注意) 一恋以前から始まるクリスマス話、破面編以降の設定で捏造いろいろ




ガキの頃は、雪が降り出すと庭に出た。
そして空を見上げる。
降りしきる雪に合わせた焦点を、うんと近くから少し遠くへ、そして空の彼方へと移すと、空全体が動いて見えた。
残像を残したまま目を瞑るとほら、世界中が後ろへ、後ろへと流れていく。
そうやって俺は雪空の下、冷たく痺れた手を思いっきり横に伸ばして天を仰ぎ、頬に当たる雪を感じながら、宙を飛び回る夢を見た。

たぶんあの頃、俺はとても自由だったんだ。



 ソ リ テ ア



「コラッ、くーろーさーきー!」
「イテッ」
教室の窓の外をぼーっと見ていた一護の頭に、何か硬いものがが思いっきりぶつけられた。
目を上げると、担任の越智が呆れた顔をして一護を見下ろしている。
「そーんなに私の授業は退屈か? あ?」
バンバンバンと出席簿で頭を叩かれて、すっかり呆けていたことに一護は今さながら気がついた。
「いや、あの・・・」
「なんだ? 何か言いたいことがあるのか、あ? この口は飾りか? ん?」
「いや、別に・・・」
「何、ボーっとしてるんだ。つか眠いのか? あ?」
「すんません・・・・イテッ」
「誠意がないぞー、誠意がー! 廊下に立って反省してろー」
「・・・・ういーっス」

ポケットに両手を突っ込んだまま、ちょっと背中を丸めて廊下へと向かう一護の背中を眺めて、少し前まではあんな感じじゃなかったのになあと、越智は少し不安に感じた。
けれど越智本人も、いわゆる思春期を通り抜けてきた大人の一人だし、
今は思春期の真っ盛りの子供たちに囲まれるその道のプロと言えないこともない。
だから大体の原因は見当がつく。
ああいう黒崎の雰囲気の原因は、多分、
「・・・色ボケか。ま、そのうち目ェ覚めるだろ」
本人は独り言のつもりだったのだろうが、相変わらず声はよく通る。
そして越智は、目を白黒させている生徒たちに向かって、
「ほら、とりあえず授業するよー!」
喚いた。生徒たちはもちろん、
----- 黒崎って色ボケなんだ。つか色ボケって・・・。
と心の中で突っ込みながら、廊下に立つ一護の後姿を気の毒そうに一斉に見た。



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