ユニコーンとライオン
 カキーン!カキーン!
 しばらく進むと、向こうの方から、なにやら喧噪が聞こえてきた。金属を打ち合わせるような音とはやし立てるような声に、アリスは興味津々に走り出した。
 「なにかやってるんだわ。戦いか、なにか!」
 少し開けたところに円形の闘技場のようなものがあり、その真ん中で、絵本で見たどこかのお城のエンブレムそっくりにユニコーンとライオンが戦っている。
 決定的に違っているのは、剣や盾を持たず、おのれの一物同士を激しくぶつけ合って戦っているというところだ。
 「とんでもないところに出くわしちゃったわ。みつからないように、こっそり逃げなきゃ。」
 「こんな戦いに巻き込まれるのはまっぴらだし、」
 アリスは独り言を言いながら、闘技場を回り込もうとした。
 「第一、戦うものがないわ。」

 がきぃーーーん!!

 と、そのとき、ひときわ大きな音がした。振り向いたアリスは、顔に向かって飛んでくるなにかを避けきれずに・・・
 なにやら柔らかたいものが顔面にぶつかり、メガネを吹き飛ばして倒れるアリス。
 「めがねめがね・・・」
 何とか起きあがったアリスの向こうで、戦っていたはずのユニコーンとライオンも股間を押さえてうずくまっている。
 「やられた!ひどい相打ちだ!」
 「お嬢さん、我らの剣を拾ってくれんか!」
 脂汗をたらしながら、ふたりがアリスに頼む。ふとみると、近くになにやら長太いものが2本、落ちている。これがふたりの一物、いや剣らしい。アリスの顔面にぶつかったのもこれだろう。
 「うえ。」
 そのうちの一本を、アリスは指先でつまんでみる。
 途端に!2本の剣は元気に動き出し、アリスに向かって跳ね飛んできた。
 2本の剣は協力してアリスのシャツのボタンを器用に外し、パンツをめくり上げて、むしゃぶりついてくる。
 「早く!早く元に戻してくれ!」
 必死で叫ぶ二人のことなど気にもとめず、2本の剣は好き放題。
 やっとのことで押さえ込んでも、アリスがしっかり握れば握るほど、硬く反り返って背伸びして、ほおずりしようとしてくる。
 アリスはもう汗だくになって、全部の手足を使って剣を押さえ込み、ユニコーンとライオンのそれぞれに剣を戻す。ところが。
 「俺の剣はこんなにぶかっこうに太くないぞ!」
 「わしの剣はこんなひょろ長じゃないぞ!」
 慌てて引っこ抜いて元に戻そうとするが、しっかりくっついて離れない。
 「間違えやがって!」
 「この!あわてものめ!」
 今度は青筋を立てて激怒するふたり。アリスはほうほうのていで逃げ出した。
つづく
もどる