「動き続ける100の御題」より (配布元 / せっと)
聞き入る
開け放たれたままの窓の向こう。
遠く、月の指し示す方角よりざわめきが微かに届く。
あれは刀が空を切る音。
殻を叩き割り、肉を潰す。
今度は水音。
血しぶきが飛び散って全てを紅に染める。
そして咆哮。
終末を告げる。
どれもこれも、うつし世の人間には聞こえぬ音。
この世に在らざる我らの立てる音。
ならば魂魄も死神もそして虚さえも同じではないのか。
理を詰めれば唯、人に在らざるものとだけ。
「おう、来てたのか!」
窓から飛び込み戻ってきて明るく弾けた笑顔の向こう、
その髪の色に相応しく漂ったのは金木犀の香り。
返り血を消してなお噎せ返るほどの芳香。
ならばそれは香華。
命なき同胞の弔いに添える。
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