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EVA・きっと沢山の冴えたやり方

・第十三話 雨、逃げ出した後・夢見る熟女   by saiki 20021126




私の目の前で、グレネードの直撃でさえ防ぎそうな厳ついドアが開く・・・

「葛城一尉入ります」

私の声がちょっと振るえる・・・私は、弾薬切れに、目の前に敵の一個師団を、
見つけた時より、慄き怖がっている・・・15年ぶりに二体の使徒が来た・・・
だが、ネルフの作戦部長たる私は、今まで何の役にも立っていない・・・

ただ、怒鳴り散らし、慌てて指示を出すのに戸惑うような私を置いておくほど、
ネルフは甘く無いだろう、きっと今日、私の復讐に全てを掛けた半生は終わる・・・

だが、きっとこれで良いのだ、シンジ君やレイのような14歳の少年少女達に、
私のような汚れきり、復讐に凝り固まったような大人は不要だ・・・

私は吹っ切ろうと顔を真っすぐ碇司令へ向けた、この、女、葛城ミサト29歳、
己の不始末を避けて通ろうとは思わない、さあ戒告でも左遷でも受けて立つわ!
私は、新たに導入された応接セットに腰掛ける司令に模範的な敬礼をした。

「遅れて申し訳有りません、碇司令」
「葛城君、第四使徒戦の事務処理が忙しい中、呼びつけて悪い事をした
まずは、疲れている君に立ち話もない、座ってくれないか」

第三使徒が現れてから、碇司令と副司令は変わった・・・
以前は、常に、周りじゅうに威圧感を振りまいていた・・・でも、
今では少しでも、部下と解り会おうとする努力をしているように見える・・・

「いえ、私には優秀な部下がいますから・・・」

マコト君ごめんね、君に仕事を押し付けて・・・
私は、緊張しながら碇司令の前のソファーへ腰掛けた、なんだか特上の
やわらかいソファーが針のむしろの様な気がして、いたたまれない・・・
碇司令の斜め後方の定位置に立つ副司令が、私へ口を開く・・・

「レイ君から、引越しまで手伝ってもらったと聞いてる、
この前は、疲れてる所、ほんとにすまなかったね・・・」
「私のような役立たずに、勿体無いお言葉です副司令」

そう言えば、レイも変わった・・・あの無表情で、人形のようだった少女・・・
今では、彼女の微笑みは、女の私でさえ見惚れてしまいそうだ・・・

「君といい赤木君といい、もっと助手を付けてやれなくて、
ほんとにすまないと思っているのだが、予算もだが人材が居なくてね。」
「エヴァは金食い虫ですから、我々は仕方ない事と承知してます」

あの、リツコも変わった・・・使徒来襲以前の氷のような雰囲気から、
今では怖いぐらい熱い、部下のマヤが最近は彼女を避けている、
彼女は私に愚痴る、あれから先輩が怖いんですと・・・

「ありがとう、葛城一尉、残念ながら赤木君は別の意見な様だがね」
「そうなんですか?」

何にそれほどまでに、こだわってるの、リツコ・・・
最近の彼女の口癖は・・・シンジ君は異常だ、シンジ君は怪しい・・・
何故、彼に辛く当たろうとするのリツコ、あの優しく誠実な彼に・・・

「すまん冬月・・・そろそろ本題に入りたいのだが?」
「おお、忙しい葛城一尉の時間を無駄にしてしまったかな・・・」

ああ、戒告でも左遷でも言ってください、すでに覚悟はできているんです・・・
これ以上じらすのは、私にとって拷問のような物です副司令・・・
さあ・・・碇司令、早く止めを・・・この私が、ギロチンを求めて叫びださないうちに・・・

「葛城一尉、これから見せる物は特機だ、我々がそれを知る事を許した物以外には、
何者、たとえ赤木博士でも明かしてもらっては困るのだ、承知してくれるか」
「リツコにもですか・・・わかりました、信用してください」

碇司令はこのぼんくらな私に、何を見せようと言うのだろうか・・・

「これはシンジ、いやサードチルドレンから提出された物だ」
「シンジ君から?」

彼からこの時期、提出されるとしたら、私の排除を願った改善要求ぐらいだろう・・・
それとも、なにか別の物だろうか、彼はどんな特機となる様な事を見つけたのだろうか・・・

「時間を掛けても良い、ここで目を通して、忌憚の無い意見を聞かせてほしい」

シンジ君は、私達が当初予想していたより素晴らしく有能だ、そして皆に優しい・・・
彼は、私のような無能な女にも優しくしてくれる、私が料理が苦手でコンビニに
頼ってる事を知ると、幾度と無く彼の自宅での食事に誘ってくれたし、差入れもしてくれた・・・

「はい、承知しました碇司令」

私は、副司令が金庫から出した、極秘とスタンプを押された書類を手に取る・・・

シンジ君が私を責めるなら、私は何時でもその責めを受けよう、
なぜなら自分は、復讐に精神を蝕まれた、それにふさわしい女なのだ・・・

でも、彼の料理を食べられなくなるのは悲しい・・・きっと 温泉ペンギン(ペンペン) も悲しがるだろう・・・
ああ、そうだシンジ君が飼ってくれるのならペンペンを手放しても良い、私なんかと居るより
ペンペンはきっと幸せになれるだろう、彼はアイカちゃんとも仲が良い見たいだし・・・

私は、何が書いて在っても、取り乱さないように肝を括って、極秘書類のページをめくった・・・
だが読み進めるうちに、情け無い事に、私の覚悟が足りなかった事を悟った・・・

「碇司令!これは・・・」

極秘書類には、ありとあらゆる形状の使徒達、中には移動要塞や、質量爆弾のような使徒、
精神攻撃を仕掛ける物までが網羅されている、そして、その幾つかには攻略方までも・・・
私にはここまで多彩な想像力は無い、そして攻略方も私には穴が見つからなかった・・・

「言った通り、サードチルドレンから提出された物だが、葛城一尉?」
「・・・・・」

私は声が出ない、この想像力は、子供特有の自由な発想による物なのだろうか・・・
自分にはこの発想は出来ない、しかも攻略方は完璧だ、私はもう用なしだ、
シンジ君の方が、作戦部長にふさわしい事が悲しいかな、私には良くわかる・・・
でも使徒の通し数字と名前、日付は何のために書かれているのだろう?

「碇司令、このレポートは完璧です、シンジ君の方が作戦部長に適任です」
「そうか・・・ありがとう葛城一尉」

碇司令が意外にも微笑む・・・それを見て私は驚いた、司令はこんな顔もするのかと・・・
シンジ君の事をほめられて、くすぐったい様な、恥ずかしげな笑い・・・
私は急に、居た堪れない思いに駆られる・・・どこかへ消えてしまいたい・・・

「申し訳在りません、少し退出許可をいただけますか?碇司令」
「わかった、早く帰ってきてくれたまえ、君の新しい任務について話し合いたい」

私は駆け去るように、司令官室を辞退した・・・素早い身のこなしで、立上がると駆け去る・・・
指令達は、私が去るのを呆然と見ていたようだ・・・私は、少し泣いていたのかもしれない・・・

「碇、葛城君が気分を害したぞ・・・」
「・・うっ、そうなのか冬月・・・」

分厚いドアが、指令達と、私を遮る・・・そして・・・どこを、どう通ったのか、いつの間にか私は
雨の中、ルノーに乗って自宅のマンションへ帰ろうとしていた・・・それに気がついた私は、車を止める・・・
私は・・・何をしてる・・・マンションの駐車場への入口が目の前に見える・・・

「ペンペン・・・締め出されたのかい・・・そう、ミサトさんまだ帰ってこないのかい・・・
ペンペン、仕方ないよ家でもう少し待ってみようよ・・・
うん、大丈夫、アイカがちゃんと相手してくれるから・・・」

マンションの上の方から、シンジ君の声が微かに聞こえる・・・そう、ペンペン・・・
シンジ君達に可愛がってもらうのよ・・・私はルノーを、ターンさせてマンションを離れた・・・

「さよなら・・・シンジ君・・・レイ・・・ペンペン、可愛がってもらうのよ」

私の頬を涙が伝う・・・嫌だ、これじゃあ前が見えないじゃない・・・
この、役立たずな私はどこへ行けば良いのだろう・・・私は何も考えず、駅前の車寄せに、
ルノーを乗り捨てると、人ゴミに紛れるようにリニアに乗る・・・目的地など無い・・・

ふっと気がつくと、同じ風景が見える・・・一度、二度、三度と・・・
そして、やっと乗ったのが環状線で、何時まで乗ってもどこにも着かない事がわかった・・・

「あっ・・・」

いまの私は、どうにかしている・・・あてどもなく下りた駅で、プラットホームの前の
リニアの路線が凄く気になる・・・リニアがやって来る時、あそこに飛び降りれば楽になるような気がして・・・
体がそこへ吸い寄せられる・・・私はかろうじて、それから目を離すとふらふらと改札口を出た・・・

「ふぅ・・・」

私は、お酒の自動販売機の前を、興味がなさそうに通り過ぎる・・・
なぜかこの時、お酒に逃げようとは思わなかった・・・何時もはあんなに飲むのに、私どうしたのだろう・・・

「はあっ・・・」

私の口から、艶っぽいため息が漏れる・・・今度、私を魅了したのは、赤信号の横断歩道と、
そこを高速で通り抜ける車達だった・・・自分の体が前に引かれる・・・

一歩、二歩、三歩・・・足の先が点字ブロックに当たる・・・それでも私は止まらない・・・
私の足は歩道からはみ出して、車道へ一歩踏み出す・・・足を横断歩道の白いラインに乗せる・・・

私は子供のように、白いラインの上をはみ出さないように、気持ちよく歩く・・・
もうすぐ車がやってきて、私の復讐に呪われた命を芝生を刈る様に、絶ってくれるだろう・・・

・・・ああ、何故車が来ないのだろう・・・もうすぐ、横断歩道の白いラインが終わってしまう・・・
私は路面から顔を上げた・・・何時の間にか、信号機は青になっていた・・・

「なんて、ことなの・・・」

信号機さえ私に意地悪をする・・・雨が私から、容赦なくぬくもりを奪っていく・・・
私は、そのままずんずんと足を進める、そして目の前の建物に入って行った・・・

中では映画が上映されている・・・何時の間に、私は券を買ったんだろう・・・
もういい・・・何も考えたく無い・・・私は両手に顔を埋めると泣き始めた・・・
私は、このまま泣き続けて、ここでミイラになってしまいたい・・・

いきなり電気がついた、何時の間にか私の周りは、屈強な黒服達に囲まれている・・・
席にちらほらと座る客達が、唖然としている・・・御免なさい、私のせいなの・・・

「葛城一尉、大人しくご同行していただけますか・・・」
「わかったわ・・・」

私に声を掛けた黒服の顔色がちょっと青い、大丈夫よ暴れないから・・・
私は、顔に涙の後を残したまま、ネルフの車に乗り込み、再び本部へと運ばれた・・・

   ・
   ・
   ・

司令官室のドアの前に、リツコが仁王立ちして、私を待っている・・・
そして、彼女の平手が、涙の後が残る私の頬へと放たれる・・・派手な音が響いた・・・

「ミサト!今度同じ事をしたら、遠慮なく拳で殴るわよ!」
「ご・・・ごみん・・・リツコ・・・」

私は親友が、こんな価値の無い自分を、本気で心配してくれたのがとても嬉しかった・・・
リツコ・・・私がここを首になっても、親友でいてね・・・・

司令官室の厳ついドアが開く・・・私は、今度こそ逃げない・・・何が、待っていようと・・・
部屋の中には司令達以外に、シンジ君とレイも居た・・・なぜ彼らが・・・

「心配しましたよ、ミサトさん・・・まあ、父さんの説明が足りなかったんだろうけど」
「・・・ミサトさん、危ない事をしては、駄目・・・」

ああ・・・彼らも、私を心配してくれている・・・
私は、なんて愚かな事をしようとしたんだろう・・・

「すまなかった、葛城一尉」
「ううむ・・・私も配慮が足らなかったようだ、申し訳無い」

司令達が私に頭を下げる・・・嘘でしょ・・・
そんな人達じゃないはずなのに・・・それに、悪いのは私・・・

「碇司令、副司令、悪いのは私なんです、いかに鈍い私でも解ります
あんな、完璧なレポートを出せる、シンジ君の方が作戦部長に適任だって事ぐらい」
「待ってください、あのレポートの作戦はミサトさんが立てた物ですよ」

私が立てた作戦?シンジ君、何言ってるの・・・私は、そんな事した覚えは無いわよ・・・
シンジ君が苦笑しながら頭をかいている・・・レイも納得顔だ、司令も副司令も・・・
どうなっているの・・・分けが判って居ないのは、私だけなの・・・

「このレポートの作戦は、短時間で前の時にミサトさんが立てた物です」
「葛城君・・・シンジ君達は、前回起こったサードインパクトのからの帰還者だ」

サードインパクトが起こった・・・副司令、何言ってんです・・・
そんな・・・シンジ君、レイ、碇司令でも良い、冗談でしょ、お願い否定してよ・・・

「ああ、ついでに言うと、いまの僕とレイは使徒です」

シンジ君が、温かい魅了するような笑顔で、さらりと重大な発言をする・・・
使徒・・・シンジ君とレイが使徒・・・シンジ君が使徒、レイも使徒、使徒、使徒?
使徒は殺す、使徒を殺す、殺す、殺してやる、使徒なら殺してやるわ!
心臓が早鐘のように鼓動する・・・頭が割れるように痛い・・・
ああ・・・駄目!シンジ君!レイ!逃げてっ!・・・誰か私を止めてっ!

「使徒は殺す!」

私の口が無意識に動く、右手も何時の間にか、ジャケットの下から護身用の銃を抜き出し・・・
自然な動作で、シンジ君とレイに銃口を向ける、逃げてっ!、ああっ神様左手が動く・・・
私は左手で右手を押さえ込み、弾道を逸らそうとする・・・だが、引き金が引かれた・・・

広い部屋で、二つの銃声がほとんど一つに聞こえる・・・
私は、血に染まって倒れる二人の姿を見てしまう事を恐れて、硬く目を瞑る・・・
だが、私が聞いたのは悲鳴ではなく、二つの陶器が割れるような固い音・・・

「ああっ・・・」

私は・・・恐る恐る目を開ける・・・シンジ君とレイが、赤味の増した悲しそうな目で私を見つめる・・・
八角形の淡いオレンジの揺らぎが、天井へ弾を逸らすように二枚展開されていた・・・
ATフィールド・・・使徒とエヴァしか発生する事の出来ない、奇跡が彼らを守る・・・

「ごめんなさいシンジ君、レイちゃん・・・ごめんなさい・・・」

私は涙を流しながら彼らに謝る、自分は彼らに引き金を引いたのだ・・・
ハミングバードが二連発なのが悲しい、この場で自分の頭を撃ち抜きたいのに・・・

ふと見ると、まだ私の右手は性懲りも無く、引き金を引き続けていた、
その自分のしぐさに、あまりにも腹が立つたので、左手で殴りつけてやった、
ちょっと痛かったけど、銃が床へ転がって行った・・・あんたはもう用なしよ・・・

「ミサトさん、ナイフを渡してください・・・」
「うん、そうねちょっとまって・・・」

シンジ君が私に右手を差し出す。
そう、これだけの事をしたんだから、武装解除されて当然ね・・・
私は、念のため右手を太腿で押さえつけて、
左手でブーツからセラミックのレイピアを抜き、柄を向こうして彼に手渡す・・・

「これで私は首ね・・・こんな事、言える立場じゃ無いんだけど、良かったら、
シンジ君ペンペンを引き取ってくれない?彼、私と居ると不幸になりそうだから・・・」
「大丈夫ですよミサトさん・・・それに、彼は貴方が好きなんですよ見捨てないで上げてください」

はは、ありがとうシンジ君・・・慰めてくれて、でもいいの・・・
こんな、何時爆発するかもしれないような精神錯乱女が、ここに居て良い分けが無いわ・・・

「碇、やはり葛城君は 老人達に(ゼーレ) 条件付け(マインドコントロール) を受けてる様だな・・・」
「ああ冬月・・・失語症に陥ったときかな?」

副司令、ゼーレってなんです?私が条件付を受けてるって・・・
私は呆然としている・・・自分の周りで、勝手に事態が動いて行く・・・

「葛城一尉、シンジを撃ったのは気にするな・・・私も撃った事がある」
「はいっ?・・・碇司令が・・・シンジ君をですか・・・」

私は、一瞬固まった・・・司令がシンジ君を撃った・・・実の息子を・・・
私は、ぎぎっと音を立てる様に、ぎこちなく首を回してシンジ君を見た・・・
シンジ君が寂しそうに笑っていた・・・ほ、ほんとの事なのねシンジ君・・・

「・・・大丈夫、葛城一尉・・・いまの私達は、不死身だから・・・」
「不死身だからって・・・レイちゃん・・・」

レイが私に儚げな微笑を向ける・・・貴方も私を気遣ってくれるの・・・
普通なら、たとえ当たらなくても、自分に向けて銃を撃つような、
人とは二度と会いたく無いでしょうに・・・レイ・・・

「じゃあ、ミサトさん、ちょっとしたパフォーマンスをお見せしましょう」
「・・・・ちょっとシンジ君」
「シンジ!」
「くうっ!シンジ君・・・」

いきなり。シンジ君は私が渡したレイピアで、自分の左手首にざくっと、
深い切れ込みを入れる・・・ああ血が・・死んじゃうわよシンジ君・・・

「・・・碇君!・・・」
「ごめんなさい、父さん床を汚しちゃいましたね・・・」

シンジ君の微笑が痛そうに歪む・・・レイが、慌ててハンカチを傷に当てる・・・
私は、他の三人のうろたえぶりから、これが事前に打合せたものじゃ無い事が分かる・・・

「・・・碇君・・・こんな、やり方はやめて・・・」
「ごめん、君まで驚かしちゃったね・・・もうしないから・・・」

レイがハンカチを除けると、あれだけの深い傷がどこにも無い・・・
そう言えば、重症のレイがあっさり全快した事が在ったけど・・・こう言う事・・・
涙目のレイをシンジ君が抱き寄せて慰める・・・良かったわねレイ・・・

「シンジ・・・レイを悲しませるな」
「シンジ君・・・年よりは心臓が弱いのだ、これからは謹んでくれまいか」
「はは・・ごめん父さん、冬月さん・・・」

シンジ君が笑う・・・その笑顔がとても暖かい・・・
殺風景な司令官室に、温かく心地よい、すでに失われた春の風がゆたう様だ・・・

「葛城一尉、君にはもう一つショックなことがある、気を引き締めて聞いてくれるか?」
「はい、つつしんで・・・碇司令」

ぴんと緊張が部屋を支配する、昨日まで食事をご馳走になってた知り合いが、使徒だった・・・
これ以上に、ショックな事があるとは、思え無いけど・・・私の想像力が、足りないのか・・・

「われわれ人類も、 第18番目の使徒(リリン) なのだ、葛城君、S機関の力を捨て、
数と知恵に力を求めた第18番目の存在、それが我々リリン、人類なのだよ」
「私達が・・・使徒、私も・・・使徒なのですか副司令?」

副司令の話を聞いた、私の心の底から呪う声が溢れる、使徒は殺す、使徒を殺す、殺す、殺してやる・・・
また、私の心臓が早鐘のように鼓動する・・・頭が割れるように痛い・・・
太腿で押さえつけた右手が、血を求めて蠢く・・・今度は貴方の、好きにさせないわ・・・

「大丈夫か、葛城一尉」
「は、はい・・・ご心配をおかけします、大丈夫です・・・」

碇司令の心配する顔を、私は始めて見た・・・ふっ、私は果報者ね・・・
でも、この心の底から浮き上がる、使徒を殺せと言う声は何なのだろう・・・
これが、副司令の言う、ゼーレとやらが私へ施した、条件付けなのだろうか・・・

「君には今の作戦部に籍を置いたまま、日向君にいまの業務を引き継いでもらって、
新しく極秘で設立されるゼーレ対策班、通称諜報0課に副主任として所属してもらう・・・」
「はい、謹んで拝命します」

まあ、前に自分とやらが出した、作戦以上の物を捻りだせ無いなら、あそこへ居ても仕方ないから・・・
私は自分の中で、使徒に対する怨嗟の心が、和らいで行くのを感じた・・・

「では、我々は君に全ての情報を得る、二つの方法を提案しよう、一つは私、
シンジを含む口頭による説明、もう一つはシンジの力によるダイレクトな情報・・・
もちろん、どちらも選ばないと言う事も出来る、そうなると選べるのは三つだな」
「ああ、葛城君二つ目は私と碇は体験して見た、あまり進められん事を言っておこう」

うふふ、司令も副司令も、私を挑発するのがお上手ね・・・
そこまで言われて、私がしり込みするとでも・・・今は私の周りで、なにが、起きているのか
判らないけど・・・これで、自分がどこへいて、何をすれば良いのか判るかも知れない・・・

「碇司令、私は二番目を選びます・・・お願いできるかしらシンジ君」
「ミサトさん、僕もあまり進めません、確かに情報を得るのに手っ取り早いですが、
その臨場感は、僕に言わせるとほとんど拷問に近いですよ、それでもいいんですか」
「・・・私も勧めません・・・葛城一尉・・・」

シンジ君、レイ、ありがとう、貴方達は私の事を心から心配してくれてるのね・・・
でも、好奇心は猫をも滅ぼすと言うけど・・・私はにやりとチシャ猫のように笑った・・・

「あら、心配してくれるの、シンジ君、レイ、ありがとう・・・でも
戦闘訓練には対拷問の訓練も在るのよ・・・私は大丈夫よ二人とも」
「そう言うのと一緒にすると、後悔しますよ、ミサトさん・・・」

シンジ君の肩が辛そうに下がる・・・ごめんねシンジ君・・・
彼が近づいてくる、その黒かった目に赤い光が揺れる・・・えっ、なにも準備とか要らないの?

「じゃあ、ミサトさん気をしっかり持ってくださいね」

シンジ君は悲しげな笑みを浮かべたまま、私の額に人差し指を押し当てる・・・

私の中で悪夢が弾けた、走馬灯のようにイメージが私を蹂躙する、言い争うお父さんと若い碇司令、
私の前に佇む巨大なミイラ、ミイラの光球へ腕を取り込まれ動けない私、叫ぶお父さん、
ミイラの胸へ打ち込まれる赤黒い槍、私の胸に鋭い痛みが走り血が服を濡らす、光球から吐き出される腕、
ひびが一面に入り光球が明滅を始める、光り輝き歩き始める巨大なミイラ、私の失われた記憶が蘇る・・・

そしてイメージはまだ続く、加持と再会する私、使徒の影に取り込まれるシンジ君、使徒の手で切り刻まれるエヴァシリーズ、
加持と裸で戯れる私、ゼーレから送り込まれた少年を泣きながら殲滅するシンジ君、加持からの最後の電話に泣き崩れる私、
心を使徒に蹂躙されるアスカ、自爆するレイ、ゼーレの量産型エヴァに食い散らされる弐号機、撃たれ床に転がる私、
傷つき蝕まれていく三人の年若い子供達、そして、どこまでも赤いLCLの海・・・

私は、気がつくとソファーで顔を伏せて涙を流していた・・・
隣には心配そうな顔のレイが座り、私の頭を撫ぜている・・・
私は、ちょっぴり恥ずかしくて頬を赤く染めた・・・

「・・・私も碇君にこうしてもらえると・・・心が落ち着くから・・・」
「ありがとう、レイ・・・前の加持君は死んじゃったのね・・・」

私はレイに感謝の言葉を贈る・・・レイも少し頬を赤らめる・・・可愛いわよレイ・・・

「・・・私とアスカは、あの赤い海の中で貴方に逢ったわ・・・
貴方の心は破片しか残ってなかったけど、いつも貴方の想い人を探して彷徨ていたの・・・」
「ねえレイ・・・私の加持君も、また死んじゃうのかなぁ・・・」

私の呟きを聞いて、微笑み掛けてくれていたレイの顔が怒りに染まる・・・

「・・・そう思うのなら貴方が想い人を守りなさい、葛城一尉・・・」
「うっ・・・そうね、そのとおりだわ・・・
ごめんレイ、私らしくもなく弱気になってたわね・・・」

そうよ、今だって未来は変わっているはず・・・あの、赤い海の未来なんて、来させて堪るもんですか・・・
変わる・・・そうアスカも・・・
いまのアスカも、もう使徒なの、あの私の知ってる、こ生意気で寂しがりやのあの子も・・・

「レイ、アスカは・・・アスカは、貴方達ともう同じ存在なの?・・・」
「・・・碇君・・・私達のアスカを、ミサトさんに見せて上げて・・・」

パイプ椅子に座ったシンジ君が、私の目の前に手の平を差し出す、
その中に、赤く輝やく小さな光球が浮かび上がる・・・これが、あの赤い海の世界のアスカ・・・

「今、ドイツに居るアスカはオリジナルですよ、
僕達のアスカとの約束で、どうするかは自由意志で決めてもらいます。」
「もし、彼女が拒絶した時はどうするの・・・」

そうか、レイには拒絶の自由は与えなかったのシンジ君・・・
私の目に、シンジ君への不審の意思を見たのか、珍しくレイが饒舌になる・・・

「・・・ミサトさん誤解しないで・・・
貴方の知る無表情な私は、いつも無に帰る事ばかり考えていた・・・
だから私も選ばせたかったけど・・・あの私には選べなかったと思うわ・・・
そして、いま、私は碇君と同じ存在になれて凄く幸福なの・・・」
「・・・アスカが拒絶した場合は、綾波のスペアボディーを使います・・・」

よかった・・・アスカには、選べる自由をちゃんと用意してくれたのねシンジ君・・・
まあ、私みたいなぼんくらにまで、選択の余地を残してくれたシンジ君だから、当たり前か・・・
心配しただけ損したわ・・・でもレイは・・・きっと私の解らない訳が在るのね・・・

私の、未来の記憶の中の赤い水槽に漂う、無数の笑うレイ達・・・
私は、記憶の中のレイ達に微笑み返す・・・貴方達にも沢山の愛を・・・

   ・
   ・
   ・

あの後、リツコに怒られた、私が失踪してからネルフは大騒ぎになり、保安諜報部を
先頭に、作戦部、技術部を巻き込んで大捜索になったそうだ、最初に私を見つけたのは
マギで、赤信号を強引に渡ろうとする、私を見たリツコは、とっさに信号をマギを使って
青にしたのだそうだ、ここが第三新東京市じゃなかったら私は死んでいただろう。

私はリツコに「貴方の命の代金分、私に夕食を奢るのよ」とさとされた・・・
どうしよう・・・次ぎの給料日まで、リツコ待ってくれないかな・・・

それと、私には方向感覚を養う訓練と治療が言い渡された。
リツコによると、私の方向感覚がうまく動かないのは、長年にわたる、
コンビニ通いでミネラルが不足して、生体磁石が旨く機能していないからだそうだ・・・
おかげで、リツコの怪しい薬を飲ませ続けられている、大丈夫かしら・・・

そういえば、あれからリツコが私を見て、こう言った事がある・・・
あなた、何だか変わったわね・・・角が取れて綺麗になったわと・・・
私はつれなく、そうねこれで加持の奴が帰ってきたら、ハートゲットよとガッツポーズでごまかした・・・

私が変わったのは”あれ”を見たせいだ、シンジ君はリツコはまだ迷ってると言っていた・・・
リツコも早く結論を出せれば良いわねと、私は心の中で呟く・・・

リツコと分かれた私は新しい執務室に篭り、予備的な書類などを片付ける・・・
主任に就任予定の、加持の馬鹿がこないと、ここは本格的に立ち上がらないから・・・

私は、陸戦の感を取り戻すため、軽いトレーニング用に、ジャケットに腕を通した・・・
加持・・・早く私の元に帰ってきて頂戴・・・今度は私も手伝うから・・・私は、夢見る乙女の様に呟く・・・
私の瞳の奥にはタキシードを着崩したあいつと、ウエディングドレスを着た私がバージンロードを歩く・・・

私はニヤッとチシャ猫笑いを残して、執務室を出て、スキップしながら訓練室へ向かった・・・



To Be Continued...



-後書-


ミサトさんが雨の中、逃げ出します、さあこれでタイトルの”雨、脱げ出した後”クリア
本章はこれで終わり、次ぎは”レイ、心の向こうに・小鳥達の日常V”です
ついにミサト補完完了か?でも彼女の幸福には加持が必要だ彼はどうなる以下次号?(汗)

長年にわたるコンビニ通いで、ミネラルが不足して生体磁石が
旨く機能していな(こんな症状は有りません、本気にしないで下さい、作者談、苦笑)


ご注意!:新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。


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