キャラメルクランチ


 「・・・・・・」
昨日の夜。H、しました。長い間、しました。久しぶりに、めっちゃ興奮した。・・・受身のは初めてか。
何か・・・自分の今まで相手した女の子の気持ちって、あんなんやったんかなぁって感じがした。
 「・・・宇治原さぁーん」
俺、起きれないです。・・・貴方に、抱きしめられているから。
 「・・・ん・・・・・・西野っ!?・・・何で、・・・あ・・・」
宇治原さんは寝起きで、最初訳が分からなかったみたいやけど、思い出したらしく。
 「わっ・・・」
更にきつく、抱きしめられる。
 「・・・おはよ、西野」
・・・優しい笑顔。
 「・・・お早う御座います」
宇治原さんの、にこにこしている顔を見ていると、思わず俺も笑顔になる。キスされる。
 「初キス。・・・した後の」
 「・・・したん、ですよね」
・・・昨日。
 「・・・おう。したよ」
何か、宇治原さんがそう言うと、ほんまにそうなんやな、って確信がもてる。
 「・・・何か・・・嬉しいです」
昨日から、俺は、宇治原さんのお姉さんが旅行から帰ってくるまで、宇治原さんの家にずっと泊ま
る事になった。ちょっと違うのかもしれないけど、半同棲、みたいなもん。一週間だけやけど、一週
間も一緒。7日間。絶対、無駄にはできない。・・・絶対、この7日間で、いい思い出を作るんや。
 「西野?・・・どーしたん?」
 「あ・・・何でもないです!!ちょっと、考え事してて・・・」
 「・・・考え事、なぁ・・・」
宇治原さんが、おいでおいでって、手を振る。俺、犬みたいに飛びついた。
 「・・・わんっ」
抱きしめられて、又キスされる。めっちゃ甘い。口から砂糖吐きそう。・・・でも何故か、いい。変やけ
ど、心地いい。キャラメルみたいに、少し大人っぽい味がして、凄く甘い恋。甘くしているのは、俺
が後輩やから。変に大人っぽいのは、相手が先輩やから。・・・二つの味が、溶けて絡まっていく。
 「・・・んっ、・・・はっ、ふぅんっっ・・・、はっ、はぁっ、んっ、ん・・・!」
甘くて、少しHな味。
 「・・・・・・あぁ―――・・・」
宇治原さんの携帯の着信音が、甲高く鳴り響いた。身体が、楽になる。
 『・・・もぉしもぉーし』
相手は・・・菅さん?
 「・・・何や」
 『何やってなんやぁ?・・・あー、やらし。どーせ昨晩、一発おきめになったんでしょーう?』
菅さん・・・・・・怒ってる。
 「一発ちゃうわ、二発じゃ!!」
・・・ズザーッ。いや、突っ込む所違いますやん。
 『・・・ふぅうう―――ん。よかったねぇ、愛しの亮廣君と、あんあんあんあん・・・』
 「うっさい」
何か・・・菅さんと宇治原さんがケンカしてんのって、珍しいなぁ。あんまりケンカせんからな
ぁ、・・・宇治原さんが、優しいから。大抵の事やったら、宇治原さん、全然、許してまうから。
 『・・・今日、午前から舞台やで。・・・遅れたら、・・・しばくからな』
 「・・・はいはい」
宇治原さん、そう言って通話を切った。
 「西野―――――っ・・・」
又、抱きしめられる。
 「・・・仕事、行きたくない。西野と居たい」
・・・そんな目で見られたら、僕、駄目になっちゃいますよ?
 「・・・んっ・・・ふっ、ぅうんっ、・・・んっ・・・」
 「・・・西野・・・」
あかんっ!・・・あかんあかん、しっかり、せ・・・な・・・
 『ピーンポーン』
さっと逃げ出して、ドアを開けた。ドアの向こうに居たのは、梶。
 「・・・梶?」
梶が、じっとこっちを見ている。・・・俺、パジャマの上しか着てへんやん!!
 「ごめん!・・・俺、着替えてくるから・・・!!」
俺、又家の中に入って、ベットの横に放り出してあった、ジーンズを乱暴にはいた。
 「・・・お待たせ―――――・・・」
・・・あー、疲れた。
 「・・・西野っち?」
・・・・・・まだ、俺、変?
 「・・・そのジーンズ、随分ぱっつんぱっつんやない?」
確かに・・・って!!これ、宇治原さんのやん!・・・あーあーあー。バレたぁ。もうあかん。ごめん梶。
俺、やってもうてん。昨日の夜。何も言わんでごめん。俺の悩みをくどくどくどくど話しても、ずっ
と聞いてくれてたのに、結局何も言わんうちにやってもうてごめん。・・・気持ちよくてごめん。
 「・・・・・・宇治原さんと・・・したんやね」
・・・うん。やっちゃった。一晩に二回。
 「・・・ごめん」
 「謝られても困るよ」
・・・あ。そうか。
 「・・・・・・」
 「・・・菅さんに行けって言われて。絶対宇治原さん、仕事真面目に来―へんやろうからって」
・・・梶。
 「・・・梶・・・」
 「・・・幸せそう、西野っち」
確かに、めっちゃ幸せやけど。梶、俺が何も言えないで困ってて、見かねて、大きく腕を広げて、
 「・・・お幸せに!」
 「・・・有難う」
梶は、又なって言って、帰っていった。
 「・・・にーしーのー」
宇治原さんに、寄りかかられる。・・・嗚呼、問題があったんだった。
 「・・・宇治原さん・・・
 「ジーンズ返して」
・・・あれ?
 「・・・仕事行くから。・・・ん」
俺、ドアを閉めて、ジーンズを脱いで、宇治原さんに渡した。宇治原さんはさっと穿いて、白いYシ
ャツを羽織り、ボタンを閉めていく。・・・さっきまで仕事に行きたくないって、不貞腐れてたのに。
 「・・・お前も舞台やろ?・・・マックで何か食ってこ?」
・・・格好いいのに、可愛い人。
 「・・・西野?」
僕の、好きな人。
 「・・・ネクタイ、しめましょうか」
新婚さんみたいだ。之が菅さんやったら、もっと絵になるやろなぁ・・・・・・あかんあかん!少しで
もあの人の方がええって思ったりしたら、あの人、きっと俺から宇治原さんを奪ってしまう。とび
きり可愛いし、甘え上手だし、正直、本気で戦ったら、あの人には勝てない。今回は、宇治原さんの
おかげで戦っては居ないけど。・・・あの人には適わないだろう。やから俺は、隙を与えない。努力し
て、俺に夢中にさせる。ずっと。きっと大変やろうけど、・・・好きなんやもん。この人の事が。
 「・・・お出かけのチュー」
 「・・・・・・」
こんな事、滅多にしませんからねっ。とっておきの、キスですからね。誰にでもするような、軽いキ
スって思わないで下さいよ。僕は貴方がすごくすごくすごく好きで、やからこんな事、できるんで
すからね。僕にとって、貴方は特別な存在なんです。・・・ものすごーく、特別な存在なんです。
 「・・・んっ・・・」
貴方が好きです。蕩けてしまうくらいに。

 「・・・だーむかつくっ。何やねん宇治原、デレデレしてーっ」
 「・・・しゃあないでしょう、一年かけて、・・・くっついたんですから」
 「ほぉーお、いやに理解ええやん。大好きな西野君、取られてええんかなー?」
 「それ・・・は・・・」
 「・・・大体、何で西野やねん!絶対俺の方がええっちゅーのに!」
 「・・・・・・」
 「この可愛さ!西野の数百倍はあるわ!」
 「・・・でも、フラれましたやん」
 「・・・・・・だ―――――っ!!むかつくー!」



continue・・・