【美衝撃】 サンプル1

「……千早さ〜ん、好き〜……」
「こらあ! 美希ってば、早く起きなさい!」
「ふにゃあ……は、はい!」

 ……最悪の目覚めなの。さっきのは夢、かあ。
 今のは律子。今は、ミキと同じユニットで活動してるアイドル仲間なんだけど、とにかく口うるさいの! もう、朝から晩までミキにガミガミガミガミお小言ばっかり。なんだか知らないけどミキに恨みでもあるみたい。ああいうのを小姑って言うんだよね、ミキ物知りでしょ。

「もうすぐプロデューサーが営業から帰ってくるんだから、いつまでもぐーすか寝てないの! まったく、たるんでるわね」
「ぶーっ、あずさだって寝てるもん! 律子は本当にうるさいんだから」
「律子さん、でしょ」
「わかってるってば……律子、さん」

 ほらね、いっつもこんな感じ。はあ……。まあでも、家でもお姉ちゃんの長話なんかは流して聞いてるし、律子の話もあんまり聞いてない部分が多いんだけど。

「ほら、あずささんも起きてください」
「ううん……友美、代返よろしく〜……」
「んもう、友美って誰ですか。寝ぼけてないで、早く起きてください」

 今、ミキの隣で寝言を言ってるのがあずさ。あずさも美希と同じユニットなの。765プロのアイドルの中ではあずさが一番年上なんだけど、なんかあんまりそんなカンジがしないんだよね。あずさはのんびりした性格だから、ミキとは波長が結構合うの。今だって、プロデューサーさんを待ってる間、あんまりにも日差しが心地よかったからついつい二人でお昼寝しちゃったんだよね。あずさとはアイドル仲間でお昼寝仲間かな。
 ……あ、あずさが起きた。

「ううん……おはよう、律子さん、美希ちゃん。……あら? そういえば、私ったらなにをしていたんだったかしら〜?」
「あずささん、プロデューサーがもうすぐ帰ってきますよ」
「あ、そうそう。プロデューサーさんの帰りを待っていたんですよね。どんなお仕事を取ってくるのか楽しみです〜」
「あ、ねえねえ、あずさ。友美って誰?」
「友美? 私、美希ちゃんに友美のことを話したこと、あったかしら?」

 今、自分が寝言で言ってたのにー。あ、寝言だから覚えてないのか。で、あずさから聞いたところ、友美っていうのはあずさの親友の名前だったの。だからね、代わりに今度はミキがミキの親友のことを教えてあげたんだよ。ミキね、あずさのこともっともっと知りたいって思うな。だから、あずさとは暇があればいっつもおしゃべりしてるの。親睦を深めることは3人ユニットとして大事なことだって、プロデューサーさんが言ってたもん。
 でも、律子とはちょっと話しにくいカンジ。ミキが何かを言うと二言目には怒られちゃうんだもん。ミキ、別に律子を怒らせるようなこと言ってるつもりはないのに。そりゃ、たまに律子の話が退屈だから眠くなっちゃうこともあるけど、そんなのミキが眠っちゃうようなつまんない話をする律子の方が悪いって思うな。


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