回して、強く引き寄せてくる。
馴染んだ動き、覚えのある手つき。
やっぱりコイツ、本当は記憶が戻ってるんじゃないか?
そんな疑いを否定するように、恋次はド真っ直ぐに顔を近づけてきた。
ヤバイと思ったときにはもう遅く、鼻同士が強くぶつかった。
「・・・ッテェ」
「いてェだろっ、このバカ! こんな立派な鼻してるんだから、避けなきゃムリに決まってんだろ!」
「あ、そっか。・・・ってうるせえ、黙れ!」
鼻を押さえながら俺を睨みつけて、それでも唇を合わせてきた。
この意地っ張りめ。
ガキの頃から成長してなかったな?
今度はちゃんと斜め向きに顔を近づけてきた。
ってこれじゃ斜めというかほぼ横向きだろ。いくらなんでも大げさ過ぎだって!
恋次のあまりの単純さと、マジメ且つマヌケすぎるキスに、俺は、唇に吸い付かれたまま盛大に噴出してしまった。
突然のことに唖然としてた恋次も、やっぱりつられて笑いだした。
二人でゲラゲラとバカみたいに笑って、笑って、笑い倒して。
笑いすぎて腹が痛くなって、耐え切れず仰向けに床にすっころがる。
「あー・・・、何やってんだろうな、俺たち」
「勝手に俺たち呼ばわりすんじゃねえ、クソ一護」
「お、おい! 今、俺の名前、呼んだか? もしかして・・・」
「覚えてねえよ」
「・・・そっか。そうだよな。そんな急にはムリだよな。でもほら・・・」
触れてみても、前ほど、霊力が流れ出るのを感じない。
だいぶ安定してきてるってことかもしれない。
「霊圧は大分戻ってる。たぶん、もう少しで充分だと思う」
「・・・そっか」
でももし、霊圧が戻っても記憶が戻ってこなかったら?
死神に戻れなかったら?
恋次はソウルソサエティに戻されて、こっちに来れなくなる。
俺を忘れたまま、恋次は向こうの時間に戻ってしまう。
死神でないというのならば、そのまま輪廻の輪の中に戻ってしまうことだってあるのかもしれない。
だからその時は、長い別れになる。
横を向くと、同じく床に転がったままの恋次と目が合った。
顔だけこちらを向いて、俺を見てた。
バカみたいに真っ直ぐな視線に吸い寄せられるように覆いかぶさり、
そのまま口付けると、少しだけ開けられた唇、大きく開いたままの眼。
恋次の表情はなんだかとても真剣だったから、邪念だらけの俺はつい、目を閉じてしまった。
ゆっくりと静かにキスをした。
恋次に流れてった霊力が熱になってどんどん戻ってきてる気がする。
あどけなく開かれた恋次の唇はすごく気持ちよくて、おずおずと動きを探ってくる舌もすごく可愛くって、
永遠にこうやってキスしてられたらいいと思う。
でも一方で、もうこんなもんじゃ終われない自分を感じてる。
・・・・恋次も俺を受け入れてくれてるし。
だから、湿りきった唇をぺろりと舐め上げて別れを告げ、そのまま頬から耳へと唇を滑らせた。
いつもは静かに吐息だけで反応するのに、今日は体をびくりと跳ね上げて更に声まで漏れ出てくる。
やっぱりいつもの恋次は、かなり隠してんだなと思いつつ、
耳朶を甘噛みして首筋へと移動すると、恋次の体全体に緊張が走るのがわかった。
「怖くねえよ、大丈夫だ」
と耳元で囁いて、そのまま手を胸元に滑らせるとなんかやけにベタベタしてる。
見ると黒い粒や茶色いものがくっついてて、さっき潰れた鯛焼きだとその正体に思い至った。
「・・・せっかくだったのに、潰れちまったな。ゴメンな」
謝ると、別に構わねーしとソッポを向く。
その様子がいつもの恋次で、でも記憶がないってのがもう俺にはわからなくなって来てて、
全ての混乱に蓋をするようにもういいや、とそのまま唇を胸に落とす。
鯛焼きの残りを丁寧に舐め取る度に、はあっと恋次の口から喘ぎが漏れる。
まだ柔らかい乳首に小豆の粒を舌で押し付け転がし、立ち上がったところをきつく吸うと、くうっと息を飲む音が聞こえる。
あまりに素直な反応に、俺は煽られっぱなし。焦りすぎだとわかっていても、先を急いでしまう。
けど伸ばした手に触れた恋次のはまだ力が無くて、
嘘だろ、と思わず体を離して恋次を見下ろすと、目元を腕で覆って、歯を食いしばってた。
「・・・・恋次?! オマエ、どうした。大丈夫か?」
顔を隠したまま大丈夫とこくりと頷く様子はまさに子供そのもので。
・・・・・・・って子供!!
「おい、テメー、今、何歳だ?!」
「・・・は?」
固く瞑られていた恋次の目が大きく開かれる。
「いや、だから何歳かって訊いてるんだよっ」
「知らねえけど・・・」
いや、年なんてどうでもいい!
とにかくこいつは子供じゃねえか!! ああ、俺、何してんだよっ!!
「・・・んだよ、できねえって言うのかよ」
そう睨みつけてくる紅い眼は確かに色を含んでいるけど、でもテメーの中身はイヌヅリ時代の子供だろ!
できるわけ、ねえ! これじゃあ犯罪だ!!
だけど、ひとの気も知らず、恋次は俺を冷たく睨みつける。
「・・・んだよ、フヌケ」
「んだと?!」
ビビってたのはテメーだろと怒鳴りつけたくなるのをググっと堪えて、俺は恋次を睨みつけた。
ぷいっと横を向く姿はもう子供そのものだけど、でもコイツは身体はオトナなわけで。
っつーかアッチ行って長いんだから、子供と言っても実際はオトナななのかもしれない。
それに元々俺たちはそういう関係だし。
「ああああっ!」
「・・・っせえな、やんのかよ、やらねえのかよ」
ここはアレか?
引き下がるべきなのか?
でも霊力回復を考えたら、俺の自前の斬魄刀で霊力ぶち込んでショック療法という考え方もあることはある。
・・・・いや、ダメだ。それじゃああんまりだ。汚すぎる!
「だ、黙れ、ガキが! 子供相手に出来るわけ、ねえだろっ?!」
「・・・は?」
呆気に取られたといった様子の恋次が俺を見返してきた。
そこ、驚くところか?! 俺にだって理性ぐらいあるぞ!!
「・・・いや、悪かった。俺、調子に乗っちまった。ごめん。もうしないから」
謝る俺に、別にいいけどと恋次は呟いて、半身を起した。
外したボタンを掛け直してやろうと寄ったとき、鈍い痛みが床についた手に走った。
「イテッ」
掌に、さっき割れた湯飲みのカケラが刺さってる。
そのカケラを抜き取ると、真っ赤な血がにじみ出て、ぽたりと床に落ちた。
結構深いから止血した方がいいかと縛るものを探してキョロキョロしてたら、恋次が俺の手を一心に見つめていた。
「・・・・恋次?」
「キレイな赤だな。これ、俺にくれよ」
そう言って恋次がにぃっと笑った。
そして俺の掌をペロリと妙に赤い舌が舐め上げたとき、周囲の空気の温度が変わった気がした。
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