その日、風呂から上がったN氏は、素っ裸のままでアダルトビデオを見始めた。ビデオは友人のF氏と一緒に怪しい業者でまとめて通販した「裏モノ」の1本で、実際パッケージもなく「S子」と書かれたシールが貼ってあるきりであった。
 ビデオを再生すると、その画質は非常に悪いもので、胸もなく華奢で髪の長い女性が女優であるということだけが分かった。期待してすでに一物を大きくしていたN氏はがっかりし、画質の良いシーンを探そうと早送りを始めたが、なかなかきれいに映るようになりそうもない。あきらめて停止ボタンに手を伸ばした時、逆にテレビの画面から腕が伸びてきて、N氏は無防備な一物をむんずと掴まれてしまった。
 腕に続いて、驚いたことに画面から髪の長い女性の全身が出てくる。N氏は慌てて逃げ出そうとするが、ビデオに出ていたS子と思われる女性はずるりと腰にまとわりついてそのままN氏の一物を銜えこむ。
 女性のひんやりとも生ぬるいともつかない不可思議な感触の口に愛撫され、恐怖と快感がない交ぜになったまま、N氏はS子の口中に射精してしまう。S子は目を細めてN氏の精液を飲み干すと、ほおをすぼめて尿道に残った精液まで吸い出そうとしてしてくる。そして全ての精液を絞り出すと、名残惜しそうに唇を尖らせて一物から口を離し、またテレビの画面の中へと帰って行った。
 その直後、強烈な虚脱感に襲われ、次の日の昼まで寝てしまったN氏は、どこを探しても件のビデオが見つからないことに首をひねる。
 後にF氏にその話をしてみたが、もちろんF氏はそんな体験をしておらず、夢でも見たんだろうと一笑に伏されたということである。
現世に戻る