伏し目

 

「どうだ。朽木はどんな感じだ?」
「あれ? いんですか、起きてて」 

海燕は足を止めた。
視線の先には、細く開けた障子の隙間から顔を出した浮竹の姿。
その、どこか子供染みた仕草に笑みが零れる。

「だっていい天気だろ?」
「そうっすね」

渡廊下から庭に目を遣ると、枯れ枝には小鳥が遊んでいる。
春が来たというには早すぎるが、冬と呼ぶにはあまりにも柔らかいその日差し。
行過ぎる風はまだ冷たいが、どこか青い香りを含んでいる。

「大丈夫だと思いますよ、俺がちゃんと面倒見てるし」

ただ、あんなに目ェ伏せてちゃ、春が来るのにも気がつかねえだろうけどなぁ。
海燕は一人ごちる。
それが耳に届いたのか届かなかったのか、浮竹は軽く笑った。

「ま、お前に任せとけば大丈夫だろう」

如何にも呑気を装ったその言葉に海燕は軽く眉根を寄せ、

「ったりまえっすよ」

と笑って見せた。



唇を尖らす >>

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