老騎士の発明品
 しつこく追っかけてくるユニコーンとライオンを追っ払ってくれたのは、白い馬にまたがった老騎士。声だけは勇ましいけど、よく見ると落馬防止に拘束具やボルトやナットで体をがんじがらめにしている。交通安全のお守りなんかぶどうみたいに鈴なりに首からさげて、見れば見るほど頼りない感じ。
 「乗馬の免許だけは仮免止まりなんだ。乗馬の免許だけね。」
 「馬に乗れないなら騎士じゃないわ。」
 アリスが言うと、老騎士はばつが悪そうにしながら、今度は馬に引かせている荷車を指さした。
 「わしは肉弾戦よりも発明品を使った計略が得意なんだ。」
 老騎士はもたもたと安全具を外し、荷車に向かうと、なんだかでっかい木馬を取り出して、アリスに乗るように勧めた。
 「これなんか凄いぞ。自分で動く木馬だ。本当の馬よりも安全。」
 「まったく、動く部分が間違ってるわ。」
 やっとのことで木馬から下りたアリスが汗だくで不満を言うと、今度は剣のようなモノをアリスに押しつけた。
 「武器だってあるぞ!相手を悶絶させる剣だ。」
 「戦いの道具以外の発明はないの?」
 このままでは何がでてくるかわからないので、アリスは話を終わらせようと言った。すると老騎士は更に大きな入れ物を荷車から取り出し、にっこり笑う。
 「そういうのも得意じゃぞ。例えばこの、どんな苦手なものでも大口開けて食べられるようになる機械!好き嫌いするお子様にぴったりじゃ。」
 そう言うと、なんだかヒトデみたいなものをアリスの頭に貼り付けた。
 口の中にたっぷり出された苦いのに憤然としているアリスを無視して、老騎士の自慢は続く。
 「他にも、これは魔法の遠めがね。遠くのものや小さなものをよく見たり、覗き穴から向こうを偵察するのにも最適じゃ!たとえば、」
 といって老騎士はアリスのパンツを手早く脱がすと、下品な金色をしていぼいぼのついたその遠めがねをアリスの大事なところに突っ込んだ。
 「こんな中でもまるみえ!!」
 老騎士は遠めがねを覗きながら、鼻息荒く発明自慢を続ける。アリスはそれにいいかげんうんざりして、老騎士が息を切らして水差しを取りに行った隙に、騎士の馬に乗って逃げ出した。
つづく
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