……えーっと、これでいいかしら? バスケットにたくさんのクッキーやパウンドケーキを詰めて、姫はいつものところに向かいます。
 姫は、毎日大量にお菓子を作ります♪ 全部にいさまに食べてもらえればいいのだけれど、やっぱりそうはいかなくて……。だから、いっつも余ってしまうのをどうしようか悩んでいたんですのけれど、最近は喜んで受け取ってくれる所がいくつかできたんですの♪ 今日これから行くのもそのうちの一つ。近所の人達が「猫の庭」って呼んでいる所で、赤や黄色のカワイイ花がたくさん咲いている、ぽっかりとした空き地なんですの。
 姫がそこに行くとね……たっくさんの猫ちゃんたちが、嬉しそうに耳をピンと立てたり、待ちきれないみたいに声を合わせて鳴いていたりして、みーんな姫のことを歓迎してくれるんですのよ♪

 今日も覗いてみると……うふふ♪ みんなお待ちかねみたい♪
 姫が空き地の真ん中でバスケットを広げると早速……あらあら、そんなに慌てなくても大丈夫よ♪ お菓子はたっくさん用意してありますの♪

「……姫ー! ……姫ー!」

 あ、にいさまの声♪
 にいさまー♪ 姫はここですのよー♪
 ……? あれ? なんだか変な感じ……。
 ……あ。
 そうですの! にいさまが姫のことを「姫」って呼んだんですの! いやーん、にいさまったら♪ 今までは姫のことを「姫」って呼んでくれなかったのに……にいさまも、ついに姫の愛に応えてくれたのかしら♪ むふん♪
 あーん……なんだかドキドキしてきちゃいましたの! にいさまが姫って呼んでるのが聞こえるたびに、胸のドキドキがどんどんどんどん大きくなっていって……姫、もう我慢できないんですの♪♪♪
 にいさま、こっちですのよーー♪ 早くーー♪

「よかった。姫猫ちゃん、ここにいたのかい」

 ? ひめ……ねこ? にいさま、何言ってるんですの? 姫は姫ですの。……確かに、周りには猫ちゃんがいっぱいいますけど、姫は猫ちゃんじゃないですのよ? 
 なんだか不思議そうな顔をしているにいさまが見ているものは……もうにいさまったら、これはリボンですの……いたっ! ……あ、あれれ? と、とれないですのーーっ! それに、なんだか……さっきからお尻の方がムズムズして……いやーん! しっぽまでー!? も、もしかして、姫、本当に猫ちゃんになっちゃったんですのー!?
 にいさま、姫ですの! にいさまの妹の白雪ですの!
 ……もしかして、にいさま、姫の言ってることも分からないんですの? ……うわーーーーん! 姫……姫、このままじゃ、にいさまのお料理番にもなれないんですの!

 
「にいさまーー!」

 ……そこで目が覚めました。そう、今までのは……全部姫が見た夢。
 夢なんだってわかっても……目が覚めてすぐに、頭とお尻を確認しちゃいましたの……。そこには……猫の耳もしっぽもありませんでした。
 せっかくにいさまが姫のことを「姫」って呼んでくれたのに……イジワルな夢ですの! ……でも、にいさまが姫って呼んでくれたのを思い出すと……ムフン♪
  

          

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