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肩を怒らせて帰っていく様がまた愛らしい。 どれだけ緊張していたのか、こちらにまでひしひしと伝わってくるほどぎこちない動き。 ムキになって言い返してくる臣人が可愛くて、ついついからかってしまう。 「素直じゃねえのはお互い様……か」 勢いよく放り込んだゴミ箱に無惨な形のチョコが転がっている。 あの臣人がまさかこんなものを用意していたとは。 どんな顔で、どんな気持ちで買ってきたのだろう。 想像するだけで頬が緩む。 「誰に吹き込まれやがったんだ」 心憎い演出をしてくれる。 赤くなった臣人など見慣れたはずなのに。 何故だか今日は余計に愛しくて堪らなかった。 ゴミ箱からチョコを回収しようとして手を止める。 息を吸って深く吐き出す。 明日は十五日。 臣人が起こしたあの事件の日。 塾を去る臣人が見せた僅かな目の揺らぎを今も忘れることは出来ない。 差し伸べたくても出来なかった右手を握り締め、赤石はクルリと背を向けた。 「もらうのは明日だ。あの日のお前も含めて俺がもらう」 その後、教室に戻った赤石が江戸川に命じて校舎裏のゴミ箱を監視させたことは、後に塾内でも有名な話となる。 全ては臣人を想うが故に。 |