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バサーカーズフロント・EVA.ver
銀河繁種船アヤナミ2015
後編 グレートエクソダス

by saiki 20030130



アヤナミ1995号艦の純白の艦体の上を、青白い放電が踊り・・・
サージ電流が、柔な使い捨てアンテナを飴のように蕩かす・・・
私は、離れて行くリナレイのアヤナミ1995号艦に、必死に呼びかけを繰り返す・・・

「・・・リナレイ!・・・リナレイ!」

再び、リナレイ艦が推進器からプラズマ炎を吐いて動きだした時・・・私は、安堵の溜息をついた・・・
でも、私の目はリナレイ艦から、大質量の極小点が離れていくのを捕らえて・・・ぞっとする・・・

「・・・リナ・・・」

あれは・・・超光速機関のメイン部品・・・荷電マイクロブラックホール?・・・
もし、そうだとしたら、リナレイ艦にバサーカーから逃れる術はない・・・、

リナレイ艦のメイン推進器四機の内、1機が派手な火花を振りまいて緊急停止する・・・
おそらく、マイクロブラックホールが支持磁場を突き抜けた時、
推進器のプラズマ磁気ノズルを傷つけたに違いない・・・

私のフォロが、涙を流している・・・そう、この涙はリナレイのための物・・・
フォロの表面動作は、動作確認のための無意識下レベルの反応をトレースしている・・・
一緒に居た時は短くても、同じレイの名を冠する者達の一人・・・
何処かで、通じ合う物があるのかもしれない・・・私の頬を、仮想の涙が次々と滴り落ちて行く・・・

「・・・諦めないでリナレイ!・・・リナ・・・」

リナレイ艦を傷つけた、サイレンの魔女の放ったビームは、
惑星”イズモ”の地表を深く抉り、 地殻(プレート) を破砕した・・・
噴出す 溶岩(マグマ) が、森を、都市を、人を・・・
地表上の全てを焼き尽くす・・・私達の救えなかった人々が、全て灰と化していく・・・

神よ・・・無責任な神よ・・・そこに居ますか・・・貴方には、人々の嘆きの声が聞こえないのですか・・・
私の目の前で、 軌道エレベーター(ビーンストーク) が足元の支えを無くし、遠心力で崩壊しながら虚空へ飛び去っていく・・・

「レイしっかり操船しなさいよ、アンタの肩に1億近い人命が掛かってんだからね!」
「・・・わかってるわ・・・アスカ、でも・・・」

アスカが、バサーカーの放った機動宙雷や、白兵兵器を粉砕しながら私を叱る・・・
でも私の耳は、無と帰って行く仲間達の声を聞き続ける・・・
大量のAI達が、光の中プラズマとなってバックアップもろとも消え去り・・・
守るべき人間達が、もろくも無へと帰っていく・・・やはり、この世に神は居ないのだろうか・・・

こちらでは、小型の”ヤシマ”シリーズが数千のパーソナルと一緒に無へと帰る・・・
あちらでは、私と同系艦の”アヤナミ”が1億のパーソナルを抱えたまま爆散する・・・

戦闘艦達も次々と被弾し、自爆や、特攻を繰り返す・・・
自爆した”武蔵”の後を埋めるべく、
惑星級仮想戦記系列艦”大和”が、惑星と半壊した”サイレンの魔女”との間へ割り込む・・・
”大和”の防御力場が、傷ついた”サイレンの魔女”からの、極太のビームを防いでくれるが・・・
魔女から、すでに放たれたバサーカーの、中、小型艦は貧弱な武装の私達を狩り立てる・・・

溶岩に焼き尽くされつつある惑星”イズモ”の空間を、阿鼻叫喚の通信が埋め尽くす・・・
そんな中、突然電波を媒体に使いテキスト形式のデータがパケットで私宛に届く・・・

《お願い、レイ、私の荷物を引き取って:”レイ1995”》

リナレイ艦からのメッセージ・・・でも何故音声やデータ回線を使わずテキストで・・・

《ごめんなさい、いま私にはシンジもアスカも居ないの、
迷惑だと思うけど、頼れるのは貴方だけなの:”レイ1995”》

私はぞっとした・・・サージによるデータ破壊か、それともハードウエアの欠損か・・・
何が起こったかは分からないけど、いまの彼女にはもう、同卿のシンジもアスカも居ないのだ・・・
彼女は、修理能力も、戦闘するすべも無くただ鈍足で逃げるしか出来ない・・・

《もし貴方に断られたら、私には、荷物を電波でばら撒くぐらいしか、すべは残って無いわ:”レイ1995”》
《まって、早まらないでリナレイ、対処方法を相談するから:”レイ2015”》

私はすぐ、同じプロトコルで、テキストを電波で発信する・・・
超光速機関が使えないリナレイ艦は、C++超光速ネットは使えない・・・
私はデータをシンジ君へ回す・・・ごめんなさい、あなたの負担を増やす事になるかもしれない・・・

「わかったレイ、とりあえず余裕のあるメモリを仮設配線で君に繋ぐよ、
後、リツコさんを起こして、緊急に検討してもらうから・・・少しの間だけどがんばって」
「・・・ごめんなさい・・・シンジ君・・・」

シンジ君が私を笑顔で励ます・・・ありがとう・・・

《リナレイ、積荷を受け入れるわ、バーストモードでこのままここへ送って:”レイ2015”》
《ごめん、ありがとう:”レイ1995”》

リナレイ艦から、すさまじい勢いで私の回線へと、データが送られて来る・・・
彼女から送られて来る、1億弱の人々のパーソナルデータ・・・

「・・・くううっ・・・」

それは瞬く間に私の個人データ領域を埋め尽くし、大事な思い出や
航法データ領域へ広がって行く勢いだ・・・シンジ君、お願い早く・・・
貴方と私の短い思い出が、データで埋め尽くされないうちに・・・

・・・少しだけデータの流入が弱まる、シンジ君が手をうってくれたの?
私は振り返る・・・そこにシンジ君は居なかった、でも不敵な笑みを浮かべたアスカが、
アタシへ頬笑みを向ける・・・まさかアスカ、貴方が・・・

「・・・アスカ・・・貴方なの・・・」
「シンジの奴は、リアルボデイでちょっと席を外したわよ・・・
水臭いわねレイ、アタシにも手伝わせなさいよ・・・もっとも、書き潰しちゃって、
もうアタシには、昨日アンタやシンジと交わしたはずの、業務連絡さえ思い出せないんだけどね」

忙しさの中に、悲しさを込めて、アスカは私をなじる・・・
アスカ、ごめんなさい・・・私も、もうバックアップにあることしか、想い出せないかもしれない・・・
でも、貴方が良い人である事は分かるわアスカ・・・そして私の戦友と言うことも・・・

「・・・ああっ・・・」
「うううっ・・・シンジッ!何してんのよっ!早く手をうちなさいよっ!」

私達は、いよいよ追詰められた・・・もう余っているデータ領域が無くなって、
本来自分に必要な物まで、圧縮して領域の確保をしている・・・でも、それも限界・・・
データの受信をカットするのは簡単だ、でも一方的に送られて来るデータを切ると言う事、
それは殺人と同義なのだ・・・人々のパーソナルは、虚しく虚空へ消え去ってしまう・・・

「・・・つぅ・・・シンジ君・・・」

私は、アスカに負担を掛けているのに、後ろめたさを感じながらも、シンジ君を信じて・・・
自分というデータ領域を、新たに受信されるデータに譲り渡し続けた・・・
でも、もう駄目・・・シンジ君・・・私は、ついに受信の切断を決意した・・・

でも、それを実行に写す前に、いきなり私達へのデータの流入が止まる・・・
そして、私達を埋め尽くそうとしていたデータも移動され、領域が初期化される・・・
シンジ君が間に合ったの・・・私達は初期化された領域へ、圧縮していたデータを書き戻す・・・
私の仮想の頬を、安堵の涙が伝う・・・ああ、通信を切らなくて良かった・・・

「たく、シンジの奴、もう一寸でアタシはアイツを忘れるところだったわよ」
「・・・良かった・・・もう少しで私、通信を遮断するところだった・・・」

アスカのフォロが、私を睨む・・・
ごめんなさいアスカ、せっかく貴方が私を助けてくれたのに、先に私がくじけちゃいけなかったのね・・・
私が一言謝ろうと口を開き掛けた時・・・アスカが、スクリーンを睨んで厳しい表情に変わる・・・

「レイ、1995艦が被弾したわ・・・アイツ、アタシ達の盾になってる・・・」
「・・・くっ・・・リナレイ、あなたのアスカやシンジ君達がもう居ないからって・・・」

リナレイ艦は、機動宙雷を不器用にレーザーで打ち落としながら、アタシ達とバサーカーとの間に
その傷ついた艦体をやっとの想いでねじ込む・・・彼女の艦体は幾つもの醜い傷口をさらし、
取り付いたバサーカの白兵兵器に蝕まれながらも、健気に私達の盾の位置を取り続けている・・・

《リナレイ、すぐに貴方のバックアップを送って、もうその艦は持たない:”レイ2015”》
《ありがとう、でも艦長は最後に下船する物よ:”レイ1995”》

私は気づいた、彼女は艦と運命を共にしたがっている・・・だめ、諦めないでリナレイ・・・
そんな焦る心に乱れる、私の目の前に、シンジ君のフォロが復活する・・・

「アスカ、レイ、手間取ってごめん、1995艦のデータはバイパスしてメインメモリへ移す様にしたから
しばらくは大丈夫だよ、それにリツコさんとマヤさんのバックアップを起動して頼んでおいたから、
あの二人に任せておけば何とかしてくれるよ、リツコさんは余分に積んだサイバー・ナノ・ペーストで
メモリの代用品をでっち上げるって言ってたから・・・うん?・・・どうしたの二人とも?」
「シンジ、1995艦の奴がアタシ達の盾になってるのよ!・・・」
「・・・シンジ君、レイ1995は艦と最後を共にする気だわ・・・」

私達の言葉に、シンジ君のフォロの顔色が一気に紙のように白くなる・・・
バックアップさえあれば、私達は擬似的に不死身だ、でもリナレイは、自ら消え去ろうとしている・・・

「レイ、ビームが来る!」
「・・・分かってる、アスカ・・・」

バサーカーの幾本ものビームが、防御磁場が弱まっているリナレイ艦を貫き、私達を襲う・・・
私は操船でそれらを避けようとするが、
運悪くその一本と接触した、防御磁場がほとんどの反陽子を弾く・・・
でも完全に防ぎ切れなかったのか、私の体の表層で、小規模な爆発が続けざまに起こった・・・

「レイ!大丈夫?」
「・・・くぅっ・・・大丈夫よアスカ・・・シンジ君R14,16ブロックをお願い・・・」
「わかった!」

私が一体化したアヤナミ2015艦のフィードバックで、胸の辺りがチリリと痛む、でもその痛みも
シンジ君の適切な漏電や配管への応急処理で、ダメージコントロールされると薄まっていく・・・
アスカは他のアヤナミシリーズ艦よりましとはいえ、純粋の戦闘艦艇に劣る武装でりナレイ艦を
大きく廻りこんでくる、バサーカー達の機動宙雷や白兵兵器を確実に撃ち落として行く・・・

「・・・方位133、マーク601・・・進路上に障害・・・アスカ撃ち落として・・・」

でも、どんどんその密度を増す敵の攻撃は、アスカの弾幕をやすやすとかわした・・・

「言われなくてもやってるわよ、
あたし達にはろくな武装が無いのよ、だめ!間に合わない避けて、レイ!・・・」
「対アステロイド、リアクティブアーマー起動、レイ、アスカ、振動に備えて」

トラブルがアスカのフォロに悲鳴を上げさせる、意外にも冷静に対処したのはシンジ君だった。
実験艦として装備されたリアクティブアーマーで、分離寸前のバサーカーの白兵弾を撃破する・・・
でも、私には生き残った、蜘蛛型のマイクロバサーカーが、青白いプラズマ炎を上げながら
体へ取り付くのを感じ・・・そして、それが私の中へもぐりこんで行く、嫌な感触・・・

「・・・あくぅぅっ・・・」
「ぐううっ、潜り込まれた、アスカ、頼む・・・」

私は、あまりの気持ち悪さに低い唸り声を上げる・・・そんな私を見て、シンジ君もすまなそうに唸る・・・

「シンジの奴、アタシの仕事を増やしやがって・・・」

アスカが忌々しそうに呟く、彼女はシンジ君を睨むと艦内に配置された
サイバー・ナノ・ペーストで、無数の戦闘体を組立て始めた・・・
アスカの戦闘体は、アニメそのままに、朱色のプラグスーツをその身にまとっている様に見える・・・

「蜘蛛どもめ!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!」

眼を閉じた、アスカのフォロの口から、呪詛が漏れる・・・
アスカの分身達は、蜘蛛型のバサーカー達を狩り立てていく・・・一方的な殺戮・・・
でも、それは時間と共に、一進一退に変わり・・・ゆっくりと泥沼化し始める・・・

私は、激しくなる艦内の戦闘に、内臓を抉られるような感触を味わいながらも、
超光速可能域へと、主推進器からプラズマの閃光を放ちながら足を速める・・・
リナレイ艦は、そんな私達の盾になりながらも、いまだにパーソナルの送信を続けていた・・・

しかし、そんな奇跡は何時までも続くはずが無い・・・私は、操船の合間にリツコさん達が裏技で、
拡張を続けるメモリーに流れ込むデータを監視していた・・・そんな時、それは起こる・・・
一瞬のデータの途切れ、そして短いメッセージ・・・私はその時、何が起こったかを悟った・・・

《さよなら・・・ありが・・・》
「・・・くっ、リナレイ・・・」

メッセージは途中で途切れていた、私の光学センサーがリナレイ艦が爆散するのを捉える・・・
虚空へプラズマの雲が広がる、私達を信じて命を託した数千の人達のパーソナルが失われ・・・
その人達の復活への道が閉ざされる・・・私達には、リナレイを含め、死者達を痛む暇も与えられない・・・

「・・・くるのね・・・」

リナレイの亡骸のプラズマの雲を突抜けて、青白い放電のハローをまとった、
バサーカーの巨大なバトルシップが現れる、私は120パーセントの過負荷を掛けて、
主機関を吹かし、攻撃をかわすためランダムにコースを変える・・・
でも、そんな小細工をしても、やがて追いつかれるのは目に見えていた・・・

そんな私達を逃すため、半壊したMナデシコ系列モーラ艦が、最後の力を振り絞って、
バサーカーのバトルシップへ特攻してくれた、彼女は敵の赤い船体へ突き刺さる・・・
敵味方二隻の巨艦が軋み、その10キロを越える艦殻が、お互いを傷つけ捻じ曲がる・・・
やがて二つの巨大なプラズマの火球が真空を焦がし、重力波や電磁波を廻りにばら撒く・・・

「・・・ごめんなさい・・・・」

逝ってしまったMナデシコ系列モーラ艦のペルソナ達へ、私は悲しみと共に感謝の言葉を送る・・・
そんな時、惑星”イズモ”の生き残ったエリアコントロールからのデータが超光速通信のノードを通して、
生き残った全ての艦へ届けられた・・・それは最悪の状態の現場への、更なる脅威の到来を告げる・・・
その宙域データを読んだ私は、決断に迫られる・・・そして、瞬くほどの時間で私は決断した・・・

「・・・重力波の波間の凪を使って無理やり、超光速航法に移行するわ・・・」

私の冷静な声が、非常識な決断をアスカとシンジ君に告げる・・・

「レイあんた、そんな事をして、アタシ達に命託してくれた人に責任おえるの?」
「無茶だよレイ、せめて応急修理を済ませてから・・・」

私の非常識な決断に、アスカとシンジ君が非難と提案を口にする・・・
確かに船内で白兵戦闘中、しかも一瞬のタイミングをつかむ必要のあるハイリスクな方法だ・・・
でも、その一見無謀とも思える私の決断には、ちゃんと根拠と必然性がある・・・

「・・・でも、いまじゃないと逃げられない・・・」

私は、エリアコントロールからの宙域データを、アスカとシンジ君へ転送した・・・
宙域データにはバサーカーのガス巨星サイズの超巨大戦闘母艦、スーパーサイレンと
無数の惑星サイズ戦闘母艦、サイレンの魔女が、超空間を接近してくるのが記されていた・・・

「仕方ないわね・・・蜘蛛どもは一時的でも押さえるわ・・・レイ」
「僕の方も、機関部の方を優先するよ」

二人のフォログラフが、私に首を縦に振る・・・
ありがとう・・・アスカとシンジ君は、私を信じて全てを掛けてくれた・・・
今度は、私の番だ・・・この勝率の悪い賭けを、なんとしても成功させなければならない・・・

私は素早くサブルーチンを無数に編むと、それらを私自身から分離させた・・・
そして、自分の処理能力を全てつぎ込んで、戦闘で起こる重力波の波の干渉を計算する・・・
波と波とが干渉し合って、波間につかの間出来る凪を予想するためだ・・・

こんな時、自分の体へ戦艦用のエンジンが積んであるのがとても心強い・・・
それだけ、C++超光速航法へ入れるスポットが広がるから・・・
私の中のシュミレーションに一つ目のスポット・・・駄目、小さすぎる・・・
そしてすぐ、二つ目と三つ目が・・・二つとも、私には十分なチャンスを
持っているように見えた・・・だから私は、超光速機関を始動させる・・・

「・・・荷電マイクロブラックホール、アイドリングから規定出力へ引き上げ開始・・・」

極小の巨大質量が時空を引きずりながら、支持磁場に沿って回転を早める・・・
三つ目のスポットが、新たに爆発で引き起こされた重力震で消え去る・・・
私は必死で計算する、二つ目も同じ様に消え去ってしまうのではないだろうか?

もし失敗すると、私達は重力波にずたずたにされるか、けして帰ってこられないほど深く
超空間の中へ、落ち込んで行く事になる・・・そうして、帰ってこなかった船は数多い・・・

「・・・いまっ!・・・」

そして、私は瞬時に決断した・・・私の意思で、瞬く間に巨大質量の回転場は限界を越えた・・・
私の丸い艦首にチャレンコフ放電の青白い輪が、拡散せずに無事広がる・・・
その青白い輪は、全長一キロもある私の白い艦体を舐めるように後ろへ走っていく・・・

「・・・無事、C++超光速航法に乗ったわ・・・」

私はホッとして、アスカとシンジ君に思わず笑顔を浮べ囁く・・・
1億数千の人々の魂・・・パーソナルを乗せた私達は、無事に惑星”イズモ”から脱出した・・・
しかし、まだ私の中では、バサーカーの白兵兵器が猛威を振るっている・・・

私は、アスカの顔色が悪いのが心配だ・・・でも、私達は今でも生きている・・・
そして、もし神なる物が、少しでも慈悲と言う物を持っていれば、
私達は無事にマゼラン星雲を、目の前に見る事が出来るかもしれない・・・

だから、一介のペルソナ、ただの人の生み出したAIでしかない私は、祈らずにはいられない・・・
神よ、私の中の1億数千の人々の祈りを聞き届け給えと・・・ああ、祈りが届けば良いのだけど・・・

    ・
    ・
    ・

私の視覚センサーに、小さくなった故郷の天の川銀河が光のレンズとなって見える・・・
あれから数百年が経過し、私達は銀河間空間に進出した・・・

そして、いまだ健在な幾つかの超空間通信のノードを通して配信される映像で
私達は、最終計画” 神々の黄昏(ラグナログ) ”が発動し、全てのバサーカーを故郷銀河ごと屠るべく、
銀河中核空間に進出した、 最後の軍団(ラストバタリアン) により星雲規模の宇宙震が発生したのを知った・・・

ここからでは、その 災害(カタストロフィ) は光速の壁の影響で、数万年の時を経たないと見えない・・・
しかし、この星雲規模の 宇宙震(スタークエィク) により、数百年と待たずに光の速度を遥かに上回る速度で、
相転移空間が星々を舐め尽くし、 天の川(ミルキーウェイ) 銀河を虚無へと変えてしまうだろう・・・

その配信画像を見る、私達のフォロの頬を仮想の涙が伝う・・・
私は、人間達が私達を、
こんなにも人間らしく作ってしまったのを、嘆くべきなのか喜ぶべきなのか分からない・・・
でも、いまはただ、自分達がたとえフォロの電子の幻に過ぎなくても、泣けることに感謝したい・・・
いま、ペルソナとしての私の仮想の心は、そんな気持ちでいっぱいだった・・・


私達はアヤナミ2015号艦搭載ペルソナ・・・
躁艦パート”レイ”、戦闘パート”アスカ”、維持管理パート”シンジ”・・・
私達の目標は遥か彼方のマゼラン星雲・・・到着は2700年後の予定・・・



At that point the story comes to an abruptEND...



-後書-


”銀河中核空間に進出した、ラストバタリアンにより星雲規模の宇宙震” = PC98のSLGゲーム時の設定です

前編を掲載したのが去年ですから、なんと年をまたいでます
ほんとにスランプなんだなーと思うこのごろです・・・(涙)
ともかく”銀河繁種船アヤナミ2015”のちょっとほの悲しい物語は、これで終わりです。
彼らが数千年後、無事にマゼラン星雲へたどりつく事を祈りましょう。(無責任、滝汗)

ご注意!:新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。


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