「珍獣の飼い方10の基本」 (配布元 リライト)
おこらせるとおもわぬはんげきをうけます
反射、みたいなものだったんだ多分。
イラついた気分に、掌上で転がされてる感じに、どうしようもない焦りに。
抑えきれなかったのは俺のせい。
悪いのは一護じゃない。
でもコイツは結局のところ、いつでも折れるから。
そう高を括って甘えてたのは結局のところ俺なんだけど。
一護の怒鳴り声が何故か悲鳴みたいに聞こえて、頭がすっと冷えて、胸がきりりと痛んだ。
俺、何、こんな子供、追い詰めてんだ。
「わかった、悪かった」
己のバカさ加減に笑いが漏れる。
何やってんだ俺は。
焦ってるってんだったら別にそれでいいだろ。
無理して余裕かましたってソレ自体が無理なんだって。
自分に嘘ついて、一護に無理させて、何もいいことねーだろ。
だからちゃんとココは謝って、腹ァ括って仕切りなおして、
そう思った矢先だったのに、
「帰れ」
と一護は言った。
なんだよソレ。
こんなの、いつもの口ゲンカじゃねーのかよ。
でも一護は、バカみたいに真っ直ぐ俺のこと見て、帰れよと静かな声で言い切った。
だから俺は何も返せないで、ただボーゼン。
でも、帰っていいからと言い募られて我に返った。
「・・・なんだ、ソレ」
なんだこのシワガレ声、これ、俺の声かよ。
「帰んのにテメーの許可がいるのか?」
すぐ挑発に乗るかと思ったが、意地になってやがんのか俺を見もしねえ。
「あァ? テメーに訊いてんだよ、面ァ見せろってんだこのクソガキが」
襟元つかんで締め上げると、一護が俺の腕、鷲掴みにして睨み返してくる。
「帰りたいんだろ、帰りゃいーじゃねーか、どうぞお帰りくださいって言ってんだよ」
「誰もそんなこと言ってねーだろっ」
「言ってなくてもわかんだよっ、いっつもいっつも窓ばっか見てやがるくせにっ」
一瞬の空白、一護の歯軋りの音が響く。
「だから帰れって言ってんだよっ、来たくなきゃもう来んなっ、いやいや来られたってウゼェんだよっ」
「すまねえ」
他に言葉がなかった。
気がついてたなんて、そんな風に一護が思ってるなんて、知らなかった。
一護の襟元を掴んだ手が緩み、頭が垂れる。
「もういいよ、解放してやるよ、無理すんなよ」
一護の声が聞こえたけど、それが意味するところを理解できたのは、一護が俺の手を襟元から外して背を見せた後だった。
「きほんてきにマイペースです」一護側>>
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