「動き続ける100の御題」より (配布元 / せっと)



「…で、コレ、どうやって尸魂界に持って帰るんだよ。浦原さんになんとかしてもらう気か?」
「へ? 何言ってんだ。持って帰んねーぜ?」
「あァ?!」
「ここに置くに決まってんじゃねーか」
「んだと?!」

…やはり俺のカンは当たってた。
こないだのパンツといい、恋次、俺の部屋を物置か何かと勘違いしてるぜ。
クソ。

だが俺の不機嫌に全く気がついてない恋次は、床の上の粗大ゴミ袋状の黒いクッションに飛び込んだ。
ザブッと盛大な音がする。
ゴミの山に倒れこんだ酔っ払いを思い出すのは俺だけじゃあるまい。

…こんなもんを俺の部屋に置くのか。
妹たちはともかく、水色とか啓吾とか遊びに来るときにはどこに隠そう?
つかオヤジに見つかったらすげえ反応されそうだ。
マズい。マズすぎる。

だが俺の心配を他所に、
恋次は、うっとりとしたツラでクッションに顔をこすり付けてた。

「こういうの、尸魂界には無えんだよなあ。あー、やっぱ体に合うサイズだと気持いい…」

ったりめえだ!
テメエの上半身がまるまる乗っかるなんて、一体、どんだけデカいんだよ?!
つかここは、全身が乗っかるサイズ(つまり2m強)じゃなくてヨカッタと喜ぶべきなのか?!

「オイ! ひとん家で暴れるな。つか早く持って帰れ!」
「いーじゃねーか。オマエもホラ、試してみろ」
「うおおッ?!」

腕を引かれてバランスを崩すと、倒れた先は恋次の腕の中だった。

「な? 気持いいだろ? こないだ現世に来たときに見つけたんだぜ?」
「う…、くそ、離せッ! つかテメーはちゃんと仕事してんのか?!」
「いーじゃねーか、少しぐらい」
「よかねえッ!! つかテメエ、義骸だろ! 真昼間だぞ! 誰か来たらどうすんだ!
 ヤロー二人でビーズクッション…。クソ、俺の何もかもオシマイになっちまうじゃねーか」
「何を今更…。記憶置換すりゃあいいじゃねえか。煩せェなあ、テメエはいちいち…」
「テメエが大雑把すぎんだ、何でもかんでもそうやって誤魔化すなッ!」

つか足を絡めるなッ!!
こんな体勢だと、いろいろと大変だろ!
俺の下半身が!
気がつけ、それぐらいッ!!

だが恋次は、クッションを手に入れたことではしゃぎきってるのか、
普段なら鋭すぎるぐらい鋭いそっち方面のカンがすごく鈍ってて、俺の行き詰った事情に気付く様子もない。
これが日曜の真昼間とか、義骸じゃなかったら、今すぐベッドに持ち込むのに。
…チクショウ。
どうしてくれる、この生殺し状態。

「恋次! あのな!!」

けれど恋次は、俺の方を向いて、
「オマエの部屋は広くていいなあ」
と少し笑んだ。

…ああ。
なんてツラしやがんだ。
つか狭くて小汚い呼ばわりしたルキアに聞かせてやりたいこのセリフ。
やっぱオマエは可愛いヤツだぜ。
…仕様がねえ。俺も男だ。
クッションの一つや二つ、置かせてやるか。

俺は覚悟を決めた。

仰向けにクッションに埋まる恋次の上に覆いかぶさり、
「でもコレが最後だぞ? これ以上、俺の部屋にテメーのものを持ち込むな」
と仰々しく告げた。
すると恋次は、
「つまんねーの」
と、本当につまんなそうなツラをした。

まさかテメエ、他にもいろいろと計画してたのか?
俺の部屋はテメエの秘密基地か何かなのか?!


→赤面する4


<<back