Be more closely!


・・・四年というのは、大きい。オリンピックと、オリンピックの間。俺と、白川の年の差。時々、
無性に同学年、一年差のコンビが羨ましくなる。あいつ等は、きちんと意思疎通ができてる。相方に
なめられたりしない、俺みたいに。ラブラブな奴等も、同学年、一年差がほとんどやし。俺と白川は
・・・ラブラブなんだろうか?もう、相方という関係外の関係を持って、三年以上。セックスもする。
キスもする。阪神の試合も見に行く。二人で旅行もした。映画も見に行ったし、服も買いに行ったし、
一緒に呑みに行く事はしょっちゅう。・・・でも、何処か、白川に遊ばれている様な気がする。
 「・・・なぁ、白川ぁ」
単独ライブ。楽屋。後ろから、白川の身体にもたれ掛かる。俺より少し、小さい身体。俺の身体を、
受け入れる身体。白川はわざとらしく大きな溜息をつくと、俺に身体を任せ、頭を俺の身体に擦り
付けた。・・・安心して、抱きしめる。誰も居ない。俺を誘う様に、俺の眼を見つめる白川。・・・やりたい。
 「H、したいの?」
抱いていいよ、という顔。何時もそう。白川は、俺の事を、子供をあやす様な目で見つめる。確かに
俺は、白川より年下。ベットの上では主導権を握っているとは言え、俺は白川より子供。けど、
もう俺もいい大人だ。もう、止めて欲しい。頭では同じでも、態度や口調は、少しでも変えて欲しい。
 「・・・したい」
少し腕を緩ませ、白川は滑り込むように俺の隣に来る。抱きしめて、キスをする。・・・無防備な相方。
床に押し倒す。・・・俺より年上という事実は隠せないものの、やっぱり、可愛いとか色っぽいとか
思ってしまう。何度も何度も短いキスを重ねた後、お互いの髪に手を絡ませ、深くキスしていく。
 「んっ・・・ふっ、浜本っ・・・」
唇は、こんなに柔らかなのに。俺の愛撫に、あんなに甘い声を出しているのは、演技だというのか?
そんなん嫌や、・・・じゃあ、俺が白川に夢中になってるなんて、馬鹿馬鹿しいじゃないか。
 『白川さ〜ん、ちょっといいですか?』
野性爆弾の、城野の呑気な声。まぁ、ドアをノックするだけいい。そのままドアを開かれたら、
必死に隠している、俺と白川の関係がばれてしまう。野性爆弾とは呑みに行ったりするから、
異常に(俺はそうとは思っていないが、多分、向こうから見るとそうだろうから)身体をくっつけたり、
お互いの家に泊まる俺達の事を見て、もしかしたら気づいているかもしれないが。周りも、俺等
みたいな奴ばっかやし。・・・白川は深く唇を重ねた後、俺から身体を離し、楽屋のドアを開けた。
 「あの・・・此処なんですけど、こうしてもいいですかね?」
城野に、微笑みかけているだろうという事が、後姿からでも分かる。城野が笑顔になる。じっと白
川の後姿を見つめている俺に気づいたのか、城野が見てくる。手を振って、何でも無いという合図
を送る。本当は何でも無くない、むかむかする。白川を、俺から離れないよう束縛したい。
 「・・・白川さん、ちょっと・・・いいですか?」
城野がそう言うと、白川は俺と目を合わせたかと思うと、廊下に出てしまった。・・・何を話してい
るんだろう。本当はそんな事、ある訳無いとは思っているのに、どうしても気にしてしまう。白川
に、変な事をしていないだろうか?白川をいいと思っている奴は、俺だけじゃないだろう。しっか
り相手が居る他の芸人に聞いた所、意外といいと思っている奴は、結構居るだろうとの事。
・・・むかつく。白川は、俺のものなのに。ずっと、俺だけのものには居てくれないかもしれないけど、
とりあえず今、白川は俺のもの。俺だけに抱かれる。・・・そうでも思っていないと、壊れてしまいそう。
 『それじゃあ、有難うございました!』
 「おう!またな〜」
白川が、俺の側に帰ってくる。笑顔で、擦り寄ってくる。どうやら、肉体的には変な事はされていな
いらしい。猫みたいな仕草で、甘えてくる白川。・・・可愛いと思ってしまう俺は、馬鹿だろうか?
 「・・・浜本?」
白川の仕草が色っぽく見えて、床に押し倒した。楽屋のドアが閉められている。・・・俺がそれに気
づき、白川の方を見ると、意味あり気に微笑む白川。白川は押し倒されながら、俺と自分の、携帯の
電源を切った。もう誰も、本当に邪魔できない。そっとキスをして、俺に胸を掴ませる。白川・・・!

セックスをした。ライブ前に。・・・今は、ライブが終わり、メイクを落としている。例えセックス中
だけだとしても、白川が俺だけのものだと実感する事は、俺を高潮させ、例え様のない満足感を生む。
俺に身体中を愛撫され、うっとりと身体を震わせ、俺の突起物を求める時の、あの顔。厭らしい
かもしれないが、俺はあの時の白川の顔程、愛らしく厭らしく、色っぽいものを見る事がない。
 「・・・んっ・・・」
白川の身体に触れたくて、スタッフの目を盗んで、そっとキスをした。
 「・・・したいの?」
確かに・・・セックスはしたい。俺は白川と抱き合う度、もう一度抱きたいと思う。セックスをして
いる時も、白川の身体を全て、味わいつくしたいと躍起になる。でも、それは何時も、甘い安堵に包
まれ、消えてしまう。そして、セックスが終わると、又最初の欲望が出てきてしまう。その失敗は幾
度となく繰り返され、俺は未だに、その欲望を満たせた事がない。それを白川に言うと、・・・それが
楽しいのだ、と言う。一回して、それで相手の身体を味わい尽くしたとしたら、それではつまらな
い、と。でもそれは、抱かれている側が言える事で、抱いている方は納得できない。白川が好きでた
まらなくて、白川の事を考えると何時も、誰かに奪われないかというどうしようもない不安が、身
体を襲う。それは誰かに止められて止められるものじゃなく、・・・自分でも止められないものだ。
 「・・・したいって言うたら?」
無防備な身体をしていながら、白川はセックス中、セックス後も、ある程度以上の愛撫を俺にさせ
ない。俺は、その甘い安堵の中の厳しい視線に、反抗する事ができない。・・・年下だからとか、そん
な理由だけじゃない。白川が好きだから、できない。そんな所、可愛いって言われるんやろか?
 「・・・今はあかん。・・・終わったら、家でゆっくりな」
そう言って、服を着替えだす白川。あの鎖骨には、たっぷりと、俺との情事の跡が残っている。俺の
厭らしく舐めた舌の跡や、幾度と吸い付くようにキスした後の、キスマーク。俺はその行為を、
軽いものとは思えない。そうする事で、今だけ白川は俺のものなんだという実感を、味わえるから。
ただ、白川はどう思っているんだろう。軽いものとしか思っていないかもしれない、年下の俺が、
一生懸命愛撫した所で、・・・何時も何時も白川が気持ちいいと思っているとは、限らないし。






continue・・・