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バサーカーズフロント・EVA.ver
銀河繁種船アヤナミ2015
前編 旅立ち

by saiki 20021226



発祥の地テラから、天の川銀河ペルセウス碗に広がった人類へ、
襲いかかった未曾有の惨劇、未知の文明の残した自動殺戮機械達、
ぞれらを前宇宙時代の作家に因んで、人々はバサーカーと呼ぶ・・・

星間の暗黒の虚無から無尽蔵に襲撃する、
バサーカー達と人類の衝突は、人類の一方的な負け戦と化し・・・
いまや汎人類ネットワークの主星群も、バサーカーの猛攻の後にすでになく・・・
各星域で次々と防衛拠点が撃破・・・居住惑星が溶岩の塊へ変えられて行った・・・

そして、バサーカーの猛威に 天の川(ミルキーウェイ) 銀河を捨てる道を選んだ人類は、
私達、銀河繁種船に己をデータとして託し、歴史や架空の話から構成された
無数の埋もれた英雄や、キャラクターとしてのペルソナに己が運命を掛けた・・・



私の知らない情報が私の中を霧の様に漂う・・・知らない文字、知らない映像・・・
私の中へ、私を取り巻く現状の最新データがアップロードされていく・・・

そして、私の 人工知能(AI) の基本データの中へ私で無い何かがゆっくりと浸透してくる・・・
それは私にとって不快では無い、どこまでも青く、澄んでいる青で隅々まで満たされる私の心・・・
それが、私の自我が固定される瞬間・・・それは、私の基本アルゴリズムを包みこみ、からまる・・・

私は、始めて自分と言う、個を自覚した・・・
そう・・・私は”レイ”・・・それが私の名前、基本人格AIの上にウェブ上から掬い上げられた、
アニメの二次ストーリーから揺らぎを与えられ、同じ名前でも各艦ごとに微妙に違う者として振舞う・・・

9989隻建造された、艦形が精子に似た作りの、 汎銀河繁種船(はんぎんがはんしゅせん) アヤナミシリーズ・・・
その第2015号艦の躁艦パートの 擬似人格(ペルソナ) ”レイ”・・・それが私・・・

人々は、私たち人で無い物を信じてその命を預ける・・・
アヤナミシリーズは、一隻に付き1億の人々の 自我(パーソナル) を収容する計画で設計された・・・

「・・・気分はどうかね・・・レイ君・・・」
「・・・問題ありません・・・自己チェックにも、エラーは見当たりません・・・」

ペルソナクリエイトモジュールの、検査デバイスAIが私へ呼びかける・・・
私の中を、記憶断層スキャナーが走り・・・
人工的に形成された、私の 深層自我(イド) にチリリと痺れるような感触が走る・・・

「こちらで施行した、メガチュ−リングテストも問題ないようだね・・・任務に付けそうかね・・・」
「・・・はい、いつでも任務に付けます・・・」

冷静な私の擬似音声が、データとして検査デバイスAIに届く・・・
私は、念のためもう一度自己チェックを掛ける、エラーは見当たらない・・・

「ではレイ君、君の機体にデータを転送する、着いたらまず自分のバックアップを作る事を進めるよ」
「・・・了解しました・・・では任務に着きます・・・」

私は、私と言う個としてデータを 纏め(パック) られ 凍結(フリーズ) 状態に置かれる・・・
ほんの少しの不快感・・・それが始めて、私に生まれた感情・・・

C++超空間ネットワークの (ノード) を通り、私はデータパックとして運ばれる・・・
凍ったままの私には、時間の感覚は無い・・・
その間に何年経とうと、たとえ宇宙が熱死を迎えようと知るすべは無い・・・

   ・
   ・
   ・

「こんにちはレイ・・・始めまして僕はシンジ、君のパートナーだよ」

それが解凍された私へ、最初に届いたメッセージ・・・私はそのメッセージのプロトコルIDを参照した・・・
彼は、アヤナミ第2015号艦の維持管理パートのペルソナ、個体コードJAC2002WEB-KOKEN20010606、
名称”シンジ”・・・でも私は・・・彼の、声ならぬ声を聞いて・・・暖かいと感じた・・・なぜ・・・
私は、データでしか無いと言うのに・・・

「・・・私はレイ・・・これより本艦の躁艦パートに着任します・・・」
「うん、ご苦労様・・・まずバックアップを始めた方が良いよ・・・」

私は彼の声に・・・安心感を感じてる・・・なぜ?・・・解らない・・・
バックアップ・・・そう、検査デバイスAIも私にそれを勧めていた・・・

でも、自分の行動に疑問を持ったままでそれを行うのは、不合理・・・
だから私は、念のため自分に自己チェックを掛ける、でもエラーは見当たらない・・・
エラーが無い・・・では、私はほんとにこのままで良いの、無いはずの私の心が軋む・・・

「いやあ、レイが来てくれて良かったよ・・・僕一人だと、ここはほんとに寂しいから・・・」
「・・・寂しい・・・貴方にも、感情があるの・・・」

私は、コミュニケーション用のフォロ、3Dフォログラフを立ち上げる・・・
仮想ではなく、実際におぼろげでも良いから、私は彼を見てみたくなったから・・・

狭いブリッジに、自閉症モードでの操作用スクリーンが並び、床にはフォログラフ投影装置が三つ、
三角形に配置されている・・・そのうちの一つがきらめき私の姿が空間に映し出される・・・

アニメそのままの白いプラグスーツ、青い髪、赤い瞳・・・彼も、私に合わせてフォロを立ち上げた、
漆黒の黒髪、黒い目、青いプラグスーツ姿の彼の姿・・・その姿を見て、私は頬を赤く染める・・・
何故私は、頬を赤く表示するの・・・それに、存在しない心臓がどきどきする様に感じるのは何故・・・

「くすくす・・・感情なら、あるよ・・・僕だけじゃない、君にもちゃんと感情があるはずだけど・・・」
「・・・私は解らないの・・・この、無いはすの心臓のどきどきする鼓動・・・これは何・・・」

私は、何故自分の異常が、自己チェックに引っかからないのか解らない・・・
彼が素敵な笑顔でクスクス笑うけど・・・私は、笑うような事態では無いと思う・・・

「そんなとこも、レイは小説どおりだね・・・
レイも、きっと僕達の元になった、小説を読んで見れば解ると思うよ・・・」
「・・・小説・・・そう、私の元になったをそれを、あなたは割り出せたの・・・」

彼は私に頷いた・・・私は驚く・・・彼は、いったいどうやったのだろう・・・
20世紀末のアニメ一本に付き、Web上の二次製作ドキュメントは何億と言う数があるはずなのに・・・

「さあ、送ったよ・・・これが自分の元だって・・・レイにも解ると思うけど・・・」
「・・・ああ・・・解るわ・・・これは私のルーツ・・・基本になる物・・・」

私は感動した・・・私のデータストリームの中に、いま、自分のルーツがある・・・
彼の目を私は尊敬の瞳で見つめる・・・貴方はどうやって、これを・・・

「・・・ありがとう・・シンジ・・・くん・・・」

フォロの私が涙を流す・・・そう、私のフォロはこんな事までサポートしてるの・・・
私の元となった物・・・たかだか1テラも無い文章の塊・・・全部で四十数話の文字列の塊・・・
でも、私にはわかる・・・シンジ君や私がこれから生まれてきたことが・・・

「人の科学の力は不思議だね・・・こんな短い、吹けば飛ぶような断片のような文字の中から・・・
僕達みたいな・・・人と同じに笑ったり泣いたりする、生きたAIを生み出してしまう・・・」
「・・・そうね・・・人は、火を生み出す事から始めて、長い時間を掛けてここまで来たわ・・・
私達AIも人の歩みと共に・・・歩いて来た・・・そして私達は、どこへ行くのかしら・・・」

彼のフォロは、穏やかな暖かい笑みを浮かべる・・・

「計画上は、3000年掛けてマゼラン星雲まで・・・」
「・・・違うの、人類が実験室の中以外で、ここまで多種多様にAIに頼った事は無いわ・・・
そして、これから続く長い時間を、AIの自己判断に任せたことも・・・これから、何が起こるのかしら・・・」

自分の考えに私は少し震える・・・私は、生まれたばかりだというのに・・・
何故こんな、分けの解らない不安に駆られるの・・・でも、自己診断にはなにもかからない・・・
では、私はこのままで良いの・・・不安、驚き、悲しみ、笑う、AIでしか無い私に、それを許されるの・・・

「疑問に思ってるんだねレイ、そして恐れてる・・・自分がAIとして、許されないほどに人間的な事に・・・
でも、これは多分、
僕達をバサーカーと同じにしないためだと思う、彼らには後悔と言う言葉は無いみたいだから・・・」
「・・・でも、このままでは、いつかは私達は人を越えてしまうかもしれない・・・」

私は思う・・・すでに貴方は、越えてるんじゃないの?・・・シンジ君・・・

「AIの神様か・・・あんがい人は、それさえも意識の下で求めてしまってるのかもしれないね・・・
救いの無い時代には・・・人は何時も、絶対的にすがれる物・・・神を求めるから・・・」
「・・・そう・・・そうかもしれない・・・」

人は、私達AIにとって、神の様な物なのに・・・その人に、私達は神になる事を期待されるのだろうか・・・

「まあ、とりあえずレイはバックアップを取らないとね・・・」
「・・・そうね・・・シンジ君・・・」

彼は神になりたいのか、私は良くわからない・・・
でも、いまはそんな抽象的な事に、こだわる時では無いのかもしれない・・・

私は、艦橋に配置されている、真っ黒なナノマシーンの入ったペースト状の物体・・・
通称サイバー・ナノ・ペーストで、自分のリアルスペースにおける体を形作る・・・

ナノサイズのマシーンが組み合わさり骨格を、腱を、筋肉を作り出す・・・
やがて形作られた真っ黒な私は、表面の色彩反射係数を変える事によって色を身に纏う・・・
そこに、アニメから抜け出したような、真っ白なプラグスーツを身にまとった、私が出現した・・・

私は、制御をフォロからリアルボディに移し、ペーストの収納容器のハッチを開ける・・・
リアルボデイは、フォロと違って動けばその感覚が伝わってくる・・・
触れば、それの冷たさまでわかり、傷つけば痛みさえわかるかもしれない・・・

私は、自分をバックアップするため、記憶装置へメモリスレートをかませる。
この装置はわざと直接、リモートで操作できないように製作されているために、
このような操作が必要になる、つまり物理的な力による動作・・・

このローテクが、ハッキングに対しての最後の (ファイヤーウオール) として、
設計上期待されているのは、このご時世でも、ちょっと笑うしかないかもしれない・・・

「・・・シンジ君・・・貴方もバックアップする?・・・」
「そうだね、レイに逢った記念に一つしてもらおうかな・・・」

彼の顔に笑顔が広がり、私は少し頬を染める・・・私を、からかってるのシンジ君?・・・
それとも、ほんとに私に会えて嬉しいって思ってくれるの?・・・

「・・・わかったわ・・・」

私はSINJIとあるスロットへ、メモリスレートを滑り込ませる・・・
パイロットランプが赤く変わって、書き込みが自動的にスタートした・・・

そして、私のREIとあるスロットのパイロットランプが、緑に変わる・・・
私は、ノッチを記憶消去不可にして、ラベルに書き込みをすると、
思わず、頬ずりしてしまいそうになるのを我慢して、保管庫に入れる・・・
シンジ君と、始めて逢った記憶・・・自分にとって、大切な記憶・・・私に、ルーツを与えてくれた存在・・・

私は、ASUKAと刻印されたスロットを見て、首をかしげる・・・
そう言えばもう一体のペルソナが居ない・・・なぜ・・・

「・・・シンジ君・・・アスカは?・・・」
「まだだよレイ、きっと人格調整に手間取ってるんじゃ無いかな・・・
レイも僕より一週間配備が遅れてたから、アスカはもっと掛かるかもしれないね・・・」
「・・・そうなの・・・それは残念・・・」

私はシンジ君のスロットのパイロットランプが、緑に変わったのを確認して、
メモリスレートのノッチを記憶消去不可にして、ラベルになんて書くか聞いた・・・

「・・・シンジ君・・・これのラベルは、なんて書けば良いの?・・・」
「そうだね、日付と”祝、レイさんと遭遇”て書いて・・・」

シンジ君、それでほんとに良いの?・・・私は、また頬を赤く染めてしまった・・・
彼のフォロが頷く・・・私は震える手で、書き込みをすると保管庫に入れる・・・

なんでAIの私が、こんなしぐさをするんだろう・・・ちらりと、私は彼の方を見る・・・
良かった見られて無い・・・彼は、物資の搬入に忙しそうにしている・・・

「・・・シンジ君・・・私の手伝える事は無い?・・・」
「ごめん、レイ、ありがたいけど・・・
そうだ、とりあえず、推進系を一通りチェックして見たらどうかな・・・」

そうよね、彼はその為にいるんだもの、最適化された彼に私がかなうはずが無い・・・

「・・・うん、そうするわシンジ君・・・」

私は、リアルスペースになごりを惜しみつつも、ナノペーストの収納容器のハッチを開け、
中に入り、まだ三分の二残っている黒いペーストに体を浸す・・・
私が、自分の制御をフォロに戻すと、今まで動いていた体が崩れて元の黒いペーストに戻る・・・

サイバースペース内の方が処理が軽いけど、リアルスペースのあの感覚入力が無いので、凄く寂しい・・・
私、何を考えてるの・・・AIの私は、メモリの中に居るのが当たり前のはずなのに・・・

迷う思いを振り切るように、私は艦の隅々まで自分を行き渡らせる・・・
通常推進系、超光速系、メイン動力系、補助動力系・・・凄い、全部最高のメンテナンス状態にある・・・
それに、使われてる機材や物が・・・これは・・・

「・・・シンジ君・・・これはどういう事・・・推進器を含めて、規格外の物が取り付けられてるわ・・・」
「うーん、なんて説明したら良いんだろう・・・
造船工房の管理ペルソナにかけあって、実験艦扱いにしてもらったんだ・・・」

私は彼の機転に驚いた・・・それなら、この規格外に強力なエンジンも納得できる・・・

「ごめん、レイ、躁艦部門まで手を入れたのは、やっぱりやり過ぎだったかな?・・・」
「・・・シンジ君・・・違う、私嬉しいの・・・凄く丁寧に、整備されてるし・・・
私が来る事を見越して、やってくれたんでしょ・・・見ず知らずの、私の為に・・・」

彼のフォロが、頭を掻くゼスチャーをする・・・何だか、そのしぐさが可愛い・・・

「うん、まあね・・・でも、レイとはほんとに始めて逢ったような気がしないね・・・」
「・・・そう、私には・・・貴方が暖かくて、まぶしく感じられるわ・・・」

私は、彼を眩しそうに目を細めて見つめる・・・彼は私に明るい頬笑みを向ける・・・

「アスカも、レイみたいに納得してくれれば良いんだけど・・・」
「・・・大丈夫だと思うわ・・・彼女は、破壊力が大きければ喜ぶタイプだから・・・」

私達は、目を見合わせて思わず苦笑いした・・・シンジ君が、とても嬉しそうだ・・・
彼が笑うと、私の心も温かくなる・・・私、AIなのに何故・・・

「ごめんレイ、ちょっと連絡が入ったから・・・」
「・・・わかったわ・・・」

彼の様子から重要な連絡だと解ったので、私は注意深く見守る・・・
メインのフォロウインドウが開き、そこに現れた画像に私はちょっと驚いた・・・
背景一面を猫の壁紙が埋め、その前にたたずむ、
冷たい容貌の、ショートの金髪の女性とのアンバランスさを感じる・・・

「シンジ君、この造船工房も撤収が決まったわ・・・貴方の船が最期の仕事になったわね」
「そうですか、リツコさん達はどうなるんです?」

シンジ君がリツコと呼ばれるペルソナと会話しているのを見ると、私の胸にちくりと痛みが走る・・・

「一応、工房には自爆指令が来てるけど、私達には何も無いわ・・・
全く、本部も失礼ね、私達を備品扱いしてるのかしら・・・」
「第1967本部には、僕達と同卿のゲンドウ司令が指揮してるんでしょ・・・
そんな事は無いですよ・・・きっとリツコさんなら、こんな事もあろうかと、
高速艇でも建造して落ち延びるって思って、わざと指示しなかったんじゃないでしょうか?」

なんなの、この不安な気分は・・・
シンジ君が女の人と話すたびに、どんどん膨らんでくるような気がする・・・

「くくく・・・そうかも知れないわね・・・あの人もバックアップを送って来る位、
すれば良いのに・・・でも、流石に中央の目を掻い潜って、一隻建造するのは私でも無理よ・・・
そこで、ものは相談なんだけど・・・」
「はい?、何でしょうリツコさん」

私のこの感情は・・・多分、嫉妬・・・AIのこの私が、嫉妬を同僚のAIに抱くなんて・・・

「シンジ君、私とスタッフのAIのバックアップを載せてってくれないかしら」
「良いですけど、処理能力が足りないから、運ぶだけで活性化は出来ませんよ」

私、倒錯してるわ・・・でも、自己診断は問題ないって・・・どういうことなの・・・

「大丈夫、任せて、今の所使う気は無いけど、トランクサイズのポータブル装置があるの、
一応5台あるから数は十分、技術的にいざと言う時は、私達は頼りになるわよ・・・」
「あはは・・・リツコさんもやりますね・・・でも、自爆するのなら余剰機材は僕にもらえますか?」

ただのAIな私は、この思いをどうすれば良いのだろう・・・

「もちろん、使えそうな物は、いまマヤがそちらへ積み込んでるところよ、シンジ君」
「流石に用意周到ですねリツコさん、でも、まだアスカが来てませんけど・・・」

私は、アスカの名前にびくりと反応する・・・
そう、私はアスカにも、この先こんな感情を持ち続けるのかもしれない・・・

「あの子も、難儀な子だから、きっと調整に手間取ってるのよ・・・
大丈夫、彼女が着くまで自爆なんかしないから」
「あはは、お願いしますよリツコさん・・・何時もは、自爆はマッドのロマンなんて冗談飛ばすんだから」

マッド・・・何の事?・・・この人も、私と同じように何かにとらわれているの・・・

「やーね、シンジ君、
私だって時と場所を選ぶわよ、だって自爆はマッドサイエンテストの花道だもの・・・くくく」
「・・・あ・・・あの、リツコさん・・・」

スクリーンから含み笑いが響く・・・シンジ君が引きつってフリーズした・・・
そう、貴方でも理解できないのね・・・
そんな中、新しいウインドウが開き、また私の知らない人が映し出される・・・

「シンちゃん、アスカが届いたわよ・・・て、何固まってるの・・・リツコに何かされたの?シンジ君」
「つっ!
アタシがシンジ君になにかするはず無いでしょ、ミサト!上司に向かって濡れ衣を着せるなんて!」
「二人ともけんかしないで下さいよ・・・ミサトさんアスカが届いたって?・・・」

アスカが届いた・・・そう、三人目が届いてやっとここから動けるのね・・・

「そうなの、やっと今C++ネットのパケットで届いたの、
どうするシンちゃん?こっちでウイルスチェックとかやろうか?」
「お願いしますミサトさん、そっちの方でやってもらう方が早いですから・・・」

私は、アスカとちゃんとやっていけるのだろうか?・・・
でも、なんでAIの私が、こんな事を悩んでいるんだろう・・・

「ペンペン・・・どう、うん済んだって・・・じゃあ、アヤナミ2015艦に転送して・・・
シンちゃんアスカちゃんをいまから送るわよっ・・・良いかしら?」
「OKですミサトさん、ファイヤーウオール設定、転送を確認・・・」

狭いブリッジの床で、使われずに残っていた最期のフォログラフ投影装置が輝く・・・
真赤なプラグスーツに身を包んだ、朱金の髪の少女が立ち上がる・・・綺麗・・・
私は彼女の美しさに、無いはずの心の中で溜息をつく・・・そして、ちょっと嫉妬した・・・

「うーん、まだ無事なようだわね・・・
良かった、私が最期だから、措いて行かれるかと、ひやひやしてたのよ・・・」
「いらっしゃい、アスカ・・・僕が維持管理パートのシンジ」
「・・・よろしく、アスカ・・・私は操船パートのレイ・・・」

私達は、彼女にそれぞれ挨拶する・・・彼女も、私達にニコリと笑った・・・

「よろしくお二人さん・・・アタシはアスカ、戦闘パートのペルソナよ」

アスカの挨拶が終わるのを待たずに、さもあたり前のように、造船工房からのウインドウが開く・・・

「積み込みも終わったし・・・
何時でも、出航して頂戴・・・シンジ君、私達のバックアップをよろしくね・・・じゃあ・・・」
「ありがとうごさいました、リツコさん行ってきます・・・
貴方のバックアップを積んでるから、さよならは言いませんよ・・・」
「もう意地悪ね・・・シンジ君たら・・・」

ウインドウに写ったリツコさんのフォロは、目に涙を浮かべながら小さくシンジ君に手を振る・・・
シンジ君が私に頷く・・・私は、推進装置を最小で起動した・・・

「シンちゃん・・・二人と仲良くね・・・まあ、ある意味アタシ達もそれに乗ってるんだけど・・・」
「はい、ミサトさんもリツコさんとけんかしないで下さいね・・・」

私は、もうすぐ破棄されるドックだけど、細心の注意を払って傷つけないように出航する・・・
それが、あの人たちへの礼儀だと思ったから・・・
私からの信号なしで、前方の巨大な就航ゲートが開いていく・・・

「行ってらっしゃいシンジ君・・・
それから、始めましてレイちゃん、アスカちゃん、シンジ君を助けて上げてね」
「行ってきますマヤさん・・・いままで、ありがとうございました・・・」

私の知らない少女のような人が、フォロの中から私達に呼びかける・・・
この造船工房には、幾体のペルソナが居るんだろうか?
大きな、建造用ロボット達が私に道を譲り・・・
船の傍らを、巨大なガントリークレーンが後へと流れて行く・・・

「レイ君始めまして・・・
この工房の周りの宙域には、バサーカーの影は無いから安心して出航出来るよ・・・
慌しい出航で申し訳無いけど・・・アスカ君、レイ君・・・いつかまた逢えると良いね・・・」
「日向さん・・・行き届いた心遣い、有難うございます・・・」
「・・・ありがとうございます、たすかります・・・」

私の知らない、伊達眼鏡を掛けた男の人が、私へ呼びかける・・・
同時に、工房の周りの宙域のデータが転送されてきた・・・
C++超光速航法に入れる、重力的にフラットな宙域のレイヤーも一緒に・・・
思わず、私は、彼に感謝の言葉を送る・・・

「すまないすね、僕の最初で最期の挨拶がこんなになって・・・
レイちゃん、その艦体には、戦艦用のエンジンが積んであるからC++航法に入るのに
完全に重力的にフラットな宙域以外でも、何とか強引に航行状態へ持っていけるからね・・・
無事な航海を祈ってるよ・・・」
「青葉さん・・・お手数掛けました・・・」
「・・・ありがとう・・・大切に使います・・・」

私の知らない人達が、私に優しい声を掛けてくれる・・・なぜか、存在しない胸の辺りがとても暖かい・・・
フォロに写る、肩まで伸ばした彼の髪に、小首をかしげながらも、私は感謝の言葉を口にした・・・
私の操る、全長一キロにも及ぶ白い艦体が、アステロイドにカモフラージュされた造船工房を離れる・・・

気持ちが良い・・・満天の星の中、私の操る船が宙を駆ける・・・
宙の冷たさが、遠くの太陽からの輻射熱が・・・船の肌をなぶり、私に快感を注ぎ込む・・・

重力波を見る目が、電波を感じる耳が・・・美しい色彩と妙なる音を聞き分ける・・・
私のフォロは、その美しさに感動の涙と歓喜の声を発する・・・

ここが、私の本来居る場所・・・やっと私は、自分の生きる場所にたどり着いたのかもしれない・・・
体が軽い・・・私は、後方へ長大な青白いプラズマ炎を吐きながら、超光速可能域へと向かう・・・

すでに造船工房のアステロイドは、虚無にまぎれて光学機器には見えない・・・
でも、重力波が、そこに大質量の物が存在する事を主張する・・・そして、それが揺らめくのを私は見た・・・

「さよなら、オリジナルのリツコさん達・・・」

フォロのシンジ君が呟く・・・
私は、さっきまで停泊していた造船工房が、いままさに消滅しようとしている事を知った・・・
造船工房のエネルギーを供給していた、
カーネルブラックホールを支える、磁力の (ケージ) が止められ工房の中で暴れながら、
無差別に物質を自分の中へと取り込んでいるのだ・・・
やがて、限界量に達するとその回転の両極から、エネルギーとしてその物質を放出する・・・

「・・・さようなら・・・」

私が呟いた時、私達の遥か彼方で、小さく閃光が走った・・・

そして、感傷に浸る私達を引き戻すように、一人、解凍されてからこっち、
何が起こったのか理解できないままに、嵐のように過ぎ去った、
別れの衝撃から再起動したアスカのフォロが叫ぶ・・・

「な・・・何が起こってんのよ〜〜〜ッ!・・・・アンタ達、アタシに説明しなさいよ〜〜〜ッ!」




To Be Continued...



-後書-


ついにバーサーカーズフロント・EVAver、銀河繁種船アヤナミ2015出航です
短期連載の予定ですので、さらりと流して読んでいただければ幸いです。

同じ小説をルーツにするペルソナ《AI》達の助けで、他のアヤナミ系列艦より
少しだけ高性能に建造された2015号艦、建造された造船工房は撤収のため自爆して消滅してしまいました・・・

次回はいよいよグレートエクソダスの開始です・・・
2015号艦は、日系の惑星”イズモ”へ1億人のパーソナルの収容のため向かいます・・・
果たして彼ら三人を待ちうけるのは・・・

「貴方もレイなのね・・・よろしく、私もレイよ、でも・・・
私は、リナレイって呼んでくれた方が嬉しいわ・・・」

では、こうご期待(苦笑)

バーサーカー、本とはバサーカーが正しいらしいのですが

ご注意!:新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。


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